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出演者インタビュー

珠城りょう

 この作品は、壮大な愛の物語が大きなテーマになっていることが魅力だと感じます。現実にはあり得ない世界観ですが、その愛を基にして、共感できる部分が散りばめられている。人間の良いところばかりでなく醜い部分も出てきますし、濃くて重い内容ですが、観終わったあとに心に残るのは、愛の力の偉大さが描かれているからだと思います。

 トートは、すごくピュアで、登場人物のなかで誰よりも人間らしい心をもっています。一途に人を想い、愛に突き動かされて生きているのがすごく魅力的。黄泉の帝王なので生きているとは言えないのかもしれませんが(笑)。怒ったり葛藤したりする繊細な心の動きを、素晴らしい楽曲に合わせて表現していきたいです。

 “死”を演じるのは、2012年の『ロミオとジュリエット』以来、2度目となります。そのときは台詞がなく身体表現のみでしたが、静と動がはっきり分かれている役でした。今回は歌も台詞もありますが、地を這うように静かに歌うこともあれば、「最後のダンス」のようにハードに歌うところもあるので、そういうところは共通していますし、気持ちのもっていき方にも通じるものがあると思います。それに、『ロミオとジュリエット』では、ロミオとジュリエットが亡くなったあとに、“愛”と“死”の2役が、重なり合ってポージングするシーンがありました。そうすることで「愛と死は表裏一体」ということを描いていたのですが、今作でもそのテーマがトートとエリザベートの姿を通して、また違った形で表現されると思います。死は誰にでも絶対に訪れるもので、常に人の側にあるもの。エリザベートもそうでしたが、それでもなお生きたいと思っている彼女の姿に、惹かれていったのではと思います。

 今作は相手役の愛希の退団公演でもあります。私は入団9年目でこの立場に立たせていただき、日々、諸先輩方の偉大さを痛感しています。相手役の存在は大きく、一緒にいろいろと闘って乗り越えてきた感覚があるので、今作も彼女とだったら絶対にいい作品にできると思っています。

 宝塚歌劇で10回目の『エリザベート』となります。愛され続ける素晴らしい作品ですので、稽古場では悩んだり葛藤したりすると思います。ですが、いまの月組だったら乗り越えられるはず。諸先輩方への尊敬の念を大切にしつつも、枠にとらわれず、いまの私たちだからできるトートとエリザベートを、そして月組だからできる作品をお届けできるよう、努力したいと思います。

愛希れいか

『エリザベート』は大好きな作品で、エリザベート役も憧れ続けた役でした。そんな作品に出演でき、そしてエリザベートを演じさせていただけるということで、幸せと同時に身が引き締まる思いがしています。

 大きな愛を描いた物語であり、さまざまなメッセージが込められた、生きる勇気を与えてくれる作品。客席で観ていて、いつも感動していました。エリザベートは彼女が生きていた時代のなかではとても先進的な女性だったため批判もされましたが、ミュージカルとなっていまなお愛されているのは、彼女が自分の人生を貫いたからこそ。自由を愛する彼女が皇妃になったことで、幸せだったとはいえないかもしれません。でもそれでも自分らしく生きた、女性なら誰でも憧れるような、とてもかっこいい女性。そんな生き様を大切に演じ、私にしかできないエリザベートを表現できるように、お稽古に励みたいと思います。

 私事ですが、今作の東京公演で退団させていただきます。退団を控えた皆さんが、「いつも通りに」とおっしゃっているのをよく聞きますが、私はなかなかいつも通りにはできず、正直言いまして意識してしまうことのほうが多いです。ですが、これまで応援してくださった皆様に感謝の気持ちを込めて、最後まで精一杯舞台を務めたいと思っています。
 包容力があり、温かいお人柄の珠城さんが率いられるいまの月組は、とても個性的で、お芝居が大好きな人ばかり。そういう皆さんと一緒にこの素晴らしい作品を作っていけることが、とても幸せです。月組ならではの新しい『エリザベート』としてお客様に楽しんでご覧いただけるよう、月組の皆さんと一緒に作品に取り組んでいきたいです。