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女性活躍推進法とはどんな法律なの?企業の取り組み事例を交えて解説します

女性活躍推進法とはどんな法律なの?企業の取り組み事例を交えて解説します

三藤桂子

監修:三藤桂子

社会保険労務士・三藤FP社会保険労務士事務所

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルとあらゆる立場を経験し、辛い過去を乗り越え、会社員の時、年金のしくみに興味を持ち資格を取得。FPと社会保険労務士として開業するまでに至る。現在、FPと社会保険労務士の二刀流を強みに、法人、個人の労務、年金などの相談業務、労務・年金(マネー)・終活セミナー、執筆など、幅広く行う。常に自身の経験を活かし、丁寧な対応を心がけ活動している。本名、三角桂子。

みなさんは、“活躍する女性”と聞くとどのような姿を想像しますか。子どもを育てながら企業でキャリアを築く女性。社会のために自身の能力を発揮する女性。チームを率いて一大プロジェクトに挑む女性。

そんな風に、積極的に働きたいと考える女性がより生き生きと仕事ができるように支援する法律、女性活躍推進法があります。どのような法律で、具体的にどのように企業が実践しているのか、詳しく解説していきます。

INDEX

女性活躍推進法とは?

女性活躍推進法とは?

女性活躍推進法の正式名称、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」は2015年8月28日(金)に国会で成立、2016年4月に全面施行されました。これは、働きたい女性の個性と能力を発揮できる環境づくりのために、国、地方公共団体、民間企業などの責務を明らかにした法律です。

この法律で特徴的なことは、働く女性が活躍するための環境づくりを推進していく中で、企業側に目標や実際の活躍状況を報告する義務を課している点です。2020年12月現在、一般事業主行動計画の策定・届け出など義務の対象は、常時雇用する労働者(正社員だけでなく1年以上継続して雇用されているパートや契約社員なども含む)が301人以上の大きな企業としています。国が先導し、地方自治体、企業が一丸となって、女性活躍を推し進める一大プロジェクトといえるでしょう。

女性活躍推進法が成立した背景と目的

女性活躍推進法が成立した背景と目的

女性活躍推進法が提案された背景には、将来懸念される日本の労働力不足の問題があります。労働の主力である15歳から64歳までの生産年齢人口は、1995年の8,716万人をピークに減少に転じ、2020年5月には7,471万人と過去最低を更新しました。そんな状況下で、少子高齢化、労働力不足の問題解決策として、女性や高齢者、外国人といった多様な人材の確保が注目されたのです。

女性の就業率は年々上昇してきていますが、未だ働く女性にかかる家庭での負荷は大きいといえます。家庭のマネジメントは女性に頼ることが多く、依然として結婚、出産・育児、介護・看護など、家庭の理由によって離職する女性が多いのが現状です。育休明けに再就職を求めても家庭との両立のために労働時間が制限されるため、やむを得ず非正規雇用者となる場合もあり、女性の活躍を阻む一因として捉えられています。

総務省「平成30年 労働力調査」によると、日本企業において、管理職につく女性の割合は全体の約15%で、35~40%を推移するヨーロッパ諸国と比べるとまだまだ低い状況です。

女性を労働力として受け入れるために、各企業の体制を見直すきっかけとして生まれたのが女性活躍推進法です。法律の基本原則として以下を明言しており、女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会の実現を目指しています。

女性活躍推進方の基本原則

具体的な企業の実施義務内容は?

では具体的に国が企業に課した義務内容とはどういうものなのでしょうか。企業側が取り組むべき内容は、主に以下の4つです。

企業の実施義務内容

(1)状況把握・課題分析

企業は、自社の女性の活躍状況を把握・分析して、改善すべき課題を見つけます。厚生労働省は企業が把握すべき必要最低限の項目として「基礎項目」、さらに深く課題分析できるように選択項目を設定しました。その基礎項目とは、女性の採用比率、継続勤務年数の男女差、各月の労働時間の状況(残業時間など)、女性管理職比率の4つです。

(2)一般事業主行動計画策定と届出

(1)の分析を踏まえて、企業は2025年度までの期間で、女性活躍推進のための一般事業主行動計画(以下、行動計画)を策定します。一度決めたら終わりではなく、計画期間を2年から5年ごとに区切って、定期的に進捗具合を検証しながら、都度改定を行うように厚生労働省は求めています。

行動計画には「達成しようとする目標」として(1)の分析を踏まえた具体的な計画期間、数値目標、取り組み内容、取り組みの実施時期を盛り込みます。策定するうえで注意すべきは「男女雇用機会均等法」に違反していないかという点です。例えば女性管理者の割合を引き上げるために、女性のみを対象とした管理者育成研修を実施するのではなく、対象となる男女社員に対して研修を行うなど。やみくもに女性のみを優遇するのではなく、現況制度の問題点を洗いだし、男女社員どちらに対しても平等な取り組みでなければいけません。

