日本の夜明けが見える!?気鋭のマイクロブルワリー「反射炉ビヤ」
反射炉ビヤ。“反射炉”と“ビール”という、関連性のなさそうなワードが組み合わさった、インパクト大のネーミング。まさか反射炉で造るわけはないし……、一体どんなビールなのか、気になる。
反射炉とは、鉄の精錬に使われた金属溶解炉の一種。なかでも、静岡県伊豆の国市・韮山(にらやま)にあるのが、日本で唯一現存する実用反射炉。堂々たる、世界遺産。連日、観光客が押し寄せている。
その韮山反射炉と目と鼻の先にあるのが、反射炉ビヤを造る「蔵屋鳴沢」だ。
INDEX
蔵屋鳴沢は、明治年間に造り酒屋を営み、大正時代には反射炉前の茶店で見物客をもてなした。昭和29年から製茶業を始め、1997年からは反射炉ビヤの醸造も開始。
反射炉ビヤの名は、韮山反射炉を築造した伊豆の名代官・江川太郎左衛門英龍にあやかった。日本で初めてパンを焼き、西洋式軍隊を組織するなど、異国の技や文化をいち早く導入。激動の幕末に、日本の夜明けを見据えた人である。そんな地元の偉人への思いが込められている。
ネーミングの由来がわかったところで、できたてのビールを味わうべく、直営レストラン「ほむら」へ。
直営レストランで楽しむ、地の素材と新鮮ビール
定番や期間限定、裏ビール(銘柄はその日のお楽しみ!)も含め、常時5~6種類のビールを用意。お試しセットもあるからうれしい。
まずは、江川太郎左衛門英龍の名を冠した「太郎左衛門」。反射炉ビヤのフラッグシップである。正統派のイングリッシュペールエールで、苦みと香りの余韻が心地よい。アメリカンペールエールの「早雲」は、柑橘系の爽やかなホップが印象的。「頼朝」は、イギリスタイプの黒ビール。苦みと深いコクがある。この3種が定番だ。
料理は、“朝霧ヨーグル豚”や牛肉、伊豆の野菜などを使う網焼き。人気は、ヘルシーな「イズジカの網焼き」。シカ肉を焼き、伊豆特産の本ワサビを溶いた“修善寺醤油”にくぐらせる。柔らかなシカ肉は、噛むほどにうま味がじわり。コクのある「頼朝」に合う。いや、ワサビの清涼感は「太郎左衛門」でも「早雲」でもいいかもしれない。
早雲、頼朝、政子……。偉人にあやかった多彩な銘柄
定番以外にもラインナップは多彩で、その数、年間40種類。モルト(麦芽)20種、ホップ40種を駆使し、新商品を次々と生み出してきた。
日本酒酵母を使用、バナナのような吟醸香の「大吟醸政子」、ラガーとエールのハイブリッド「農兵スチーム」。製茶工場を運営するだけあり、「お茶屋さんのほうじ茶エール」も美味。茶の香ばしさと、ビールの苦みが絶妙に融合。ほかにもイチゴやミカンなど、地の果物の期間限定ビールもある。
ビールはすべて無ろ過、非加熱のため、酵母が生きている。それぞれの銘柄が個性を主張しつつも、その味わいは決して奇をてらわない。バランス感覚に優れた造り、清廉な伊豆韮山の湧き水によるきれいな風味も特徴だ。
ちなみに、「早雲」は北条早雲、「頼朝」は源頼朝、「大吟醸政子」は北条政子から。それぞれのビールのコンセプトに合った、伊豆ゆかりの人名を冠している。歴史好きなら、偉人を想像しながら味わうのも楽しい。
ワイン酵母にワイン樽!? ブルワリーらしくないユニークな醸造場
若き醸造家・山田隼平さんが最近力を入れているのが、ワイン酵母やワイン樽での熟成。大学でワインを学んだ経験を生かし、「ワインの良いところを取り入れて、ビールの多様性、楽しさを伝えたい」と話す。
例えば、限定ビール「ビエール・ド・木樽草子」は、フランス伝統の貯蔵ビール、ビエール・ド・ギャルドに樽香をつけて複雑さを出すため、複数の樽で熟成させる。タンクにも、シャンパン酵母を使った新商品が眠っている。
まだ名もなきビールの色合いは、熟成した赤ワインに近い。
「白ワイン風のビールはあるけれど、あまりない赤ワインのようなビールを造りたい。モルト由来の赤色を抽出しつつ、カラメル風味が出すぎないように仕込み方をコントールしています」(山田隼平さん)
プラムを思わせる爽やかな酸味と香り、ロゼワインのようなニュアンス。だが、ほのかな苦みもあり、しっかりとビール。新感覚の味わいだ。ワイン好きとビール好きをつなぐ意欲的な銘柄が、世に出る日も近い。
