今月の永久輝せあ

今月のメッセージ

今作で描きたい平家の物語とは。

永久輝せあ 今月のメッセージ  現在、東京宝塚劇場で上演中の花組公演『蒼月抄(そうげつしょう)』-平家終焉の契り- 『EL DESEO(エル・デセーオ)』。劇場にお越しいただいている皆様、ありがとうございます。このメッセージがアップされるのは、いよいよ閉幕が近づいているころだと思いますが、千秋楽までどうぞよろしくお願いいたします!

『蒼月抄』は平家終焉の物語ですが、『平家物語』の有名な一節「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり・・・・・・」から感じられる”無常観”というものを改めて考えさせられる作品だと感じています。

 これまで、私は無常観という言葉を「栄えたものはいつか滅びる。だから世は儚く切ないものだ」というように捉えていました。でも今作から感じるのは、「どんなものでもいつか滅びるのは世の理だから、滅びること自体はそれほど恐れるものではない」ということです。だから、嘆くことでもむなしいことでもないのではないか、と。それよりも、そこに”確かにあった”ことのほうが重要で、”どう生きたか”こそが素晴らしいことなのではと感じます。

 そんな世の理、時代の流れを受け入れて身を委ねたのが平家。だからいまの世まで語り継がれて、残っている。それが今作の1つの答えなのかなと感じますし、宝塚歌劇で美しく表現することの意味にもつながるのかなと思うので、大切に表現できたらいいなと思っています。

 最後の壇ノ浦の場面は、大きな唐船のセットでの大立ち回りではありますが、知盛の最期としては派手に散っていくというわけではなく、静かに滅んでゆく。歌舞伎では、壇ノ浦を生き延びた知盛が碇を背負って海に飛び込むという名場面が知られています。でも今作では、そういう華々しさはないことがこの物語で知盛がたどり着いた場所であり、作品の行き着きたいところなのかなと思います。

 せりふの「見るべきものはすべて見た」という言葉も、最初は平家の総大将として、平家最後の1人として父・清盛の作った世を終わらせる責務を全うし、見届け切ったという意味なのかと思っていました。でも演じるうちに、そうではないような気がしてきたんです。いまは、平家の一員としてというよりも、1人の人間として「自分の人生で起こるすべてのこと、表も裏もすべて見尽くした」という満足感、何かを手放した悟りに近いような心境だと感じています。

 そして知盛には、明子という自分の思いを託せる人がいます。自分も父から平家の世を託されましたが、本当の意味での「託す」ということは、自分の思いを人に押しつけて背負わせることではなく、 その人を信じて任せること。そう思えた知盛の、明子との別れのシーンは毎回胸が熱くなります。

 その後のラストシーンは、波に残した約束がようやく明子にたどり着くことができたような、それが繰り返し波に乗って、いまの世までも流れているようなイメージがあり、静けさや希望のような余韻が残る、この作品らしい最後なのかなと感じています。

演じる楽しさを感じるショー。

永久輝せあ 今月のメッセージ 『EL DESEO』は、最近続いていた宝塚歌劇らしいレビューとはひと味違い、1つ"仮面"をかぶってお見せする楽しさを感じています。

 妖しげなプロローグの最後は、銀橋でのソロの場面。 野口五郎さんの「愛がメラメラ~SMOOTH~」という少しけだるい雰囲気の楽曲を歌いながら、銀橋の中央から客席に降りて、お客様のお手を取ってなでるという振付があります。あまりない演出なので、最初は周囲から「わぁ!」と驚かれている声が聞こえたりしていました(笑)。演じている私自身もすごく楽しいシーンです!

 その後のタンゴを踊る「路地裏酒場」は、安寿ミラ先生が振付してくださったストーリー仕立ての素敵なシーン。踊り込んで自分のものにするのに苦戦しましたが、三つ揃いのスーツにハット、ジャケットを使う振付もあったりして、男役の魅力が詰まっている場面なので、とってもやりがいを感じています。

 中詰めの客席降りは、少し上から目線という、いつもとは違った雰囲気。後方まで行くことができてうれしいですし、今回は2階席にも下級生がお邪魔しているのでどのお席でも一体感を感じていただけるのではないでしょうか。ラテンらしい派手で大きな帽子も華やかですし、人によってお衣装のワッペンや飾りが違っていたりして凝ったデザインになっているので、ぜひ注目していただきたいです!

