キャッシュレス時代のお金の教育で押さえるべき2つの軸とは?
キャッシュレス化が進む中、子どもに対するお金の教育をどのように行えばいいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「お金の教養」を身に付けるための日本最大級の総合マネースクール、ファイナンシャルアカデミーの福田祥子さんに、キャッシュレス時代を生きる子どもたちのためのお金の教育についてお話を伺いました。
INDEX
「お金との付き合い方」を教えることが大切
キャッシュレス化が広がっていく中で、子どものお金の教育はどうあるべきだとお考えですか?
福田氏:そもそもの現状として、日本はお金の教育が遅れている状況があります。例えばアメリカでは、個人や企業が子どもに対する金融教育を積極的に行っています。ところが、日本では子どもへのお金の教育を避けている傾向がありました。
親や学校の先生も金融教育を受けたことがないわけで、子どもに対してどのように教育したらいいのかわからないという状況があるんですね。さらに、お金そのものが見えなくなるキャッシュレス化が起こっていることで、子どもたちにどう教えればいいのか、大人世代が不安になっていることがあると思います。
お金って毎日使うものなのに、使い方を習う場所がないですよね。
福田氏:そうです。キャッシュレスについて、親御さんもよくわからないし、先生も教えてくれないし、お手上げ状態になってしまっているんですね。ところが、子どもたちの周りの環境は刻々と変わってきています。
電車で習い事に行ったり学校に通ったりするときは、交通系ICカードを当たり前に使いますよね。こういったカードは、オートチャージにすると無尽蔵に使えてしまいます。子どもにお金やキャッシュレスとの付き合い方を教えていきたいという需要は、非常に高まっていると感じています。
どのようにお金について教えていけばいいのでしょうか。
福田氏:昔の子どもたちは、「100円もらったら駄菓子屋さんに行って、10円のお菓子と20円のお菓子を買ったから30円使って、残りは70円」ということを当たり前にしていました。お金が減っていくという感覚を体感できているんですね。ところが、今の子どもたちは、自分でお金を持つ機会が少なかったり、欲しい物は親といっしょに買物に行って選んだりと、そもそもお金を使う経験が少なくなっています。
そこで、まずは自分でお金を使ってみる経験をさせてあげることが大切です。
キャッシュレスを教える前に、まずお金の使い方を教えるということでしょうか。
福田氏:そのとおりです。例えば、小学生に算数を教えるときも、1+2=3といった数式で見てしまうと、うまく理解しにくいですよね。まずは、1個のおはじきと2個のおはじきを見せて、足すと3個になる、というところから始めます。
キャッシュレスも同じで、お金の重みを子どもたちに感じてもらわないといけません。ですから、まずは実際のお金やお金を模したカードを使って、「使うと減る」「足りないから買えない」ということを経験させてあげます。
大切なのは、いくらでもお金が使える魔法のカードを手にする前に、しっかりとお金の本質的な部分を学んでいくことなんです。
お金を人生の味方につける
具体的に、どのようなことを教えていけばいいのでしょうか?
福田氏:お金について教えるときには、「価値観」と「計画性」の2つを軸にしています。
お金の使い方から、その人の「価値観」が見えてきます。お金は、その人を写す鏡なんですね。食事に使っているのか、趣味に使っているのか、それとも勉強に使っているのか、どういう人なのか人格も見えてきます。お金の使い方で信頼を得ることもできます。クレジットカードでも、きちんと使ってきちんと返済すれば、それだけ信用が積み重なっていきます。お金をうまく使うことで、自分の信用を見える化できます。
また、「計画性」については、目先のことだけにお金を使うのではなく、先々のことを考えてお金を管理しなければなりません。どういったものにお金を使うのか計画することと、自分が何にお金を使っているのか、振り返ることも大事になります。
小学生向け学習プログラムでも、この2つの軸について教えているのでしょうか。
福田氏:そうですね。オリジナルで開発した買物ゲームの「ハピプロ」を使って教えています。ただ買物をするのではなくて、「最初に買物の計画を立てる」「買物をするときにハピを意識する」、そして「買物の振り返りをする」ということを行っています。ハピというのは、「買物をすることで得られる幸せ」の単位です。例えば、ゲームソフトを買うとします。ゲームソフトのカードには、金額とともにハピがいくらかも記されています。
- 別ウインドウで一般社団法人 金融学習協会のサイトにリンクします。
ハピプロでは、「それ、何ハピ?」という合言葉を覚えて帰ってもらっています。お金を使うときに、少しセーブしたり、ふっと立ち止まって「これは何ハピかな?」と考えたりすることが習慣になるといいなと思います。
ハピという概念は、大人が買物するときも意識すべきかもしれませんね。
福田氏:買物をするときに、お金が増えた・減っただけではなくて、それが自分にとってどれくらいの幸せに相当するのかを考えるのは、考えておきたいですよね。そうすることで、衝動的な買物や浪費を防ぐことができます。さらに、買物の振り返りをすることで、実際に自分がどんな風にお金を使って、どのくらい幸せだったかを再確認できますよね。
ハピプロでも、何かを買ったり、売ったり、計画を立てたりすることを、子どもたちは単純に楽しみます。まずは、お金と付き合うことを楽しんで、ポジティブに向き合ってほしいですね。
キャッシュレスについての説明は、子どもたちに行っていますか?
