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ピルは何科で処方してもらえる?保険適用の条件や選び方・貰い方、相談方法を紹介
医師
監修:中村葵
医師。女性の健康や性に関する正しい知識が不足していることに問題意識を持ち、その解消に向け取り組んでいる。また、オンライン診察・ピル処方サービス「スマルナ」を運営する株式会社ネクイノにて、ユース向け相談施設「スマルナステーション」の運営や自治体・学校との連携などに取り組む。
生理痛の緩和や避妊などの目的で服用する「ピル」。国連の調査によると、ピルの普及が進むドイツでは服用者が42.3%なのに対し、日本では0.9%程度と、服用する女性はまだわずかです(※)。
普及が遅れている理由のひとつにピルに対する誤解がありますが、何よりピルを使うことで得られるメリットが十分に周知されていません。
この記事では低用量ピルを中心に、女性の身体にどのようなメリットがあるのか、ピルを処方してもらう方法や服用の注意点などについて詳しく説明します。また、ご自身もピルを服用している監修者の中村葵医師にピルにまつわる「Q&A」もうかがいました。
- 出典:World Contraceptive Use 2022(世界の避妊薬の使用2022)
- 別ウィンドウで国連のサイトへリンクします。
- ドイツは2011年、日本は2015年の調査データとなります。
- INDEX
低用量ピルって何?
ピルは含まれているホルモンの種類や配合量によって、「超低用量ピル」「低用量ピル」「中用量ピル」「緊急避妊薬(アフターピル)」の大きく4つのタイプがあります。
<効果>
「低用量ピル」の主な効果は、排卵を抑制することで避妊効果を発揮したり、月経痛など月経困難症の症状を緩和したりすることや、PMS(月経前症候群)と呼ばれる、生理前に起こる身体や心の不調を改善する効果も期待できます。また、子宮内膜症の治療に使用されることもあります。
<Point>
- 月経困難症…生理に伴って日常生活に支障が出るほど強い症状が現れること。主な症状は下腹部痛や腰痛(いわゆる生理痛)、吐き気、頭痛、疲労感など。
- PMS(月経前症候群)…生理開始の3〜10日ほど前から起こるイライラや気分の落ち込みなどの精神的症状や、頭痛、胸の張りや痛みなどの身体的症状のこと。生理開始とともに症状が軽くなったり、なくなったりする。
- 日本では、避妊を目的として処方されるピル(経口避妊薬、OCとも呼ばれます)と、治療を目的として処方されるピル(LEP)の2種類があります。治療を目的として処方されるピルについては、国内では避妊効果が確認されていません。
<メカニズム>
低用量ピルには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンが配合されています。このホルモンは妊娠や生理に密接に関わっているホルモンです。
低用量ピルによって女性ホルモンを体外から摂取すると、脳は「体内には十分にホルモンがある」と判断します。そうすることで、排卵が抑制され、子宮内膜を薄く保つことができます。
実際には複数のさまざまなホルモンが複雑に関わっていますが、以下では簡単に内容を解説します。図と表を合わせて見ていきましょう。
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妊娠と生理のメカニズム | 低用量ピルのメカニズム | |
---|---|---|
① | 脳からの指令により、さまざまなホルモンが分泌され、卵巣内の卵胞が育つ。 | エストロゲンとプロゲステロンが含まれている低用量ピルを服用すると、脳は体内に十分なホルモンがある(妊娠しているときの状態と同様)と認識する。 |
② | 卵胞からエストロゲンが分泌される。卵胞が成熟すると排卵が起きる。排卵後の卵胞は黄体に変化し、黄体からプロゲステロンが分泌される。 | そのため、ホルモンの分泌が抑えられる。卵胞が成熟せず、排卵が起こらない。 |
③ | エストロゲンの作用によって厚くなっていた子宮内膜が、プロゲステロンの作用によって、より受精卵が着床しやすい状態になる。 | 子宮内膜も厚くならず、薄く保たれる。 |
④ | 妊娠がなければ厚くなった子宮内膜は血液とともにはがれ落ち、出血する(=生理)。 | 休薬期間や偽薬期間が設けられ、その期間に生理と似た出血を起こす。(出血するタイミングをコントロールできる)。 |
低用量ピルを使用する4つのメリット
