冠協賛公演特別コーナー:三井住友VISAカード
冠協賛公演特別コーナー【過去の公演出演者が語る 冠協賛 Play Back(ブレイバック)】
三井住友VISAカード
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――お2人は在団中に接点はあったのでしょうか?

一路 組が違うとあまり接点がないんですよね。雪組だったら誰と同期だった?

春野 とうこ(安蘭けい)と……。

一路 あ、はな(花總まり)もだよね!

春野 そうです!

一路 当時4組合同公演とかに出ていた?

春野 出ていたとしてもまだ下級生でしたので……。『エリザベート』の初演も、一番最初に観たのはとうこが主演していた新人公演でした。その後、袖から本公演を拝見させていただきました。チケットがなかったので(笑)。

一路 退団公演だったからね(笑)。

<プロフィール>
一路真輝(いちろ・まき)
1982年、宝塚歌劇団入団。容姿端麗な舞台姿、歌唱力に注目が集まり、早くから活躍。'93年に雪組トップスターに就任。'96年『エリザベート』の日本初演でトート役を演じ、『エリザベート』人気の礎を築き、退団。2000年、ウィーン版を基本とした東宝版『エリザベート』初演に主演、'06年までエリザベートの単独キャストを務めた。『王様と私』『南太平洋』『キス・ミー・ケイト』など名作の主演、ヒロインをはじめ、舞台を中心に活躍。退団後の受賞歴に、'04年に読売演劇大賞優秀女優賞、'16年に松尾芸能賞優秀賞。

――初演から20年、いまどんな思いがありますか?

一路 ここまで大きな作品になるとは想像していませんでした。ただ、私は『エリザベート』を客観視できないんです。「一路さんの『エリザベート』を観て宝塚を受けようと思った」と多くの人に言っていただくけれど、そういうふうに客席で観たことがないから、作品の魅力を語るには一番ふさわしくないかも。

春野 逆に、語られるほうですよね。

一路 スタッフ目線で、作っていくプロセスの苦労はいくらでも話せるけれど、トートが素敵とか、言えない(笑)。この作品やトートに対して、多分一番冷めているんですよ。

春野 かっこいい!

一路 そう(笑)!? でもだから、私のトートは冷たいんだと思う。作品を良くする熱意はあるけれど、すべてを冷静に見ていてパッションがない。心の思いは秘めているけど(笑)。それが初代の私が作ったトート像なのかな。この間久しぶりに宝塚の『エリザベート』を観たら、トートがものすごくアグレッシブで驚いた。

春野 宙組さんですよね? 舞台は観てないですが、映像で少し観てそう感じました。

一路 アクションや感情表現が大きく、現代のトートだと思うけれど、私は冷静に演じていて、それがいまも体に残っているのかな。

春野 でも、一番ストレートで強く伝わってくるものがありました。

一路 伝わっていたらうれしいな。

――今作の魅力、また宝塚でトート、東宝でエリザベートを演じたお2人ならではの、トートとエリザベートの関係性の解釈は?

一路 トートのキャラクターが、世界中で一番宝塚の男役に合っている。男役が演じることでトートも作品も魅力を増すと思いますね。

春野 言葉にするのは難しいですが、男役によって、作品世界を広げられるのも魅力の1つですよね。あとはやはり素晴らしい音楽。

一路 本当にそう!

春野 ルキーニが登場して舞台が始まると、一気に世界に連れて行かれる感じもいい。

一路 プロローグの入りがいいんだよね。あと両方演じて感じたのは、2人は同じ人だということ。表裏一体の存在で、エリザベートが苦しいときにトートが出てくる。だから、2012年『ガラ・コンサート』のトートの作り方も自分のなかで変わっていました。宝塚時代よりも、表面的に情熱があったかもしれない。

春野 パッションが!

一路 そう!(笑)。エリザベートの気持ちが入ったトートだったかも。

春野 確かに、トートだけを演じていたら、エリザベートを追いかける、愛するということばかりになってしまいますが、エリザベートを演じてみると彼女が何を求めていたのかがわかった。だから『ガラ・コンサート』ではトートの役柄が広がったように感じました。包容力のような……。

一路 そうなんだよね、私もまったく同じ。

春野 エリザベートが求めているものをトートでも出したいと思うようになりました。

――お2人とも'12年の『ガラ・コンサート』以来、4年ぶりのトートですが。

一路 '12年のときは、予想外に本公演に近いものを求められて(笑)。実はものすごくあがいて、血のにじむ思いをしたんです。退団して16年、子供も産んでいたので、当時の力までもっていくのが、ものすごく辛くて。でもある程度のものができて燃え尽きたので、今回はフルコーラスや扮装で歌うのをお断りしたんです。

春野 そうなんですか!?

