永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

『元禄バロックロック』のクラノスケについて。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるのは、花組大劇場公演『元禄バロックロック』『The Fascination !』の千秋楽が近くなっているころだと思います。宝塚大劇場に足をお運びいただいた皆様、ありがとうございました。

『元禄バロックロック』では、元赤穂藩家老のクラノスケを演じています。お稽古中は、クラノスケのいろいろな顔を見せることを重点的に考えていました。タクミノカミを失って以降、堕落したように見せかけているので、話し方や姿勢、声のトーン、息の吸い方などを意識して使い分けていましたが、舞台の幕が開いてお客様が入ると、照明や音楽の力もあり、変えようと思って変えなくても自然とつながるような感覚があって……。最近はそういう表と裏の顔の使い分けも、すべてが策略ではないような気がしています。

 クラノスケの根底には、仇を憎いと思う気持ち以上に、ほのかちゃん(聖乃あすか)演じるタクミノカミがいなくなったことによる孤独や喪失感、虚無感みたいなものがあるのだと思います。ただ、せりふにも「人間は楽しく生き続けることこそ本分なのでは」とあるように、タクミノカミの無念を晴らすためだけに生きているのではなく、投げ出したくなったり、楽しいことに流されたいと思う瞬間だってあったのではないかな、と。さまざまな側面を持つ人物ですが、それを計算で変えているというよりは、どれもクラノスケなのではないかなと思うようになってきました。

 そんなクラノスケにとって重要な場面は、柚香光さんが演じられるクロノスケを自宅に呼んで話すシーン。その場面に、クラノスケの言いたいことがすべて詰まっているような気がします。
 クロノスケとクラノスケは似た者同士というせりふもあるように、尊敬するタクミノカミを失ったという境遇や抱えている思いは似ていますが、選ぶ道は相容れない部分があります。だから好意的なわけではないけれど、強い執着がある。タクミノカミという存在をクロノスケに重ねてみてしまっているといいますか……、クロノスケが自分を理解してくれていたら、タクミノカミの存在を感じ続けていられると思っているかのような、変な執着心を抱いているように感じています。
 東京公演に向けて、もっと深めて表現していけたらと思っています。

盛りだくさんなショー『The Fascination !』。

 このショーで一番好きなのは、紫の衣装を着た中詰めで、奥から舞台に登場するシーン。上級生の方々がそろって出ていらして、一緒に踊っていてとても安心感があります。振付がついたときから勢いがすごく、皆さんの舞台に対するプライドをひしひしと感じてすごく楽しいですし、とても好きな場面です!

 プロローグの後、銀橋に1人残るシーンも、日を重ねるごとに楽しくなってきました。最初は、自分に空間を埋められるのだろうかという心配や、そこまでたくさん踊るわけではなく、ただ歌って歩くという動きをどう表現したらいいのかな、と。でもそんな余白があるぶん、お客様の顔もすごくよく見えますし、一人ひとりに届けられたらと思ううちに楽しめるようになりました。

「ミモザの花」の場面は、柚香さんとまどかちゃん(星風まどか)の妖しい場面からガラッと雰囲気が変わる、ほっこり温かなシーン。踊りのニュアンスでかっこよさを追求できるというよりは、気持ちや雰囲気で見せる部分が大きい王道の場面なので、お稽古中はどうやって作っていったらいいのかと悩みました。下級生の割合も多いのでみんなで集まって話したり、たくさんお稽古したぶん、幕が開いてからも日に日に愛着が湧いてきている場面です。
 後半も花組メドレーや『フォーエバー! タカラヅカ』のオマージュなど、見どころたくさんです。ショーの話はまた次回にもお話ししたいと思います。

2021年は学びの多い1年でした。

永久輝せあ 今月のメッセージ  早いものでもう12月ですね。私の2021年は、東京国際フォーラム公演『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』から始まりました。
 この作品で演じたアイリーンは突拍子のない役だったので、お稽古中から思い切り体当たりで演じていました。組替えして1年経った時期に恥もさらして自分のすべてを見せた感じがして、周りに対しての壁や怖さがなくなったことは、私にとってとても大きなことでした。この役の前後で明らかに自分のスタンスが変わり、とても自由になった気がします。舞台に対しても学年が上がるごとにどこかかっこつけてしまいがちですが、こんなにも自由でいいのだと思えましたし、いままで自分の幅をせばめていたことに気づけたことは、すごく大きいと思います。

