永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

本年もよろしくお願いいたします。

永久輝せあ 今月のメッセージ  皆様はどんな新年を迎えられましたでしょうか。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 今月はまず2023年11月〜12月に行われた花組全国ツアー公演『激情』『GRAND MIRAGE!』を振り返ってみたいと思います。

『激情』で演じたホセについては、お稽古当初、自分からかけ離れ過ぎたドラマチックな生き様になかなか共感できなかったのですが、途中急にホセとストーリーが身近に感じられるようになりました。ホセの起こす行動は激しくとも、その動機や彼を突き動かすものは、いまにも通じる普遍的なものなのかな、と。また、小説家のメリメがホセに出会い、生き様に影響を受けて作品を書いたという大枠があるので、カルメンとの恋愛の話というより、ホセの人生の物語なのだとすごく感じます。

 舞台が開幕してから、タイトルの"激情"についても、すごく実感するようになりました。「激情に駆られる」という言葉があるように、ホセはその激情によって極端な選択、真反対の行動に振り切ってしまう。ただ激しい感情が渦巻くというだけでなく、「激情に駆られる」という言葉の意味合いも強いのかなと思います。
 また、これは単純に翻弄されて落ちていった男の物語ではなく、実はホセには自分の人生をどうするのか、戻るのか進むのかを選ぶタイミングが何回も訪れていて、そのたびに自ら決断して道を切り開いて歩んでいっている体感がありました。

 もう1つ舞台で感じるようになったのは、ホセはあまり恐怖心を持たない人だということ。そこが普段緊張や不安を感じやすい私とは、大きく違うところだな、と(笑)。普通は「これをしたら相手にどう思われるか」とか「自分から心が離れるのでは」と思うようなことでも、ホセは母から愛情をたくさん受けて育ったからなのか、恐怖という感情に鈍い気がします。そういうところがホセの野太さや力強さにつながるのかなと思い、舞台で意識するようにしていました。

 母の存在が大きく描かれているのも、宝塚版ならではの素敵なところだと思います。ホセにとって母は、悪に染まり切らない、つなぎとめる存在でもありました。一度振り切って、ロマの仲間に入ってガルシアも殺めてしまいましたが、母の死によって、もともと持っていた自分のルーツ、受けた愛情や道徳的なものなど、自分の純粋さを取り戻す。それでもなお、カルメンを愛し抜く道を選び取っていくきっかけにもなるので、母の死を知り、メリメやカルメン、ミカエラとの四重奏へとつながる場面は、大切にしていました。

メリメ、カルメンとのお芝居。

 メリメは、専科のカチャさん(凪七瑠海)が演じられています。メリメとのお芝居はリアルに対話している設定ではなく、歌以外は目を合わせない演出になっていますが、ホセを見守ってくれていたり、背中を押したり、踏み留まらせようとしてくれる存在だと感じます。そして、ホセの生き様がメリメの目にどう魅力的に映っているのかが、今作のポイントのような気がしています。ホセは決して正しい人間ではなく、行動は道徳から外れていますが、そこには生きる強さやエネルギー、思いを信じ抜く、貫く強さがある。そういう部分にメリメが感銘を受けたのかなと思い、意識していました。
 みさきちゃん(星空美咲)のカルメンは、すごく少女らしい瞬間もあれば、ものすごく強い男性的なときもあったり、大人っぽかったりといろいろな顔を持っているように感じます。それがみさきちゃんらしいですし、その多面性が彼女ならではのカルメンなのかなと思います。

楽しかったショー、そして全国ツアー公演について。

永久輝せあ 今月のメッセージ 『GRAND MIRAGE!』もすごく充実していました。初めて出演した「遙かなるMIRAGE」はリフトもたくさんあったので、お稽古場から砂嵐の精役の子たちが引っ張ってくれましたし、「シボネー・コンチェルト」は本公演のときに好きだったパートを踊ることができてうれしかったです。舞台の下手に立ってお客様のお顔を見られる場面では、地方ごとに反応が違ったり、手を振ってくださる方がいたりして、とても楽しかったです。
 みさきちゃんとのデュエットダンスは、作・演出の岡田敬二先生と振付の若央りさ先生がお衣装や最後のポーズを今回バージョンで変えてくださいました。本公演で自分が大切に歌っていたナンバーを踊るのは不思議な感覚でしたが、とても幸せでした。

 今回の全国ツアー公演のお話をいただいたときは、宝塚や花組のカラーを背負って全国を回ることに不安がありましたし、梅田芸術劇場での初日もとても緊張しましたが、目の前にいてくださるお客様は本当に温かくて、宝塚歌劇を愛してくださっているのをすごく実感しました。何より、宝塚らしさが詰まっている素晴らしい2作品をいまお届けする意味をものすごく感じました。そしてパレードでは、ライトが当たってカンパニーの皆が見えた瞬間に、緊張がふわっと解けたんです。自分だけで全部頑張ろうとしなくてもいい、一緒に背負ってくれる仲間がちゃんといてくれるのだと感じて、大きな安心感につながりました。

