永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

花組公演『二人だけの戦場』について。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるころには閉幕している『二人だけの戦場』東京建物 Brillia HALL公演、ご観劇くださった皆様、ありがとうございました!

 この作品を初めて映像で拝見したとき、ラストシーンに一番感動したのですが、実際にお稽古が始まってからも、それは変わりませんでした。どうしてこんなに心が動かされるのか、公演を重ねていくなかで、その理由がわかった気がします。
 物語の中心で描かれている時代から、柚香光さん演じるシンクレアとまどかちゃん(星風まどか)演じるライラが再会するラストシーンまで15年経っています。その年月は、誰かをひたすら思い続けたり、信じ続ける戦いでもあり、そこがすごく胸に響くのかな、と。タイトルの「戦場」は、民族間の争いや戦闘という意味もありますが、いろいろな「二人だけの」関係が出てくるなか、私が演じるクリフォードで言うと、シンクレアと「友であり続ける戦い」という意味も含まれているのかなと感じました。

 クリフォードはとても友人思いの青年ですが、ただシンクレアとの美しい友情だけを表現しようとしてもなかなかしっくりこなかったんです。「揺るがない友情」のなかにも、近い存在だからこその負けたくない思いや悔しさ、焦りや不安、嫉妬、「いい友達でありたい」「友として誇りに思ってもらいたい」という欲も必ずあるのではないかな、と。そういうきれいではない部分にも目を向けるようにしたら、クリフォードの在り方が腑に落ちるようになりました。
 シンクレアと歌う旅立ちの曲「理想の為に」は、愉快なナンバーではありますが実は重要なことを言っていて、シンクレアに「理想もいいが、思いつめるなよ」と伝えています。それが後半の、彼がいろいろなことを1人で抱え込み、どんづまりになっているところに「言ったろう、思いつめるなって」と喝を入れる場面につながる。そのなかには「自分だって共に戦うのに」という思いもあるのかな、と。たとえ世の中で何が起ころうと、どんな戦いが起きようとクリフォードが見つめているのは友情関係という、とても“小さく”て“大きなこと”。そんな身近なものをただひたすら、見つめているところが、私が思うクリフォードの一番の魅力です。

お稽古を重ねた裁判シーン。

永久輝せあ 今月のメッセージ  今作は、5年後の裁判シーンが途中何度も出てくる構成となっているので、作・演出の正塚晴彦先生にたくさんお稽古していただきました。役と向き合うなかでも、裁判シーンはかなり重要だなと感じたので、「ここまでして裁判で戦うのはなぜか」ということや、裁判シーンをやっていて気付いたことをその前の場面に生かしてみたり、裁判の場面から逆算して作っていったように思います。減刑を勝ち取るためには言葉に説得力が必要ですし緊張感を出すためにも、裁判映画をいくつか観たり、実際に裁判の傍聴に行って勉強しながらお稽古を重ねました。
 舞台上では早替えですぐに裁判シーンになるところもありましたが、なるべく息を整え、それまでに何が起きて何を感じたかということをきちんと背負って出るように心掛けていました。

皆さんとのお芝居について。

 柚香さんとは、ここまで2人だけで向き合い、深く濃い友情で結ばれた役を演じさせていただくのは初めてでした。お芝居をしていて柚香さんの目がとても魅力的で、悲しみや嘆きなど感情がすごく伝わってきて、気持ちが動かされます。シンクレアが危険な目に遭わないように、忠告したり、喝をいれたり、思ったことを率直に伝えるのがクリフォードの役目ではありますが、それによって傷付いてはほしくないという思いもあって複雑です。

 ライラとはせりふはほとんど交わさないですが、ラストシーンでクリフォードがライラをシンクレアのもとに連れて行くことにすごく意味があると思っていて。最初は、ライラたちの民族に対しての嫌悪感や友人としても2人の関係に反発する気持ちもあるのですが、シンクレアにとってどれだけ大切な人なのかということを、あるタイミングで実感する。そのためにも、シンクレアとライラの様子を取りこぼすことのないようにしっかり見て意識するようにしています。

 この作品には、専科からお2人が特別出演されています。まず高翔みず希さん。やはりさおりさんがいてくださると穏やかな空気になりますし、安心感がすごくあります。残念ながらお芝居はご一緒する場面がなかったのですが、お稽古場や袖で一緒に過ごすことができ、うれしかったです。
 同じく特別出演の凜城きらさんも、とてもお優しい方で気さくにお話ししてくださるので、楽しくご一緒させていただいています。凜城さん演じられるハウザー大佐の司令室の場面は、毎回楽しく大好きです! 凜城さんとは雪組ではちょうどすれ違いだったので、やっと今回ご一緒できてすごくうれしいです。