 その次が『アウグストゥス-尊厳ある者-』『Cool Beast !!』。演じたブルートゥスは、ブロードウェイ・ミュージカルからのギャップもすごかったですし(笑)、葛藤のある苦しい役でした。なかでもカエサル暗殺という有名な事件を担う役柄だったので、責任を果たさねばと気を引き締めながら毎日公演していました。また、はなちゃん(華優希)と瀬戸かずやさんの退団も自分のなかでは大きな出来事で、組子としての意識、花組生としての仲間とのつながりもすごく感じた、大切な作品です。

 全国ツアー公演『哀しみのコルドバ』『Cool Beast!!』は、もう……お稽古中に悩みに悩んだ公演でした。
 偉大な先輩方が演じられてきたロメロ役を自分が演じるということで、プレッシャーに押しつぶされそうになったり、自分が憧れていた役だからこそなかなか掴むまで時間がかかってしまったり……。それに『Cool Beast!!』も、前作とはまったく違う場面に出させていただいたので、2カ月にわたって演じてこられた方々のなかに初めて入るシーンも多く、不安もいっぱいありました。とにかくお稽古して自分なりのこだわりを見つけたり……目の前のことを1つひとつ地道に積み上げるしかない日々でした。

 全国ツアー中は振り返る余裕がありませんでしたが、今作のお稽古に入ったときに初めて、そんな経験が成長につながっているのかな、と。今回の公演の初日もあまり緊張せず舞台に立てたので、全国ツアーの初日に比べたらあのときよりも怖いものはないなと、そう思えることも、全国ツアーの経験が生きているように感じました。

 2021年は研10から研11になり、10年を超えた男役としてふんばりどきかなと思っていたので、いろいろな課題をいただけて、学びの多い1年でした。最近、舞台がどんどん楽しくなっています。下級生のときは、楽しいという気持ちより自信のなさだったり、きちんとお見せしなくてはという思いのほうが勝っていたような気がします。それが少し落ち着いてきて、「自分のパフォーマンスに、お客様がどう反応してくださるのかが楽しみ」と思える瞬間も感じられるようになってきました。

 今年は公演中止や無観客での開催もあり、お客様の大切さを身を以て実感しました。そして、自分自身が舞台に立ちたいと心から思ってやっているのだと改めて感じましたし、演劇やエンターテインメントがいまこの時代に観に来てくださったお客様に届けられるパワーもすごく感じることができました。

 皆様、本年も応援してくださり、ありがとうございました。2022年もどうぞよろしくお願いいたします。
 少し早いですが……どうぞよいお年をお迎えください!

※このメッセージは、11/19(金)のものです。

テーマ:「好きな冬の料理」

  • ◎『ふぐ』

    ふぐ、すごく好きなんです。コラーゲンたっぷりで、体にもいいですよね。ふぐ料理のすべてが好きですが、特にお刺し身の「てっさ」は、永遠に食べられる(笑)。「てっちり」もいいだしが出て、最後の雑炊が最高。雑炊好きにはたまらないですね。日本人で良かった!と感じられる、冬に食べたい料理です。
  • ◎『おでん』

    冬になると食べたくなるのが、おでん。皆さんは何の具材がお好きですか? 私は絶対に頼むのが、卵と大根。劇団の食堂にもおでんがあり、こんにゃくや牛すじも好きです。昔バレエを習っていたときも、おでんを買ってよく食べていました。関東風と関西風では具材が少し違うようですが、私は王道の具材が好きなので、あんまり意識したことがなかったです(笑)。
  • ◎『グラタン』

    なぜか最近、自分のなかでグラタンブームがきています(笑)。家でも、早ゆでパスタをサッとゆでて、ホワイトソースとチーズを乗せてオーブンで焼いたりして……。ソースがとろっと溶けた感じがすごくいい! ミートソースのグラタンも好きです。もともとチーズも大好きなので、上にチーズを乗せてオーブンで焼いたものが好きなんだと思います(笑)。