福田氏:キャッシュレス決済を行っている会社と協力して、実際にキャッシュレスの機械を使った講座を行ったことがあります。ハピプロゲームを行った後に、キャッシュレス決済を体験してもらい、「今、数字が変わったけれど、これは数字が変わっただけではなく、さっきゲームでお金を使って減ったのと同じ。数字が変わったのは、お金が減ったという印なんだよ」ということを伝えました。
キャッシュレス決済は、本来は便利なものです。信用を形にできますし、お財布もいっぱいになりません。ただ、お金の本質的な部分をわかっていないと、何でも買える魔法のカードだと思ってしまう人が出てきてしまいます。
それは危険ですね。
福田氏:とはいえ、そもそもお金との付き合い方がわかっていない人は、キャッシュレスでなくても、お金のトラブルを起こしてしまう可能性が高い人です。キャッシュレスになると実際にお金が減っていく様子が見えないため、トラブルが起こりやすいということはあるでしょう。でも、お金は使えば減るし、お給料が入れば増える。簡単なことなんです。お金もキャッシュレスも、うまく付き合うことができれば、人生の味方にすることができます。お金の本質を知って、正しい付き合いをできるようにすることが大切です。
子どもたちにも話すのですが、お金がなかった大昔は、物々交換をしていました。でも、物は腐ってしまいます。それで、代わりに貝を使うようになりました。ところが、貝は重たいですよね。そこで生まれたのがお金です。
このように、お金はどんどん便利に進化していって、今、新しくキャッシュレス化が進んでいます。お金が形を変えていくことも知っておいてほしいと思います。
中高生に伝えたい3つの観点
ここまで小学生向けの学習プログラムをお聞きしましたが、中高生向けには何か取り組まれているのですか。
福田氏:中高生になると、誰から学ぶかが大切になってくるので、講座を開くのではなく、先生方に「自分の未来の作り方」という教育プログラムを無償提供する形で、教育への需要に対応しています。伝える内容は、「信用を高める」「価値を高める」「両面思考を身に付ける」という3つです。
信用を高めるというのは、先程から出てきているワードですが、「お金を貸すとしたら誰に貸す?」という話から、人間性やステータスで信用度を測るということを学びます。中高生のあいだにできることというと、「遅刻をしない」「宿題を出す」というようなことだと思いますが、こういうことが将来につながっていくということを教えるプログラムですね。
次に、価値を高めるですが、これは、付加価値についての話です。同じ物でも、買う場所や状況によって値段が違うことがあります。ビジネスにもつながることですが、こうした「価値と価格を正しく見極める力」について、ロールプレイを通して学んでいきます。
最後は両面思考ですね。例えば、無料で配布されているクーポン付きの冊子はどうして無料なんだろうと考えることが、両面思考です。世の中のいろいろなサービスや情報を、逆の立場で見ることが新しい気付きにつながっていきます。お金と付き合っていく上で、両面思考を持って逆の立場から見ることはとても大事です。
最後に、家庭での子どもたちへのお金の教育についてアドバイスをお願いします。
福田氏:まずは、お子さんが自分で考えてお金を使う場面を作ってあげましょう。お金を持って、計画を立てて、怖がらずに使っていく経験を積むことが大切です。「今、1,000円持っていて、300円使って、700円になった。この300円の使い方は良かったかな?」ということを、親子でコミュニケーションをとりながら、いっしょにやってみてください。こういう、丁寧なやりとりをしていって、子どもたちの経験になれば、お金を味方につけていけると思います。
ファイナンシャルアカデミー
「お金の教養」を身に付けるための日本最大級の総合マネースクール。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・通信制・ウェブ受講を通じて、16年間で延べ49万人の方が、お金の貯め方、使い方といった身近な生活のお金から、会計、経済などの学問的視点、株式投資や不動産投資などの資産運用まで、独自のカリキュラムで体系的に学んでいくことができる。
この記事が気に入ったら
いいね!