9月9日、三井住友VISAカード ミュージカル『グレート・ギャツビー』東京公演初日前のゲネプロが開催されました。終演後、演出家の小池修一郎、初演で主演を務めた杜けあき、鮎ゆうき、今作の主演コンビ・月城かなと、海乃美月による囲み取材が行われました。
今作は、20世紀アメリカ文学史の最高峰とも称される『グレート・ギャツビー』が原作。1991年に宝塚歌劇が世界初のミュージカル化に挑み、杜けあき、鮎ゆうき率いる雪組で初演。2008年には日生劇場で瀬奈じゅん主演で再演され、話題を呼んだ作品です。
まず小池が「31年前の雪組での初演時はショーとの2本立てで、2008年の日生劇場のときは二幕物、今作は1本立ての本公演としてやらせていただくことになった。こうして2人のギャツビーとデイジーがいると、31年の時が一気に集まった感じがする。私自身も彼女たちの話をぜひ聞きたい」と挨拶。
続いて杜は「幕が下りてしみじみと実感したのは、宝塚っていいなあ、と。いろいろなことが起こる時代に、この世界は絶対に必要不可欠だと改めて感じました」と力強く話しました。1時間35分間の初演から一本立て作品とした小池の苦労を推察しながらも「想像をはるかに超えていて、素晴らしかったです。OGとしてだけでなく、一宝塚ファン、観客として巡り合えて良かった作品だと心から思いました。一人でも多くの人にこの素晴らしい作品を観ていただきたい」と最大限の賛辞を送りました。
鮎は「心の奥に大切にしまっていたものに再会した懐かしさと、初めて観る新しい世界で楽しませていただいた。小池先生の洗練された世界観、月城さんのギャツビー、海乃さんのデイジー、出演者の皆様の丁寧に作り込まれたパフォーマンスに酔いしれました」とコメント。初演時の時代背景に思いを馳せ、「時代によってものの見方や価値観は変わりますが、この作品に流れている核は変わらない」と話しました。
月城、海乃ともに、初日が開けること、初演コンビに観てもらったことへの感謝を口にしながら、月城は「杜さんの『この時代に宝塚は必要不可欠』という言葉に背中を押していただきました。振り返ったときに、海乃とともに宝物になったと言えるよう、この素晴らしい作品を次代につないでいけるよう、精一杯頑張っていきたい」と話しました。また海乃も「厳しい時代ではありますが、健康管理を第一に、お客様にこの作品を全力で、1回1回大切にお届けできるよう務めていきたい」とコメントしました。
その後質疑応答も行われ、作品の核を聞かれた小池はこう答えました。
「20世紀アメリカ文学の代表的な作品ですが、21世紀になっても映画が作られたりと普遍性がある。いつの世も時代の表層で浮く人間はいますが、その人のルーツが貧しい生まれで努力して成功を勝ち得ようとするも必ずしも報われないというのが、原作の時代から100年経っても変わらない人の世なのかな、と。そこにデイジーへの純愛が重なり、花を咲かせるけれども散っていく。そういうところがこの物語の魅力だと思います」
そして、新旧のキャスト4人が心に残る大切な場面を問われて答えました。
杜「ギャツビーはプロセスが大切で、すべての階段を上り詰めた後にデイジーの家まで辿り着く。それまでが一本の線としてつながっているので、どの場面とは言えないですが、そのくらい私にとってジェイ・ギャツビーという役が、31年経っても心と体に染みついている。素敵な、宝塚にとても似合う役だなと思いました」
鮎「一番の思い出は小池先生のご指導で、『きれいなおばかさん』というせりふのシーンを100万回くらいやったような記憶があります。あとは一輪のバラの扱い方。最初にギャツビーから花束を渡されたときに一輪を選ぶ意味、再会したときに無意識に一輪を取る、そして最後に一輪を手向ける。その繊細な演出が好きで印象に残っています」
月城「どの場面も欠かすことができないですが、墓場のシーンで、息子はこういう子でしたという父のせりふを奈落で聞きながら、自分はそういう人間だっただろうか、そのように演じられただろうかと、毎公演自分自身と演じたギャツビーに聞いています」
海乃「私もどの場面も大切ですが、一番のキーになっていると思うのが出会いの場面。今後のギャツビー、デイジーにとっても一生を変える大事な場面だと感じているので、その運命を毎公演新鮮に感じながら演じられるように務めています」
フィナーレについても聞かれ、杜は「実はどこまで余韻が残るんだろうと思っていたのですが、とても見応えがありました。2人のデュエットは、鮎ちゃんと2人でやりたかったねと話したくらい、どこかでもう一度結ばれたと思えるような世界で、素晴らしいフィナーレ」と称賛。鮎も「子供のころから大好きなフィナーレ、宝塚らしい瞬間にウキウキワクワクしました」。
月城は杜の言葉を受け、「もしギャツビーとデイジーがもう一度巡り合えたらというところも大切にしているので、伝わっていたことが本当にうれしいです」、海乃も「毎公演お芝居の流れによって感じ方も違い、フィナーレまでお芝居をしているような感覚」と話しました。
最後に、初演から脚本・演出を務める小池が締めくくりました。
「31年前の杜さん、2008年の瀬奈さん、そして今回14年ぶりという長い旅路だったわけですが、月城かなとも本当に素晴らしいギャツビー役者。そういった出会いが私自身の歩いてきた道にあることが本当にうれしく思います。杜さんがおっしゃったように時間が経っても輝きを失わない宝塚、世界でもトップランクの照明設備など最新の技術を取り入れた劇場で上演できる喜びを感じます。生きていて良かったという31年でございます(笑)」
人間の矜持や美学、希望や欲望、色あせることのない純愛。さまざまな感情が描かれた奥深い世界観へと誘われる『グレート・ギャツビー』。東京宝塚劇場公演は10月9日(日)まで。