冠協賛公演特別コーナー:三井住友VISAカード
冠協賛公演特別コーナー【過去の公演出演者が語る 冠協賛 Play Back(ブレイバック)】
三井住友VISAカード

<プロフィール>
しづき・あさと
1987年、宝塚歌劇団入団。花組、月組を経て、'98年宙組の立ち上げメンバーに選抜され、初代トップスターに就任。同年『エリザベート』など、数々の名作に主演。圧倒的な歌唱力と存在感で、カリスマ的な人気を誇る。2000年に退団。以降、コンサートや舞台、CDのリリースなど、歌手活動を中心に活躍。『エリザベート ガラ・コンサート』には、'06年、'12年に続いて、3度目の出演。今年は、デビュー30周年を記念し、4月29・30日にTBS赤坂ACTシアターでのリサイタルが決定している。

 在団中、初演の雪組さんの『エリザベート』を観たときの衝撃はいまでも覚えています。音楽の素晴らしさ、小池修一郎先生が書かれた歌詞、メロディへの日本語の当て方も素敵で、本当に魅力的な作品だと感じました。その感覚はいまでも音楽を聞くと甦るくらいです。

 そんな作品を'98年の宙組公演で演じることになり、これまでの宝塚の作品にはなかったような音が譜面上に表れている曲がたくさんあり、難しさと同時に、すごくおもしろいなと感じました。当時、宙組は発足したばかり。『エリザベート』が大劇場2作目でした。4組からメンバーが集まっていて、エリザベート役の花總まりさんをはじめ、雪組や星組での同作経験者がいましたので、ほかの組の公演とはまた違う感じでしたね。
『エリザベート』に出演している最中に、宝塚を退団しようと決意したのですが、それはこの作品に出合い、もっと音楽に向き合ってみたいと思ったからでした。そんなきっかけにもなった、大切な作品です。

 退団後も、2006年と2012年の『エリザベート ガラ・コンサート』のほか、別のコンサートでも『エリザベート』の楽曲を歌ってきました。エリザベート役は人生が描れているので、年を経て演じると感じ方が変化するのだと思いますが、トートは年齢不詳の存在なので、演じ方という意味では在団中もそれ以降もあまり変わりません。前作でもトートの扮装をしましたが、中性的な不思議な役柄なので、男役に戻るという感覚もほとんどなかったです。ただ、退団後はコンサートなど音楽を中心に活動してきているので、音楽的な自分の声の変化を同じ曲を歌うことで感じることはありますね。

 まさか退団後にトートを演じるとは思っていませんでしたし、2012年の『ガラ・コンサート』以降、二度とやることはないだろうと思っていたところ、今回のお話をいただき、運命を感じます。自分の舞台人生のなかで、切っても切れない役に出合ったのかなと思いますね。

 そして私事ですが、2017年は芸能生活30周年となります。そんなタイミングでこの『エリザベート』という作品に再びかかわることができ、とてもいい機会を与えていただいたと感じています。テクニック的にも前に進んで行くため、いま何ができるのか、自分との闘いに臨みたいと思います。

<プロフィール>
おおとり・れい
1993年、宝塚歌劇団入団。'99年に花組トップ娘役に就任、4年にわたりヒロインを務める。2003年『エリザベート』にてエリザベート役を演じ、同作で退団。以降、確かな実力と華やかなオーラで、舞台を中心に活躍している。近年はNHK大河ドラマ『龍馬伝』や『水戸黄門』などのテレビ、『駆込み女と駆出し男』などの映画でも、独特の存在感を発揮。『エリザベート ガラ・コンサート』には、'06年、'12年に続いて、3度目の出演となる。

 私は退団公演でエリザベートを演じさせていただきました。のびのびやらせてくださった組の環境、そして相手役のオサさん(春野寿美礼)の大らかさに支えられ、ただただエリザベートを演じることが楽しいという感覚でしたね。当時の映像を観ると、本当に怖いものなしで、我が事ながら輝いていたな、と(笑)。ですが退団後、いろいろな経験を経たことで、この役の大きさにプレッシャーを感じるようになりました。

 エリザベートは本来、冒頭に歌う曲「パパみたいに」のような世界の住人。そんな自由を愛でている人が、真逆の固く閉じられた皇室に入ったことで葛藤が始まります。数奇な人生をたどった人だからこそ、この曲の無垢な気持ちが際立つと思います。人生を重ねて、そんな心情を身を以て理解できるようになり、感情も豊かで複雑になってきたのですが、『エリザベート』の曲は感情だけではとても歌えません。ニュートラルな身体や、喉をキープしないと、太刀打ちできない楽曲なのです。退団して13年、どこまで体力的、身体的にもそのレベルまでもっていけるか。そことの闘いですね。そのうえで豊かになった感情が乗ってくれば、在団中とはまた違う何か、いまの自分なりのエリザベートを表現できるのではと思っています。と、大きな事を言っていますが、とにかく必死です!(笑)。

