永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

花組全国ツアー公演、ご観劇いただいた皆様、ありがとうございました。

永久輝せあ 今月のメッセージ  今月は、少し前になりますが、11月に閉幕した花組全国ツアー公演『フィレンツェに燃える』『Fashionable Empire』について、振り返ってお話ししようと思います!

『フィレンツェに燃える』では、憲兵隊の将校、オテロ・ダミーコ役を演じました。お稽古中は、自分が発するせりふや相手とのやりとりに重点を置いて取り組んでいましたが、舞台で演じてみて、せりふを発するとき以外も大切だなと、改めて感じました。上司の元で控えたり、街角や酒場で様子をうかがっているときでも、何か異質な空気をまとってそこに存在するということに、とても集中していました。

 オテロはまどかちゃん(星風まどか)演じるパメラの元恋人で、最後に脅迫しつつ「昔のようにやり直さないか」と駆け引きを持ち掛ける場面があり、どういう心情なのだろうとお稽古中にずっと考えていました。物語のなかでパメラのことを話す人は多いのですが、オテロがパメラについて話すときには、愛おしさというより、憎しみや恨めしさみたいなものがベースにあるような気がして……。ひねくれた愛のなかの本質がどういうものであるのか、そこはある程度お客様にも委ねて、私は完全には決めずに演じるようにしていました。

 パメラの心の奥底には純粋なところがあるだろうと思うのですが、夫である侯爵の死にはなんらかの形で関わっていて、身に覚えのない罪を着せられたわけではないと、私は思っています。そんな黒い過去や計り知れない思いも含めて、みんなが恋い焦がれ、追いかけてしまう女性。オテロもそのうちの1人で、そういう女性を自分のものにしたい、支配下に置いておきたいと思っている男性こそ、自分のプライドが高く、自尊心を満たしたいものなのではないかな、と。そこが柚香光さん演じるアントニオと真逆な部分で、結局アントニオは力づくでもパメラを自分のものに、とはせず結ばれない道を選びます。そこに周りにない彼の素敵さをとても感じたので、だからこそオテロはアントニオと対照的な男でありたいなと思って臨んでいました。

 ラストシーンについては、初めて台本を読んだときに、必ず誰かが誰かを想っていて孤独な人はいないという印象があったとおり、たとえオテロのような人でも嘆いてくれる人がいるということが表現されているのかなと感じました。それがカーニバルのにぎやかな雰囲気のなかで描かれていて、楽しんでいる人もいれば、大きく運命を変えられてしまった人もいる。その対比もとても興味深かったです。

髪形へのこだわり。

永久輝せあ 今月のメッセージ  オテロは、育ちのいい純粋な貴族とはまた違った雰囲気を出せるように、髪形にもこだわりました。帽子を脱いだときのインパクトが欲しかったのと、悪い男のイメージが出るようにと、ウェーブがかった髪形にしたいと演出の大野拓史先生にご相談させていただきました。赤茶の髪色は先生からご提案いただいたのですが、軍服のラインも赤でしたし、鮮やかな青色の軍服も着るのでそのコントラストもいいのかな、と。イタリア人らしい赤茶色という絶妙な色味を狙っていたので、初日が開くまでドキドキしていました。

全国ツアーならではのご当地アドリブ!

『Fashionable Empire』のプロローグは、お客様にも一緒に踊っていただける場面でしたが、いかがでしたでしょうか? なかなか振付が難しかったようで、初日はお客様も慣れていなかったのかなと感じましたが、何度かお越しいただいているお客様もたくさんいらしたのか、回を重ねるごとにすごくそろってきていて感動しました! ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 全国ツアー公演は、ご当地ならではのアドリブも魅力ですよね。私もファッションショーの場面で、毎回違うアドリブに挑戦させていただきました! その土地ごとに出身の出演者に、方言や名物などをリサーチし、教えていただいたことを元に同じ楽屋のメンバーや、近くで着替えている方々と一緒に考えたりしていました。毎回うまくいくかドキドキしましたが、おかげでたくさん思い出ができました!