 今作も勉強になることばかりでしたが、なかでも正塚先生の存在はとても大きかったです。先生は「演者は結果に責任を持つな。うまく演じようとしないでいいから、やるときはすべてを捨てて演じてほしい」とおっしゃっていて、とても心強く、うれしく感じました。舞台で生まれてくるもの、湧き上がる感情だけで演じること。そのためには準備がたくさん必要ですが、演じるときは「一切忘れろ」と。なかなか難しいことですが、その感覚を追い求めたことはとても勉強になりました。

刺激を受ける、いろいろな舞台。

 他組や外部公演で拝見した舞台についても少しお話ししたいと思います! まず、少し前にはなりますが星組公演『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』を配信で拝見しました。 礼真琴さんもとっても素敵でしたし、舞空瞳ちゃんもかわいらしく、ストーリーや楽曲も素晴らしく、号泣しました! この作品に向かう星組さんのエネルギーをものすごく感じました。

 雪組公演『海辺のストルーエンセ』は劇場に足を運び、観劇しました。朝美絢さんのいろいろなお姿を観られ、同期や知っている下級生も至るところで活躍していて、すごくうれしかったです。雪組の舞台に向ける“姿勢の潔さ”も感じましたし、『冬霞の巴里』でご一緒した指田珠子先生の世界観、お衣装や音楽も斬新で見応えがありました。

 そして外部公演では『ハリー・ポッターと呪いの子』と『ドリームガールズ』を拝見しました! まず、ちぎさん(早霧せいな)がご出演された『ハリー・ポッターと呪いの子』は、ようやく観ることができとてもうれしかったです! もともと大好きな物語ですし、ハーマイオニーのしなやかさや賢さ、強さ、かっこよさがちぎさんにぴったりで、お芝居にぐいぐい引き込まれました。
『ドリームガールズ』では、客席で観劇するのが久しぶりだったこともあり、エンターテインメントを久々に浴びて、身体が活性化された気がします! のぞさん(望海風斗)をはじめ出演者の皆さんが本当に素晴らしく、歌のパワーを感じましたし、のぞさんのスターオーラがすごい!! お衣装も似合っていらして、とっても美しかったです。

 最近は、雪組公演『Lilac(ライラック)の夢路』『ジュエル・ド・パリ!!』も観ることができました。さきさん(彩風咲奈)がトップになられてから大劇場公演を客席で拝見するのが初めてだったので、とても感動しました。ショーも場面ごとにさきさんが醸し出される雰囲気が違っていて、とても素敵でした!
 ほのかちゃん(聖乃あすか)主演の『舞姫』チームも、舞台稽古を拝見しました。やはり自分の組の公演を観るのは喜びですね。ほのかちゃんの成長をとても感じましたし、作品自体も見終わってすぐ消化しきれないほどいろいろなことが胸に響いて、本当に素晴らしかったです。

 花組の次作、宝塚大劇場公演は『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』『GRAND MIRAGE!』です。小柳奈穂子先生の日本物も『幕末太陽傳』以来なので勉強になると思いますし、岡田敬二先生のロマンチック・レビューシリーズも初めて出演するので、とても楽しみです。またお稽古が始まったら、お話ししますね!

※このメッセージは、5/16(火)のものです。

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テーマ:「軍服の着こなしのポイント」

  • ◎『肩幅』

    軍服は特にシルエットが重要だと思うので、着たときの肩のラインにはかなり気を付けています。着たときに逆三角形になるように肩幅を少し大きめにしたり、軍服の色によっても微調整したり……。軍服だけではないですが、左右で肩のつき方や癖が違うので、肩パッドの位置を変えたりしていつも気を付けています。
  • ◎『ウエスト位置』

    男性らしいシルエットになるよう、ウエスト位置を高過ぎず、低過ぎない位置に調整するのも大切。男役として不自然にならないよう、そしてついでに足も長く見えるように……(笑)。今作のように拳銃ベルトがついているときも同じで、ベストなウエスト位置をいつも探ってこだわっています。
  • ◎『役柄としての姿勢』

    衣装を着るだけでなく、着たときの姿勢が一番大切だと感じています。軍人としての姿勢、どのくらいの年齢でどういう性格の人なのかというのを、かなり気を付けています。今作の場合、5年後の裁判時、そのまた10年後のラストシーンでの腕の張り方や足幅、歩幅、歩くスピードなどを意識しています。