基礎知識
キャッシュレス・消費者還元事業とは?店舗・消費者のメリットを解説

2019年10月1日(火)より、消費税が増税されます。それに伴い実施されるのが、「キャッシュレス・消費者還元事業」です。
消費者だけでなく、集客の増大や機器類導入への補助金支給など、店舗側にもメリットがあります。この制度について、詳しくご紹介します。
目次
キャッシュレス・消費者還元事業の背景
キャッシュレス・消費者還元事業は、経済産業省の監督により実施される制度です。2019年10月1日(火)の消費税増税と同時に始まり、2020年6月30日(火)まで施行されます。約3,000億円ともいわれる大きな費用をかけて、政府がこの制度を実施するのには、大きく2つの理由があります。
ひとつは、増税による消費の冷え込みを抑えること。消費税はこれまで2回の増税を実施してきましたが、その度に消費が落ち込みました。一時的なものであったにせよ、これでは景気を悪化させるばかりです。それを防ぐ制度を打ち出したのです。
もうひとつは、キャッシュレス決済の普及推進です。毎年のように増加している訪日外国人によるインバウンド需要は、これからさらに伸びていくと予想されています。世界的スポーツの祭典やその後の大阪・関西万博を控えて、キャッシュレス決済が当たり前の海外からの旅行者に不便な思いをさせず、日本の滞在を満喫してもらいたいということから、キャッシュレス決済の普及は不可欠です。
この2つの理由から、策定された制度がキャッシュレス・消費者還元事業です。
キャッシュレス・消費者還元事業の概要
キャッシュレス・消費者還元事業の内容は、施行期間中に特定の店舗でのキャッシュレスによる支払いに対してポイントを還元するものになります。
ただし、現金での決済については適用外で、あくまでキャッシュレス決済が対象となります。
キャッシュレス・消費者還元事業のしくみ
キャッシュレス・消費者還元事業がどのようなものなのか、実際の流れに沿ってご説明しましょう。
まず、制度の適用対象となる店舗で、消費者が消費税を加算して、キャッシュレス決済で精算します。すると、カード会社や電子マネー発行会社などの決済事業者から、「購入価格の2%あるいは5%」分のポイントが消費者に還元されるというしくみです。
店舗側として重要なことは、「自店がこの制度の対象になるか」「キャッシュレス決済に対応できるか」という2点です。
適用対象となる決済方法は?
キャッシュレス・消費者還元事業の適用対象となるキャッシュレス決済とは、「電子的に繰り返し利用できる決済手段」と定義されています。具体的には次のような決済手段があります。
<適用対象となる決済手段>
- ・クレジットカード決済
- ・電子マネーやプリペイドカードでの決済
- ・デビットカード決済
- ・QRコード/バーコード決済
(電子マネーやクレジットカード、銀行口座の情報をスマホに登録し、タッチしたりQRコードやバーコードを使ったりして支払う方法)
この制度の適用を受けようとする場合、まずカード会社や電子マネーの発行元などの決済事業者が事前に経済産業省に登録申請をしているか確認する必要があります。2019年7月の時点で三井住友カードやPayPayなど、キャッシュレス事業を手掛ける企業が350社以上も本登録を済ませています。
消費者・店舗にそれぞれのメリット
キャッシュレス・消費者還元事業は、消費者にとっても店舗にとってもメリットのある制度です。それぞれどのようなメリットがあるのか、具体的に解説していきましょう。
消費者のメリットは「ポイント還元」
消費者にとっては、やはりポイント還元が最大のメリットでしょう。ポイント還元制度は、加盟店登録をした中小企業を対象とし、大企業は対象外となっています。店舗によってはポイント還元の適用対象外となるものもありますが、適用を受けている店舗であれば、最低でも2%は使ったお金が戻ってきます。
還元されるポイントは、購入価格の2%または5%に設定されています。還元率が違うのは、制度の適用を受けている店舗によって違いがあるためです。
今回の消費税増税では8%から10%へ、2%上昇します。例えば、ポイント還元率が2%だった場合、本体価格1,000円の商品を買うと次のような計算になります。
<2%ポイント還元による支払い額>
- ・購入価格=本体価格1,000円+消費税(10%)100円
- ・還元分=購入価格1,100円×還元率0.02(2%)
- ・実質支払い額=1,078円
還元ポイントの計算は税込みの「購入価格」がベースになるので、単純に「2%-2%でゼロ」ということにはならず、わずかながらポイント還元効果が発生します。
これが、5%になるとどうでしょうか。
<5%ポイント還元による支払い額>
- ・購入価格=本体価格1,000円+消費税(10%)100円
- ・還元分=購入価格1,100円×還元率0.05(5%)