 また、和海しょうさんと航琉ひびきさんとご一緒させていただいた「Beatiful Night」の場面も、幅が狭い銀橋で踊っていた前作とは違って本舞台で演じたので、お互いの存在をより感じて顔を見合わせる瞬間も増え、より一緒に奏でているような感覚がありました。

 どこも素敵な町でしたが、やはり初めて全国ツアー公演で訪れた宮城、そして2都市を回ることができた長野が印象に残っています。宮城では、2日連続で牛タンのお弁当をいただきました! もともと牛タンが大好きなのでうれしかったですし、ワサビを付けて食べるのも、とてもおいしかったです。長野は3年前の全国ツアー公演でも訪れましたが、そのときよりも少し長く滞在でき、きれいな景色やおいしい食べ物などもより満喫できました。1日3個くらいおやきを食べたかもしれません(笑)。舞茸のおやきがとても気に入りました!

学びの多い全国ツアーを経て、次作への思いは……。

 全国ツアー公演は、お稽古場から公演期間まで、とても学びの多い時間でした。芸事のことだけでなく、自分の在り方みたいなものを見直すきっかけになったなと思っています。

 オテロが周りとは違う雰囲気を出さないといけない役だったこともあり、周囲がどうであれ、自分が表現したいもの、自分の空気を出していくことも大切なのだな、と。雪組の組長さんだったみとさん(梨花ますみ)、花組の組長さんだったさおりさん(高翔みず希)がご出演されていて、私にとってとても安心感があり、心強さも感じるお2人です。そんな昔の自分、いまの自分を知ってくださっているお2人とお話する機会があったことで、さらにそう感じたのかもしれません。芸事においては、周りにとらわれずに自分の表現をする集中力、ある程度の“わがままさ”みたいなものも必要だと、すごく勉強になりました。

 花組の次作は、2023年1月1日から宝塚大劇場で始まる『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT(アンシャントマン) -華麗なる香水(パルファン)-』です。『うたかたの恋』は、初演が40年前、大劇場公演も30年ぶりという作品です。
 今回は小柳奈穂子先生の潤色・演出で、役が増えていたり場面の構成も変わっているので、台本を読んだときにまったく違う印象を受けました。ただ、私がもともと好きだった場面や、作品をご覧になったことがある方が「ここは絶対に外せない!」と思われるようなシーンは入っていると思いますので、楽しみにしていただけたらと思います! 私は、柚香さんと水美舞斗さんの従兄弟で、実在の人物・フェルディナンド大公を演じます。また役のお話は、次回お伝えできたらと思います!

 少し気が早いですが……本年も応援していただき、ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします! 良いお年をお迎えくださいませ!

※このメッセージは、11/14(月)のものです。

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テーマ:「毎年恒例!師走にやること」

  • ◎『温泉』

    師走にやりたいことでまず思い浮かぶのが、温泉! 寒くなってきましたし、皆さんも温泉に入りたくなりませんか? いまはなかなか行けなくて残念ですが、昔は近くの有馬温泉によく行っていました。12月はお稽古中ということも多いのですが、お正月公演でない限りは少し気持ちに余裕があるので、休日に一泊してのんびり温泉を楽しんだこともあります。
  • ◎『クリスマスソングを聴く』

    クリスマスも好きですし、クリスマスソングが流れているシーズンも大好き! 10月にバックストリート・ボーイズさんがクリスマス・アルバムをリリースされたので、全国ツアー公演中も、宿泊先や移動中にずっと聴いていました。だから今年は10月から、早々とクリスマス気分(笑)。もちろんいまも、引き続きクリスマスソングを聴いています!
  • ◎『チーズフォンデュ』

    私の実家では、クリスマス料理の定番は、チキンというよりもチーズフォンデュ。野菜やパン、ササミ、ホタテなどを付けていただくと本当においしくて、大好きでした。だからこの時期になると、無性に食べたくなるんです。チーズフォンデュができる卓上調理器を持っているのですがまだ使ったことがないので、今年こそ出してみようと思います!