SDGsの最前線
〜未来の種をまく人〜
more trees
水谷伸吉さん
森と都市をつなぎ、
多様性のある自然をつくる。
more trees 水谷伸吉さん
北海道から宮崎まで国内19カ所、海外2カ所に「more treesの森」がある。
森林保全団体「more trees」事務局長の水谷伸吉(しんきち)さんは、講演時にこんな質問を客席に投げ掛ける。「この100年で日本の森林面積は、減少と増加のどちら?」。
答えは「増加」。世界を見れば毎秒テニスコート12面分の森林が消失する一方で、日本ではスギ、ヒノキの植林により増えている。だが、手入れ不足や伐採後の放置、人手不足など、決して明るいとはいえない課題を抱えている。
インドネシアではオランウータンが暮らす森を再生。昨年は果樹など約1,000本を植林。
団体は2007年、今年鬼籍に入った音楽家・坂本龍一さんを発起人に創設。「森と都市をつなぐ」をコンセプトに、植林や間伐、獣害対策など、地域に応じた多様性のある森づくりを中心に活動している(=ネイチャーポジティブ)。
現在、国内19カ所、海外はインドネシアとフィリピンに「more treesの森」があり、’22年だけでも計17.7万m²に約2.9万本の植林を行った。
環境への意識を高めてほしいと、木に触れるワークショップを開催。
また、多くの企業とタッグを組み、排出されたCO₂を森林吸収で相殺する「カーボン・オフセット」により、2,011tのCO₂削減につなげている。ほかにも、各地で伐採した木材を積み木やスツールなどに商品化したり、企業ノベルティへの活用、親子向けの木工ワークショップも開催。その際、木材の産地名を必ず強調する。
「産地を知ると、愛着や興味が湧いてくるんです」
各地の木材でまな板や鳩時計などを製作、自社サイトで販売。写真の「つみき」のデザインは団体現代表を務める、世界的建築家・隈研吾さん。
9月には坂本さんの遺志を継ぎ、世界に木1本単位で植林可能な寄付サイト「TREES FOR SAKAMOTO」も立ち上げた。森と都市、それにかかわる人々の距離が近づくほどに、豊かな森を未来へと残す可能性は高まる。水谷さんを含めわずか6人のスタッフが、その未来をつくろうと奮闘している。
キーワードで知るSDGs
ネイチャーポジティブ
生物多様性の損失に歯止めをかけ、回復軌道に乗せること。2021年のG7サミットで、’30年までに陸海30%以上を保全する目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」が定められ、’22年に国連で「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択。各国で取り組みが一気に本格化し、’50年に「自然と共生する世界」を目指す。1970年から2018年の間に野生生物の数が地球全体で平均69%減少したとされる(WWFジャパン『生きている地球レポート2022年版』)。
団体情報
森林保全団体 more trees
2007年、坂本龍一さんをはじめ、細野晴臣さん、高橋幸宏さんらで創設。植林活動を中心に、木工品の販売や講演、ワークショップなどを行う。個人、企業問わず寄付、サポートを募集中。
リンク1:more-trees.org
リンク2:寄付サイト TREES FOR SAKAMOTO/trees4skmt.org
※別ウィンドウで各サイトへリンクします。
- リンク :
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①more-trees.org
②寄付サイト TREES FOR SAKAMOTO/trees4skmt.org
※別ウィンドウで各サイトへリンクします。
文=VISA編集部/写真=森本真哉/監修=上田壮一(Think The Earth)
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