低用量ピルを服用することで女性が得られるメリットとは何でしょうか。代表的な4つを紹介します。
1.高い避妊効果が期待できる
先に説明したとおり、低用量ピルを服用することで排卵が抑制されます。妊娠は卵子が精子と受精することで起こりますが、排卵が抑制されることで、精子が子宮内に入ってきても受精に至らないため、妊娠を回避することができるしくみです。低用量ピルを正しく服用している間は99.7%の避妊効果を得ることができます。
- すべての低用量ピルに避妊効果が確認されているわけではありません。
2.経血量の減少と生理痛の軽減
生理(月経)は、厚くなった子宮内膜がはがれ落ち、経血として体外に排出される現象のことを指します。低用量ピルを服用すると子宮内膜が薄く保たれるため、はがれ落ちる子宮内膜の量も少なくなり、経血量が減少します。
また、はがれ落ちる子宮内膜を体外に排出させるため、「プロスタグランジン」という物質がつくられ、子宮を収縮させます。これが生理痛の原因のひとつ。子宮内膜が厚ければプロスタグランジンも過剰につくられるため、ひどい生理痛をひきおこします。低用量ピルの服用で子宮内膜を薄く保つことで、生理痛の軽減が期待できます。
3.月経困難症などの治療とPMSの緩和
低用量ピルは、日常生活に支障が出るほどのひどい生理痛を伴う月経困難症や子宮内膜症の治療にも用いられます。
また、生理前に現れる不快な症状であるPMSにも、低用量ピルは効果が期待できると言われています。PMSの原因ははっきりとは分かっていませんが、女性ホルモンの変動により起こる可能性が考えられます。低用量ピルを服用したことでホルモンの変動が安定し、症状が改善したという報告は少なくありません。
4.生理日のコントロール
低用量ピルを服用していると、服用を休んでいる“休薬期間”やホルモンの成分が入っていない偽薬を服用する“偽薬期間”にしか、出血は起こりません。つまり、出血のサイクルを把握できるため、予定が立てやすくなったり、必要に応じて生理日を移動したりすることができます。
また、「生理不順」の場合も、低用量ピルで改善できます。ただ、生理不順には病気のリスクが隠れている場合があるので、低用量ピルの服用が適切かどうかも併せて、医師に相談することをおすすめします。
低用量ピルに副作用はある?
・吐き気 ・頭痛 ・腹痛 ・不正出血
・イライラ ・気分の落ち込み
・血栓症など
低用量ピルは薬です。服用すると、副作用を起こす場合があるので事前に理解しておきましょう。吐き気や頭痛が代表的な症状ですが、腹痛や不正出血、イライラや気分の落ち込みも報告されています。
副作用はピルの飲み始めに症状が現れやすく、身体が慣れる3ヵ月頃には症状が治まっている場合がほとんど。ピルの種類を変えると改善されることもあるので、副作用がひどい場合や3ヵ月以上続く場合は我慢せず、医師に相談しましょう。
<Point>
ピルの重大な副作用に血栓症がありますが、発症する割合は年間1万人に3~9人とわずかです。発症しても適切に治療を行うことで、ほとんどの場合は血栓が消失しますが、命に関わることもあるため、注意しましょう。血栓症を起こしやすい年齢や生活習慣については、次の「低用量ピルを処方してもらう方法」で触れているので参照してください。
低用量ピルを処方してもらう方法
産婦人科や婦人科などを受診して、医師からピルを処方してもらいます。近年増えているオンライン処方については、後述の「オンライン診察でピル処方という選択肢」をご覧ください。
医師の判断で血液検査やそのほかの検査が行われる場合もあります。問診で聞かれるのは以下のような内容です。
【問診で答える項目(一例)】
- 年齢
- 身長、体重
- 妊娠の可能性
- 喫煙している年数や一日の本数
- 頭痛や片頭痛
- 現在の治療の有無
- 既往歴
- 高血圧
- 血栓症をはじめとする心血管系疾患
- 糖尿病
- 肝障害など
特に、血栓症については肥満、年齢、喫煙習慣がリスクを上昇させることが分かっていて、下記の方は服用ができない「禁忌」に該当します。
- 35歳以上で1日15本以上の喫煙者
- 50歳以上または閉経後の女性 など
また、下記に該当する方も健康状態に合わせて処方を慎重に検討します。
- 1日15本以上喫煙する場合
- 40歳以上で新しくピルを飲み始める場合
- BMIが30以上の場合 など
加えて、デスクワークが多く1日中同じ姿勢でいることが多い人も血栓症リスクが高くなるので注意が必要です。水分をしっかり摂り、適度に身体を動かすことが、血栓症予防に大切です。
低用量ピルは保険適用の対象?
