日常的なVisaのタッチ決済で、身近な社会課題の解決に寄与。「タッチハッピー」で支援する海洋プラスチックごみ問題と防災教育に取り組む団体のストーリー。
Visaのタッチ決済を通じて自分で選んだ団体に支援できる「タッチハッピー」。三井住友カードが行うこの取り組みは、2020年2月から開催した第1回から回を重ね、2023年4月1日(土)から9月30日(土)の期間に第11回を開催しています。
今回は、第11回の参加団体であるNPO法人UMINARI(以下、UMINARI)のCFOでありエデュケーション事業部長の森泰弘さん、NPO法人プラス・アーツ(以下、プラス・アーツ)のスタッフ瀧原茉友さんをお迎えし、話を伺いました。三井住友カードからはタッチハッピーの担当者・子玉も加わり、取り組みの紹介や両団体との関わりについて振り返っていきます。
日常的に使う「Visaのタッチ決済」で社会貢献も日常のことに
―改めて、三井住友カードの取り組み「タッチハッピー」についてお聞かせください。
子玉:当社では「Have a good Cashless.」をキーメッセージとして掲げ、キャッシュレス決済を通じて多くのgoodを生み出せるよう、各種サービスを提供しています。特に社会へのgoodをより実現したいという想いから、キャッシュレス決済をすることで社会課題の解決に取り組む企画「タッチハッピー」が誕生しました。
この取り組みのキーワードは「日常のこと」です。Visaのタッチ決済が日常的なものであるように、社会貢献も日常のことになってほしい。そんな想いから、身近な社会課題の解決に取り組む団体へ寄付を行っています。
―タッチハッピーによりVisaのタッチ決済を推進できた実感はありますか。
子玉:タッチハッピーによって推進できたというより、ここ数年で世の中のVisaのタッチ決済のニーズが非常に広まってきたと感じています。むしろ、タッチハッピーとしては、この流れに乗ることで、タッチハッピーの取り組みをより多くの方に知ってもらうことができ、より多くの方にさまざまな社会課題や各団体の活動を知っていただけると思っています。
タッチハッピーへ参加いただき、共に活動を行ってきたUMINARIとプラス・アーツ
―では、ここからUMINARIの森さん、プラス・アーツの瀧原さんにお話を伺っていきたいと思います。まずはそれぞれの団体の設立背景、取り組み内容をご紹介いただけますか。
森:UMINARIは5年前に大学4年生だった同期10人で立ち上げた団体です。当時は今のように海洋プラスチックごみ問題がまだ社会課題として取り上げられていない時期でした。
立ち上げのきっかけは、UMINARIの代表が大学時代に大手スポーツブランドでインターンをした際に、海洋プラスチックごみをリサイクルしてスニーカーを作る取り組みを行っており、そこへ関わったことを機に、海洋プラスチックごみ問題に興味を持ったことがきっかけです。
創業メンバーは海洋プラスチックごみ問題に詳しいわけではない経営学部の学生でしたから、「まずはできることから」と千葉や神奈川の海でBeach Cleanを始めたのが最初の取り組みです。
大きなゴミが回収されているビーチは、一見綺麗なように見えます。しかし、10分もBeach Cleanをしていると、目が慣れてきてマイクロプラスチックを見つけられるような状況なのです。
―どのような取り組みをされているのでしょうか。
森:先ほどお話した「Beach Clean」のほか、「Education」「Research」の3事業、さらに「Blue Circle」の活動を行っています。
Educationは文字どおり教育ですね。今の子どもたち、さらにその次世代にまで綺麗な海を残せるよう、子どもたちも海洋プラスチックごみ問題を知り、自分たちにできることを見つめてもらいたいという想いから、教育活動を始めました。
Researchは海洋プラスチックごみ問題の調査を指します。始めたきっかけは、タッチハッピーのご支援で動画教材づくりを行ったことでした。この動画教材づくりの中でスーパーで売られている市販の魚のなかからプラスチックを実際に発見しました。知ってはいてもこれは我々にとってもインパクトが大きい体験でした。論文に書かれていることをそのまま伝えるより、自分たちで調べて知った情報を伝えることで説得力を持てると感じ、今も地域の魚をスーパーで買ってきて解剖実験を行うなど情報を自分たちで作る活動を進めています。
