永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』について。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるころには、花組宝塚大劇場公演『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』『GRAND MIRAGE!』が開幕しているかと思います。 皆様、劇場でお待ちしております!

『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』の原作は、1939年公開のオペレッタ映画です。80年以上前の映画ですが、いま観ても楽しめるので、当時はかなり斬新な作品だったのではないでしょうか。悪だくみをする人はいても悪役が出てこないので、ひやひやせずに安心して観られる楽しい作品だと感じました!

 せりふや音楽は原作映画とほぼ一緒で、柚香光さんが演じられる浪人・浅井礼三郎を、まどかちゃん(星風まどか)演じるお春をはじめ3人の女の子が取り合うという物語も同じです。そこに、私が演じる藩主・峰沢丹波守のお家騒動が宝塚オリジナルとして加わっていて、藩の名前も花組ということで“花咲藩”となり、丹波守の母上や正室、弟など家族も登場します。

 普段、お稽古の集合日に台本の本読みをすることが多く、せりふを初見で読むのでドキドキしながら話の展開を追うのですが、今回は翌日に本読みがありました。せりふとストーリーが頭に入っている状態だったので、それぞれの役のせりふの言い回しやテンポがすでに個性的で随所で笑いが起こったりして、本読みの段階から面白い!! 台本に書かれていることに忠実に演じていけば、会話のやりとりや内容のおかしみ、滑稽さが伝わるのかなと感じました。

 そしてそんな最初の印象から、せりふに注目したり何度も台本を読み込んでいくと、真心や潔さなど日本人の良さがすごく出ている作品だと感じるようになりました。染みついている日本人的な感覚は、演者だけでなく、お客様にも響くのではないかな、と。肩の力を抜いて観ていただける楽しい喜劇でありながら、見終わったあとにはじんわりと温かいものが残る物語だと思うので、そういう部分も忘れずに、大切に作っていきたいですね。

峰沢丹波守役へのアプローチ。

永久輝せあ 今月のメッセージ  原作映画「鴛鴦歌合戦」は役名も演者さんから付けていたり、それぞれの役者さんの十八番、芸を生かした役として作られていて、ストーリーで見せていくだけでなく演者の個性や魅力で成り立っている部分もある作品です。脚本・演出の小柳奈穂子先生も、今回舞台化するにあたって「演者の個性や関係性がにじみ出ると面白いのでは」「役に徹するだけではない面白さ、演者が楽しんで演じていること自体が面白いということも大切」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。演者の個性はどの作品でも出ると思いますが、いつもはなるべく役に近づき、どう作り上げ、演じていくのかということを大切にしているので、そういう「役に徹するだけはない」ことを意識するような作品は意外と少なくて。

 この作品にはしっちゃかめっちゃかな人が多いので(笑)、言動に理由を見つけようとしたり、自分に照らし合わせて「なぜこの人はこういう選択をするのだろうか」「自分だったら……」と考え過ぎると、演じられない。理屈ではなく「そういう人だ!」と思い切り演じてしまったほうがいい部分もあるのかなと思っています。

 そうは言っても「役を演じる」ことはいつもと同じなので、丹波守が生きていくなかで感じていることに向き合っていくことは大事にしたいです。殿様にとっての骨董品のようにのめり込めるものとは何だろうかと探しつつ、いまはお稽古しています。力尽くでお春をつかまえたり、少し無茶なこともしますが、好きなことにただただ真っ直ぐで必死だからこその憎めない彼の魅力は大切にしたいなと思います。

 また、原作映画では骨董にふけっている気楽な殿様ですが、今作ではお家騒動が新たに物語に加わり、跡継ぎになる過程が描かれます。のらりくらりとした人ではありますが、映画にはなかった結末を迎えるにあたっての理解は深めたいな、と。自分のことを名君と言うせりふや歌詞があるように、何か彼なりに藩主であることへの思い、違和感などもあるのだろうな、と。考えすぎてもいけませんが、そういうことも含めての役作りを模索中です。

ロマンチック・レビューシリーズの印象的な作品。

 ネオ・ロマンチック・レビュー『GRAND MIRAGE!』は、岡田敬二先生によるロマンチック・レビューシリーズ22作目の作品です。 いつか出演したいと思っていたので、念願かなってとてもうれしいです!

