永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

心温まるお芝居、『エンジェリックライ』。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるころには、花組宝塚大劇場公演『エンジェリックライ』『Jubilee(ジュビリー)』が開幕しています。皆様、劇場でお待ちしております!

 最初に『エンジェリックライ』の台本を読んだ印象は、心がほっこりとするような温かさと爽快感が残る作品だと感じました。物語は天界と人間界、なおかつ悪魔も出てくるという3つの構造で構成されているので、お衣装やセットも含めてどんな舞台になるのだろうと、私自身もワクワクしています。

 私が演じる天使アザゼルが、みさきちゃん(星空美咲)演じるトレジャーハンターのエレナと協力して秘宝"ソロモンの指輪"を奪いに行くというストーリーが描かれていますが、そのなかでやんちゃなアザゼルが人間たちの心を知り、成長していく物語でもあると感じています。アザゼルは、天界で人間の行いを記録する"人間観察省"で人間を観察するうち、天界とはまったく違う人間の世界に対して強い好奇心を持つようになります。でもいざ人間界に堕とされてみたら、人間たちは自分の心に嘘をついていたり、葛藤したりしていて、楽しいだけの世界ではなかった。そういった人間ならではの世界を知り、アザゼル自身も変化していくのだと思います。

天使とは、人間とはどういう存在なのか。

永久輝せあ 今月のメッセージ  いつか人間ではない役を演じてみたいと思っていましたが、いざ初めての天使役を演じてみると、人間との違いや天使らしさとは何かなど、とても追求しがいがあるなと感じています。天使にも人間のような心はありますし、人間も"天使のささやき、悪魔のささやき"というように、天使的、悪魔的な部分を持っている。その相反する感情のなかで葛藤する人間の姿を見ていると、どうしてそんなに思い悩むのか、もっとシンプルでいいのではないかとアザゼルとしては感じます。そうやって揺れ動くのが人間らしさとすると、天使は一体どういう存在なのか……。

 天使というと、皆さん同じような無垢なイメージをお持ちだと思いますが、そういった少年性のようなものだったり、天使ならではの身軽さ、軽快さも必要とされると思うので、そういう部分も表現できたらいいなと思っています。

 作・演出の谷 貴矢先生の作品に出演するのは、雪組『義経妖狐夢幻桜』、花組『元禄バロックロック』以来、3度目となります。『義経妖狐夢幻桜』もまやかしが出てきたり、次元を超えるファンタジーの要素はありましたが、それぞれリアルな部分を担う役だったこともあり、今回の天使役は自分のなかでも挑戦です。宝塚の持つ夢夢しさ、女性が男役を演じるという虚構、"嘘の世界"だからこそ、天使というものを表現できるのかなと思うので、お稽古をして深めていきたいです。

 アザゼルが成長していく物語でもありながら、人間それぞれが抱える心の真実、ということがもう1つ作品の軸にあるのかなと思っています。彼は天界では嘘をつきますが、人間界に堕とされときに嘘がつけなくなってしまう。正直なことしか伝えられなくなり、人をからかう嘘はもちろん、言いたいけど言えない、思っていることと振る舞いが違うということも含めた"嘘"がつけなくなる。正直になることや素直に伝えることは、人間が一番不得意なことだと思うので、嘘がつけずに正面から向き合うしかないアザゼルの言動が、エレナをはじめとする人間たち、そしてラファエルなどの天使たちの心も少しずつ動かし関係性が変わっていく。それを受けてアザゼルも周りの人から学んでいくような、お互いが影響を与え合う物語なのかなと感じています。

アザゼルとエレナの関係性。

 アザゼルとエレナは、恋愛というよりは、相棒のような関係性が濃く描かれています。エレナは、自分の過去だったり現状に思い悩んでいるのですが、そうやって揺れ動く人間の姿をアザゼルは初めて目にしたのではないかな、と。葛藤するのは人間らしくて素敵だなと個人的にも思いますし、自問自答を繰り返して悩みながらも、それでも自分はどうありたいかということにたどり着こうとする姿に、人としての美しさを感じるのではないかなと思います。

 嘘をつけなくなったアザゼルは、言うことすべてが本当のことです。でもそうやって素直なことを言っても、人間はなかなか信じてくれないところも面白いなと思いますし、いざ信じたとき、いろんなことが前向きに動いていく。そういうところも実感していただけたらいいなと思います。

