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現金主義のインドがキャッシュレス先進国に転身した理由と2つの施策

    現金主義のインドがキャッシュレス先進国に転身した理由と2つの施策

    インドは、キャッシュレス先進国となっていますが、その理由は政府がキャッシュレス化に舵を切ったことにあります。
    なぜ、インドはキャッシュレス化を促進したのか、その理由とともに、キャッシュレス化までの経緯を解説します。

    INDEX

      インドがキャッシュレス化を目指した理由

      インドの年間の決済金額に対するキャッシュレス決済の比率は、2016年の時点で35.1%。日本は19.8%なので、インドははるかに高い比率となっています。インドも日本と同じく現金主義の強い国だったのですが、ここまでキャッシュレスが普及したのは、政府の積極的な施策があったからです。
      そこには、インドなりの事情があり、政府がキャッシュレス化に舵を切った理由は、「現金管理コストの圧縮」と「不正利用への対策」「脱税への対策」だといわれています。

      • キャッシュレス決済の比率は、BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」、WorldBank「World Development Indicators」より算出

      現金管理コストの圧縮

      国土が広大なインドにおいて通貨を流通させるには、たいへんなコストがかかります。銀行を作り、ATMを稼働させて管理することを全国津々浦々で行うわけです。
      現金の輸送と管理は、広い国土を持つ国では大きな負担となってしまいます。そこで、キャッシュレス決済が普及すれば、現金の管理コストが発生しないことになりますので、効率化につながります。

      不正利用への対策

      現金は、匿名性が高くその動きを追跡することは非常に困難です。そのため、不正な蓄財、犯罪組織・テロ組織によるマネーロンダリングなどに利用される可能性が常にあります。
      2017年にインド政府が実施した不正実態調査によれば、78%の企業で不正発見件数が増加しており、そのうち68%の企業が直接的な影響を受けたということが分かりました。近年、インドは経済成長スピードが速いため、組織体制や内部統制の構築が追いついていないことが、不正が増えている原因だと考えられます。
      キャッシュレス決済が浸透すれば記録が残り、また監視も可能で日時や金額が記録されるため、現金で起こりうる不正利用の防止につながります。

      脱税への対策

      脱税は、インド政府を悩ませる大きな問題でした。2016年、インド政府は直接税に関する統計データを16年ぶりに公開しましたが、それによると2012年度分で所得額を申告したのは、当時の全国民の約2.3%にすぎません。しかも、実際に所得税を納税したのは、わずか1%程度。高額所得者の多くが、正しく税金を納めていないという事実が明らかになりました。
      当時、インド政府は財政赤字の解消を政府の優先課題としていて、それには脱税を減らす必要がありました。そのため、インドでは2016年に「タックス・アムネスティ」を実施しました。

      タックス・アムネスティは、資産家が海外などに保管している「隠し財産」を正しく申告することで、本来なら課される加算税や刑事告発を免除するという制度です。この施策によって、約1兆260億円の資産が国内に回収され、約4,187億円が税収として国庫に納められたと公表されました。しかし、13億人という全国民の経済活動を追跡することは難しく、実際にはまだまだ膨大な隠し資産が眠っているといわれ、その総額は約52兆円を超える規模だとされています。
      キャッシュレス決済が浸透すれば記録が残り、また監視も可能で脱税することもできなくなります。インド政府がキャッシュレス決済の推進に動いたのは、こうした状況を打開するためでもありました。

      キャッシュレス化を促進させた2つの施策とは?

      現金に依存していた決済からキャッシュレス化に舵を切り、短期間のうちにキャッシュレス大国となったインド。その変革は、いくつもの施策の組み合わせによって成し遂げられました。
      その基礎となったのは、個人識別番号制度である「アドハー」です。そこに、「高額紙幣の廃止」が重なったことで、キャッシュレス化が進みました。

      個人識別番号制度「アドハー」

      インドでは、国民の半数近くに身分証がなく、銀行口座も開けなかった時代がありました。そこで2009年に政府が導入したのが、国民ID制度のアドハーです。2018年の時点で、すでに12億人の国民が登録済みといわれます。

      アドハーは生体認証システムを採用しており、顔、両手すべての指紋、両眼の虹彩を登録し、その情報に12桁のIDを振り分けます。日本のマイナンバーカードと同じようにアドハーカードが発行され、これをベースにしてさまざまな行政サービスや社会保障を受けることができます。
      銀行口座と紐付ければ、政府からの補助金を自分の口座に振り込んでもらうことができますし、アプリを通じてほかの口座に送金することもできます。本人確認が容易にできますから、個人の信用が必要な金融商品の取引でも重宝します。

      アドハーは、今やキャッシュレス決済だけでなく、税の徴収や福祉サービスの実施など、インドの行政になくてはならない重要なものとなっています。

      高額紙幣の廃止で銀行口座が急増

      2016年11月、ナレンドラ・モディ首相は、高額紙幣500ルピーと1,000ルピーの廃止を宣言しました(1ルピー=約1.5円、2020年2月現在)。紙幣が廃止となれば、それ以降は使うことができませんから、銀行に預けなくてはなりません。そのため、銀行口座の開設が急増し、それまで個人の自宅や会社の金庫に眠っていた大量の現金が、銀行に流れ込みました。

      同時に深刻な現金不足が起こり、その代用としてキャッシュレス決済が使われるようになったのです。
      不正蓄財をあぶり出し、ブラックマネーを排除した上で、国民からの税収を確保して必要な福祉を提供する。そうした複合的な理由から、このような極端な政策が採られたものと見られています。もちろん、混乱もあったようですが、高額紙幣の廃止によって、インドはキャッシュレス化に大きな方向転換をしました。

      インドのキャッシュレス化を促進させた2つの施策

      現在のインドのキャッシュレス状況

      インドの高額紙幣の廃止は、クレジットカードやデビットカードの普及につながりました。
      また、インドの代表的なスマホ決済サービスであるPaytmも活用されているようです。Paytmは、スマホアプリで店舗のQRコードを読み取り、あらかじめチャージしておいた残高から店舗に送金するというしくみです。少額決済に便利に使える上、電話番号によるオンライン認証ができるため、ネット通販でも使えるという利点も併せ持っています。
      現在では、Paytmのほかにも複数の企業が決済サービスを展開していて、市場は急速に拡大しているようです。

      インドの事例を学ぼう

      消費動向や経済環境、さらに元々の国民性などの違いから、日本とインドを単純に比較することはできません。インドのように、あまりに性急で強引な政策は、日本で受け入れられることは難しいでしょう。
      しかし、インドがキャッシュレス決済を推進した道筋は、日本としても大いに参考にできることがあるのではないでしょうか。

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