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保活っていつから何を始めればいいの?失敗しないために知っておきたいポイント
家庭教育専門家
監修:田宮由美
小学校教諭・幼稚園教諭・保育士。日本子育て学会所属。Allabout子育てガイド。
幼児教育指導、公立幼稚園や小学校での勤務、小児病棟慰問などを通し、多方面から多くの親子に関わる。
現在は、家庭教育協会「子育ち親育ち」代表。
執筆を中心に、講演、個別指導など幅広く活動をしている。
実生活に落とし込んだ親の心に寄り添う記事に定評がある。
著書に「子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方」株式会社KADOKAWA出版、「比べない子育て」1万年堂出版。
育休明け、会社に復職する際に、日中子どもを預ける保育園。その保育園に入るためには「保活」が必要になります。しかし、保活とは一体どのようなものなのでしょうか、またどうやって始めれば良いのでしょうか。保活で知っておくべきポイントを詳しく解説していきます。
- INDEX
保活とは?
保活とは、「子どもを保育園に入れるために、保護者が行う活動」を指します。保活が必要となる保育園には認可、認可外(一部、認証)があり、特に認可保育園の入園に向けた保活が複雑です。そのため、この記事では認可保育園への入園準備としての保活をメインに取り上げます。
保育に関係する施設・事業を表にまとめてみました。
表内の認可保育施設に書かれた「認定こども園」を保育園のように利用する場合、保活が必要になります。また認可外保育施設の枠外に書かれた「一時預かり事業」などは一時的な保育サービスで、後ほど認可保育園への入園申し込みの際にある審査基準に関係するものなので、覚えておいてください。
認可保育園を希望する場合、入園するまでには情報集めから始まり、園見学や「保育の必要性の認定」の申し込みなどの手続きを進めなければいけません。各活動については後ほど詳しく解説しますが、保育の認定が下りない、もしくは認可保育園の入園選考に落ちた場合は、認可外・認証保育園への入園の検討が必要になります。
なぜ保活が必要?
厚生労働省が公表した「保育所等関連状況取りまとめ(2022年4月1日(金)時点)」によると、保育園などを利用する人数は273万人と、前年よりも1万2,000人減少しています。一方で、保育園等施設・サービスは増え、利用可能な定員数は全国総計で304万人(前年比2万7,000人増加)とあり、数字上は定員数に余裕があるように見えます。
しかし、実際には施設が多くて利用者が少ない地域、利用希望者が多いのに施設が少ない地域といったように地域差があるため、待機児童数は全国で2,944人になります。また、この数字には、希望する保育園の内定が得られず、別の園に通いながら保活を継続する「潜在的待機児童」は含まれていません。実際の待機児童数はもっと多いと考えてよいでしょう。
(出典)「保育所等関連状況取りまとめ(2022年4月1日(金)時点)」(厚生労働省)
- 別ウインドウで「厚生労働省」のPDFを開きます。
厚生労働省は待機児童解消をするべく「新子育て安心プラン」で保育の受け皿を増やしており、徐々に待機児童は減ってきていますが、入園する年齢や地域によっては、まだ第一希望への入園はハードルが高く感じるかもしれません。そのため、出産後も仕事を続けたいと考える保護者は、いち早く保活を始めたほうが安心といえます。
保活って何をすればよい?
保活は、何をすればよいのでしょうか?ステップを見ていきましょう。
1.情報収集
まずは、保育園の種類や園の情報、選考基準や申込期間などを調べましょう。
2.見学
実際に園に見学に行きましょう。現実的に通うのに負担がないか、園の理念や実際の雰囲気などを確認しましょう。
3.保育園選定
第一希望だけではなく、複数候補を出しておきましょう。
4.点数(ポイント)計算・計画
選考基準となるポイントの計算をしてみましょう。自治体によって内定がとれる可能性の高い点数ラインがあるので、役所に相談に行くのも良いでしょう。
5.申し込み
必要な資料を揃えて、申し込みをしましょう。提出書類の中には勤務先に作成してもらうものもあるので、余裕をもって準備をしましょう。
保活で押さえておくべきポイント
保活を進めていくうえで、押さえておくべきポイントが3つあります。まずは各ポイントの概要を理解しましょう。
