宝塚歌劇団・花組トップスター 明日海りお
明日海りおプロフィール

今月のメッセージMessage

花組 宝塚大劇場公演『ポーの一族』、
ご観劇いただいた皆様、ありがとうございました。

明日海りお 今月のメッセージ
 今作は、実際に舞台上で演じてみると、セットや照明、オーケストラの方々の演奏によって世界観が広がり、お客様の熱気とともに感情の幅が広がっていった感覚がありました。また、回を重ねるごとに、さまざまな感情の差をはっきり出したほうがいいと思うようにもなりました。寂しさや苛立ち、変えられない運命に対しての絶望、諦め、ふて腐れるような感情があったり、人恋しくなったり、ふとバンパネラであることを思い出して感情をすっと隠したり……。歌でどんな気持ちを巡らそうとも、永遠に1人で生きていかないといけないバンパネラだということを痛感して心閉ざす瞬間や、バンパネラの気質を表すポイントとなる台詞など、意識的に切り替え、色濃く表現したいです。

 ゆきちゃん(仙名彩世)演じるシーラとは違い、思春期に望まずにバンパネラになったことによる反発など、人間だったときの素直な感情がふっと生まれることもあり、それをもっと鮮やかに見えるようにしたいです。そういったさまざまな感情を引き出してくれるのが、れいちゃん(柚香 光)演じるアランや、はなちゃん(華 優希)演じるメリーベル、シーラなのかなと思います。
 エドガーは、自問自答を繰り返しながら葛藤を抱えて生きているので、何をしても満たされない、寂しさが募るばかりで空しくなるのだと思います。エドガーにとってはそれが日常で何十年、何百年と続いていくので、そういった孤独が端々ににじみ出ていたらいいなと思います。

「哀しみのバンパネラ」という曲中に、「僕はバンパネラ」という歌詞が2回出てきます。以前『ロミオとジュリエット』のティボルトを演じたときに、「俺はティボルト」と繰り返す歌がありました。そのときは、「自分がティボルトなんだ」と自分自身に言い聞かせて奮い立たせたり、「たかがティボルトなんだ」という卑下した色合いがあったりと、さまざまな意味が込められていました。今作でも、バンパネラになってしまった悲しさもあれば、バンパネラになったことへの恨めしさ、諦めなど、いろいろな思いが表せる歌だなと感じています。しかも同じ歌詞で2回歌うので、そのときの気持ちを素直に表現しています。自分を責める気持ちが強いときもあれば、寂しさや悔しさが強く出たり……。その量が日々少しずつ変化していく感覚です。

 場面としては、エドガーが最初に市場の少女から本能的に血を吸うシーンが印象的になったらと思っています。バンパネラに変化したことがお客様により伝わるように、目つきや息遣いなどで表現し、その後の「エドガーの狂気」というナンバーで彼の行き場のない思いを曲中で爆発させられたらと思っています。
 バンパネラとして生活していて、時を経たことによる変化も大切にしていますし、アランとの出会いも重要なシーン。アランを“友達”と表現しますが、それにはいろいろな意味が込められています。メリーベルを救うためでもありますが、境遇が似ていて鬱屈としたものを抱えているアランに共鳴し、辛い環境のなかでも生きようとする彼にエネルギーを感じたり、心を動かされていきます。純粋さに惹かれた人でもあり、心の拠りどころでもあるアランを仲間に加えなければいけない辛さもありますね。

 最終的には、大切なメリーベルを失い、エドガーにとって永遠の時を共有していく仲間が初めてできてうれしい側面もありますが、罪の意識もあります。これから一緒に時の旅をすることで、彼の心の欠けたものが埋まるのだろうかと……。ですが、やはりエドガーにとっては、この先もまだ旅が続いていく、終着点が見えない不安や寂しさのほうが勝っているのではないでしょうか。2人にとってはこれが幸せだったのかなとか、哀しみの始まりではないかとか、さまざまに考えていただけたらと思っています。そのシーンではクレーンを使用するのですが、2階席のお客様を近くに感じるくらい、高く上がります。『ベルサイユのばら』のときは馬車で囲いもあったのですが、今回は前に何もないので、最初は怖そう……と(笑)。ですがいざ本番になると、お客様の空間に入っていく感覚がして怖くなくなりました。

『金色の砂漠』のギィでも少年役はありましたが、今回も人間だったころのエドガーとメリーベルの風車の場面があります。とても温かなシーンですが、少年役なのでエネルギーが必要。走り方や手の動かし方、表情など、普段の大人の役とはまったく違います。いろいろなものを集約した「表紙」のようなプロローグから一気に人間の少年に戻りますが、あまり意識しなくても切り替えられています。カツラも替えていますし、フリルやリボンがついたシャツ、半ズボンにぺたんこ靴という衣装や、歌にも助けられ、自分でも結構楽しんで演じています(笑)。
 エドガーは、絶えずいろいろな感情が渦巻いていて、毎日気持ちが変化する役なので、東京公演に向けてさらに深め、そして作品全体としても深化させていきたいです。

さまざまな経験ができた、充実した『タカラヅカスペシャル』。

明日海りお 今月のメッセージ
 昨年末のことになりますが、『タカラヅカスペシャル2017』のお話を少し……。
 とにかく、楽しかったですね。まず、同期のだいもん(望海風斗)と一緒に舞台に立てたことがすごくうれしかったです。2幕のMCでは、私たちの期と、真風くん(真風涼帆)とりょうちゃん(珠城りょう)の下級生2人で、自然体でリラックスして臨んでいました。2人とも優しくて、こういう機会に触れ合うことができて良かったです。1幕では轟悠さんともMCの場面でお話させていただきました。いつも生徒の代表として立たれていることのすごさを改めて感じましたし、轟さんがいてくださるからこそ、『タカラヅカスペシャル』は皆が安心して力を発揮できるのだと思います。

 これまで歌ったことのないような楽曲が多く、さまざまなことを学びました。オサさん(春野寿美礼)が主演された『アデュー・マルセイユ』の曲も、オサさんが本当に素敵に歌われていましたが、いざ自分が歌うとなるとその難しさに驚きました。改めてオサさんの歌を聞き返して勉強させていただいたり、ほかにもパリ・レヴューならではの歌い方を意識してみたり……。お稽古のとき、吉田優子先生が昔の譜面を持ってきてくださったのですが、それを見ただけで自分が歌えることがうれしくて涙が出そうになりました。「愛の旅立ち」も難しかったですが、曲の作りやピアノの音が美しく、歌詞もストーリー性があったので作品を作っているような気持ちでした。

『アデュー・マルセイユ』では、まどかちゃん(星風まどか)とデュエットしました。小柄でかわいらしく、ふわっとした娘役さんですが、『ジュテーム』の歌に切り替わったときに、芯のある女性の雰囲気にガラッと変わり、宙組トップ娘役になったばかりで学年も若いのに、しっかりしていてとても技術のある方だと感じました。その後、ちゃぴ(愛希れいか)と組んで踊ったことも、とても面白かったです。動きや角度など、何も言わなくてもしっくりくるように合わせてくれたり、踊りながらも表情で駆け引きを楽しめる感じが懐かしいな、と。踊っていても一緒にお芝居をしているような感覚で、楽しかったです。

 そして、キキちゃん(芹香斗亜)とも一緒に踊るシーンがあり、うれしかったです。そこにれいちゃんもいてと、少し前では当たり前の光景でしたが、いまはもうとても貴重なことなのだなと思ったら、心に染み入りました。さまざまな経験ができた、とても充実した『タカラヅカスペシャル』となりました。

※このメッセージは、1/15(月)に届いたものです。