永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

花組公演『はいからさんが通る』が開幕いたしました。

永久輝せあ 今月のメッセージ  花組公演『はいからさんが通る』が、ついに7月17日に開幕いたしました。
 まず前日は、通し稽古を終えたあとも本当に初日の幕が開くのだろうかとドキドキしながら過ごしました。そして迎えた初日。普段であれば当日の朝に通し稽古があり、その勢いのまま初日本番を迎えるのですが、今回は前日にあったので、気持ち的には少しゆとりがありました。でもそんななかでも、お客様をようやくお迎えできることが信じられないような思いもありました。

 開幕直前は、緊張感というより、高揚感が強かったです。開演アナウンスとして組長の高翔みず希さんのご挨拶、トップスターの柚香光さんのご挨拶があり、舞台袖で聞いているだけで胸が熱くなりましたし、お客様の拍手を聞いたときは本当にうれしかったです。お客様の数は半分にもかかわらず、満席時と同じくらいの活気と熱量があって感動しました。
 そして、拍手というのはこんなにもパワーをいただけるものなんだ、と。改めてそのありがたみに気付くことができました。幕が下りたあとも、皆様が客席から必死に感動や気持ちを伝えようと拍手をしてくださっている感じがして、本当に涙が出ました。

 今作は、花組生としての大劇場デビュー作ですが、自分のことよりも初日が開いた感動のほうが強く、上演中はすっかりそのことを忘れていました。それに、お稽古が始まった1月末から約半年間、ずっと花組生として過ごしてきていたので、初日に高翔さんからご紹介いただいたときも「まだ紹介していただけるんだ!」と驚いたくらいでした(笑)。

花組の皆さんとのお芝居はとても楽しいです。

 以前も少しお話ししましたが、柚香さんとのお芝居は毎回とても新鮮です。特に目を合わせてお芝居するとき、目の奥で感じていらっしゃる思いがすごく伝わってきますし、それにより私もとても気持ちが高まります。
 私が演じる高屋敷要は、柚香さん演じる伊集院忍少尉と親友。1幕で「心のままに生きてみろよ」と投げかけるのですが、2幕でようやく忍さんが心のままに生き、友人である高屋敷を手に掛けても愛する人を助けたいと思うように変わった姿を目の当たりにして、親友としてはとてもうれしい気持ちになります。

 実は3月までのお稽古では、なかなかその気持ちに行き着けなかった部分もあったのですが、休止期間中にイチから台本と向き合って改めて演じてみたら、素直にそう感じられてとても演じやすくなりました。公演ができない時間を過ごしたからこそ、「舞台に立ちたい」「お客様に観ていただきたい」「何かを表現したい」という気持ちがたまりにたまったおかげで、表現の1つひとつが濃くなったのか、繊細な気持ちの流れに気付けるようになったのかもしれません。この2幕の忍さんとの場面は、これからも大切に演じたいです。

 はなちゃん(華優希)は、本当に紅緒にぴったり! ますます表現に磨きがかかり、紅緒の強い芯がより際立ったと感じます。紅緒と高屋敷は、忍さんに紹介されて少し話すくらいの場面しかありません。ですが、高屋敷が「はいからさんが通る」という物語を書くにあたり、彼女の生き様はとても大切ですし、紅緒と出会うことで変わっていく忍さんの姿は高屋敷にとっても大事だと思うので、なるべくご一緒している場面のはなちゃんの表情を見逃すまいと意識しています。

 瀬戸かずやさんとは、2幕で1場面お芝居させていただいています。瀬戸さんご自身も、冬星さんという役も、すごく魅力的。瀬戸さんの普段のお人柄と相まって、冬星さんが愛おしい人物になっているような感じがして、少しだけですが一緒にお芝居することができて、うれしいです。
 鬼島軍曹を演じられる水美舞斗さんとは、一緒に歌うプロローグ以外はご一緒するシーンがなくて残念なのですが、袖で拝見していて……本当に素敵! 着崩した軍服もすごくお似合いですし、原作漫画に比べて忍さんと鬼島さんの場面が少ないなかでも濃く表現されていて、柚香さんとの同期の絆があってこそだと感じます。

 高屋敷が憧れる女性、環を演じるくりすちゃん(音くり寿)。今回、一番一緒にお芝居していますが、環が高屋敷のことをすごく嫌がってくれるので、ガンガンいっています(笑)。環のキャラクターも魅力的ですし、くりすちゃんともとても合っている。強いけれど憎めなく、可愛らしさもあり……高屋敷としてはたまらないです(笑)。

