今月の永久輝せあ
今月のメッセージ
愛情を受けて育ったアルカード。

『悪魔城ドラキュラ』のお稽古中は、アルカードには人間とヴァンパイアの血が半分ずつ流れているということで、その両者について考え、役を深めていきました。開幕してからは、人間とヴァンパイアという大きな括りだけではなく、人間であるリサとヴァンパイアのドラキュラ伯爵の間に生まれた子供であること、2人の血が流れているということを強く感じて、意識するようになりました。
ことの(朝葉ことの)演じる母のリサはとても優しく、芯が強い人だったと思っています。 そしてアルカードの部屋に描かれた母の似顔絵のように、マリア様のように慈愛にあふれていて人を癒やす、特別な笑顔を持つ女性だったのかな、と。そしてまゆぽんさん(輝月ゆうま)演じるドラキュラ伯爵は、本番でカットされてしまったせりふに「剣の強さだけが人間の強さじゃない」「お父さんのように意志を強く持つことが、人としての強さ」という母の言葉があったのが印象的でした。血を求めるヴァンパイアとしての部分を封じ込めてでも、母と一緒にいたいと思った父はすごく意志の強い人だと感じます。
アルカード像として、孤独で寂しい印象を抱かれているかもしれませんが、私としては、彼はある時期までは両親からの愛情を受けて育ち、愛にあふれた優しい人だと思っています。背負った宿命と長い年月の中でそういう部分に蓋をして生きてきたけれど、もともと彼が持っている優しさがこぼれ出て、子供を助けたり修道女たちを守ったり、無意識のうちに人助けをしてしまう。それは人間に守る価値があるからではなく、アルカード自身が愛情を受けて育ったからだと思いますし、母リサの血なのかなと感じています。
そして母が最後に遺した「人を憎んではいけない、お父さんに復讐をさせないで」という言葉を、父が人間を脅かさないように剣を向けてでも止めると捉え、父を倒すことを宿命として400年間生きてきました。でも母は、父と戦ってほしいと望んでいたわけではなく、母を失った悲しみゆえ人間に報復しようとしている父にもう一度愛を思い出させてあげることが私のやるべき宿命だったのでは、と。
マリアの「彼が止められないのは、人間を恨む気持ちというより、お母様への愛情」というせりふで、母の言葉は“愛情を託す”という意味だったのだと気づかされる。母から父への愛、父のなかの息子への愛も含めて、父に母と3人で生活していたころのような愛を思い出させる、もう一度目覚めさせるということが宿命なのだと思います。だから父を葬ることも、倒すという意味ではなく、母のもとに送ってあげるという息子だからできることなのかなと改めて感じています。そう思ったら、最後に父にとどめを刺すシーンは苦しいものではなかったのかもしれません。
マリアやリヒターへの思いは・・・・・・。

マリアは人間やヴァンパイアなどと区別せずに、アルカードの人間性を見ている。それは母が父を愛したときの気持ちにとてもよく似ていると思います。修道女たちに初めは優しい人だと捉えられていたアルカードが、魔物を倒したことで悪魔と言われるように、あっという間に見方を変えてしまう人間のなかで、マリアのように変わらず自分を見てくれる人はいままでいなかった。そういうところが彼女の魅力的なところかなと思います。
ほのかちゃん(聖乃あすか)演じるリヒターとは、守りたい人がいるというところで通じるものがあると思いますし、ベルモンド一族の彼がこれからどんな道を歩んでいくかもとても気になります。彼には、ヴァンパイアたちがこの世を滅ぼしていくのではなく、人間自身の弱さがこの世を破滅に向かわせていくことをわかってほしいと思っています。今後ドラキュラが蘇ることがなければ、ヴァンパイアを倒すハンターというベルモンド家の宿命にはいったん終わりがくる、終わってほしいとアルカードは願っているのではないかなと思っています。
『愛, Love Revue!』の魅力。
『愛, Love Revue!』はとても宝塚らしいレビューですが、プロローグはこれまでの「ロマンチック・レビュー」とはひと味違う雰囲気で始まります。 「ロマンチック・レビュー」=パステルカラーのお衣装のイメージですが、今回は紫や赤、白などのはっきりした色合いのお衣装になっています。
名曲「I Love Revue」を歌わせていただいていますが、“レビュー=宝塚レビュー”もっといえば“レビュー=宝塚歌劇”を指していると感じています。長年、岡田敬二先生が作ってこられた「ロマンチック・レビュー」は宝塚を代表するレビューですので、岡田先生ご自身のお言葉でもあると思いますし、私たち生徒一人ひとりの言葉として、毎公演かみしめながら大切に歌っています。
