永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

たった1人の友人と向き合う、高屋敷役。

永久輝せあ 今月のメッセージ  花組公演『はいからさんが通る』は、一時休演となっていたのですが、その日の観劇を心から楽しみに、生きがいにしてくださっているお客様のために、1公演でも多く、公演をお届けできるよう最善を尽くさなければ、と身を引き締めています。

 私は今作で、大正時代の作家・高屋敷要役を演じています。これは私の勝手な考察なのですが、高屋敷は大正という、国も人も文化も変わってきた時代に対して、誰よりも危機感があったのかなと思っています。ちょうど以前、雪組公演で江戸時代の新選組のメンバーを演じたからこそ、「時代」というものに敏感なのかもしれませんが……(笑)。それに、なんとなく大正時代と平成が似ているなと思うこともあって。流行が繰り返すように、時代も大きく見ると繰り返すのかな、と。そういう大きな目を高屋敷は持っていたのではないかな、と感じています。
 外見的なことでいうと、意外と着物を着る男性が少ないこの作品のなかで、せっかく袴をはかせていただいているので、普段自分では盛り込まないような和服の所作も今回は積極的に取り入れるようにしています。

 7月17日に開幕して以降、まずお客様がいらっしゃる劇場空間が久しぶりなので、舞台の空気の違いやお客様の反応、息遣いなど、公演が始まってより強く感じることが多かったです。また、その時、その場でしか生まれない芝居の味も舞台の醍醐味だと思うので、柚香光さんとの場面など、人と関わるときはかなり集中しています。この時代を変えたい、自分も何かを残したいという思いで作家になった彼も、結局向き合うのは国でも時代でもなく、たった1人の友人だったのでは、と。舞台に立ってからそんな新たな流れが生まれたような気もします。

グラタンに、ギター、オーディション番組……。

 4月から6月にかけての自宅待機中もそうでしたが、この休止期間もオンラインでのダンスレッスンを受けたり、動画を見ながら筋トレ、テレビで映画やドラマを観たりして過ごしています。ほかの劇場などでやっている公演のライブ配信を観る機会も増えました。宝塚でも花組公演からライブ配信が始まりましたし、少しずつエンターテインメント業界が動き出したいま、家にいながら配信で公演を観られるというのは、本当に便利だなと思います!

 自炊も続けていて、最近のヒットはグラタン。手間がかかると思ってなかなか作れずにいたので、いまなら!と思って作りました。2〜3人前だったのですが、あっという間に完食しました(笑)。このような状況なので、なるべく外に出ないように……と、“お野菜のお取り寄せ”も始め、自分では買わない野菜や珍しいものが届いて、とっても楽しいです。最近では、漬物にもハマっていて、紫タマネギでピクルスを作ったり、“鈴かぼちゃ”という生で食べられるカボチャを使って、キムチを作ったりしました。

 宝塚や芸事など、好きなことを仕事にしている立場なので、これまでずっと趣味がありませんでした。ですので、趣味がほしい!という気持ちと、アコースティック・ギターの音色がとても好きで、舞台の曲のなかで使われると気分が高まるので、ギターを始めることにしました。花組ではギターを持っている方が多く、同期でも私含め4人中3人が持っています。なので、3人がギター、1人がピアノを弾いて、あいみょんさんの楽曲「マリーゴールド」をそれぞれが自宅で録画し、同期でコラボレーションした動画を作りました。いまはその第2弾で、音楽学校のときに授業で歌った、97期にゆかりのある曲を練習しています。完成したら、他組の同期に送るのが目標です。

 最近読んだ小説で印象に残っているのは、原田マハさん作の『サロメ』。もともと原田さんの作品が好きなことと、1月の『DANCE OLYMPIA』のときにサロメ役をさせていただいた場面があったので、本屋で見付けた瞬間に購入しました! 読み終わった後しばらく余韻から抜けられないくらい、不思議な魅力があり、出合えて良かったなと思える本です。
 あと、下級生に勧められた『I-LAND』という番組にハマっています。韓国の男性ボーカルユニットのデビューをかけたオーディション番組なのですが、ルールがものすごく過酷で、肉体的にも精神的にも試されるのが、観ていて止まらなくて……! ダンスの見せ方もすごく素敵ですし、リーダーとしてメンバーを引っ張る難しさや自己プロデュースの難しさは、私たちにも通ずるものがあるので、勉強させていただいています。

歌に対しての興味が一気に高まった瞬間。

永久輝せあ 今月のメッセージ  以前、ダンス、お芝居についてお話ししたので、今回は歌についてお伝えしようと思います。
 音楽学校入学以前は、ダンス以外はほぼ経験がなかったので、人前で歌うことはかなり緊張してしまいます。ただ、中学、高校と音楽の授業がとても厳しい学校で、ミッションスクールということもありミサ曲や聖歌を毎日歌ったり、年に1度の合唱祭はかなり気合いを入れて取り組んでいたので、歌うことはとても好きでした。
 とは言っても、人前で1人で歌うことにはなかなか慣れず、舞台よりも稽古場のほうが緊張しますし、特に歌稽古は前日からドキドキしたりもします(笑)。

