永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

リストと魂で通じる役柄。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージが更新されるのは、花組『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』『Fashionable Empire』の宝塚大劇場公演が開幕しているころですね。皆様、劇場でお待ちしております!

 今回のお芝居では、ジョルジュ・サンドという女性を演じます。初めてお聞きしたときは、再び女役を演じる機会をいただくとは思っていなかったので驚きましたし、実在の人物ということで調べてみると男装をしていたと言われるとても個性的な方で……。いままで経験したことのないような役柄ですし、未知な世界にワクワクしました。

 今作は、柚香光さんが演じられるフランツ・リストが、魂とは、音楽とは何かを葛藤しながら探し求めていく物語になっているように感じます。
 そのなかでリストとサンドは、恋人として描かれていますが、自分の才能を認めさせたいという野心、プライドを守る強さなど、そういう部分で同調している存在です。「男と女に魂を分けた」と歌詞にもある通り、恋人ではあるけれど、純粋な愛というより、お互いがトリガーになるような存在。刺激を与え合ったり、傷をなめ合ったり、野心を確かめ合ったり……、相手の存在によって自分の人生が正当化される、というような少し歪な関係性だと感じています。
 リストが、まどかちゃん(星風まどか)演じるマリーと共にパリを去ったときに、「あなたの野心はそんなものなのか」という問いを叩き付けるシーンがあるのですが、リストに対して強さや欲の象徴のような役割も持った役どころなのかなと思っています。

 またリストとの関係性だけでなく、後半は水美舞斗さんが演じられるショパンとの関係性も描かれます。史実のサンドはショパンの恋人として有名ですが、今作でもとても素敵な展開になっています。そこでサンドが何に気付き、どう成長したのか、どういう風に彼女の人生が行き着くのかということは、いまお稽古で探している最中です。

さまざまな面を持った女性をどう演じるのか……。

 サンドは、自分の欲に正直に生きていて、生命力にあふれた女性だと感じます。とても強い女性ですが、キツいというよりは、常に堂々としていて余裕があり、地に足が着いている。サンドが住んでいる屋根裏部屋がよくシーンとして登場するのですが、そこに芸術家たちを集めるくらい芸術に対して人一倍愛が深く、周囲からも一目置かれた存在。その懐の深さも魅力の1つだと思います。

 いまジョルジュ・サンドについて書かれた本を読んでいて、面白いなと思ったのがサンドの作品から人生観を分析する本。サンドは自分の人生を作品のネタにしているところがあり、作品のなかにその時の価値観がすごく表れていると思うので、そういった本に目を通してのヒントにしたりしています。

 また作・演出の生田大和先生から、「シャンソン歌手のようなイメージはどうか」とお言葉をいただいたので、前から素敵だなと思っていたエディット・ピアフの人生観、生命力のようなものを参考にしてみたり、最近ではシャンソンを聴きながら台本を読んだりしています。シャンソンは独特な雰囲気があり、ミステリアスで、愛情深くて、美しさだけではない表現がある。そういう雰囲気を少しでも役に取り入れられないかな、と思っています。
 サンドは男装の麗人といわれていて、舞台上でも基本的にはパンツスタイルです。当時、女性がスカートをはかないのはかなり特殊なことなので、1つの個性として人物像に活かせたらいいなと思っています。

 今作のサンドは、リストとの関係においてはとても女性らしいですが、男気のある強い部分もあったり、温かさやミステリアスな部分を持っていたりと、すごく矛盾をはらんでいてバランスが難しい。役の人物像としてもそうですし、外見的にもパンツスタイルに苦戦しています。お稽古場でジャケットを着ていると、どうしても男役のスイッチが入ってしまって……(笑)。メイクも含め、いろいろと試行錯誤していきたいなと思っています。

ファッショナブルでエネルギッシュなショー。

永久輝せあ 今月のメッセージ 『Fashionable Empire』は、「洒落者たちが集う帝国」というテーマのショー。作・演出の稲葉太地先生が「いまの世の中で皆さんを応援する、背中を押すエネルギーがある作品に」とおっしゃっていた通り、全体を通してエネルギッシュな作品になっていると思います。

 楽しみにしているのは、ファッションショーのシーン。ショーのためのスタッフが動き回ったり、ゴージャスなアニマル柄の衣装をまとったモデル役の方がたくさん出てきたりと華やかで、お芝居要素のある面白い場面で、私はデザイナーとして登場します。

 中詰めの冒頭にある、飛龍つかさ君、帆純まひろ君との3人の場面もとても楽しみ。学年も近くてよくお芝居でも一緒になる2人なので安心感もありますし、残念ながら今作で飛龍くんが退団してしまうので、最後にご一緒できてすごくうれしいです。ショーのお話は、また次回にもしたいと思います!

夢のような1stフォトブック。

 3月に発売になった1stフォトブックのことに触れていなかったので、少しお話ししたいと思います。今回のフォトブックでは以前から「こういうスタイルやコンセプトを試してみたい!」と思っていたものを集めて、いろいろな面をお見せできるようチャレンジしました。

 なかでも着てみたかったのが、クラシカルな紳士風のスーツ。夕日の中のようなイメージで、大人っぽい雰囲気にしてもらいました。最近は宝塚でもアイドル的な中性的な魅力も求められることも多いですが、私は男役ならではのクラシカルなものがとても好きで、今後そういう表現もできるようになりたいという思いも込めて、今回挑戦させていただきました。あとはたくさんの風船を持ちたい!という願望があって(笑)、少しノスタルジックなカットを撮ってみたり……。撮影時はまだ表紙を何にするのか決まっていなかったので、意外性を突いて思いっきり爽やかな柔らかい感じのカットを選んでみました。

 そしてうれしかったのが、のぞさん(望海風斗)との対談です。新人公演時代からお世話になり、一緒に楽しい時間を過ごしてきましたが、学年が上がり組替えを経たいまの自分で、のぞさんとお話をしてみたい!と思いリクエストさせていただきました。『冬霞の巴里』の公演前だったのでそういうお話もできてすごくいい時間でしたし、久しぶりにお会いできて、とってもパワーをいただきました!

※このメッセージは、5/17(火)のものです。

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テーマ:「好きな作家」

  • ◎『原田マハさん』

    以前、このコーナーでもお話ししていますが、大好きな作家さんです。こんなに同じ作家さんの作品を買って読むという経験は初めて。次に何を読もうかと迷ったとき、つい原田さんの本を選んでしまいます。文章がとてもなじみやすいですし、読み終わったあとに温かい気持ちになる。疲れたときにホッとできるような本というのは、私にとってとても大切です。
  • ◎『髙田 郁さん』

    雪組時代、日本物の上演が多く『心中・恋の大和路』という公演で丁稚の役を演じたとき、先生から参考にと「銀二貫」を勧められたのがきっかけです。その後雪組で舞台化されましたし、なじみのある作家さんです。時代小説には難しいイメージがありましたが、髙田さんの小説は人と人とのつながりが描かれていて、温かさが残るので読みやすい。一時期「みをつくし料理帖」シリーズにもハマって読んでいました。
  • ◎『辻 仁成さん』

    小学生のときに図書室で出合った、辻さんの「ミラクル」という小説がすごく好きでした。挿絵の雰囲気もとっても素敵なんです! あまりほかの人に見つからないように、棚の端っこに移動してみたりして……(笑)。そのくらい好きでしたね。母親を探す子供のお話なのですが、大人になってからは読んでいないので、いまだったらどう感じるのか手に取ってみたいですね。