世界中の人が海洋プラスチックごみ問題へ取り組むには、義務感ではなく共感で参加してもらう必要がある。1分に10トンのペースで排出されるマイクロプラスチックごみの問題を解決するには、Beach Cleanでは追い付かず、消費の形を変える必要があります。UMINARIでは、これまでさまざまなセクター、世代の方々と関わってきました。そのつながりを点ではなく輪にしようということで、我々を中心としたBlue circleというコミュニティをつくっていこうとしています。
「いいことをしています」ではなく、「かっこいい」と思ってもらえることが参加したい意欲につながると思い、ご紹介したすべての活動を推進しています。
―ありがとうございます。次は瀧原さんより、プラス・アーツについてご紹介ください。
瀧原:プラス・アーツは「防災は、楽しい。」をモットーに、防災教育・防災啓発に取り組んでいるNPO法人です。国内から取り組みを始め、そこからだんだんと海外にも活動の場を広げていきました。
団体設立のきっかけになったのは、阪神淡路大震災から10年経った2005年、現在プラス・アーツのメインコンテンツになっている楽しく学べる防災訓練イベント「イザ!カエルキャラバン」が開発されたことでした。阪神・淡路大震災の10周年事業として、「次世代を担う子どもたちに向けたイベントを企画してほしい」という兵庫県と神戸市からの依頼から生まれたのですが、まだ当時は防災訓練といえば楽しくないイメージが根強くありました。
それでも、震災を経験していない子どもたちにも防災訓練に参加してもらい、楽しみながら防災を学んでもらえるイベントにしたいと考え、阪神淡路大震災からの教訓を元に「楽しく学べる防災体験プログラム」を開発したのです。
ただ、楽しく参加できるプログラムを用意しただけでは、参加したことのない子どもたちに来てもらうのは難しい。そこで、美術家の藤浩志さんが考案されたおもちゃ交換会「かえっこバザール」を掛け合わせることにしました。「イザ!カエルキャラバン!」では、遊ばなくなったおもちゃをポイントに換え、ほかのおもちゃと交換でき、交換できるおもちゃがない子どもは、防災体験プログラムに参加することでポイントをためることができます。おもちゃの交換会をやっている周りで防災体験プログラムを実施することで、おもちゃを交換しに来た子どもたちが防災体験プログラムに興味を持つようなしくみをつくったのです。
防災体験プログラムは、実際に被災したときに役立つよう、被災者にヒアリングを行うなど、過去の災害の教訓を元に開発しました。今では有名な防災アイディアですが、お皿にラップを敷いて使うことで水を使わずに繰り返し使用できるというアイディアを取り入れた紙食器づくりや、倒壊した建物からの救助の際にジャッキが役立ったという被災者の体験から企画したジャッキを使ったゲーム、毛布で担架を作って人を安全に運ぶ方法を学べる毛布で担架タイムトライアルなど、どれも楽しく役立つプログラムです。
近年は防災需要が増しており、企業や行政からの依頼も続々といただいています。もっと伝えられる人を増やす必要性を感じ、講師の養成にも取り組んでいます。埼玉県では、県民講師のような形で市民からインストラクターを養成しており、講師養成研修の受講者は2015年からの5年間で800人を超えました。
タッチハッピーとの出会い、印象
―それでは、UMINARI様、プラス・アーツ様がタッチハッピーの企画に参加しようと思った理由とこれまでの活動についてお聞かせください。
森:お声がけいただいた当時、正直にお伝えをすると私たちは取り組みを知りませんでした。私たちもさまざまな団体様とのコラボを希望していましたが、銀行など金融業を営まれている方々は“最後の砦”だと考えていました。そのため、驚いたというのが最初の印象です。
瀧原:プラス・アーツがタッチハッピーに初めて取り組んだ頃、私は学生インターンでした。そのため、団体としてではなく、三井住友カードのヘビーユーザーな個人としての感想になりますが、「そんな取り組みがあったんだ」という印象を受けたことを覚えています。
プラス・アーツは、前回のタッチハッピーで子育て世帯向けの防災ブックの制作と配布のご支援をいただきました。過去に同じくタッチハッピーで支援を受けた団体を経由して子どもたちに配布いただいたほか、冊子が手元にないご家庭でも閲覧できるようデジタル版と解説動画も作成し、タッチハッピー公式HPに掲載していただきました。
