QRコード決済・バーコード決済の仕組みと各サービスの特徴を徹底比較
近年、急速に広がるキャッシュレス決済の中でも、QRコードやバーコードを使用したコード決済は大きな注目を集めています。
これらのコード決済の方法について、そのしくみや支払いの方法、メリットなどを、各社のサービス内容を比較しながら解説します。
INDEX
QRコード決済・バーコード決済とは?
QRコードやバーコードを使用したキャッシュレス決済は、ひとくくりにコード決済と呼ばれています。使用されるコードは、サービスを提供する店舗側の情報や利用者側の支払い情報などに紐付けられていて、コードを通して利用金額とともに読み込むことで、決済アプリやクレジットカードから利用額が引き落とされるしくみです。
海外では存在感のあるQRコード決済・バーコード決済
コード決済に関しては、中国が世界でもトップクラスの普及率です。代表的なコード決済サービスである「Alipay(アリペイ)」の場合、日々の買い物や公共料金、保険料の支払いのほか、投資や資産運用の金融商品などもQRコードに対応していて、これさえあれば財布はいらないというほど生活に密着しています。「自分の子供や親戚の子供へのお年玉もアリペイで」というくらい、高い普及率を誇っています。
日本でのQRコード決済・バーコード決済の動向
日本では、2016年頃から各社によるコード決済サービスの運用が始まり、LINE Pay、楽天ペイ、PayPayなどが次々に参入。2019年秋から実施された「キャッシュレス・ポイント還元事業」とあいまって、着実に普及が進みました。
QRコード決済・バーコード決済の方法
コード決済の方法には、大きく2つの方法があります。
- 利用者が読み込むユーザースキャン方式
- 店舗が読み込むストアスキャン方式
ひとつは、店舗側が掲示したコードを利用者が自分のスマートフォンで読み込む「ユーザースキャン方式」。もうひとつは、利用者が自分のスマ-トフォンの画面にコードを表示させ、それを店舗側がスキャナーで読み込む「ストアスキャン方式」です。
どちらも使用する前に、決済アプリをダウンロードしておくことが必須です。
利用者が読み込むユーザースキャン方式
ユーザースキャン方式では、店舗側が掲示しているコードを、利用者が自分のスマートフォンの決済アプリで読み取ります。このコードには店舗の情報が埋め込まれており、読み取ることで支払い先が指定されます。
次に、支払い金額を入力して店舗側に確認してもらい、「支払う」「OK」などをタップすれば決済完了となります。
■ユーザースキャン方式
店舗が読み込むストアスキャン方式
ストアスキャン方式では、利用者がスマートフォンの決済アプリでコードを表示させ、店舗側がそれを読み込み、利用金額を入力して決済します。店舗側としては、読み取り用に専用のスキャナーやリーダー、スマートフォン、タブレットといった機器を用意する必要がありますが、利用者側はスマートフォンにコードを表示するだけなので手間がかかりません。
■ストアスキャン方式
QRコード決済・バーコード決済のしくみ
店頭で支払いをした後の最終的な決済は、決済アプリのチャージ分から支払われる場合と、紐付けたクレジットカードやデビットカード、銀行口座で決済する場合の3通りがあります。
- 決済アプリにチャージした残額から支払う場合(前払い)
- クレジットカードで支払う場合(後払い)
- 決済アプリに登録した銀行口座から支払う場合(即時払い)
決済アプリにチャージした残額から支払う場合(前払い)
あらかじめ銀行口座やクレジットカード、ATMなどから決済アプリの自分の口座にお金をチャージしておけば、そこから決済の度に支払うことができます。これは、電子マネーと同様のしくみと考えればよいでしょう。もちろん、残額が不足していると決済はできません。常に、チャージしてある残高に気を付けておく必要があるでしょう。
クレジットカードで支払う場合(後払い)
決済アプリにクレジットカードの情報を入力しておけば、これらのカードを経由して支払うことができます。QRコードやバーコードを使ってはいるものの、本質的にはカード決済と同じと考えていいでしょう。