保育園の種類と保育認定
保育園には認可と認可外がありますが、一般的にまずは認可保育園から入園する施設を探します。しかし、認可保育園を利用するには「保育の必要性の認定」を受けなければいけません。
スケジュール確認
住んでいる地域によって認可保育園の申し込み時期が異なるので、スケジュールを確認しましょう。また出産前は身重で、出産後は赤ちゃんを抱いての活動になるので、園の見学などはスケジュールに余裕をもって、計画的に進めることが大切です。
自治体の選考基準と点数
認可保育園には定員数があるため、入園希望者が多いと利用調整をしなければいけません。そのため入園を申し込むと、各自治体が独自に定める審査基準(選考基準)に基づいて、選考審査が行われます。審査では、保護者の状況などに応じて点数をつけ、その合計値を算出します。この点数の高い家庭ほど、より保育が必要と判断され、優先的に希望する保育園が割り当てられるしくみとなっています。
保育園の「認可」と「認可外(無認可)」の違い
いわゆる保育園は通称で、法令上の正式名称は「保育所」です。大きく分けると「認可」と「認可外(無認可)」の2種類があり、特徴と入園申し込み方法が異なります。
認可保育園
施設の広さ、職員数、給食設備、衛生管理など、国が定めた認可基準を満たし、都道府県知事に認可された施設を指します。地方自治体が運営している公立と、民間が運営している私立があります。いずれも国や各自治体から補助金が出ているため、保育料が比較的安いことが多く、住んでいる地域の自治体に入園申し込みを行います。
なお、世帯年収によって保育料は変わります。また、世帯年収によっては認可外保育園の方が保育料が安くなる場合もあります。
認定こども園
認定こども園も認可保育園のひとつなので、住んでいる地域の自治体に入園申し込みを行ないます。認定こども園は、教育と保育どちらも行う施設で、幼稚園と保育所両方の良さをあわせ持っています。
認可外(無認可)保育園
自治体が定める基準を満たしていない民間の保育園ですが、児童福祉法などに基づき、適切な運営・保育内容であるか、地方自治体が市区町村と協力し、施設へ立ち入って調査をしています。
また一部の施設では、国が定めた認可基準を満たしていても、保育理念などから認可外にしている保育園もあります。園によっては英語教育などや保育時間の延長などの保護者のニーズに応じた取り組みを行っているため、保育料も認可保育園より比較的高額です。
しかし、認可外保育園に通う児童に対する補助金がある地域もあるため、自治体の公式サイトで確認しましょう。各園が独自に園児募集を行っているため、入園申し込みは保育園に対して直接行います。
認証保育所(認証保育園)
東京都では「認証保育所」制度を独自に設けています。国の定める認可保育園の設置基準は、大都市では定員数や敷地面積など実現が容易ではない要件が含まれていますが、大都市こそ待機児童の問題が深刻化しています。
そのため東京都は基準を緩和したうえで、共働きやひとり親家庭などの利便性を考慮して、認証保育所制度を独自に設けました。区分としては認可外保育施設に入りますが、料金設定に一部上限額を設け、提供するサービス内容を示す「認証書」や基準に適合していることを示す「適合証」の掲示を義務付けるなど、認証保育所ならではの決まりごとがあります。入園申し込み方法は、認可外と同じく保育所への直接申し込みとなります。
東京都以外でも、同様の制度を設けている自治体もあるので、お住まいの自治体に問い合わせてみても良いかもしれません。
保育の必要性の認定について
認可保育園以外にも、認定こども園の保育部分、小規模保育、家庭的保育、認可の事業所内保育などの認可施設に入りたい場合は、「保育の必要性の認定」を受けて、認定区分の2号・3号を取得しなければいけません。「保育の必要性の認定」は、自治体が必要に応じた保育・教育サービスを提供していくために、保育の必要性や必要量を判定するための制度です。
保護者の就労形態、妊娠・出産、疾病、親族の介護状況や、保育の必要な時間などから判定して、1号、2号、3号のいずれかに区分し、利用できる施設と利用時間を決定します。
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対象児童 | 利用施設 | |
---|---|---|
1号認定 | 保育を必要としない満3歳以上 | 幼稚園や認定こども園 |