 これまで歌に関して印象に残っている作品は、『るろうに剣心』新人公演。そのときに指揮の塩田明弘先生からいただいた言葉が、自分にとって1つのきっかけとなりました。当時入団5年目で、歌への苦手意識も特に強かったころだったのですが、お稽古のときに「歌がうまい人というのは、声がよく出る人でも音程が正確な人でもなく、ドラマチックな歌を届けられる人だ」と教えてくださいました。そこから、役柄や歌詞の掘り下げとともに、お客様へ伝える、届けるということをかなり意識するようになったかなと思います。

 また『New Wave! -雪-』は、若手メンバーによるショー形式のバウ公演で、これまで以上に与えられる曲の量、役割の量、課題がどっさり増え、かなり苦労した記憶があります。そのなかで『グレート・ギャツビー』という作品の「朝日が昇る前に」という、宝塚の作品のなかでもとても有名な曲をソロで歌う機会をいただいたのですが、その曲の歌稽古のとき、吉田優子先生のご指導で、びっくりするくらい一瞬で自分が変わったことがありました。と言うのも、ほとんど初めてに近いソロだったので、「やらなければ」「この壮大な音楽を伝えなければ」という気持ちが先走ってしまい、先生の「この人物はそんなに切羽つまっているの?」という一言でハッとして…。歌詞は歌詞でも、その一言一言を伝える以上に、その裏にあるもっと大きな何かに気付けた瞬間で、歌に対しての興味が一気に高まったのを覚えています。

歌をお届けするため、自分自身がいつも豊かでいたい。

 私は自分の声にかなりコンプレックスがあるので、録音してチェックしたりすると、ショックで落ち込むこともしばしばあります(笑)。男役の声は、もともと持っている方もいれば、時間がかかる人もいる。自分はどちらかというと後者なので、「声帯は筋肉!」と思って、めげずに努力するのが大事だ!と覚悟を決めています(笑)。
 また、男役といっても低い声だけが必要な訳ではないので、ボイストレーニングや声楽のレッスンなどでは、なるべく高音も、そしていろいろな声色が出せるような練習もしています。それが芝居の台詞にもつながるといいなと思います。

 歌に関してこだわっていることは、歌を届ける立場として、自分自身が常に豊かでいるということ。そして、自分がこうしたいと思うことに対して、まだまだ実力が追いついていないと思う日々ですが、音と空間を自分の味方につけるというのはいつも忘れず意識しています。そのために、曲への理解もものすごく大切ですし、自分の感覚的なこともとても重要だと思います。また、いまの課題は、苦手意識を忘れること(笑)! いままでは、不得意だと思うことがエネルギーになってレッスンに励んでいました。自分に満足することは決してすべきではないと思いますが、歌っているときだけは苦手意識を手放したいなと思います。
 そこにいらっしゃる人全員に、というより、そこにいらっしゃる1人ひとりしに対して、「その人のためにだけ歌っているような歌」というのに憧れがあります。刺激を受ける歌手の方や舞台俳優さんの歌を聴くといつもそのように感じるからです。それはものすごく精神力のいることだと思いますが、いつかそんな歌を届けられたらな、という願いがあります。

※このメッセージは、8/24(月)のものです。写真は7月に撮影したものです。

テーマ:好きな宝塚の楽曲

  • ◎「夢の城」

    『New Wave! -雪-』で歌わせていただいた曲です。私の歌に合わせて縣千くんが踊るという2人だけの場面で、その音楽と衣装の神秘的な感じが大好きで、縣くんとはおそろいのイヤリングを片耳ずつつける、というのがこだわりでした(笑)。いまもウォーミングアップなどで歌うことも多い、大好きな曲です!
  • ◎「世界の終わりの夜に」

    花組のショー『TAKARAZUKA舞夢』で、春野寿美礼さんが歌われたていた、YOSHIKIさんが作曲された曲です。オサさん(春野)の声の響きが素晴らしすぎて、何度聴いても感動します。昨年末の「タカラヅカスペシャル」で、のぞさん(望海風斗)も歌われていたので、毎回、舞台袖まで聴きに行っていました(笑)。
  • ◎「O-ZERO-」

    これは少しマニア向けかもしれません(笑)。瀬奈じゅんさんがディナーショーで歌われていたオリジナルの曲です。「その時がいつどこで、手放すものは何なのか、いまはわからないけれど、だからこその旅なのかもしれない」という歌詞が好きです。音楽学校時代に落ち込むと、寮の部屋でよく夜に聴いていた記憶があります。