若い世代でも防災の関心が高まっているとはいえ、私たちとしてはまだまだ伝えきれていない、と感じています。しかし、そうした世代に対してタッチハッピーでのご支援を通して防災情報を届けることができ、防災と接点を持っていただけたことを嬉しく思っています。
子玉:私も知らないことが多く、日常からの備えが大事だと知れた取り組みでした。
―今、プラス・アーツ様の初回の取り組みをご紹介いただきましたが、UMINARI様の前回の取り組みについてもお聞かせいただけますか。
森:消費者として海を巡り、海洋プラスチックごみ問題について考えるドキュメンタリー風の動画教材の制作にご支援いただきました。私たちの暮らしと海のつながりを改めて考えていただける教材になったと思います。映像はYouTubeで後悔しているのでどなたでもご覧いただけます。
団体の力だけでは届く層に限界がある。「タッチハッピー」を通して、より広い層に活動を知ってほしい
―これまでのタッチハッピーで実現できたこと、今後の活動についてお話できる範囲でお聞かせください。
森:よかったと思うのは、海洋プラスチックごみ問題において本当にみんなに知ってもらいたいことを伝えられる動画を作れたことですね。
海には微細なマイクロプラスチックと呼ばれるプラスチックごみがあり、このマイクロプラスチックが高濃度に有害物質を吸着し餌に紛れて生物の体内に取り込まれ食物連鎖を通して上位の生物に有害物質が蓄積していきます。そして私たち人間も食物連鎖の頂点に位置する生物で、食事に含まれるプラスチックによって有害物質に曝されているという問題があります。この問題は私たち全員が関わる問題なのですが、プラスチックごみ問題が知られるようになった今でもあまり知られていないので、多くの方々に知っていただけるきっかけを作ることができてよかったです。
また、タッチハッピーを機に、Researchという新たな事業が生まれました。組織内のメンバーにも今回のプロジェクトが良い刺激となったようで、先ほどお話ししたResearchをはじめ新たなプロジェクトのアイディアが上がってくるようになりました。
課題は、いかにまだ問題を知らない、興味のない人にリーチさせるかという点です。プラス・アーツ様も同じだと思うのですが、NPO法人のイベントに来てくださる方は、すでに問題を知っている方です。そうではないところに届けるのは本当に難しく、今後も課題だと思っています。
瀧原:前回の取り組みである防災マニュアルブックの配布は、防災に関心を持ってもらう段階、防災に関する基礎知識を学んでもらうステップだったと思います。まずはそのステップを踏めてよかったという感想を持っています。
そのうえで、災害が増えている現状では、被害を減らすためにも、やはり1人ひとりが自分事として防災に取り組む必要があるでしょう。第11回のタッチハッピーでは、若い世代の防災の担い手を巻き込むステップかなと思っています。
―今回ご一緒にお話をお聞かせいただいた2団体ですが、タッチハッピーへ期待したいことを教えてください。
森:消費行動は消費者の投票権みたいなものだといえるでしょう。一つ一つは小さいものでも、集まれば大きな力になります。クレジットカード決済は日常の消費活動に直結しているもので、タッチハッピーは消費行動を通して社会課題に関われる取り組みです。タッチハッピーを入口にいろいろな社会課題を知る方もいると思うので、我々ではリーチできていない層に届けていただければいいなと思っています。
瀧原:タッチハッピーへの考え方や期待感については森さんに同意ですね。日常に直結しているクレジットカード決済を通して、社会課題を意識していない人でも間接的に関われる取り組みだと思っています。タッチハッピーを通して身近な社会課題を自分事として取り組める人が増えたら素敵だなと思います。
子玉:お二方がお話されたように、三井住友カードの役割は寄付活動だけではなく、社会課題について知るきっかけを作ることだと再認識しました。輪を広げるところに関してはまだまだ足りていないため、今後力を入れていきたいです。今日はありがとうございました。
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