2号認定 | 保育の必要性が認められた3歳以上 | 認可保育園や認定こども園 |
3号認定 | 保育の必要性が認められた3歳未満 | 認可保育園や認定こども園 |
認可外保育園を利用する際は認定を受ける必要はありませんが、「幼児教育・保育の無償化」制度を利用する際は認定を受けなければいけません。
「幼児教育・保育の無償化」についてはこちらをご参照ください。
また、保育の必要性の認定には、1日の最大利用時間が11時間の「保育標準時間」、8時間の「保育短時間」という2つの保育時間区分があります。
保護者の就労時間が、約月120時間以上であれば「保育標準時間」(フルタイム就労を想定)、120時間未満であれば「保育短時間」(パートタイム就労を想定)の認定を受けます。「保育短時間」の場合、若干保育料が安くなりますが、認定を受けた時間を超えて利用すると延長料金がかかるので、状況によっては、保育標準時間よりも利用料が高くなる場合があります。
入園できる保育園の地域について
中には住んでいる地域よりも勤務先付近など他地域の保育園に預けるほうが都合の良い人もいるのではないでしょうか。他地域の希望する保育園に定員に空きがあれば申し込みもできますが、原則としてその地域に住んでいる家庭が優先されます。
住んでいる地域外の認可保育園を希望する場合でも、住んでいる地域に入園申し込みをします。入園が決まった場合は同じく住んでいる地域の自治体の基準で保育料が計算されます。認可外保育園の場合は施設に直接申し込みをしますが、入園の条件は各施設によって異なるため都度確認しましょう。
保活のスケジュール・流れ
保活のスケジュールと流れは以下のようになります。大事なのは、認可保育園だけでなく、地域の認可外保育園を調べ、見学・申し込みも同時進行で行うことです。認可保育園に限って保活を進めていくと、審査から漏れた場合、復職時に子どもの預け先がないという可能性もあります。そのため、認可外保育園も視野に入れておくと安心でしょう。
・産前~出産まで
まずは自治体の入園申し込み時期や、地域の保育園に関する情報集めを出産前に済ませておきましょう。入園申し込みに必要な書類の中には、勤務先に依頼して記入してもらう就労証明書があるので、早めの準備がおすすめです。地域の認可保育園は自治体の公式サイトに一覧で掲載されているので、復職後の生活をイメージしながら、自宅から通園可能な範囲の保育園を選びます。各保育園の公式サイトからも園の様子や情報を手に入れることができるので参考にして、見学リストに加えましょう。
リストアップした認可保育園、認可外保育園に事前予約をしたうえで、見学に向かいます。認可外保育園で気になるところがあったら、募集期日までに応募しても良いでしょう。
・10月~12月
ほとんどの自治体では、認可保育園の翌年度4月入園の申し込みが毎年10月から11月に本格的に始まります。各自治体で申し込み開始時期になったら、所定の申込書に入園を希望する認可保育園を記入し、申し込みましょう。保育の必要性の認定や、利用調整のための就労証明書など必要な書類の準備もぬかりなく。
・2月以降
一般的に次の年の2月頃に選考結果の通知が届きます。ここで選考に落ちた場合でも、3月頃に2次募集があるのでめげずに頑張りましょう。また、4月以外の途中入園を希望する場合は、入園希望月の前月頃まで申し込みを受け付けていますが、4月の時点でほぼ満員の状態なので、狭き門といえます。1歳児クラスへの編入も、0歳児クラスから進級する子どもで埋まっているため、新たな入園募集枠はほんの数名ということもあります。復職の時期を決めている場合は、お住まいの地域の1歳から2歳の受け入れ状況を早めに情報収集しておくとよいでしょう。
また、この保活スケジュールは6月生まれの子どもの場合です。生まれ月によっては、出産間際に申し込み、あるいは出産直後に申し込みという状況もあるでしょう。役所への申し込みはご自身ではなく、配偶者に行ってもらう事も可能なので、調整しておくと良いかもしれません。
1月~3月生まれの場合は、出産前に入園申し込みも完了しなければいけませんが、自治体によっては出産後でないと申し込みができないところもあります。原則認可保育園は生後57日以降であれば預かりはできますが、月齢を制限しているところもあります。そうなると、早生まれの子を0歳から預けたい場合は、最初に認可外保育施設などに預けて、1歳児クラスから認可保育園の入園を申し込む案も検討しなければいけません。
保育園入園の審査基準は?