決済アプリに登録した銀行口座から支払う場合(即時払い)
引き落とし先の銀行口座をあらかじめ決済アプリに連携しておけば、利用金額をリアルタイムで支払うことができます。デビットカードの決済方法と同様で、事前チャージも不要です。銀行口座の残高を超える金額の支払いはできないため、残高不足には注意が必要です。
QRコード決済・バーコード決済の選び方
市場には多くのQRコード決済・バーコード決済サービスが登場しています。決済の方法やしくみはほぼ共通していますが、それぞれ少しずつサービス内容が異なるため、どれがいいのか迷ってしまうという人も多いでしょう。
続いては、QRコード決済・バーコード決済サービスを選ぶ際のポイントをご紹介します。主な支払い方法には4つあります。
- 支払い方法で選ぶ
- 機能で選ぶ
- ポイント還元率で選ぶ
- サービスやキャンペーンで選ぶ
支払い方法で選ぶ
使いすぎを防ぐには、事前チャージができる前払い型がおすすめです。しかし、チャージする手間を避けたいなら、デビットカードを紐付けられる即時払い型や、クレジットカードを紐付けられる後払い型がいいでしょう。
機能で選ぶ
仲間との飲み会や食事会、個人同士のお金のやりとりが頻繁にあるなら、割り勘機能や個人間送金機能のあるサービスが便利です。
ポイント還元率で選ぶ
コード決済サービスは、利用条件によってポイント還元を受けられることがあります。また、サービスによっては、独自発行のクレジットカードと紐付けることで、コード決済利用時のポイントと、クレジットカードのポイントのいずれも獲得できる場合もあります。
サービスやキャンペーンで選ぶ
コード決済は、利用者の拡大やポイント還元のため、各社が独自のサービスやキャンペーンを実施しています。上手に利用すれば、よりお得にコード決済を使うことができるでしょう。
おもなコード決済サービスの特徴
2023年6月時点での、おもなコード決済サービスの特徴についてまとめてみました。以下の比較表のとおり、個人間送金機能やクレジットカードとの紐付けにおいては、どのコード決済でもほぼ利用することができます。一方で、違いが見られるのは支払い方法の選択肢やポイント還元、割り勘機能の有無など。
特に、ポイント還元においては付与されるポイントや還元率がそれぞれ異なります。決済サービスの中には、ポイントプログラムのあるクレジットカードと紐付けることで、カードのポイントも獲得できる二重取りが可能なものもあります。ポイント還元率がアップするといった、期間限定のキャンペーンなどについては、各種サイトで日頃からチェックしましょう。
■おもなコード決済サービスの特徴
下の表は、横にスライドしてご覧ください。
サービス名 | 支払い方法 | ポイント 還元 |
個人間 送金機能 |
割り勘 機能 |
クレジットカードとの紐付け | |
---|---|---|---|---|---|---|
ネ ッ ト 系 |
楽天ペイ | 事前チャージ 即時ポイント払い 後払い |
〇 | 〇 ※1 |
× | 〇 |
LINE Pay | 事前チャージ 後払い |
〇 | 〇 | × | 〇 ※2 |
|
PayPay | 事前チャージ 後払い |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
メルペイ | 事前チャージ 後払い |
× ※4 |
〇 | × | 〇 ※3 |
|
通 信 系 |
d払い | 事前チャージ 即時チャージ 後払い |
〇 | 〇 | × | 〇 |
au PAY | 事前チャージ 即時チャージ 後払い |
〇 | 〇 ※3 |
× | 〇 |
- 決済方法や商品によってはポイント還元の対象とならない場合があります。
- 1 楽天キャッシュの送付
- 2 「Visa LINE Payクレジットカード」「VisaLINE Payクレジットカード(P+)」および三井住友カードが発行するVisaクレジットカード(ANAカードを除く)のみ
- 3 一定の条件あり
- 4 キャンペーンにて実施の場合あり
楽天ペイ