一路 うん。演出の小池修一郎先生もわかってくださって、初演メンバーがそろうことに意味があるから、舞台で映像を見ながらトークをしてくれ、と。なので、今回は気楽に出ます(笑)。2幕で若干歌いますけどね。

春野 私は反対に『エリザベート』がお披露目で、やりたいことができなかったんです。

一路 やりたい余地や可能性が自分のなかに残っているんだね。

春野 はい。『ガラ・コンサート』では背負うものが何もないので、気持ちが自由。だから、そのときに感じること、いま表現できることを歌に注ぎ込んで、自由に歌えたらな、と。当時は、一路さんのトートや作品の衝撃が強く残っていて、お客様のイメージもあるから、違う路線に行ってはいけないと縛られて、何がやりたいのか、どれが私の気持ちなのか見失ってしまったんです。

一路 さっき小池先生も同じことを言ってた。初演のときは誰も何もわからなかったはずなのに、なんでいまは「あの人はトートらしくない」とか、「フランツはこうあるべき」とかあるんだと。フランツに会ったことがあるのか!と怒ってた(笑)。

春野 本当ですか?

一路 うん(笑)。

春野 自分でも勝手にイメージを膨らませていますしね。

一路 初演もむちゃくちゃ大変だったけど、再演も大変なんだね。

春野 でも一路さんをはじめ、最初に作られたときは本当にご苦労があったと思うので、自分の色を出すのも大事ですが、やはりその土台の部分を塗り替えてはいけないな、と。それを大切にしながら、今回のコンサートで歌っていきたいですね。

<プロフィール>
春野寿美礼(はるの・すみれ)
1991年、宝塚歌劇団入団。男役らしい端整な容姿と抜群の歌唱力で、早くから抜擢される。2002年、宝塚では4作目となる花組公演『エリザベート』で大劇場でのトップお披露目を果たす。'04年文化庁芸術祭新人賞を受賞、'07年世界陸上の開会式で「君が代」を独唱。類い稀な歌唱力を武器に人気を博す。また、'01年より6年間、三井住友VISAカードのイメージキャラクターを務める。'07年に退団。'09年『マルグリット』、'12年『エリザベート』の主演をはじめ、歌手、女優として活躍している。

――今作に臨む思いは?

一路 抜粋して歌うのは、通しで歌うよりも集中力が必要。どんな風になるのか、そんな無謀なことが成立するのか、あるいは深く考えずに楽しんでいただけるかもしれませんが、それも含めて挑戦ですね。

春野 私も一路さんたちのステージを観たいです。語れるのは初演の方たちだけなので。

一路 最近、こんなに皆頑張っていて、再演の苦労もあると聞くと、いつまでも初演の『エリザベート』を語っているのが申し訳なくて。そろそろ一回消えて……。

春野 永遠に消えないです!!

一路 小池先生だけ置いておくから(笑)。

春野 やはり目標は一路さんなんですよ。

一路 いえいえ、本当に申し訳ないことです。ただ、今回の『ガラ・コンサート』の大阪公演ではちょっとサプライズもあります。

春野 そうなんですか? 楽しみ!

一路 皆様もお楽しみになさってくださいませ。

元トップスターが豪華共演、20周年ガラ・コンサート、始動!

 11月4日、三井住友VISAカードpresents『エリザベート TAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』の制作発表が行われた。『エリザベート』は、1996年の初演以来、再演が重ねられてきた宝塚歌劇の代名詞。その大ヒットミュージカルの日本上演20周年を記念して行われるコンサート。構成・演出・訳詞の小池修一郎、演出の中村一徳、一路真輝、麻路さき、姿月あさと、彩輝なお、春野寿美礼、水夏希、大鳥れい、白羽ゆり、龍真咲、凪七瑠海という、歴代のトート、エリザベート役の出演者らが登壇した。

 初演から演出を手掛ける小池は、「音楽が素晴らしいこと、日本人がハプスブルク家が好きなこと、脚本家・ミヒャエル・クンツェの発想が宝塚歌劇にピッタリであったこと、宝塚の戦後のヒット作『虞美人』『ベルサイユのばら』にも共通する、王妃が王朝が滅びるときにかかわること」など、人気を分析。今作についても「円熟味を増した、厚みのある『エリザベート』になる」と自信を覗かせた。「『エリザベート』を命懸けで作った」と思い出を語る一路や、「大好きなトートを頑張って演じたい」という麻路など、キャスト陣もそれぞれ熱い思いを語った。

 今作では、出演者が扮装しコンサート形式で本編を上演する「フルコスチュームバージョン」、初演の雪組メンバーによるトークとライブの「モニュメントバージョン」、歴代出演者が競演する「アニヴァーサリーバージョン」の3バージョンが上演。12月9日~18日に大阪・梅田芸術劇場メインホール、2017年1月8日~20日に東京・Bunkamuraオーチャードホールで上演される。

(敬称略)