『エリザベート』に出合ったのは入団前で、1998年の宙組公演を初めて拝見して、宝塚歌劇のイメージがガラッと変わりました。楽曲の世界観の広がりにすごく引き込まれましたし、ちょうど音楽学校の受験に向けて両親を説得中だったので、これは観てもらわないと、とすぐにビデオを提出しました(笑)。
そういった思い入れのある作品でしたので、2005年の月組公演にアンサンブルとして出演できたときは、エネルギーが湧いて毎日が楽しかったです。ただ、実際に歌ってみるとどの曲も複雑で、新人公演の少年ルドルフの歌も難しかったです。'09年の月組公演の新人公演ではトートを演じさせていただきましたが、曲を歌いこなすだけで精一杯でした。新人公演の最年長の学年でもあったので、どうしたら作品としてまとまるかに気持ちがいき、自分のトートがどう見えるのかという意識は薄かったです。ただ感じたままに、同期の羽桜しずくが演じたエリザベートとの掛け合いで生まれてきたものを形にしたという感じでした。
この作品で好きなのは、エリザベートの結婚式直前のトートと参列者とのコーラス。重厚感がたまらなく好きで、同じ曲を使う2幕の最終答弁の場面も大勢の人の魂からの叫びが重なり合って1つの曲になっている感じで好きですね。この作品は音符の1つひとつに役の感情が全部描かれているので、楽曲をうまく生かして、お客様の心が動くように歌えたらと思います。
トート像としては、感情を露にするトートをと思ってきたのですが、いざ演じてみると、すごく感情を抑えている自分に気付きました。黄泉の帝王、死であることにとらわれ、神秘的な感じを出そうとしすぎていたのだと思います。だからまず感情を最大限に出し、そこから引き算して、ちょうどいいラインや私ならではのトートを探していければと思っています。お稽古でいろいろな表現に挑戦して心ゆくまでトート像を追求し、花組一丸となって私たちらしい作品になるよう頑張っていきたいです。
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