「追憶の唄」の場面は、仲間たちと革命の理想を追い求めた男の物語で、とてもドラマチックなシーンになっています。ダンスにはメリハリも必要ですが、この場面ではかっこつけて“抜く”ことはあまり必要ないと感じていて、体のすべてをきれいに使って空気を動かして踊るというのが、謝珠栄先生ならではの振付だと感じますし、全身を使うからこそ伝わるものがあるのかな、と。額縁の絵の中に描かれた同志たちの思いも背負い、戦に向かう決意をする場面なのですが、幕が開いてからよりその物語性を感じられるようになりましたし、周りのみんなの表現も深くなっているように感じます。仲間を失った悲しみや1人残ってしまった苦しみ、現実逃避して逃げ出したいような気持ち、それを仲間に止められるような感覚など、さまざまな感情が渦巻くシーンになっています。
その後、ぜいたくにも男役、娘役に囲まれ、デュエットもあるという中詰めで盛り上がった後は、「Bad Power」。’90年に初演された名作『ル・ポアゾン 愛の媚薬』の有名なシーンのオマージュになっています。正直言いまして体力的には厳しいですが、楽しい気持ちが勝る場面です! 私自身はもちろん、「このシーン、最高だよね!」と同じように思える仲間が周りにいることが尊いです。それが踊っていると伝わってきてとっても楽しいですし、一人ひとりがいい顔をして踊っていることが、本当にうれしい。踊りこなすのはとても難しいですし、初演の方々の男役としての見せ方にはなかなか及びませんが、精一杯努めていきたいと思っています。
そして先月もお話しした「熱愛のボレロ」は、大曲を歌わせていただき、最終的には5組のカップルで大劇場の舞台をゆったりと使わせていただくのが、本当にぜいたくだなと毎回思っています。みさきちゃんとのデュエットダンスも、宝塚史上に残る名曲「愛の歌」のアレンジが大人っぽく、壮大なサビ、幻想的なスモークで、演じていて楽しいです。
皆様、東京宝塚劇場公演もよろしくお願いいたします。劇場でお待ちしております!
※このメッセージは、7/15(火)のものです。
名曲「I Love Revue」を歌わせていただいていますが、“レビュー=宝塚レビュー”もっといえば“レビュー=宝塚歌劇”を指していると感じています。長年、岡田敬二先生が作ってこられた「ロマンチック・レビュー」は宝塚を代表するレビューですので、岡田先生ご自身のお言葉でもあると思いますし、私たち生徒一人ひとりの言葉として、毎公演かみしめながら大切に歌っています。
「追憶の唄」の場面は、仲間たちと革命の理想を追い求めた男の物語で、とてもドラマチックなシーンになっています。ダンスにはメリハリも必要ですが、この場面ではかっこつけて“抜く”ことはあまり必要ないと感じていて、体のすべてをきれいに使って空気を動かして踊るというのが、謝珠栄先生ならではの振付だと感じますし、全身を使うからこそ伝わるものがあるのかな、と。額縁の絵の中に描かれた同志たちの思いも背負い、戦に向かう決意をする場面なのですが、幕が開いてからよりその物語性を感じられるようになりましたし、周りのみんなの表現も深くなっているように感じます。仲間を失った悲しみや1人残ってしまった苦しみ、現実逃避して逃げ出したいような気持ち、それを仲間に止められるような感覚など、さまざまな感情が渦巻くシーンになっています。
その後、ぜいたくにも男役、娘役に囲まれ、デュエットもあるという中詰めで盛り上がった後は、「Bad Power」。’90年に初演された名作『ル・ポアゾン 愛の媚薬』の有名なシーンのオマージュになっています。正直言いまして体力的には厳しいですが、楽しい気持ちが勝る場面です! 私自身はもちろん、「このシーン、最高だよね!」と同じように思える仲間が周りにいることが尊いです。それが踊っていると伝わってきてとっても楽しいですし、一人ひとりがいい顔をして踊っていることが、本当にうれしい。踊りこなすのはとても難しいですし、初演の方々の男役としての見せ方にはなかなか及びませんが、精一杯努めていきたいと思っています。
そして先月もお話しした「熱愛のボレロ」は、大曲を歌わせていただき、最終的には5組のカップルで大劇場の舞台をゆったりと使わせていただくのが、本当にぜいたくだなと毎回思っています。みさきちゃんとのデュエットダンスも、宝塚史上に残る名曲「愛の歌」のアレンジが大人っぽく、壮大なサビ、幻想的なスモークで、演じていて楽しいです。
皆様、東京宝塚劇場公演もよろしくお願いいたします。劇場でお待ちしております!
※このメッセージは、7/15(火)のものです。

