今月のメッセージMessage

2人に共通するのは、額田女王への思い……。

明日海りお 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるころには、花組博多座公演『あかねさす紫の花』『Santé!!』も閉幕していますね。全国から博多まで足を延ばしていただいた方も多くいらっしゃったと思います。地元の九州の方も含め、ご観劇いただいた皆様、本当にありがとうございました。

 この公演は、私が大海人皇子を演じるAと、中大兄皇子を演じるBと2パターンあり、それぞれの立場から相手を見ると、まったく違った印象でした。大海人皇子から見た、兄の中大兄皇子は、足元にも及ばない、男のなかの男。こういう風になりたいと慕い、同時に絶対に敵わないと思う、憧れの人です。兄が自分の妃である額田に想いを寄せて妃にしてからも、なお兄への尊敬の念は変わらない。額田がどうしても抗えずに引き寄せられるように、大海人皇子にとっても兄は特別で大きな存在。額田も中大兄皇子の孤独を感じ取っているからこそ、彼の妻になって落ち着いていくのだと思います。

 大海人皇子は、政治力に長けた切れ者の兄を誰よりも尊敬していて、その辛さを理解できる存在でいたかったと思うのですが、どうにもならない苦しさ、やりきれなさがあるからこそ、最後の宴の場面につながっていく。謀反を企ててもおかしくない時代ですが、兄の姿をずっと見てきたからそれもできないし、憎むこともできない。兄との絆を断ち切りたくない気持ちと額田への想いのなかで激しく揺らいでいます。

 一方、中大兄皇子から見た大海人皇子は、青さというか視野の狭さを感じる。演じてみると、全く印象が異なるのが、本当に面白いですね。国を自らが動かしていく責任がないぶん、弟のことを少し羨ましくなるときもあって……。ただ、いずれ2人が中心になって国を治めていきたいと思っているので、中大兄皇子なりの愛情で弟に接しています。天皇になる立場なので、政や周囲との人間関係など、すべてに責任感をもっている中大兄皇子ですが、今回は最初にべーちゃん(桜咲彩花)演じる鏡女王とのデュエットが1曲追加されていて、想い合う演出が施されている。2人の関係の和やかさ、女性を包み込む大きさのある男性の雰囲気が伝わるシーンなので、ポイントになっていると思います。美しくなった額田に出会ったときも「そなたが欲しい、この恋はどうにもならない」と言い切ってしまえる豪快さと真っ直ぐなところも、中大兄皇子らしさですね。

 2人に共通しているのは額田への愛。お互いに譲れない思いを抱きながらも、普通の兄弟であれば弟の妻を奪うようなことはしないでしょう。やはりそれだけ国を背負うというのは孤独で、額田の存在がどうしても必要だったのかな、と。これまでに出会ってきた人とは違う彼女の生命力や輝きに魅力を感じたのかもしれません。それぞれの演じ方で微妙に関係性が変わってきますし、役者の持ち味によって見え方が異なる2役だと思います。

演じる人によって大きく変わってくる、3つの役。

 れいちゃん(柚香光)とちなつ(凰月杏)が私と同じ役を演じましたが、そういう捉え方があるのだとすごく新鮮で、稽古場から随分と印象が違いました。

 まずAパターンで中大兄皇子を演じたちなつは、冷静で的確、仕事に関しては情なく決断していく切れ者という雰囲気。女性に迫っていくときは隠された色気と寂しさが滲む……。私にはできないタイプの中大兄皇子だなと演じていて感じました。Bパターンの大海人皇子、れいちゃんは、想像していたよりも強い印象。額田への執念みたいなものが圧力となっている感覚があり、兄への思いよりも額田への思いが強く出ているのかなと感じます。

 そしてそれを受ける側である額田女王のゆきちゃん(仙名彩世)は、同じ役でもまったく変わってきてしまうので、両パターンを演じるのはすごく大変だろうな、と。兄弟が取り合う女性、額田が輝いていないと成立しない作品ですが、冒頭の「あかねさす~」と和歌を詠むところも持ち前の美声で艶があり、香り立つようでしたし、素敵に演じてくれたと思います。

重厚な雰囲気の博多座と美食の街。

明日海りお 今月のメッセージ  月組時代に博多座公演で訪れたときもそうでしたが、劇場がとてもきれいで門も立派なので、玄関に立っただけでテンションが上がります。花組としては16年ぶりで、前回のオサさん(春野寿美礼)主演のときと同じ演目で上演できることに、深いご縁を感じます。博多座には、花道やセリ、盆もあるので、普通の全国ツアー公演に比べて宝塚大劇場に近い印象で、それよりもさらに客席と近い感覚があります。何よりも劇場や博多の方が温かく、毎日公演していてとても幸せです。

 月組時代は同期のしずく(羽桜しずく)やあんじ(妃乃あんじ)などと近くのホテルから歩いて通っていたのですが、たまに帰りにラーメンを食べたり、神社で時々売っているお餅をいただいたりしました。昨年全国ツアーで博多を訪れたときは、水炊きを2回も食べたので、今回はもつ鍋を食べに行こうと思っています。博多は、本当に美味しいものばかりですよね。お刺身、鉄鍋餃子、明太子……。食べ物ばかりが浮かびます(笑)。役替わりが落ち着いたら、皆で食べに行こうと思っているので、また機会があったらお話しますね。

博多座のあとは、天草四郎……。

 花組の次作は、7月からの公演『MESSIAH(メサイア)ー異聞・天草四郎ー』『BEAUTIFUL GARDENー百花繚乱ー』。お芝居は、かの天草四郎をモチーフにしたオリジナル・ミュージカル。ポスター撮影をした際は、ワインレッドのコスチューム、紫がかったカツラで撮影。ショーではありましたが、いままでにない新鮮な印象のお衣装でした。天草四郎については、キリシタンの弾圧があった島原のリーダーとなった少年、という印象しか抱いていなかったので、これからもっと調べてイメージを膨らませたいです。

『ポーの一族』に続いて若い役ですが、衣装を着てメイクをしてみたら、そんなに少年風ではありませんでした。史実に基づきつつも、新たな解釈の物語になると思いますので、年齢にとらわれずに、作・演出の原田諒先生の脚本をよく読み込んで役を作っていきたい。これまでにないキャラクターを演じられるのが、とても楽しみです。

※このメッセージは、5/14(月)に届いたものです。

●日本物or洋物?

これは……究極です。どっちもっていうのは無理ですよね? 時代によって全然雰囲気も違いますし、とても難しいです。日本物は大好きですが、今回の博多座でも存分に雅な世界を堪能させていただきましたし、以前『雪華抄』で宝塚でしかできない日本物のショーで若衆にもなれて満足したので……どちらかを選ばなければいけないのであれば、いまは洋物かな(笑)。

紫陽花orラベンダー?

この2択であれば、やっぱり特別な花で大好きな紫陽花でしょうね。ただ、いつかラベンダー畑も見てみたいと思っているんです。というのも『ラヴェンダーの咲く庭で』という映画があり、その曲がとても素敵なんですよ。それを知ってから、いつかは辺り一面のラベンダーを見てみたいと思っていました。でも、選ぶなら紫陽花なのですが……(笑)。