永久輝せあコーナー

今月のメッセージ

アネットとの大切な関係性。

永久輝せあ 今月のメッセージ  このメッセージがアップされるころには、花組東京宝塚劇場公演『アルカンシェル』の開幕間近だと思います。皆様、劇場でお待ちしております!

 先月は柚香光さん演じるマルセルや、まどかちゃん(星風まどか)演じるカトリーヌをはじめ、劇場・アルカンシェルの人々への思いをお話ししましたが、今回はみさきちゃん(星空美咲)演じるアネットとの関係性についても触れてみようと思います。

 はじめは占領する側とされる側という難しい立場で出会い、街でドイツ兵からアネットを助ける場面から、2人の関係性が少しずつ変わっていきます。そこで「ミラクル」という曲を歌うのですが、フリッツの内面が自然と出てくるような優しく軽快な曲ですし、それによってアネットがドイツ兵フリードリッヒ・アドラーから目の前にいる"1人の人間フリッツ"を見てくれるきっかけになると思うので、すごく重要なナンバーだと感じています。エンターテインメントの奇跡を信じるという歌詞には、作・演出の小池修一郎先生の舞台への思いが詰まっているようにも感じますし、私自身の舞台人としての思いにも重なります。また、コロナ禍を共に歩んでくださったお客様にも共感していただけるのではないかなと思いますので、祈りを込めて大切に歌っています。

 その後、結婚の約束をしてパリを離れる際に歌う、「結ばれる日」も大好きな曲です。歌詞のなかに、「またね!」「また会おうね」という意味のフランス語「À bientôt(アビヤント)」という言葉が出てくるのですが、とても素敵な挨拶だな、と。次に会うことを約束する、再会への祈りや願いを込めた言葉なので、その後もフリッツとアネットにとっての合い言葉のようになっています。

 この作品自体、パリがドイツに占領された4年間の話ではありますが、そこに生きる人々の人生の話なのだと改めて思いますし、戦争が終わった先に待っているものや未来への希望も見えてくる物語だなと感じています。
 フランス語で虹という意味の『アルカンシェル』というタイトルにもそんな意味があるように思います。虹は雨の後にかかるものなので、たとえいまはつらくとも、その先にある美しいもの、希望の象徴が虹なのでは、と。いつか虹が見えることを信じて、未来のためにいま沈まない、どうにかいまを生き延びるという戦争下の人々の心情でもあると思います。

 アネットとの未来は描かれていないのでどうなるかはわからないですが、それでもいつか再会し、結ばれると信じて「À bientôt(アビヤント)」とお互いに言葉を交わすことに意味があるのかなと思っています。

エンターテインメントへの思い、通信兵としての思い。

永久輝せあ 今月のメッセージ  フリッツが持っている「エンターテインメントの奇跡を信じる思い」は、ずっと揺るがないものだと思っていましたが、実際に演じ続けていると、厳しい戦争下でいろいろな状況が変わるなか、自分の夢や憧れなんてバカバカしい戯れ言かもしれないと挫けそうになることがあります。そんなとき、アネットが自分のことを待つと言ってくれたり、マルセルと協力してペペを救出したりして、そういう関係性のなかで、どうにか信念を手放さないでいられるのかな、と。

 また最近は、エンターテインメントの持つどういう面を信じるか、より具体的になりました。エンターテインメントに対して同じ思いを持っていても、戦争下では国を超えて手は取り合えないかもしれない。ドイツ兵として舞台に立っていると、フランスの人々との絶対に超えられない境界線を感じます。ただ、エンターテインメントの世界に触れている瞬間だけは手を取り合える。だからこそ、マルセルやカトリーヌなどアルカンシェルの人々と一緒に歌う「SWING」のナンバーは大切にしたいと思っています。私も舞台に立つ身として思うのは、舞台にその人の人間性が本当にすべて表れてしまうこと。つまりそれはこの作品においても、何よりも人と人の距離を近づける力を持つエンターテインメントの魅力なのかなと感じています。

 またフリッツは、ラジオ局のディレクターになる前は電波通信の研究をしていました。役の参考になればと通信兵がテーマの映画やドラマを観ましたが、周波数1つで国境を超えて違う国の人の話や音楽を聴くことができて、知らない世界に触れることができる。フリッツはそこにロマンを感じていたかもしれませんし、多くの人々に届けてあげたいという思いが彼のルーツなのかなと思い、大切にしています。ただ、それが戦争においては武器にもなってしまう。実際に通信兵として任務に当たらないといけなくなったことは、彼にはとてもつらいことだったのかなとも感じています。

フィナーレで大切にしていること。

 本編の後にはフィナーレがついていて、その最初に主題歌「たゆたえども沈まず」を歌わせていただいています。すごくパワーのある素敵な曲で歌いたいと思っていたので、とてもうれしいです。お芝居への思いが込み上げ過ぎてもフィナーレの始まりとしては相応しくないので、なるべく切り替えて、シンプルに曲の素晴らしさをお届けすることを意識しています。

 その後、男役の群舞のなかで少しだけ柚香さんと手を取って踊れる場面もとてもうれしく、大切にしている瞬間です。そして柚香さんとまどかちゃんのデュエットダンスは、お2人が歩まれてきた道や絆がすごく表れていて、毎回観ていて胸が熱くなります。角度やタイミングがぴったりそろっていて、お2人が紡いでこられたものが本当に素敵だなと感じ、いつもとても感動しています。

 皆様、東京宝塚劇場公演もどうぞよろしくお願いいたします!

※このメッセージは、3/15(金)のものです。

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最近の、自分をご機嫌にするためのラインナップです! お気に入りのCBDオイルや、友人や下級生からもらったアロマスプレー、ボディオイルなど……。朝ウォーミングアップするときにつけて、香りとともに深呼吸したり、軽くマッサージしたりして、心を落ち着かせるようにしています。
いま、公演でご一緒させていただいている専科のヒロさん(一樹千尋)がくださったミカンです! ヒロさんの今回のお役、ペペさんのお顔を描いてくださいました! お化粧前に飾っていたのですが、かわいすぎて食べられなくて……とお話ししたら、もう1つくださいました! うれしかったです!

テーマ:「桜から連想するもの」

  • ◎『アンジェラ・アキさんの「サクラ色」』

    宝塚音楽学校の予科生のとき、合唱の授業で歌った曲です。それぞれの期の持ち歌のようなものがあるのですが、私たち97期生といえばこの曲です! いろいろな機会で歌ったのですごく思い出がありますし、桜がテーマの曲といえばまず「サクラ色」が浮かびます。いまも耳にすると懐かしいです。
  • ◎『桜並木』

    昔住んでいた所にもきれいな桜並木がありましたし、宝塚にも花の道などがあり、とてもきれいです。桜が満開のなか並木道を通ると、すごく幸せな気持ちになりますよね。葉桜になって緑が混じってくると、少し寂しくなるくらい……。私は学生時代に"さくら"と呼ばれていたこともあり、桜への思い入れは人一倍強いです(笑)!
  • ◎『宝塚受験』

    合格を「サクラサク」ともいうので、音楽学校の二次試験のときに白色のコートにピンクのストールで宝塚入りしました。そしてバレエを辞めて受験スクール1本に絞ったときに未来の自分へ手紙を書いたのですが、それも桜のカードでした! 桜にまつわる思い出は多いですね。