SDGsの最前線
〜未来の種をまく人〜
瀬戸内造船家具プロジェクト
吉野 聖さん
「地域でタッグを組み、
子供の未来に貢献したい。」
瀬戸内造船家具プロジェクト 吉野 聖さん
「瀬戸内造船家具プロジェクト」で家具を製作する吉野 聖(ひじり)さん。前職は、古着店のバイヤーやロックバンドで日本全国をツアーしていたというユニークな経歴の持ち主でもある。建設会社を経営し、プロジェクト以前から建築廃材をワークショップで再活用するなど、木材の資源リサイクルに取り組んでいた。
「ロングテーブル(折りたたみ式)」(83,000円)と「ベンチ兼TVボード」(79,900円)。テーブルはキャンパーのほか、カフェや事務所用など、事業者からも注文が入る一番人気モデル。
「今治タオル」ブランドで全国的に有名な愛媛県の今治市。実は造船業も盛んで、船の建造数日本一を誇る、世界的な“船の町”としても知られている。船を造る際、職人の足場用に大量の板を用いるが、船が完成すると多くは廃棄されてしまう。使われる板の数は、大型タンカーになると1隻でおよそ1万枚にも上るという。そんな廃棄される運命の足場板に付加価値を与え、家具へのアップサイクルを目指して2020年に始まったのが「瀬戸内造船家具プロジェクト」だ。
古材は3ヵ月以上寝かせて乾燥させ、ザラつきや凹凸をならすため、表面をグラインダーで研磨する。風合いを残しつつ、家具材の手ざわりに仕上げるのが難しい。
古材と一言でいっても実にさまざま。歪みや凹み、割れ、作業時のペンキが付着したものなども。一般建材とは規格が異なり、作業する職人の安全を守るため厚みは約5cmとかなり重厚。加工には手間が掛かるが、「古材が持っている表情を生かしたいんです。汚れを落としたり、表面の下処理もやり過ぎないのがポイントです」と吉野さん。
磨いた板の上にオイルを塗って仕上げる、板加工の最終工程。使用するのは、海外製のナチュラルオイル。「潤いを与えることで木も長持ちするし、落ち着いた輝きが気に入っています」と吉野さん。オイルを吸った木材は、木目が際立ち美しい。
足場板の古材は今治の「浅川造船」が供給し、「瀬戸内造船家具」ブランドの運営は広告代理店が担当。プロジェクトは、家具製作を行う吉野さんと合わせた3社によるタッグチームで成り立つ。「私1人ではできないことも、みんなで力を合わせれば成し遂げられるんです。まあ私は手を動かしているだけですけどね(笑)」と吉野さんは謙遜する。
かつてはロックバンドのドラマーとしても活躍した、吉野さんの手。毎日木を扱うだけあって、ガッシリとして実に頼もしい。
プロジェクトでは売り上げの一部を活用して、愛媛県内の子供たちに還元していく予定。吉田さんは、「子供の未来にも何か貢献できたらなと思って。この活動は拡大・成長じゃなく、継続。持続可能なスタイルで地域に貢献していきたいですね」と、未来を見据えている。
キーワードで知るSDGs
アップサイクル
リサイクルする度に価値が下がっていくダウンサイクルに対し、廃棄物により高い価値を与え生まれ変わらせること。廃棄物を減らし、資源の有効活用を目的とする。クリエイティブなアイデアによって、新たな用途や価値を持った商品が次々と生まれている。ホテルの使用済みリネンをシャツに、コーヒーかすをボディスクラブに転用するなど、アップサイクルのスタイルも近年多様化。ゴミを“商品”に変身させる未来のワザだ。
店舗情報
コンテナ
吉野さんが愛媛県伊予市で経営する建設会社「真聖建設」のオフィスを兼ねたショップ。瀬戸内造船家具プロジェクトで手掛けたテーブルや収納棚、ベンチなども展示販売している。オンラインストアでも注文可能。
住 所:愛媛県伊予市上三谷1535−5
電 話:089(908)4016
営業時間:11:00〜17:00 水・日曜休
リンク:setouchi-upcycle.jp
※別ウィンドウで瀬戸内造船家具のサイトへリンクします。
- 住 所 :
- 愛媛県伊予市上三谷1535−5
- 電 話 :
- 089(908)4016
- 営業時間 :
- 11:00〜17:00 水・日曜休
- リンク :
- setouchi-upcycle.jp
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文=VISA編集部/写真=新山貴一/監修=上田壮一(Think The Earth)
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