永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

抱いていた印象とは少し違ったホセの人物像。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるのは、花組全国ツアー公演『激情』『GRAND MIRAGE!』の開幕を控えたころだと思います。今月は、この2作品のことをまずお話ししたいと思います!

『激情』は、メリメ原作の「カルメン」をモチーフに柴田侑宏先生が脚本を書かれた作品で、1999年に姿月あさとさん、花總まりさん主演の宙組公演として初演されました。私はこれまで、主人公のホセに「素朴で真っ直ぐな青年がカルメンに翻弄され、人生を狂わされてどん底に落ちていく」という受け身のイメージを抱いていましたが、今回改めて映像で拝見すると、その印象とは少し違いました。ホセの真っ直ぐさというのは決して褒め言葉だけではなく、彼のなかには本質的に激しい部分が最初からあったのではないか、と。カルメンに対しても自由奔放で自分勝手な悪女というイメージでしたが、彼女のほうがホセによって人生を狂わされたようにも感じました。

 2010年の柚希礼音さん、夢咲ねねさん主演の星組全国ツアー公演、'16年の珠城りょうさん、愛希れいかさん主演の月組全国ツアー公演も拝見しましたが、演じられる方によって印象が変わりますし、ホセとカルメンのイメージやお互いのパワーバランスも微妙に異なるように感じました。そして『激情』というタイトルどおり、重く激しい愛情や嫉妬心が渦巻き、スペインという国ならではの気質や民族の違いによる道徳観の差などもあり、一度観ただけでは消化しきれないくらいの難しい作品だと思いました。

 今回の花組公演は、基本的な物語の流れやせりふ、歌は変わらないのですが、お衣装が変わる場面もあったり、舞台セットなども一新されるので、お客様が抱く印象も少し違うかもしれません。そのあたりはぜひ劇場でご覧いただき、感じていただければと思います!

 演出・振付の謝珠栄先生は、とても激しくドラマチックなナンバーが多いので、それに見合うようなダイナミックなダンスシーンもたくさんあって大変な作品だとおっしゃっていました。先生のお言葉をたくさん吸収しながら、出演者全員で力を合わせて頑張って作り上げていきたいと思っています。
 私個人としては、ここまでの激しい大恋愛の作品に挑戦するのは初めてなので、すごく楽しみです。柴田先生の作品には、人生の良い部分も悪い部分もギュッと凝縮されていますし、さらに今作は人間の激情を描いた作品なので、それがより浮き彫りになっているような気がしています。また次回、もう少し詳しくお話しできたらと思います!

レビュー『GRAND MIRAGE!』は……。

『GRAND MIRAGE!』は、前作の宝塚大劇場公演、東京宝塚劇場公演でも上演されたレビューの再演となります。大きな場面は変わらないのですが、それぞれの場面の出演者も変わりますし、専科のカチャさん(凪七瑠海)が『激情』だけでなく『GRAND MIRAGE!』にもご出演くださるので、イメージも大きく変わるのではないかと思っています。

 全国ツアー公演は本公演と比べ人数も半分ほどになりますが、それを感じさせない心強いメンバーがたくさんいて、とても安心感があります。
 昭和女子大学人見記念講堂と神戸国際会館こくさいホールで行われる柚香光さんのコンサート『BE SHINING!!』とともに、花組全国ツアー公演『激情』『GRAND MIRAGE!』のほうも、よろしくお願いいたします! 皆様、劇場でお待ちしております!

素晴らしかった『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』。

永久輝せあ 今月のメッセージ  少し前のことになりますが、のぞさん(望海風斗)が主演されたミュージカル『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』を拝見し、圧倒されました! もともと映画が大好きなこともあり、以前、ニューヨークを旅したときにもこのミュージカルを観に行きました。メインキャストだけでなくアンサンブルの方までインパクトがものすごく、華奢な日本人では難しいかなと思っていたのですが……それがびっくり! ものすごい迫力でした。慣れ親しんだ帝国劇場のロビーや客席が、ニューヨークと同じような赤いライティングの印象的な空間になっていて鳥肌が立ちましたし、ハートが何重にも重なった舞台セットも素敵で感動しました。