『Jubilee(ジュビリー)』の見どころは……。

『Jubilee(ジュビリー)』は、プロローグから華やかで宝塚らしさを感じていただける作品です。オリジナルの主題歌もとても素敵で、作・演出の稲葉太地先生がみんなで前に進んでいこうという前向きな歌詞を書いてくださいました。祝典という意味のタイトルどおり、華やかな雰囲気もありつつ、新しい物語が始まるドキドキ感のようなものもあります。そんなプロローグから、最後の王様の戴冠式のシーンまですべてがつながっている構成ということで、私自身もワクワクしています。

 主題歌以外はすべてクラシックの名曲のアレンジ。曲が持つ偉大なパワーを生かしながらも、リズムや音階が複雑なので、いま頑張ってお稽古をしています! いろいろなジャンルにアレンジされていますが、メロディーの美しさは残したいと思い、原曲を聞いてみたりしてイメージを膨らませています。中詰は、モーツァルトの「フィガロの結婚」をベースに、みんなが歌い、踊り継ぎます。客席降りもあるのでとても楽しみです!

 これまで柚香光さんをはじめトップさんのお姿を見ながら追いかけてきましたが、今度から自分がそういうことを担うということ、これまでとは役割が違うということを、いまお稽古をしていて改めて感じています。取り組み方にしても、変わらない部分も持ちつつ、変わっていかないといけないこともある。始まりに歌い出したり、周囲が踊っているなか自分だけが歌うというときに、みんなとの一体感をどう感じるのか、みんなとつながりながらお客様に届けるというのはどんな感覚なのか、ということを学んでいかなければと思っています。

 花組のみんなの新しい始まりでもあり、1人ひとりにとってのチャレンジとステップアップでもあるということを感じていただける作品だなと感じています。
 新生花組のスタートとなる『エンジェリックライ』『Jubilee(ジュビリー)』、皆様、見守っていただけたらうれしいです!

『ベルサイユのばら』ーフェルゼン編ーを観劇して。

 先日、雪組宝塚大劇場公演『ベルサイユのばら』を観劇しました。以前、同じフェルゼン編に出演したことがあるので、新しくなったと聞く今回の作品からどういう印象を受けるのだろうと楽しみに拝見したのですが、宝塚歌劇と『ベルサイユのばら』の素晴らしさを改めて心から感じることができました。宝塚でも最近はスタイリッシュなミュージカル作品が上演されますが、やはり"ベルばら"にしかない格式の高さ、宝塚の伝統芸という印象を受けました。特徴的なせりふの言い回しを成立させるためには、ナチュラルな会話以上にエネルギーや気持ちが必要で、ギアを上げないといけない。そうやって舞台上に生きているパリの人々、フェルゼンやオスカル、アンドレの生き様、アントワネットの最後の姿を観ていて、皆さんの心のエネルギーにとっても感動しました!

 この作品は、お世話になったさきさん(彩風咲奈)の退団公演でもあります。雪組時代にフェルゼン編で新人公演主演をされた姿、お背中を観ていたので、とても感慨深かったです。入団したときからスターさん=さきさんという印象で、私たち下級生を引っ張ってくださるリーダー的な存在で、新人公演で主演させていただいたときにも「さきさんだったらどうされるかな」と考えたり、私にとってはさきさんがお手本でした。新人公演でご一緒した『ベルサイユのばら』ーフェルゼン編ーでご卒業されるということで、個人的にも思いがあふれましたし、本当に美しくてかっこよく、とっても素敵でした。

※このメッセージは、9/13(火)のものです。

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テーマ:「好きなファンタジー作品」

  • ◎『ハリー・ポッター』シリーズ

    昔からとっても大好きで、いまも普段から『ハリー・ポッター』のアイテムを使うくらい好きです。昔は呪文を全部言えるくらいでした(笑)! 小説の最新刊、映画の最新作を楽しみにしながら、ハリー・ポッターと一緒に成長したという感じ。東京にある体験型施設も、いつか"ハリポタ"好きな花組のメンバーと一緒に絶対に行ってみたいと思っています!
  • ◎『精霊の守り人』

    上橋菜穂子さんによる代表的なファンタジー小説で、綾瀬はるかさんがドラマで演じられていたり、明日海りおさんが舞台をされていた作品です。女性の主人公、用心棒のバルサが強くてかっこいいですし、ストーリーも面白くて夢中で読みました。それに日本語の美しさが感じられて、私はこういったファンタジーが好きなんだなと気付いた作品でした。
  • ◎『千と千尋の神隠し』

    昔住んでいた家の近くに映画館があって、子供だけで観に行くということが"友達と行くおしゃれなお出掛け"という感じがして、すごく好きでした。そんな初めての映画館体験が、『千と千尋の神隠し』だったような気がします。久石譲さんの音楽も印象的でした。ジブリは昔からよく観ていて、『ハウルの動く城』や『借りぐらしのアリエッティ』も好きです。