 そして全国を回るなかで、各地で出会うお客様が本当に喜んでくださっていることを間近に感じられるのが、すごく幸せでした。新潟、長野、金沢、富山、相模原、高崎、大宮、刈谷と巡り、白エビのお刺し身やお寿司、白子、馬刺しや名古屋コーチンなど各地のおいしいものをいただき、特に長野で食べた野沢菜の漬物の天ぷらが印象に残っています。神奈川では、関東エリアということで初めてご当地生徒紹介もしていただき、すごくうれしかったです!
 何より、カンパニーの皆がとても元気で楽しそうだったことにすごく助けられましたし、とても良いカンパニーに恵まれ、日々がとても濃く、充実していてあっという間でした。
 ご観劇いただいた皆様、本当にありがとうございました。

いろいろな役に出合った2023年。

 2023年は、元日から宝塚大劇場公演『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水(パルファン)-』が始まりました。
『うたかたの恋』では、作・演出の小柳奈穂子先生のお稽古で本読みに時間をかけたり、日本語について改めて勉強したり、役を深めるために自分の役の履歴書を書いてみたりと、組全体でお芝居に向き合い直すことができました。新しい知識や考え方に出合い、勉強になりましたし、とても楽しかったです。
『ENCHANTEMENT』では、プロローグでしか歌わない曲があり、しかも作・演出の野口幸作先生がそれぞれの芸名を入れた歌詞を作ってくださり、皆への愛情を感じてとてもうれしかったです。全体を通して、優美できらびやかないい香りが漂っているような素敵なショーで、大好きでした!

 そして梅田芸術劇場公演、東京建物 Brillia HALL公演『二人だけの戦場』は、お稽古から公演の千秋楽まで、すべてが楽しかったです。作・演出の正塚晴彦先生はどんなことでも後押しして、自由に演じさせてくださいました。何より、柚香光さん演じるシンクレアと固い友情で結ばれた役で、初めて男同士の友情を深くお芝居できたことが、とってもうれしかったです! シンクレアのために裁判で戦う役どころということで充実感がありましたし、私自身も男性らしさということに改めて向き合うきっかけにもなり、すごく演じ甲斐がありました。

 前回の大劇場公演『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』は、それまでとは打って変わって、シリアスな部分がまったくなく、とにかく明るい作品でした。「楽しく自分らしく生き生きとしているのがベスト」で「深く考えるとよくない!」と思える役というのは、後にも先にもないのではないかと感じ、楽しんで演じていました。
 そして、全国ツアー公演でも出演した『GRAND MIRAGE!』は、改めて宝塚の素敵さを感じられるレビューでした。そして、それをただ味わうだけでなく、1人の男役としてどう素敵に見せるのか、どうこだわりを持つかということが問われる作品でもあったので、とても勉強になりました。

2024年の目標は、楽しむこと。

 2024年は、柚香さんとまどかちゃん(星風まどか)がご卒業されます。いま最高に輝かれているお2人の側で、一緒に素敵な時間をたくさん過ごせたらいいなというのが、いち花組生としての一番の思いです。
 個人としては、柚香さんが退団されてしまう寂しさはとても大きいのですが、まず自分自身がきちんと楽しんで舞台に立ちたいと思っています。私はどうしても考え過ぎてしまうので、きちんと自分が役を楽しんだり、お客様との空間を楽しんだり、仲間との団結を楽しみたい、と。それは舞台を通してお客様にも伝わると思いますので、「自分自身が楽しむこと」を根底に持って、いろいろなことに臨んでいきたいと思っています。
 皆様、2024年もどうぞよろしくお願いいたします。

※このメッセージは、12/15(金)のものです。

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テーマ:「好きな漢字」

  • ◎『真』

    真心の「真」です。舞台人として、役やお客様、一緒に作る仲間に対しても真心が一番大事だと思っています。それに「真実」の真でもあり、舞台にはすべて出てしまって嘘がつけないので、いつでも真っすぐでありたいな、と。嘘がなく、本当に舞台に息づいているからこそお客様も感動していただけるのかなと思うので、大切にしている言葉です。
  • ◎『魂』

    以前テレビ番組で「魂を削ってものを作るから、削った欠片でその人がキラキラと輝く」というフレーズを知り、本当にそうだな、と。新しいものを作っていくときに、並大抵の努力では人には伝わらないし、感動させることはできない。だから日々魂を込めて舞台に取り組み、魂を燃やして努力をし続けたいなと思っています!
  • ◎『和』

    和むというのは、とても素敵な漢字ですよね。日本人としては、日本を意味する和というのも大切にしたいですし、和の心をいつも持っていたいな、と。宝塚歌劇は西洋がテーマの作品も多くありますが、日本的な性質もすごく持っていると思いますので、そんな和と洋の調和という意味でも、「和」を挙げてみました。