 特にサティーンが花形スターになる前、まだ貧しかったころのことを「魂が燃えていた」と彼女の幼なじみのトゥールーズが表現する場面があるのですが、それがのぞさんのサティーンにしっくりくるような気がして、印象に残りました。のぞさんの舞台はパワフルかつエネルギッシュで包み込むような大きさがあり、観ていると包まれている感じになります。そんな大らかさのなかのパッション、魂が燃えているような印象を下級生時代にも感じていたことを、この作品を観ていて思い出しました。

 のぞさんをはじめ、皆さんの歌が素晴らしいだけでなく、舞台に臨むモチベーションにも感服しました。こういった大作を毎日お届けしている出演者の皆さんに尊敬の念が湧きましたし、私も頑張らないと!と感じました。来年再演されるということなので、またぜひ拝見したいです。

最近拝見して、刺激を受けた2作品。

 最近観た作品のお話をもう少し……。雪組時代から仲良しのあやな(綾凰華)が出演するということで観に行った、『アンドレ・デジール 最後の作品』もすごく素敵な作品でした! ウエンツ瑛士さんや上川一哉さん、水夏希さんなどミュージカル界で活躍されている方がたくさん出演されていました。
 架空の有名な画家を巡る物語で、その画家のことを大好きな2人の青年が運命的に出会い、2人で作品を創り出していくというお話です。曲はもちろん、物語も演者の方々も素晴らしく、芸術に対する思い、友情を超えた共鳴できる相手と思い合うこと、家族愛などがすごく繊細でピュアに感じられて、すーっと心に染み渡ってしまい、1幕からすごく泣きました。命や芸術の煌めきみたいなものを観たような気がして、人が芸術に触れたときの何ともいえない感動を覚えました。

 そして珠城りょうさん主演のミュージカル『天翔ける風に』も、素晴らしい舞台でした! ドストエフスキーの小説『罪と罰』を元に劇作家の野田秀樹さんが幕末の日本に舞台を移して描いた『贋作・罪と罰』。それを謝先生がミュージカル化した作品なのですが、善と悪、生と死、自分にとって何が大事なのかなど、いろいろな”選択”が渦巻いていて、とにかく圧倒されました。謝先生のパワフルさが存分に感じられる舞台で、感情を伝えるという域を超えた、空気が動くようなダンス、体の動き自体が絵となって見えるような感じもあり、素晴らしかったです。幕末の作品は私も何度か経験がありますが、そんな新しい時代を作ろうとする狂気のようなエネルギーが凄まじく、観終わった後、体が震えていました。でも清々しいような不思議な感覚もあり、観られて良かった!とすごく感動しました。

※このメッセージは、10/14(土)のものです。

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テーマ:「スペインといえば……」

  • ◎『ガウディ建築』

    以前、スペインに行ったときに、衝撃を受けました。なかでもバルセロナの街中、普通の通り沿いに突然現れる、カサ・バトリョが印象的で。海がテーマのガラスが埋め込まれたキラキラした空間など、すごく素敵でテンションが上がりました! サグラダ・ファミリアも、塔の先端にフルーツのオブジェが付いていたりして。そんな美しくかわいいガウディ建築にとても惹かれました。
  • ◎『生ハム』

    イタリア産のものよりも、スペイン産の生ハムが好きです。なかでも少し固めで味わい深い、ハモン・セラーノがお気に入り。旅行中に大きな真空パックの生ハムを購入して、旅行中に食べ切ってしまったくらい(笑)。バルなどにぶらさがっている原木の生ハムが欲しい!と思いました。家にあったらいつでも食べられるのになぁと……(笑)。
  • ◎『フラメンコ』

    『ドン・ジュアン』でフラメンコ舞踊家の先生にしっかり教えていただき、『DANCE OLYMPIA』でも同じ先生振付のフラメンコの場面がありました。フラメンコは根底に流れる怒りみたいなものが原点になっていたり、生きることへの思いが足を踏みならす象徴的な動きに表れていたりして、とてもかっこいい。スペインでも観ることができ、ほとばしるようなエネルギーをいただきました!