認可保育園への入園申し込み後、自治体では認可保育園の利用調整をするために、自治体独自で定めた基準をもとに選考審査を行います。審査方法は、保護者の就労状況などの基本的な状況を「基準指数」に、家庭の事情などを「調整指数」として点数化し、その合計値を出すのが一般的です。
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基準指数 | 調整指数 | |
---|---|---|
概要 | 保護者の基本的な状況を点数化した指数。「基本指数」ともいう | 家庭の事情を配慮して点数化した 指数 |
項目例 | 保護者の就労状況・就労時間 介護・看護の状況 保護者の健康状態 ひとり親 など |
両親以外に預けられる身内の有無 兄弟の保育状況 祖父母や親族との同居有無 単身赴任など保護者の別居 認可外保育園の利用 特別支援を必要とする障がい児 など |
この合計値は「選考指数」、「利用指数」など自治体によって呼び方がバラバラです。いずれにせよ、合計値が高い家庭ほど、より保育を必要としていると判断され、優先的に希望する保育園が割り当てられます。同じ点数の家庭が並んだ場合は、自治体の居住年数や、過去の入園辞退など、各自治体が独自に設けた「優先順位」の基準で判断されることが多く、優先度の高い家庭から入園できます。
そこで気になるのが審査基準ですが、自治体によって配点ルールは異なります。家庭の持ち点がいくつになるのかは、自治体の公式サイトで調べてください。また、「調整指数」は、社会情勢の影響を受けやすく、保護者の声を受けて内容を見直すことが多いため、基準が少しずつ変化しています。都度確認しておくと良いでしょう。
保活の「点数」の計算方法と加点ポイント
一般的に、認可保育園の選考における指数の計算方法は、「選考指数=父親の基本指数+母親の基本指数+調整指数」です。しかしどのように計算するべきなのか、何点がボーダーラインなのか、また点数が足りない場合はどのような点で加点になるのか、初見だとわかりません。
自治体によって配点ルールが異なるため、今回は参考として東京都中央区の利用調整基準を例に、計算方法などを解説していきます。
中央区では「中央区利用調整基準表」に基づき、世帯ごとの「基本指数」に、家庭の事情がある場合は「調整指数」を加算します。そして年齢別クラスごとに、その合計値が高い順番に並べられていき、同一指数の場合は、「優先順位」に基づいて順位が決定されていきます。
- 基準指数+調整指数が多い世帯優先
- 同一指数の場合、区が定める優先順位の内容に伴い、優先順位が決まる
東京都中央区に在住している場合で、すべて第一子の場合
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家庭A | 点数 | 家庭B | 点数 | 家庭C | 点数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
父親の 基準指数 |
月20日以上、1日あたり8時間以上の就労を常態 | 20 | 月20日以上、1日あたり8時間以上の就労を常態 | 20 | ||
母親の 基準指数 |
月20日以上、1日あたり8時間以上の就労を常態 | 20 | 月20日以上、4時間以上6時間未満の就労を常態 | 18 | 月16日以上、1日あたり8時間以上の就労を常態 | 17 |
基準指数 | ひとり親家庭 | 20 | ||||
調整指数 | ひとり親家庭 | 5 | ||||
合計 | 40 | 38 | 42 | |||
在住期間 | 200日 | 200日 | 100日 |
基本指数の最高点数は1人あたり20点で、これは「居宅内外の労働で、月20日以上、1日あたり8時間以上の就労を常態」、もしくは「ひとり親家庭」のどちらかの状態であれば取得できます。つまり夫婦でフルタイム勤務であれば40点取得できますが、母親は育休明けすぐは短時間勤務制度などを利用することが多いと思われます。すると、「1日4時間以上6時間未満の就労を常態」は18点のため、基本指数が2点下がり、選考の順位もその分下がってしまいます。
この3つの家庭が同じ園を希望した場合、
優先順位は、①家庭C ②家庭A ③家庭B となります。
加点のポイント
上記でも説明したとおり、加点のポイントは、いくつかあります。
1. 就労時間で加点
時短勤務をせず、フルタイム復帰をすると、基準指数の加点のポイントとなります。
2. 調整指数で加点
認可外保育施設などに預けて入園待機をすると、「調整指数」が加算される自治体があります。中央区では、居宅訪問型保育事業(待機児童向け)、期間限定型保育事業、地域型保育事業所(家庭的保育事業以外)の保育施設、認証保育所、企業主導型保育事業所、無認可保育施設などに預けている場合は、1点から3点加算されます。また、兄弟姉妹がすでに通っている認可保育園への入園を希望する場合は3点、兄弟姉妹ともに入園を希望する場合は1点加算されます。
同一点数で並んだ場合に考慮される「優先順位」について中央区では、
- 保護者が認可保育施設で保育に従事する場合
- 小学生以下の子どもの人数が多い世帯
- 中央区継続在住期間が長い世帯
などの項目が挙げられています。
<注意点>
点数は自己申告ではなく、入園申込書類をもとに自治体側で算出されます。そのため自分で算出した点数が、実際の選考で用いられる点数とは限りません。資料をもとに算出したら、自治体の役所の担当者に確認して答え合わせをするのもよいでしょう。もし想定よりも低い点数だった場合も、その場で本来加点できるのに漏れているポイントがないか確認もできます。
まとめ
妊娠中や出産後の状況次第で保活のスタートダッシュが遅れてしまっても、焦らずに子どもの状況を確認しながら保活を進めましょう。一番大切なのは、子どもを安心して預けられる施設を見つけることです。もしかしたら認可ではなく、認可外保育園で理想な環境を見つけることができるかもしれません。
どんな風に育ってほしいか、どんなところなら安心して預けられるかなど、家族と話し合いながら保育園選考ポイントを考えて、優先順位をつけて見学時にチェックしましょう。また、認可外に先に申し込み、認可保育園の入園申し込みが通った際は速やかに判断して先方にお断りを入れるのがマナーです。
保活は大変ですが、愛する子どものためにもうひと頑張りです!
- 本記事は、公開日時点での情報です。