明日海りお メモリアルコーナー前編

明日海りおの舞台のなかから、印象的な作品をピックアップ。
2回にわたって珠玉のステージを振り返る、メモリアル企画の前編。
今回は、月組時代から花組に組替え後、トップになるまでの作品を取り上げます。
2011年月組バウ公演『アリスの恋人』
2013年月組公演『ベルサイユのばらーオスカルとアンドレ編ー』
2013年月組公演『ベルサイユのばらーオスカルとアンドレ編ー』
2013年花組公演『愛と革命の詩(うた)ーアンドレア・シェニエー」
2014年花組公演『ラスト・タイクーンーハリウッドの帝王、不滅の愛ー』

2008年

月組公演『ME AND MY GIRL』

 本公演で重要な女役・ジャッキーの役替わりキャストに抜擢。美貌を生かし、憎めないキュートな女性像を表現した。新人公演では2度目の主演。下町育ちだが実は血筋の良いビルを、持ち前のノーブルさをにじませて演じた。このころは、明日海自身が「女役が続き、男役として必要とされていないのではと思い悩んでいた」時期。新人公演で男役を演じたことで、改めてその魅力に気付いた大切な作品となった。

2009年

月組公演『エリザベート』

 新人公演で少年ルドルフを演じた2005年に続き、2度目の『エリザベート』出演。本公演では、役替わりでルドルフ役に抜擢。気品に満ちた風貌、皇太子としての矜持を感じさせながらも、不安に揺れ動くルドルフ像を繊細に表現した。もう1役は、シュテファン。革命家としての存在感を示した。また、新人公演では主役のトートを、妖しい雰囲気を漂わせながら、熱演。レベルの高い新人公演と好評を博した。

2010年

月組公演『THE SCARLET PIMPERNEL』

 大ヒットミュージカルで、役替わりでショーヴラン役に抜擢。物語では敵役だが、影を背負い屈折した魅力を持つ男性像を色濃く表現。「理想に近付けないもどかしさや重圧があった」と言うが、新人公演を卒業した直後の本公演にもかかわらず、大きな存在感を示した。これまでは明るい青年や女役を務めることもあり、フェアリータイプと表現されることも多かったが、骨太な男性役という新境地を切り開いた。

2011年

月組バウ公演『アリスの恋人』

 2009年に『二人の貴公子』でバウ公演W主演は果たしていたが、単独主演は初。また、日本青年館でも公演され、東上公演初主演作となった。「不思議の国のアリス」を原作とした、ポップなファンタジー・ミュージカルに、美しい容姿がぴたりとはまった。ツンデレな役を魅力的に表現し、当時、娘役に転向したばかりの愛希れいかとのコンビネーションも抜群。出演作のなかでもいまだに根強い人気を誇る公演。

2012年

月組公演『ロミオとジュリエット』

 新生月組が始動した公演で、準トップスターとして、トップスター・龍真咲と役替わりでロミオとティボルトを演じた。鬱屈とした不満や不安、苛立ちなど、陰の要素が強いティボルト役を、密度の濃い役作りで説得力抜群に表現。ロミオは、まったく異なるアプローチ。持ち前の透明感で、キラキラとした王子風の雰囲気を漂わせながらも、若者らしい性急な情熱、繊細さを感じさせる芯のある新しいロミオ像を創出。

2012年

月組バウ公演『春の雪』

 月組時代の当たり役、役者・明日海りおの真骨頂ともいえる役。明日海自身も「好きな役だけど、当たり役と言っていただくのもどうなのか」と苦笑するほど、主人公の侯爵令息・松枝清顕は強烈な自意識の棘を持つ、難役。子供じみた傲慢さ、愚かさがありつつも、残酷なまでに美しく、儚い青年を、男役としての魅力を損なうことなく表現。三島由紀夫作品ならではの耽美な世界観、滅びの美学を見事に体現した。

2013年

月組公演『ベルサイユのばら』ーオスカルとアンドレ編ー

 宝塚歌劇を象徴する作品で、トップスターの龍との役替わりでオスカルとアンドレを演じただけでなく、ベルナール役も演じた。役替わりの経験が多い明日海でも、3役は初挑戦となった。オスカル役は、凜々しい芯の強さのなかにも、どこか儚く、繊細な心情が垣間見える好演。アンドレ役も、オスカルだけを一途に思う、大きな包容力にあふれた芝居で心をつかんだ。ベルナール役も、存在感が際立った。

2013年

花演シアターオーブ公演『戦国BASARA』

 人気ゲーム作品「戦国BASARA」を初めてミュージカル化。映像を駆使しした意欲的な作品で、鮮烈な花組デビュー。蘭寿とむ演じる武田軍の若き闘将・真田幸村と敵対する、越後の上杉謙信役を色香たっぷりに演じた。妖しく、美しい新たな上杉謙信像を体現。また、ゲームでおなじみの、謙信と桜咲彩花演じるかすがとのバラが咲く演出で、会場を大いに沸かせたことも印象に残る。

2013年

花組『愛と革命の詩(うた)ーアンドレア・シェニエー』

 オペラ「アンドレア・シェニエ」をモチーフにしたミュージカル。組替え後、初めての本公演出演作。今作でも、蘭寿演じる詩人シェニエと敵対する革命政府の闘士・ジェラール役として存在感を発揮。革命に燃える熱さ、蘭乃はな演じる伯爵令嬢に寄せる思い、シェニエへの嫉妬など、愛と欲望が渦巻く役を濃厚に表現。同時上演のショー『Mr.Swing!』でもさまざまな場面で活躍し、花組に新しい風を吹き込む。

2014年

花組『ラスト・タイクーンーハリウッドの帝王、不滅の愛ー』

 F・スコット・フィッツジェラルドの未完の長編小説「ラスト・タイクーン」をミュージカル化。涼しげな美貌を封印し、髭を付けた渋い中年の映画プロデューサー役に挑戦。落ち着いた雰囲気をかもし出し、蘭寿演じる映画プロデューサーと対峙した。ショー『TAKARAZUKA ∞ 夢眩』でも、妖しげな場面やファンタジックなシーンで、持ち前の行間を感じさせる芝居心で魅了した。