 ロマンチック・レビューシリーズには、印象的な作品がとても多いです。まず1990年月組公演『ル・ポァゾン 愛の媚薬』はその後何度も再演されていて、私も蘭寿とむさんが主演された2011年の花組全国ツアー公演を拝見しました。楽曲も『タカラヅカスペシャル』などでもよく歌われる、「宝塚といえば」という名曲ですよね。私が主演させていただいたバウ公演『PR×PRince』で潤花ちゃんが演じたエルの携帯電話の着信音も、実はこの曲が使用されていたんですよ!

 '05年のオサさん(春野寿美礼)主演の花組公演『ASIAN WINDS!』も好きな作品です。’20年の花組東京国際フォーラム公演『DANCE OLYMPIA』の花組メドレーで、『ASIAN WINDS!』の大好きな場面を再現できたことが本当にうれしく、張り切って踊ったのを覚えています!
 ‘06年星組『ネオ・ダンディズム! ー男の美学ー』も、羽山紀代美先生が振付された場面で知られる作品です。長い詰め襟の衣装にハットを合わせるという斬新な場面での湖月わたるさん、安蘭けいさんのかっこよさがすごく印象に残っています。

『GRAND MIRAGE!』の出演シーンは……。

 お稽古はこれから深まっていくところですが、私として一番大きいのがデュエットダンスで歌わせていただくことです。トップコンビさんのデュエットダンスに歌を添えるということが長年の夢で、心のどこかでいつかは……と思っていたので、すごくうれしいです。ミュージカル『キス・ミー・ケイト』の「So in Love」という大人っぽい愛の曲なので緊張しますが……柚香さんとまどかちゃんのお2人の表現に寄り添えるよう、精一杯お稽古したいと思っています。

 ほかにも、カンツォーネメドレーのシーンも楽しみにしています。イタリアの宮殿を思わせるクラシカルなセット、マントを翻すような時代を感じさせる衣装ではありますが、重々しくなく、明るく弾むような場面になりそうです。宝塚音楽学校の授業でも習った有名な曲ばかりで、お客様もご存じの曲が多いのではないかと思います。
 場面ごとにいろいろな雰囲気を持つレビューになると思いますので、楽しみにしていただけたらうれしいです!

※このメッセージは、6/16(金)のものです。

永久輝せあステージフォトレビューはこちら
冠協賛コーナーはこちら
三井住友カードの会員なら、貸切公演も申し込み可能!ご入会はこちら

テーマ:「好きな日本物作品」

  • ◎『若き日の唄は忘れじ』

    壮一帆さんが主演された中日劇場公演で、研2のときに最下級生で出演させていただきました。音楽学校時代に授業でお世話になった大関弘政先生の作品であり、振付の峰さを理先生との思い出のある大切な作品です。数人でセットを動かす難しい場面に出ていて、峰先生には厳しくご指導いただきましたが、本番前には励ましの言葉もいただいたり……。話すとキリがないくらい思い出の多い作品です!
  • ◎『誠の群像』

    新選組のメンバーが大階段に勢ぞろいする、迫力あるプロローグが有名ですよね! 私は新選組と聞くとなぜか無性にひかれるのですが、『壬生義士伝』で沖田総司を演じたこともあるからなのか、なかでも土方歳三が一番好きです。『誠の群像』はのぞさん(望海風斗)主演の雪組全国ツアー公演でも再演されていましたが、すごくかっこよかったです!
  • ◎『星影の人』

    土方歳三が好きといいつつ……沖田総司が主役の『星影の人』も好きなんです(笑)。沖田総司はいまもすごく愛されていてファンも多い剣士ですが、その魅力もわかりますよね。何より「今夜の私は強いですよ」という名ぜりふを言うちぎさん(早霧せいな)が、かっこよすぎて……! 柴田侑宏先生の美しい世界が印象的な、本当に素敵な作品だと感じます。