楽天会員であれば、IDとパスワードの登録のみで楽天ペイを使い始めることができます。また、クレジットカードを紐付けておけば、楽天ペイ利用分のほかにクレジットカード利用分のポイントも獲得できますので、いわゆる二重取りができます。
- 楽天会員には使い勝手の良いサービス
- 楽天カードから楽天キャッシュへのチャージ、楽天キャッシュでの支払いで最大2.5%還元
LINE Pay
LINE Pay株式会社が提供するモバイル送金・決済サービスです。残高を銀行口座振替やコンビニなどで事前チャージし、コード支払い、プリペイドカードでの支払いが可能。LINE Payのオンライン支払いなどで利用できる特典クーポンも人気です。
また、「Visa LINE Payクレジットカード」を発行してLINE Payに登録することで、事前チャージ不要の「チャージ&ペイ」機能が利用できます。さらに、2022年11月に提供開始した「Visa LINE Payクレジットカード(P+)」は、「チャージ&ペイ」機能のコード支払いの利用で、高還元率のポイントが付与されます。
- 個人間送金など、コミュニケーションアプリとしてのつながりを活かした機能を搭載
- チャージ&ペイでLINEポイントが5%還元(条件あり、一部対象とはなりません)
PayPay
ソフトバンクとヤフーの共同出資による決済サービスです。取扱店舗と利用者数が急速に拡大されました。利用額と支払い方法に応じて、ポイント還元率が3段階に変化します。
- 大手チェーン店だけでなく、個人商店でも利用できるところが多い
- 電気やガス、水道といった公共料金の支払いも可能
メルペイ
フリマアプリ「メルカリ」のコード決済サービスです。決済方法はQRコードだけでなく、ドコモの「iD」にも対応しています。メルカリでの売上でポイントを購入し、買い物に使うことができます。
- iDが使えるため、幅広い店舗で利用可能
- メルカリでの売上金がない場合でも、銀行口座からのチャージで利用できる
d払い
NTTドコモによるスマホ決済サービスです。ドコモユーザーであれば、利用額は電話料金と合算して後払いできるため、クレジットカードを持っていない人でも使えるのが大きなメリットです。ポイントプログラムのあるクレジットカードと紐付けることで、カードのポイントとの二重取りもできます。
- クレジットカードを持っていない人でも、キャッシュレス決済ができる
- アプリのウォレット機能を使って、支払いだけでなくチャージや送金、クーポン利用ができる
au PAY
KDDIが提供するスマホ決済サービスですが、auのユーザーでなくても利用することができます。現金、クレジットカードのほか、Pontaポイントや通信料金との合算請求など、複数のチャージ手段が用意されています。ポイントプログラムのあるクレジットカードと紐付けたうえでチャージし、決済に利用すればカードのポイントとの二重取りができます。
- Ponta加盟店でのポイント還元率が高い
- チャージ手段が豊富なので、状況に合わせて選べる
QRコード決済・バーコード決済のメリット
QRコード決済やバーコード決済は、簡単に利用登録できます。アプリによっては細かな機能に差があり、できることとできないことはありますが、現金払いにはない多くの利便性を備えています。
ここでは改めて、コード決済のメリットについて確認してみましょう。
現金がいらない
キャッシュレス決済の全体にもいえることですが、コード決済の最大の利点は現金がいらないという点です。チャージしたり、クレジットカードやデビットカードを登録したりすることで、手持ちの現金を気にすることなく、買い物や飲食を楽しめます。会計の際に財布の小銭を探る必要もありませんし、釣り銭の小銭で財布が膨れることもありません。
個人間送金ができる
複数人での食事会などで支払いをする場合、現金の場合はお釣りを用意したり、お金を回収したりする手間がかかります。しかし、「割り勘」機能が搭載されたアプリなら、1人あたりの金額をすぐに弾き出すことができ、支払いもスマートなので便利です。
高いポイント還元率