“伝統と革新”の追求が、無二の個性を生む
醸造家の個性を生かしながら、ビール部門の責任者・稲村秀宣さんを中心に、マイクロブルワリーとしての方向性を模索している。モットーは「伝統と革新」。伝統的なビール造りを大切しながらも、新たなレシピ、挑戦を恐れずに、進む。
それは新商品だけでなく、定番も同じ。「太郎左衛門」でも、伝統的なイングリッシュペールエールでありながら、新しいホップを試すなど、常に進化している。
伝統、革新とは何か、そして個性、伊豆の地域色とはどんなものなのか。
日本の夜明けを夢見た偉人の名に恥じぬよう、追求し続けるマイクロブルワリー。その未来は、大きく開けている。
ブルワリー情報
蔵屋鳴沢
住 所:静岡県伊豆の国市中272-1
電 話:055-949-1208
http://www.kuraya-narusawa.co.jp
※別ウィンドウで蔵屋鳴沢のサイトへリンクします。
蔵屋鳴沢 反射炉ビヤレストラン ほむら
営業時間:【月~金曜】11:00~14:30(L.O.)、【土・日曜・祝日】10:00~20:30(L.O.)
定休日 :無休
主な商品(税込):
「太郎左衛門」330ml・490円(小売価格)
「早雲」330ml・490円(小売価格)
「頼朝」330ml・490円(小売価格)
「大吟醸政子」330ml・490円(小売価格)
「農兵スチーム」330ml・490円(小売価格)
※直営ネットショップでは、セットでの販売
※記載している価格は取材当時の金額です。
http://beer.kuraya-narusawa.co.jp
※別ウィンドウで蔵屋鳴沢のサイトへリンクします。
蔵屋鳴沢のお酒が楽しめる飲食店
【東京都・中央区】
麦酒屋るぷりん
生産者の思いやこだわりが伝わる、国産樽生クラフトビール6種をセレクト。うすはりタンブラーで供する。そのほか、ワインやウィスキーなどの国産洋酒も用意。酒に合う料理は、国産の有機野菜などを使った、素朴で家庭的な品々。天然水のかき氷も名物。
住 所:東京都中央区銀座6-7-7 浦野ビル3F
電 話:03-6228-5728
営業時間:【火~金曜】15:00~22:30(フードL.O.)【土・日曜・祝日】15:00~21:00(フードL.O.)
定休日 :月曜
http://beer-lupulin.jugem.jp
※別ウィンドウで麦酒屋るぷりんのサイトへリンクします。
【東京都・港区】
SOUL BIRD
明日への活力を与える“街のエナジースタンド”がコンセプト。国内外のブルワリーから厳選したクラフトビール10種類のほか、5日間かけて仕込む自家製タコミート、日本人向けにスパイスをアレンジしたジャークチキンなど、手間暇かけたフードも評判。
住 所:東京都港区浜松町1-20-5 1F
電 話:03-6450-1639
営業時間:【月~木曜】17:30~23:30 【金曜・祝前日】17:30~24:00 (フードL.O.は1時間前、ドリンクL.O.は30分前)
定休日 :土曜(不定休)・日曜・祝日
http://www.craftbeer-cafe-soulbird.tokyo
※別ウィンドウでSOUL BIRDのサイトへリンクします。
【静岡県・静岡市】
クラフトビアステーション
国内外からクラフトビールを直送し、常時6タップを用意。一押しは、反射炉ビヤを中心とした静岡とカナダのビール。オリジナルや希少なコラボビールが登場することもあり、年間200種超の銘柄に出合える“ステーション”。手作りのパブ料理も好評。
住 所:静岡県静岡市葵区紺屋町5-7 田中ビル2F
電 話:054-260-5870
営業時間:【水~金曜】17:00~24:00 【土・日曜】15:00~24:00
定休日 :月曜・火曜
https://craftbeer-station.com
※別ウィンドウでクラフトビアステーションのサイトへリンクします。
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