毎日飲み続ける「低用量ピル」が保険適用になるのか、気になりますよね。
月経困難症・子宮内膜症の治療を目的とするピルは保険適用になります。一方、避妊を目的としたピルは治療にはあたらないため、保険適用外となり、自由診療の扱いになります。PMSの場合は医師に相談し、ライフスタイルに合わせて処方してもらいましょう。
保険適用の場合は薬代の2〜3割が自己負担になります。保険適用外の場合、1ヵ月分で約2,000〜2,500円。どちらも受診した場合は診察代が加算されます。
低用量ピルの種類と選び方
低用量ピルはどれもエストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンが配合されていますが、ピルの服用周期やプロゲステロンの種類・配合量が薬の種類によって若干異なる場合があります。
●21錠タイプ・28錠タイプ…ピルの多くは1シート28日周期になっています。1シートに21錠が入ったタイプと28錠が入ったタイプがありますが、21錠タイプのものはピルを21日間服用したら、22日目から7日間は服用を休薬します。その間に出血が起こります。
28錠タイプの多くの場合、21錠はホルモンが含まれている実薬ですが残りの7錠は偽薬(プラセボ)で、偽薬を飲んでいる間に出血が起こります。28錠タイプは薬を毎日飲む習慣ができるため、飲み忘れを防ぐことができるメリットがあります。
- 薬によって休薬期間や偽薬期間が異なる場合があるので、服用する薬を確認してください。
●1相性・3相性…1シートに入っているピルのホルモン含有量が同じタイプが1相性と呼ばれるもので、含有量が3段階に変化するものが3相性。実際の体内のホルモン分泌量に近いのは3相性のタイプです。
●第一世代・第二世代・第三世代・第四世代…日本で初めて承認された低用量ピルを「第一世代」、最近のものを「第四世代」に分類します。それぞれ含まれているプロゲステロン(黄体ホルモン)の種類が異なります。薬の効果は基本的にどのピルも同じですが、ホルモンごとに特徴があるので、どのピルにするかは医師と相談します。
このように、低用量ピルには多くの種類があります。副作用がなかなか治まらない場合は別のピルを試すことで改善されることがあるので、受診する医療機関や医師と相談しながら、自分にマッチする低用量ピルを探しましょう。
【ピルを比較】目的別に選べる4タイプ
ピルには低用量ピル以外にも、「超低用量ピル」「中用量ピル」「アフターピル」があります。違いは配合されているホルモン量と使用目的ですが、予備知識としてポイントを解説します。
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低用量ピル | 中用量ピル | アフターピル | 超低用量ピル | |
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期待できる効果 |
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服用のタイミング | 毎日 | 予定日の1週間前から最大2週間 | 避妊に失敗してから72時間以内 | 毎日 |
・低用量ピル…避妊やPMSの改善、生理痛などの生理中のつらい症状の改善、生理不順の改善、月経困難症・子宮内膜症などの治療を行う場合に使用します。
・中用量ピル…旅行や仕事などの大切な予定と生理予定日が重なった際に、予定日を移動するために使用します。
・アフターピル…避妊に失敗したなど、妊娠の可能性がある場合に緊急的に使用します。性行為から72時間以内に服用することで約84%の確率で妊娠を阻止すると考えられています。
・超低用量ピル…月経困難症を治療する場合に使用します。
<Point>
低用量ピルは、毎日1錠を同じ時間に服用します。もし飲み忘れてしまうと、不正出血が起こったり避妊を目的にしている場合は避妊効果が下がったりする可能性があります。
低用量ピルと超低用量ピルは、配合されているホルモンの量が少ないため、中用量ピルよりも副作用が穏やかなのも特徴です。
オンライン診察でピル処方という選択肢
最近はオンラインでピルを処方してくれるサービスやクリニックが増えています。問診や診察で問題がなければ、オンラインでピルを処方してもらえるのでとっても便利。対面では相談しにくいこともオンラインなら伝えやすいと人気です。
