永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

本年もよろしくお願いいたします。

永久輝せあ 今月のメッセージ  明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします!

 皆様はどんな新年を迎えられましたでしょうか? 花組は、元日から宝塚大劇場で『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水-』を上演中です。

『うたかたの恋』は40年前の初演以来、全国ツアー公演などで何度も再演されてきた名作で、私も再演バージョンをいくつかDVDで拝見しました。冒頭に舞踏会の場面があり、そこから2人の出会いの日にさかのぼり、物語が始まります。この舞踏会は紆余曲折あった後の場面で、後半にまた同じシーンに戻ってくるという構成になっているのですが、いろいろな物語を経た後のシーンだと知ると場面の重さ、登場人物が抱えている思いも違って感じられ、初めて観たときには鳥肌が立ちました。

 ほかに、エリザベートが偶然マリーと鉢合わせてしまうシーンも好きです。ミュージカル『エリザベート』にも登場する実在の人物ですが、『うたかたの恋』ではまた役の切り取られ方が違うのが面白い。ルドルフとの親子関係だけでなく、エリザベートの複雑な心境、マリーに対して見せる優しさも印象に残りました。
 作品だけでなく、楽曲も「タカラヅカスペシャル」や音楽学校の文化祭でよく登場するなじみ深い名曲ですし、白い衣装のルドルフとマリーが階段上で歌うシーンは、前奏を聴いただけで気持ちが高揚します!!

 そんな名シーンや名曲は残しつつも、今回は30年ぶりの大劇場公演ということで新たな演出となっています。これまで私は、ルドルフとマリーの愛や強い絆が際立つ作品という印象を抱いていましたが、今作では柚香光さんが演じられるルドルフとまどかちゃん(星風まどか)演じるマリーの葛藤だけでなく、水美舞斗さんが演じられるジャン、私が演じるフェルディナンド大公など周りの人々の思いが絡み合う群像劇のような雰囲気もあり、それによってルドルフの苦悩や生き様との対比がより強く見えるのではないかなと感じます。

 また、それぞれの思いを抱えて歌う「双頭の鷲」という新曲も加わり、最後の舞踏会に向けてより迫力が増すのではないかと思っています。

実在の人物だからこその役の向き合い方。

永久輝せあ 今月のメッセージ  フェルディナンド大公は、第一次世界大戦のきっかけとなったサラエボ事件で暗殺される、教科書にも必ず載るくらい有名な歴史上の人物です。叔父である皇帝のフランツ・ヨーゼフから、恋人のソフィーとの身分違いの結婚に反対されて「皇帝の座か結婚かを選べ」と言われ、「どちらも取ります」と答えたという有名な逸話があります。

 そんな史実から抱く印象と、今回の『うたかたの恋』におけるフェルディナンド像はかけ離れています。ハプスブルク家の王族で、2番目の皇位継承者という立場ともなれば、本来は冷酷で強欲な面があるのではと思いますが、作品のなかで描かれる彼は優しく穏やかな性格。皇位というものに対しても、「野心がない」とは言えない立場にいて、叔父のフリードリヒ公爵から期待されたり、利用されていても反発することができず、常にプレッシャーを抱えています。そんな立場と本来の性格がそぐわないということが彼の苦しみの1つでもあり、ずっと抱えている爆弾のようなものなのかなとイメージしています。

 潤色・演出の小柳奈穂子先生とお話しするなかで、『うたかたの恋』で描かれている時代のなかで彼に何か大きな変化があったとして、それが史実の「皇位も結婚も両方取る」と言い放つ頑固な人物につながっていったのかもしれないね、とお言葉をいただいて。実在の人物だからこそ作り込める部分ですし、歴史の1つの考察にもなると思うと、とても興味深いです。

 また、ルドルフとジャン、フェルディナンド大公にはそれぞれに恋人がいます。3人は従兄弟同士で友情もありますが、恋人との関係性、最終的に選ぶ道がそれぞれ違う。その三者三様の恋模様も面白いなと思います。

華やかで盛りだくさんなレビュー。

『ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水-』は、場面ごとにテーマの香水が設けられています。香水には、トップからミドル、ラストノートという香調(ノート)がありますが、そんなノートの変化を1時間のレビューに置き換えた作品になっています。

 香水の種類のように、場面によって爽やか系、オリエンタル、ミステリアスと印象が全然違い、盛りだくさん。クラシカルなプロローグから始まり、客席参加型の中詰めなど、たくさんの場面があってすごく華やかなレビューになっていると思いますので、ぜひ楽しんでご覧くださいませ! 詳しくはまた来月お話しできたらと思います。

2023年の抱負は……。

 今年の抱負をお話しする前に、まず2022年を振り返ってみようと思います!
『元禄バロックロック』のクラノスケから始まり、11月に閉幕した全国ツアー公演『フィレンツェに燃える』のオテロまで、振り幅のある役に挑戦させていただいた1年でした。すべてまったく違う役柄のようでいて、その経験が必ず次の役に活きていたように感じます。

 そのなかで『冬霞の巴里』という作品は、私にとってとても大きかったです。共演者の皆さんが作品に向き合い続けてくださったおかげで、特別な体験をさせていただいたな、と。この舞台を経験できたことで、今後の宝塚人生において地に足を着けて歩んでいける1つのきっかけになったのではないかと思っています。それと同時に、役も作品も難しく、オクターヴの苦悩に私自身もかなり影響を受けてしまったので、違うコンディションで臨んだらどうだったのかなとも感じました。

 ジョルジュ・サンドも複雑な人物で女役でもあったので、お稽古中、なかなか役がつかめなくて悩み、苦戦した役でしたが得たものは大きかったです。柚香さんと水美さんと恋人関係の役を演じさせていただいたことで、距離感が縮まったような気がしてすごくうれしかったことが一番印象に残っています。

 私はいつも、作品の全体像を見極めつつ自分の役のバランスを調整していくことが好きなのですが、役柄として物語に深く関わる役であったり、主演させていただいたこともあり、自分が貫きたい表現というものをしっかり持たないといけないなと、そんな学びのある1年でした。

 また、2022年は葛藤の多い役どころが多かったためか、なんだか複雑な1年だったので(笑)、今年はシンプルを目指したいです。これをやりたい、見せたいというものを絞り、それを信じてやってみる。シンプルですが逆にパワーがいると思うので、挑戦していきたいと思っています!

※このメッセージは、12/12(月)のものです。

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テーマ:「オーストリアといえば」

  • ◎『マリー・アントワネット』

    オーストリアという国を初めて強く認識したのが、マリー・アントワネットの存在でした。パリのイメージがありますが、出身がオーストリアなんですよね。『ベルサイユのばら』の漫画を読んだときに、オーストリアから嫁ぐマリー・アントワネットをオスカルが護衛するというシーンがあって、印象に残っています。
  • ◎『ハプスブルク家にまつわるミュージカル』

    いま『うたかたの恋』を上演しているからかもしれませんが、やはりオーストリアといえばハプスブルク家の人々を描いたウィーン・ミュージカル。『エリザベート』はもちろん、『ルドルフ〜ザ・ラスト・キス〜』も好き。同じ人物でもそれぞれの作品によって描かれ方、切り取られ方が違うのも面白いですよね。
  • ◎『音楽家』

    特にオーストリアの首都・ウィーンには、モーツァルトやベートーヴェンなど音楽家のイメージがあります。またミュージカルの話になりますが、ミュージカル『モーツァルト!』も大好きなんです。オーストリアはまだ訪れたことがないので、音楽、芸術の都・ウィーンにいつか行ってみたいです!