 今作では、フルコスチュームバージョンでずんこさん(姿月あさと)と、あさこさん(瀬奈じゅん)、アニヴァーサリーバージョンでオサさんとご一緒させていただきます。ずんこさんは、前回の『ガラ・コンサート』でもご一緒させていただきましたが、ものすごい迫力でした。そんなトートに対するエリザベートを演じるためには、内面を充実させないといけません。今回も、どこまでずんこさんのお側までいけるか挑戦ですが、精一杯付いていきたいと思います。

 オサさんとも前回ご一緒でしたが、退団後も仲良くさせていただいてお付き合いも長いので、相手役さんとしてだけでなく、一対一の人としてデュエットできた感覚でした。お互いのことをよく知る、思い入れも深い方と作品のなかで再び対峙できることは、とても楽しみです。そして、同じく付き合いの長い、あさこさん。あさこさんトートとの共演は初めてなので、このサプライズ人事にテンションが上がりました! この“オサ・アサ”コンビとは戦友のような間柄なので、お2人とガッツリと向き合うことができ、本当に本当にうれしいです。そして、'02年花組版キャストを中心とした公演もあります。懐かしいメンバーとの共演、皆様もお楽しみいただければと思います。

<プロフィール>
りゅう・まさき
2001年、宝塚歌劇団入団。'05年『エリザベート』で黒天使、新人公演ではルドルフ役を演じ、'09年『エリザベート』ではルキーニ役で堂々たる舞台姿を披露。'12年に月組トップスターに就任。'14年には宝塚歌劇100周年の記念公演の主演を務めるなど、キラキラしたオーラと無二の個性で活躍。'16年に退団。退団後の初の舞台出演となる今作では、大阪公演でエリザベート役に抜擢。東京公演ではルキーニ役を務める。

『エリザベート』には、'05年、'09年の公演に出演させていただきました。新人公演も含めると、黒天使、ルドルフ、ルキーニを演じ、作品に多く携わってきましたが、どの役から見ても物語の主人公になれる大好きな作品です。

 今回は大阪公演でエリザベートを演じさせていただき、新たな視点から作品に携わることができてとてもうれしいです。大阪公演のお稽古中のいま、楽曲の難しさに直面しています。五線譜に表されたものを自分なりにキャッチするという、基本的なところから取り組んでいます。

 エリザベートに関しては、女性が生きづらい時代のなかでもきちんと主張する芯がある人で、生きることと死ぬことに向かっていく人物像を抱いてきました。ですが、いざ役として対面してみると、まったく別のイメージも湧いてきています。彼女は自由を求めることで自分を確立しましたが、それを求め過ぎるがゆえに、自由が足かせや重荷になり、いつまでも彷徨い続ける女性なのかな、と。どちらかが正解というわけではないと思いますが、お稽古の最初の段階から両面を感じることができる、とても深い役ですね。演じたらますますおもしろいんだろうなと、ワクワクしています。
 1人の女性として誠実に生きる部分も表現したいですし、歌でも演技でも常に自分と闘う状況に置かれると思うので、その集中力を養って挑みたいです。

 東京公演ではルキーニも演じますが、譜面を見るだけでも、周囲とは違うゾクゾクするような空気感を感じます。狂言回しという役割以外のところ、また狂気という言葉以上の、“非力な力”や棘のようなものを見付けて、楽しんで演じたい。なぜルキーニとトートが結び付いているか、深く探って作りたいなと思っています。
 退団して半年で、再び男役のルキーニを演じることについては、自分自身でも「あれ?退団したはずでは……」という思いも(笑)。ですが、歴代のキャストの方々がぞれぞれの時代の雰囲気をもって役を形成されると思いますし、さえこさん(彩輝なお)やあさこさん(瀬奈じゅん)をはじめ、メンバーの方々と作り上げる空気感を大切にしたいです。私自身は、男役という枠に縛られずにやりたいですが、でもきっと卒業したてで奔放に力を抜いてできるのはルキーニ役だと思うので、現役に一番近いOGとして、大いに暴れ回りたいです。

 卒業してすぐにこのような機会を与えていただき幸せですし、ファンの皆様にお会いできるのが本当に楽しみ。しっかりお稽古して舞台に上がりたいと思いますので、応援よろしくお願いいたします。

梅田芸術劇場公演 舞台写真レビュー

 
舞台写真撮影:岸 隆子(Studio Elenish)