高屋敷が描いた『はいからさんが通る』の世界。

永久輝せあ 今月のメッセージ  以前、役作りのため、大正時代の純文学を読んだり、詩を書いてみたというお話をしました。それに加えて、小柳奈穂子先生から村上春樹さんのエッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること』をお借りして読んだことも、参考になりました。村上さんはランナーでもあり、書くことと走ることの共通点や、書くことに対しての思いを書かれているのですが、作家の頭の中を覗けたような気がして面白かったです。それから、実際に書く作業をしてみたほうがよいのではと思い、リモートのワークショップを受けて脚本も書いてみました。自分が考えていることや伝えたいことをテーマにして絞るのも難しいですし、文章を生み出すことはとても難しかったです。
 高屋敷も優秀な作家ではないので(笑)、おそらく書くことにすごく苦労したのではないでしょうか。ただ伝えたいという気持ちがとても明確になった瞬間にペンが進み、すごいスピードで「はいからさんが通る」を書き上げたのかな、と。作家として、登場人物への思い入れが深いと思うと、忍さんと紅緒さんをもっとよく見る必要があると感じたり、いい気付きになりました。

 高屋敷は役どころとして、雰囲気も物事を考えている次元も、ほかの登場人物とは違う。そう考えると、パッと高屋敷が舞台に出てきたときに、ストーリーになじみすぎないほうがよいのかな、と。流れに沿いすぎてもキャラクターが立たないですし、1人だけ見ているものが違うという雰囲気をかもし出せたらと思っています。

 今作の舞台である大正時代は激動の時代。女性の進出があり社会が変わっていくなか、あえて忍さんと紅緒の恋物語を描くというのがポイントだと感じます。その恋物語には、些細な幸せ、小さい気付き、ちょっとした自分の変化が詰め込まれている。大きなテーマを届けるというよりは、激動の時代だからこそ自分の身の回りにある幸せ、それをつかもうとする小さな勇気を伝えたいのかな、と高屋敷を通して感じます。

なじみのある和装、フィナーレの見せ方は……。

 高屋敷のお衣装はすべて和装です。雪組時代、半数近くの作品が日本物で、“マイ高下駄”を持っているくらい和装にはなじみがあるので、どちらかというと着物のほうが落ち着くかもしれません。袴をはき、帯を締ると、身が引き締まりお腹の底から力が入る。洋装とは重心や動き方がまったく違いますが、いまはそんなに意識することなく着られているので、和装での立ち居振る舞いがなじんでいるのかなと思います。

 今回のビジュアルで一番意識したのは、髪型。高屋敷の髪型は、ボサボサで汚らしく演出する必要はあるのですが、そこはやっぱり宝塚の作品として、汚く見えてしまってはダメ。毛束や毛の流れを意識しつつ、毛量が多いので眉毛も少しはっきりめに書いたりして、バランスを考えて準備しています。

 フィナーレは、軍服で踊る“大正バージョン”と、シンプルな黒燕尾の“浪漫バージョン”の2バーション。客席から観ていたときから花組さんの黒燕尾はすごくそろっていてかっこいいというイメージがありました。ほかの踊りは個性やセンスも大いに必要ですが、黒燕尾に関しては「宝塚の男役としてこう踊るべき」という正解のようなものがある気がしていて……。いままでは自分なりに研究してやってきましたが、組替えを機に教えていただこうと思い、高翔さんに重心の置き方や角度など細かいことまで習っています。
 軍服のほうは、戦闘をイメージした振付がついているのですが、必死すぎるとかっこよくないですし、ラフマニノフの楽曲でクラシカルなイメージもあるので、“余裕感”を意識しながら踊るようにしています。

※このメッセージは、7/20(月)のものです。

テーマ:普段のファッションのこだわり

  • ◎「シンプル」

    下級生のころは、チェック柄やヒョウ柄など柄物が好きでした。でも最近は、シンプルなファッションが好きになってきました。今回着用しているのは柄のシャツですが……(笑)。流行をネットでチェックしたりはしますが、あまり左右されるわけではないので、自分の好きなものを選ぶことが多いかもしれません。
  • ◎「凝ったデザイン」

    シンプルなものだけに、デザインが大事。リボンタイが付いていたり、アシンメトリーになっていたり、袖の形が特徴的だったり、ちょっと変わっていて個性的なデザインが好き。仕事の服を自分で選んでセルフプロデュースすることも多いので、いろいろな着方ができる服がいいですね。
  • ◎「自分に似合うこと」

    最終的には、これが一番大切かもしれません。絶対に欲しいものはすぐ買ってしまうタイプですが、迷った場合は必ず試着。自分に似合う丈や幅なのかどうか、襟ぐりの開き方などを確認します。メンズの服を買うこともありますが、最近はユニセックス系も流行っていて選択肢も増えているので、前より選びやすくなりました。