これらの内容を「一般事業主行動計画策定・変更届」という書類に記し、都道府県労働局へ届け出をします。

(3)社内周知と社外への公表

企業は策定した行動計画をすべての労働者に周知と一般向け(外部)に公表します。その周知・公表方法も、「一般事業主行動計画策定・変更届」に明記しなければいけません。さらに一般向けには実際の女性労働者の活躍状況も公表します。これらは自社のホームページ、もしくは一般の人が自由に見ることができる厚生労働省運営のサイト「女性の活躍推進企業データベース」への掲載を通じて公表されます。

(4)効果測定

企業は定期的に、数値目標の進捗具合や、取り組みの実施状況を点検し、社内で評価することを厚生労働省は薦めています。(3)の女性従業員の活躍状況公表は、進捗状況や目標達成を伝える場として活用されています。

そして進捗状況から優良と判断された企業は、都道府県労働局への申請で厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)を受けることができます。このマークを掲げる企業は、女性が活躍できる職場という証明になるため、就活中の学生や転職希望者は検討材料の1つになるでしょう。

女性活躍推進法の改正内容とは?

女性活躍推進法の改正内容とは?

2016年の全面施行から3年後、2019年5月29日(水)に女性活躍推進法の一部改正が成立し、同年6月5日(水)に公布されました。改正内容はこちらです。

改正内容

改正内容は、各取り組みを強化したような印象です。順にどのような内容に変更になったのか解説していきます。

いつから、どのように改正された?

一般事業主行動計画において数値目標の設定方法を変更

2020年4月1日(水)以降、常時雇用する労働者数が301人以上の企業を対象に一般事業主行動計画で掲げる「達成しようとする目標」を定める材料として、数値の項目を増やしました。項目は、「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」、「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の2つの新区分にカテゴライズされていて、当初定めた基礎項目もこの区分内に組み込まれています。

法改正前は全項目から1つ以上の項目を定めることが要件でしたが、法改正後、企業は、2つの区分それぞれから1つ以上の項目を選択して、数値目標を定めることになります。参考までに、下記の表をご覧ください。企業は2つの側面から取り組むことになります。

①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備

★は基礎項目。
出典)厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ「改正の概要」より抜粋

これらの項目は現状把握と分析に“効果的”とされ、各項目を算出するための語句の定義、そして計算方法も発表しています。

女性の活躍推進に関する情報公表方法を変更

情報公表においても強化がされました。数値目標と同じように、①と②の2つの区分に組み込まれた項目を各区分から1項目以上、計2項目以上の情報を公表することが義務づけられています。行動計画と同じく、常時雇用する労働者数301人以上の企業が対象で、2020年6月1日(月)より施行されています。こちらも参考に下記の表をご覧ください。

女性の活躍推進に関する情報公表方法を変更

出典)厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ 「改正の概要」より抜粋

プラチナえるぼし認定を創設

一般事業主行動計画の進捗状況から優良と判断された企業は、都道府県労働局への申請で、厚生労働大臣より「えるぼし認定」を受けることができます。そして2020年6月1日(月)施行の改正内容では、従来の「えるぼし認定」よりも水準の高い、「プラチナえるぼし認定」が創設されました。「プラチナえるぼし認定」は、すでにえるぼし認定された企業のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況が特に優良であるなど、一定の要件を満たした場合に認定され、一般事業主行動計画の策定・届け出が免除されます。ただし、活躍実績については「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表することが条件となっています。

一般事業主行動計画策定義務の対象を拡大

2020年12月現在、労働者101名以上300人以下の企業は、一般事業主行動計画策定・情報公表などの取り組みを努力義務としていますが、2022年4月1日(金)より義務化の対象が101人以上の企業に拡大されます。しかし101人以上300人以下の企業が義務化される取り組みは、改正以前の内容(上記①、②の項目から1項目以上を情報公表)となります。

女性活躍推進法は10年間の時限立法です。ただし、条文には2026年3月31日(火)をもって女性活躍推進法は失効するとありますが、改正法の施行後5年を経過した場合において、検討を加え、状況次第では“必要な措置を講ずる”とあるので継続の可能性もあるかもしれません。

女性活躍推進法の企業の取り組み事例

女性活躍推進法の企業の取り組み事例

各企業はそれまでの企業風土を活かして、もしくは打開するように取り組んでいます。そして成功した企業では女性が活躍するだけでなく、男性も参加する形で意識改革を実現したようです。実際の取り組み事例を解説していきます。

国際自動車株式会社

「kmタクシー」の名称で知られている国際自動車株式会社は、ハイヤー・バス・自動車整備など事業も展開しています。ハイタク(ハイヤー・タクシー)業界のほとんどが男性でしたが、徐々に増え始めた女性ドライバーが提供する細やかなサービスやホスピタリティはお客さまの満足度が高く、評判に。

