永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

フェルディナンド大公が選ばざるを得なかった選択肢。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるころには、花組公演『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水(パルファン)-』の宝塚大劇場公演が閉幕していると思います。ご観劇いただいた皆様、ありがとうございました。

『うたかたの恋』で私が演じているフェルディナンド大公は、ハプスブルク家のなかでルドルフに次ぐ2番目の皇位継承者という、難しい立場に置かれた人物です。時代的にも家柄的にも、また軍隊でも順調に昇格してある程度の立場があるため、本来野心があって当然なのですが、この作品で描かれているフェルディナンドはとても穏やかな性格で、王位継承や出世に対する欲はあまりないと思っています。

 そんなフェルディナンドにとって一番大きなことは、ソフィーという恋人の存在です。ハプスブルク家は伝統的に王族同士で結婚することで繁栄してきた家柄なので、もちろんフェルディナンドにもそれが求められている。ですが彼は、従姉妹の侍女であるソフィーと身分違いの恋をしています。

 お稽古場では、皇位継承者であるにもかかわらず、リスクのある身分違いの恋を突き進むだろうかということが、少し疑問に感じていました。彼女への思いが強かったにしても、叔父にばれたらどうなるのか、結婚するとなったら皇帝に何を言われるかわからないと考えたら、フェルディナンドとしてはかなり勇気が必要なのでは、と。
 そうだとすると、周りに求められるまま優等生、好青年に振る舞っている彼の、唯一の反発心、反骨精神の表れでもあったのかなと感じました。そして、そのような部分がフェルディナンドの甘さでもあり、物語後半にかけて彼女との関係を絶対に貫こうとしたゆえ、「愛を守るなら皇帝になるしかない」と叔父から言われ、その選択肢を選ばざるを得なかったような気がしています。

周囲の人たちへの思いは……。

永久輝せあ 今月のメッセージ  柚香光さんが演じられる従兄弟のルドルフには、憧れや尊敬とともに、その背中をすごく見ているような感覚があります。まどかちゃん(星風まどか)演じるマリーとの恋を心から祝福していますが、自分も同じく身分違いの許されない恋をしているので、どちらかというと気になるのは、ルドルフと正妻ステファニーとの関係性。2人の関係があまりうまくいっていないシーンが何度か出てくるのですが、伝統に従い愛する人と結ばれなかった場合の自分の行く末を見ているような気がしています。

 水美舞斗さんが演じられるジャンに対しては、自分にはない自由さを感じています。ジャンも街の娘・ミリーと身分違いの恋をしていますが、フェルディナンドは王位継承者としてハプスブルク家の世界のなかにいるので、自分はジャンのようにはなれないという、うらやましさや憧れもあります。

 ルドルフ、ジャン、フェルディナンドは従兄弟同士ですが、恋人との関係性は三者三様。それぞれが愛する人との愛を貫いたことは共通していても、選ぶ選択肢は違う。ですが史実では、結果的に3人ともが恋人とともに死んでしまうということも、とても興味深いと感じます。

 今回もう1人自分にとってのキーパーソンである羽立光来さんが演じられる叔父のフリードリヒ公爵に対しては、彼が求めるフェルディナンドであろうと常に無理をして頑張っている気がします。ルドルフを守ろうと叔父さんを止める際、恋人の存在を突き付けられて何も言えなくなってしまう場面があるのですが、『うたかたの恋』では叔父さんが自分にとって父親替わりのような存在でもあるのかなと思うので、そういう面での逆らえなさや圧倒的な影響力を感じています。

史実につながるような結末。

 フェルディナンドは最終的には、逮捕なんてしたくないという自分と葛藤しつつも、ルドルフを逮捕するという選択をします。その際、「逃げるなよ」という意味で「兵が囲んでいる」と忠告しますが、いざ彼の背中を見たら、つい逃げ道を口走ってしまう。それに対してルドルフは「ありがとう、だが、逃げるつもりはない」と答えるのですが、彼を逮捕して裏切ると決めた、王位継承者になると決めた自分に残っている弱さ、決意の緩みみたいなものをすべて見透かされているような気がして……。「こんなことではだめだぞ」と言ってくれているような感覚があり、彼の言葉の意味や覚悟を悟ったからこそ、フェルディナンドはその後変わっていくのではないでしょうか。そうやって、史実のような「皇位も結婚も両方取る」と言い放つ人物につながっていったら面白いなと思っています。

いろいろな面をお見せしたいです!

『ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水(パルファン)-』は、プロローグからすごく豪華! 香水のメリーゴーランドというこだわりのセットで、柚香さんをはじめとする調香師たちが登場し、ハットをかぶりケーンを持ってクラシカルに踊るロイヤルな雰囲気です。

 ニューヨークがモチーフになった場面があるのですが、ガーシュインの曲が使用されいて、洗練された粋でおしゃれなシーンになっています。フレッド・アステアのようなシアターダンスを踊るのですが、すごく楽しくて、お稽古場からかなり盛り上がりました。そして、まどかちゃんがマリリン・モンローをイメージさせる役で登場するのですが、想像しただけでかわいいですよね! 楽しんでご覧いただければと思います。

 その後は、中国風の衣装で扇子を持って踊る中詰め。『虞美人』の「赤いけしの花」という曲が使われたりして、オリエンタルな雰囲気です。客席参加型なので、ぜひ皆さんと一緒に扇子を持って踊れたらうれしいです! 

 続く「Woody&Marine」の場面はイギリスの港町が舞台で、私は水兵さんの役で出演します。大人っぽかったり、ムードがある場面が多いなか、ケルト音楽が使われた軽やかで開放的な場面になっていると思うので、楽しんで演じたいです。

 今回のレビューではたくさんの場面に出演させていただきとてもうれしいですが、場面によってまったくテイストが違うので、自分をちゃんと変えて、いろいろな面を表現していかないといけないな、と。東京公演に向けても、各場面を深めて表現していけたらと思っています。
 皆様、東京公演もどうぞよろしくお願いいたします!

※このメッセージは、1/20(金)のものです。

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テーマ:「好きな香り」

  • ◎『お香』

    お香の少し焦げたような煙の匂いが好きで、最近は毎朝お香を焚き、白湯かハーブティを飲むことがルーティンになっています! いまはハマっているのはシダーウッドのお香で、ウッディな感じが気に入っています。ときにはオリエンタルな白檀や、甘やかな香りやスパイシーな香りのお香にすることもありますし、セージを焚くこともあります。
  • ◎『季節の香り』

    以前にも秋の匂いが好きとお話ししたと思いますが、季節の変わり目の匂いがすごく好きなんです! 「季節が始まった気がする!」とテンションが上がります(笑)。春の花の匂い、少し湿度のある草木のような夏の夜の匂いとか……。冬も、昔から雪が降ると必ず外に出て、しばらく深呼吸していました(笑)。
  • ◎『ムスク系』

    ジョルジュ・サンドを演じていたときはパリの香水をつけていましたが、基本的にはあまり香水はつけません。でもムスク系の甘い、奥深い感じの香りは好きで、ルームフレグランスやスプレーなどを見かけると、ついつい買ってしまいます。ほかにもイランイランの香りも好き。少しアクセントがあるような香りが好きなのかもしれませんね。