- ・実質支払い額=1,045円
5%還元の店で買物をすると、増税前の税込価格1,080円よりも、35円も安くなります。まとまった買物をする場合、このポイント還元は見逃せないでしょう。
ただし、今回のポイント還元では適用対象外となるものもあります。例えば、商品券のように換金性の高いものや、医薬品など元々消費税の対象外であるもの、あるいはすでに消費増税対策としての減税が決まっているマイホームや自動車などは、この制度の対象外です。
店舗側のメリットは「集客増大の期待」
店舗側のメリットとしては、第一に「集客増大」の効果が期待できるということがあります。すでにふれたように、今回のポイント還元制度では、店舗側が「還元なし」「2%還元」「5%還元」という3つのグループに区分されます。
消費者側の心理として、増税による買い控えは避けられませんが、その一方で、還元制度の適用対象となっている店舗であれば、増税どころか減税効果が期待できます。ですから、「どうせ買物をするのなら、ポイント還元をしてくれる店で買おう」ということになります。5%還元の適用対象店舗であれば、集客増大の効果が、かなり期待できるでしょう。
還元率2%と5%の境界は、店舗の規模
では、ポイント還元率の2%と5%の違いは、どのように決められるのでしょうか。これは、店舗の規模が判断基準となります。
今回のポイント還元事業で対象となるのは、中小・小規模の事業者です。その規模は、「資本金の額または出資の総額」と、「常時使用する従業員の数」によって業種ごとに定められています。それぞれ以下の金額と人数の条件を、両方満たす必要があります。
<中小・小規模事業者の定義>
製造業その他:資本金または出資総額3億円以下/従業員数300人以下
卸売業:資本金または出資総額1億円以下/従業員数100人以下
小売業:資本金または出資総額5,000万円以下/従業員数50人以下
サービス業:資本金または出資総額5,000万円以下/従業員数100人以下
それぞれの業界で該当する事業者が、今回のポイント還元制度の対象となり、申請して本登録されれば5%のポイント還元が実施されます。なお、保険医療機関や宗教法人など、そもそも消費税の対象外とされている事業者はポイント還元もありませんので、注意してください。
また、コンビニや外食などのフランチャイズチェーンでは、大手企業の看板を使っていても、各店舗は個人事業主として経営しているところが多くあります。そうした店舗では、2%のポイント還元が適用されることになります。
■あなたの店はフランチャイズ?

この制度は適用条件が細かく、特にサービス業などでは例外も多いので、経済産業省のキャッシュレス・消費者還元事業ホームページでチェックするか、相談窓口に問い合わせてみることをおすすめします。また、たとえ適用条件に該当していても、申請して登録されなければ適用されませんのでご注意ください。
店舗側には補助金の支給もある
キャッシュレス・消費者還元事業では、ポイント還元だけでなく、キャッシュレス決済を導入する店舗側に補助金を出す制度もあります。
キャッシュレス決済を導入するには、決済端末の設備が不可欠です。クレジットカード、電子マネー、デビットカード、QRコード/バーコード決済など、導入する決済方法によって程度の差はあっても、初期導入の手間やコストがかかります。
特に、クレジットカード決済を導入するには、レジやカードリーダーが高価なうえ、手数料もかかります。しかし、スマホやタブレットにカードリーダーを接続する「Square(スクエア)」のように、数千円から導入でき、無料のクラウドサービスを利用して手数料3%台で運用できるクレジットカード決済もあります。
こうしたキャッシュレス決済の決済端末を新たに購入した場合、国が3分2、決済事業者が3分1を負担し実質無料になります。しかも、キャッシュレス・消費者還元事業の施行期間中は、事業者がキャッシュレス決済を行う際に決済事業者に支払う加盟店手数料の3分の1を国が補助してくれます。
これならば、キャッシュレス決済の導入をあきらめる必要はないでしょう。規模の小さな店舗であればあるほど、そのメリットは大きいといえます。
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制度を活用してキャッシュレスのスムーズな導入を
消費税が8%から10%へ増税されるにあたって施行されるキャッシュレス・消費者還元事業により、消費者側にも店舗側にもキャッシュレス決済が広がっていくものと思われます。
2019年10月1日(火)から9ヵ月間の期間限定ではありますが、この制度をうまく活用し、キャッシュレス決済を導入することが、ビジネスの成功につながります。早めの対応をご検討ください。
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