「砂漠 獣の血」のテーマは、生命への欲望。私が演じるのは、もはや人としての境界線を超えているのではないかというくらい、命への欲望が強いハンター。そんな彼が強い獣たちを物ともせずに戦い、命を取り合うというちょっと恐ろしい場面です。砂役の下級生たちの振付も斬新ですし、最後にかけて徐々にボルテージが上がっていくシーンになっています。

「エル・クンバンチェロ」を歌う場面は、そんな生命への欲望の場面で失われた命を含めた「生命の再生」、そして命の輝きやエネルギーを象徴するようなシーンです。みんなの勢いもすごく感じられて、心の中から湧き上がる感覚があって盛り上がります。ロケットの子も含めた全員での大合唱もあって、まるでフィナーレかのようです(笑)。

 先月もお話ししたフィナーレは、大階段での振付も多いので初日はすごく緊張しましたが、演じていてとても楽しいです。デュエットの最後にみさきちゃん(星空美咲)にささやく言葉は、舞台稽古のときにSHUN先生が急遽付けてくださった振付なんです! 毎回同じスペイン語を口にしているのですが、ささやきも振付だということがすごくおしゃれですよね。

退団するお2人について・・・・・・。

 今作の東京宝塚劇場公演の千秋楽で、なつきちゃん(鈴美梛なつ紀)とまなみ(湖春ひめ花)が退団されます。

 なつきちゃんは、昨年の博多座公演『マジシャンの憂鬱』のときに皇太子妃のボディーガード役を演じていたので、ご一緒する機会が結構ありました。歌もお上手ですし、すごくしっかりした子だなという印象です。そして、なつきちゃんが作るチーズケーキが「こんな美味しいのは食べたことがない!」というくらい絶品なんです! お店を超えた濃厚な味わいで、お誕生日にホールで食べたいと思うくらい。作ってきてくれたときに、いつも私がすごく喜んで食べるのでみんなより大きめに切り分けてくれたり、2つくれたりして・・・・・・(笑)。もちろんそれだけでなく、普段からすごく気遣いもできる素敵な娘役さんです。

 まなみは下級生の時から本当に熱心に芸事に向かう姿勢を持った子です。『はいからさんが通る』の新人公演のときにオペラ歌手の役を演じていて、ものすごく歌が上手くて印象に残りました。『冬霞の巴里』でも最下級生ながらみさきちゃんの子役時代を演じていましたし、『マジシャンの憂鬱』まで小劇場公演もほとんど一緒だったので話す機会が結構ありました。どんな時も一生懸命で、とても頼もしかったです。『EL DESEO』では、エトワールを務めていて、配役を聞いたときは私もうれしかったです。

 そして最後に、なつきちゃんとまなみと一緒に踊れる場面もあるので、すごくうれしいです。

※このメッセージは、4/21(火)のものです。

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テーマ:「殺陣のコツ」

  • ◎「一手一手の重み」

    『蒼月抄』は太刀を使っての立ち回り。少しカーブしていて長いぶん、日本刀よりも扱いが難しい気がします。特に最近は、レイピアなど西洋の剣が多くて日本の剣自体が久しぶりですし、やはり構え方や持ち方も全然違う。実際の日本刀はすごく重いと聞くので、少しでもリアリティを出すために一手一手の重みが大切。手の添え方1つで重みが出たり、引き抜くときの剣の抵抗力を意識したりしています。
  • ◎「腰やお腹で支える感覚」

    研2の時に『仁ーJINー』で近江屋の刺客の1人として、ちぎさん(早霧せいな)をはじめとするスターさん対、私を含めた下級生3人という構図の立ち回りがありまして・・・・・・。日本物はもちろん、刀も立ち回りも初めてだったので、毎日ペットボトルを使って素振りして、腕の力だけに頼らないよう、振り下ろしたときの重さを腰やお腹で支える感覚をつかむようにしていました。今作で立ち回りが初めての下級生にも、その練習法をやってもらいました!
  • ◎「相手との協力」

    日本刀もフェンシングも剣と剣なので、パワーバランスは一緒。でも『悪魔城ドラキュラ』では、剣もすごく長かったですし、何よりも素手で向かってくる魔物との戦いもあったので、間合いを取ることがすごく難しかったです。近すぎると危ないですし、体当たりで来るので距離感にはものすごく気を使っていました。これは特殊な例ですが(笑)、剣と剣でもベストな距離感やタイミングがあるので、相手との協力作業が大切です!