定期便を利用できるサービスを選べば、薬が手元からなくなることがなく、飲み忘れを防げるので嬉しいですね。スマホ決済で配送もスピーディー、早ければ注文した翌日に手元に届きます。
メリットの多いオンライン処方ですが、大きく2つの形態があります。
- アプリやウェブサイトなどのサービスを通して医師の診察を受け、ピルを処方してもらう
- 婦人科・産婦人科系のクリニックなど、その病院が行っているオンライン診察・処方を受ける
そのほかにも、サービスによって取り扱うピルの種類や金額が異なるため、事前に比較検討しましょう。低用量ピルは毎日服用するものです。特に始めたばかりの頃は、いつでも相談可能な、安心して使えるサービスがおすすめです。
女性医師に質問!ピルに関する「Q&A」
20歳の頃から低用量ピルを飲み続けているという医師の中村葵先生に、まだピルを飲んだことがない女性の不安や質問に答えていただきました。
Q. 毎日、同じ時間にピルを飲むのは大変ですか?
A. 私自身も、患者さんの間でも、やはりぴったり同じ時間に服用するのは難しい場合も多くあります。最近は、スマホのアラーム機能やリマインド機能を使って、なるべく一定の時間に服用できるよう心がけていて、患者さんにもおすすめしています。
パートナーに「ピルの時間だよ」とお知らせしてもらう、という方もいらっしゃいましたよ。
Q. ピルを飲むと太ると聞きました。本当ですか?
A. 因果関係はないと考えられています。いくつかの研究でも、ピルを服用しても体重に変化は見られないという結果が出ています。飲み始めの副作用として、むくみを感じる方もいらっしゃいますが、数ヵ月ほど服用を続けると症状が落ち着く場合が多いです。
Q. 私は生理痛がひどいのでピルを飲んでみたいと思っています。でも、母がピルにいい印象を持っていません。どうすればいいですか?
A. まだまだ日本では、ピルといったら避妊の薬、血栓症などの副作用が強く出る薬というイメージが強いかもしれません。でも、ピルには避妊以外のメリットが多くあり、血栓症のリスクについても、きちんと予防をしていれば絶対的なリスクは低いと言えます。
低用量ピルについて正確な情報が伝わっていない現状がありますが、日本でもここ2~3年はオンライン処方が普及し、ピルへのハードルが下がりつつあります。特に若い世代でピルの服用者が増えている印象です。そうした現状を伝えながらお母さまといろいろと話し合えるとよいですね。
Q. ピルのオンライン処方を希望しています。初診の場合は病院を受診する必要がありますか?
A. 気になる症状がある場合や産婦人科を一度も受診したことがない場合は、一度病院を受診することをご提案します。オンライン診察は、ピルをすでに継続して服用している場合、どうしても薬が手元になく続けられないといった場合の選択肢にされるとよいかと思います。
オンライン診察と対面診察をうまく組み合わせて、定期的に検査なども受けつつ、ピルを服用していくことをおすすめしています。
Q. 低用量ピルを使ってきて、先生がおすすめできるメリットを教えてください。
A. ひとことで言うと、「人生を生理に振り回されることがない」というのが最大のメリットです。生理痛やPMSを少なからず感じていて、生理の度に気分が沈む方、「生理が来ない、妊娠したかも…」と悩むことの多い方には、ぜひ一度検討してみていただきたいと思います。
少しでも生理痛やPMSに悩んでいるなら、一度、お気軽にご相談ください。
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まとめ
生理痛の緩和や避妊の目的をはじめとして、ピルには女性にとってさまざまなメリットがあることが分かりました。初めてピルを使用する人は不安も多いかもしれませんが、オンライン診察ならなかなか病院に行けなくても可能なタイミングで受診することができ、対面よりも気軽に相談しやすいはず。
ピルにまつわるちょっとした不安や服用後の悩みも、オンライン診察アプリの「スマルナ」を利用して、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
- 本記事は、更新日時点での情報です。