女性従業員を増やすために、2014年、社内に「kmウーマンプロジェクト1000」を発足しました。プロジェクトでは、“ドライバー=男性の仕事”のイメージを払拭するために、カフェでの女性向け会社説明会や、家族に会社の様子を見てもらうオープンカンパニーを開催。社内でも各種委員会を設けて、結婚、妊娠・出産、育児など制度の周知案、制服の改善案、キャリアプラン研修の内容提案などを経営陣に持ちかけるなど、これまで男性中心だった運営体制に女性従業員が自ら改革を進めました。

その際、いずれの委員会にも男性の参加を促して、男性目線の意見も必ず取り入れたそうです。また女性従業員との仕事の進め方、コミュニケーションの取り方などを男性に研修するなどフォローも忘れていません。そのようなアクションが功を奏して、社内の雰囲気も大きく変わっていきました。

2020年12月現在、国際自動車は430人の女性従業員が在籍し、うち245人がドライバーです。タクシーだけでなく、ハイヤードライバー・路線バスのドライバーとしても活躍しています。

また、活躍している女性従業員のキャリア継続を応援するため、育児休業制度のほか、女性ドライバー・バスガイド・整備士を対象に「プレママサポートプログラム」も設けました。このプログラムでは、妊娠後、今までと同じ業務をすることが難しくなった場合、産前休業が始まるまでにグループ内の就業可能な部署へ異動し、内勤業務に就くことができます。そして、育児休業終了後は、以前の職場へ復帰し、キャリアを継続できます。国際自動車では女性が働きやすい環境を整えたことで、女性の活躍する場面が広がりました。

株式会社丸井グループ

株式会社丸井グループは2008年頃より、働き方改革をスタート。休暇制度の充実や残業撲滅といった施策のほか、女性社員の出産・育児をバックアップする支援制度を導入するなど、女性活躍を推進。しかし、当初は管理職を希望する女性は少なく、育児との両立が難しく短時間勤務制度終了の時期に合わせて辞職する女性社員は減りませんでした。

そこで2015年より、生涯を通じて働くイメージができるように、意識改革と制度づくりを両軸で進めました。早番固定式などのフルタイム勤務形態を設けるほか、営業店舗だけでなく物流、カード事業などグループ内に配置することで、就業時間の課題だけでなく、個人の能力を多方面に活かす働き方の実践に成功しました。

また、女性の活躍推進は結局、女性だけでは叶えられません。男性も積極的に育児に参加して、互いに無理なく両立しようとする意識へ変えていく必要があります。そのため、改革では男性社員の育児休暇を推奨するなど男女共に意識改革を進めてきました。

結果、10年前に行った残業撲滅施策も功を奏して、丸井グループは女性も男性も家庭と仕事を両立できる働き方を実践し、さらに『女性イキイキ指数』という7項目のKPIを掲げて達成を目指しています。管理職を目指す女性を増やすための環境づくりに向けた取り組みはいつしか、社内全体の意識改革につながったのです。

アサヒビール株式会社

子どもが小さい時期は、子育てに専念したいと考える女性は少なくありません。長い目で見ると仕事を続けたいところですが、手がかかり、子どもが母親を欲する時期はできるだけそばにいてあげたいと考える女性は多いでしょう。

アサヒビール株式会社は、子どもが満2歳になるまでの間に休業できる「育児休業制度」があり、男性も利用することができます。また、育児や看護など家庭の理由で退職した場合でも、規定の条件を満たせば再雇用認定を受けられる「ウエルカムバック制度」があります。一時は苦渋の決断で退職を選んだ従業員にとっても、罪悪感を抱えることなく、出戻りを歓迎される、ありがたい制度といえます。

そして自身のキャリアを具体的にイメージできる「世代別キャリア研修」、「キャリアデザインシート」、「ダイレクトアピール制度」などを導入しています。その結果、6割以上の既婚女性が仕事と子育てを両立しており、10年間で女性管理職の人数は5倍になりました。制度を固めて、男女差なく従業員1人ひとりのキャリアイメージを尊重しながら寄り添ってくれるため、将来への不安を抱えることなく仕事に集中できるそうです。

まとめ

まとめ

女性活躍推進法は、女性の働く意欲を実現につなげるためだけを支援する法律ではありません。女性が活躍していくために、従来の制度やルールを見直して作り直していこうとする法律です。

働き方改革が推進される中、人材、働き方は多様化しています。女性が輝き、個性と能力を発揮するための働き方もそれぞれ違うことでしょう。社会で女性の活躍を推進することは、女性・男性問わず働きやすい職場環境づくりにつながります。改めて“私が”輝き活躍するためにできることを考えてみませんか。

  • 本記事は、公開日時点での情報です。

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