コード決済の業界では、各社が高いポイント還元をウリに、ユーザーの獲得に励んでいます。たとえ0.5%程度の違いであっても、長く使えばその違いは歴然。どの決済サービスが良いのか決めかねているなら、ポイント還元率の高さで選ぶというのも賢い選択でしょう。
各種のキャンペーンが頻繁に行われる
コード決済の場合、各種のポイントアップキャンペーンが盛んに行われ、時には15%や20%、さらにそれ以上の還元率が設定されることもあります。
また、チャージについても期間限定の高還元サービスが行われていますから、いつどこで、どんなキャンペーンが開催されるのか、チェックしておくといいでしょう。
見た目以上に高度なセキュリティ要件
コード決済は、その手軽さとは裏腹に、高度な暗号化技術や国際的なカード情報保護基準である「PCI DSS」への準拠など、見た目の手軽さ以上に、高度なセキュリティの要件が課せられています。
ただし、どんなに安全性が高くても、不正利用の可能性はゼロではないのも事実です。ID・パスワードの使い回しをしない、設定するID・パスワードの桁数を増やすなど、十分な対策を忘れないようにしましょう。
店舗側にもメリットが多い
コード決済は、店舗側にもメリットがあります。ユーザースキャン方式であれば店舗側の手間が少なく、レジやスキャナーなども必要ありません。また、現金を扱わなくて済みますから、店主が1人で切り盛りする、小規模な飲食店や屋台などにはぴったりの決済方法です。
QRコード決済とバーコード決済はますます普及
QRコード決済やバーコード決済は、キャッシュレス決済の中でも、まだまだ普及が見込まれています。
主要な決済会社が参加する規格統一・JPQRは、利用者側にとっても店舗側にとっても利便性が高いため、さらに拡大していくことでしょう。
JPQRやマイナポイントなどのコード決済をめぐる動き
近年、コード決済で2つの動きが高まりました。ひとつは、共通規格「JPQR」の普及です。
JPQRとは、これまで決済会社ごとに異なっていたQRコードの統一規格のこと。JPQRを使えばひとつのQRコードで複数の決済サービスを使うことができ、利用者にも店舗にも、より便利なものとなりました。
JPQRは、2020年6月より総務省の主導(※)で全国展開され、飲食店や小売店、一部の自治体窓口など、幅広い業種で導入されています。2023年6月現在で、楽天ペイ、d払い、au PAYをはじめとする主要なコード決済が利用できます。
- 現在は、一般社団法人キャッシュレス推進協議会に運営を移管。
もうひとつは、「マイナポイント事業」です。マイナンバー(マイキーID)とキャッシュレス決済を紐付けて利用することで、最大2万円分(※)のマイナポイントが還元される制度です(交付申請期限は終了。マイナポイントの申し込み期限は、2023年9月末まで)。
- マイナンバーカードを新規取得し、チャージや利用で最大5,000円分、健康保険証として利用登録すると7,500円分、公金受取口座を登録すると7,500円分。
政府は2025年6月までに、キャッシュレス決済比率を4割程度に増やす目標を掲げています。JPQRやマイナポイント事業が後押しとなり、コード決済を含むキャッシュレス決済の普及は今後もさらに進められていくことでしょう。
- QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
- 「LINE」「LINE Pay」はLINEヤフー株式会社の商標または登録商標です。
- 「楽天ペイ(アプリ決済)」は、楽天株式会社の登録商標です。
- PayPayは、Z ホールディングス株式会社の登録商標または商標です。
- 「メルカリ」「メルペイ」は、株式会社メルカリの登録商標です。
- 「d払い」「iD」は株式会社NTTドコモの登録商標です。
- 「au PAY」は、KDDI株式会社の登録商標です。
- 「Ponta」は、株式会社ロイヤリティ マーケティングの登録商標です。
- 本記事は、公開日時点での情報です。
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