活用術
鍼灸院を開業するために必要なこと。手続きや準備について解説
将来は鍼灸院を開業して経営してみたい、資格を持ち鍼灸師として鍼灸院に勤務しているが独立して開業してみたいと考えている方もいるでしょう。しかし、鍼灸院を開業するためには、具体的に何が必要か分からない方もいると思います。そこで、鍼灸院を開業するために必要なこと、さまざまな手続きや準備について解説していきます。
目次
鍼灸院の仕事
鍼灸院では、国家資格を取得した鍼灸師の方が働いています。鍼灸師は、身体に鍼(はり)や灸(きゅう)を用いて刺激を与え、患者の自然治癒力を高める仕事をします。病気や不快な症状を持つ患者に対して、東洋医学や漢方医学に基づいて施術を行なっていきます。身体の不調を予防する、または改善することが目的の仕事です。肩こりや神経痛の緩和、自立神経やホルモンバランスの調整など、幅広い症状を対象に施術を行なう仕事です。
鍼灸院を開業するために必要な資格
鍼灸院を開業するためには、「はり師」と「きゅう師」の国家資格が必要になります。「鍼灸師」はよく使われる言葉ですが、「鍼灸師」という資格はありません。「はり師」と「きゅう師」の2つの資格に別れています。「はり」と「きゅう」の治療を扱う鍼灸院では、「はり師」と「きゅう師」の2つの資格が必要になります。
はり師、きゅう師の2つの資格
はり師、きゅう師の受験資格を取るためには、専門学校や大学のしん灸学科などで3年以上、必要な知識と技能を習得しなければなりません。また、はり師及びきゅう師に係る学校養成認定規則第4条に定める程度の著しい視覚障害があり、学校教育法第57条の規定により高等学校を入学できる者であって、認定された養成施設で5年以上必要な知識及び技能を習得した者がはり師、きゅう師の受験資格を得ることができます。
はり師、きゅう師の試験は筆記のみ(聴覚障害者は別の試験方法有り)で、医療概論(医学史を除く)、衛生学・公衆衛生学、解剖学などになります。はり師ときゅう師を同時に受験する場合、「はり理論」と「きゅう理論」以外は共通科目のため、申請をすれば一方の試験の共通科目について免除ができます。
鍼灸院の資格を取るための基礎知識
鍼灸院の開業に必要な資格は、鍼(はり)を用いた施術ができる「はり師」と、お灸(おきゅう)を用いた施術のできる「きゅう師」の資格をもつ者が必要になります。両方の資格を取得していれば「鍼灸師」と呼ばれ、鍼(はり)とお灸(お灸)の両方の施術ができます。鍼灸院に必要な資格について詳しくご紹介します。
鍼灸院養成学校を卒業することで取得できる
「はり師」と「きゅう師」の国家資格の受験資格を得る方法の一つとして、鍼灸院養成学校を卒業する方法があります。「はり師」と「きゅう師」の受験資格は、学校教育法第90条第1項の規定により、大学に入学できる者であって、厚生労働省大臣の認定した養成施設又は都道府県知事の認定した養成施設において3年以上、必要な知識及び技能を習得したものとされています。つまり、認定された鍼灸院養成学校を卒業して、「はり師」と「きゅう師」の国家試験の受験をすれば、資格を取得できます。鍼灸院養成学校では夜間部がある学校もありますので、自分にあった鍼灸院養成学校を探してみましょう。
国家資格の合格率
国家資格である「はり師」の合格率は、2021年2月27日(土)および28日(日)に行なわれた「第29回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験」では、70%となっています。受験者は3,853名で合格者は2,698名です。同じく2021年の「きゅう師」の国家試験の合格率は、72.2%です。受験者は3,797名で合格者は、2,740名でした。
2021年の「はり師」および「きゅう師」国家試験の合格基準は、配点は1問1点として、それぞれ合計170点満点とし、102点以上の者が合格となっています。
2020年の第28回では、「はり師」の合格率が73.6%、「きゅう師」の合格率は74.3%でした。2020年の合格基準は、合計150点満点とし、90点以上の者が合格となっていました。
鍼灸院の開業費用
鍼灸院を開業するためには、物件取得費や内装費用を含む初期費用と、月ごとに必要となる運用費用が必要になります。テナントの大きさにより必要な開業費用は変化しますが、ある程度のまとまった費用が必要となります。計画的な開業をするために、しっかりと事前に確認してから開業する必要があります。ぜひ、参考にしてみてください。
初期費用
10坪程度の鍼灸院を仮定した金額になります。
鍼灸院の立地や規模によって費用は変わります。施術の内容によって必要な施術機器や器具が必要な場合、費用は加算されます。自宅で開業する場合は、物件取得費や内装工事を大きく減らせるでしょう。
運用費用
運用費用とは、鍼灸院を運営していく上で1ヵ月にかかる費用のことです。
- ・人件費
- ・賃貸料
- ・水道光熱費
- ・広告費
- ・消耗品
具体的な費用は、鍼灸院の立地や大きさ、従業員の数によって大きく変化します。鍼灸院の開業にあたって、従業員を雇う場合は大きな出費となるので慎重に検討しましょう。なぜなら、鍼灸院の経営では人件費の割合が一番高いとされているからです。事前に、数ヵ月分の運用費用を準備してから開業すると、余裕をもって経営ができます。
鍼灸院の開業の流れ
鍼灸院を開業するためには、しなければいけない事柄が複数あります。どの工程も、とても大切で重要な事なので、間違えのないようにしなければいけません。法律に関係する事柄もありますので注意が必要です。きちんとした段取りを踏むことで、スムーズな鍼灸院の開業が可能になります。開業までの流れを事前に確認してから、しっかり行なえば、途中でトラ物に遭遇する可能性を減らせます。ぜひ参考にして、鍼灸院の開業に役立ててください。
保健所に相談をする
鍼灸院を開設したい土地が決まったら、開設したい予定地を所轄している保健所などへ事前に相談にいきましょう。相談することは、保健所へ提出する書類、施術をする場所の構造や設備、鍼灸院の名称についてです。管轄している保健所によって、施設の構造や設備の基準や名称について細かく定められているので、事前に調べておくことが大切です。
保健所の基準を知らないで、施設の内装工事などをしてしまうと、後からやり直すなど無駄になってしまいます。保健所の基準を満たす施設の構造や設備にしなればいけません。不明点がないように、事前に相談を行ないましょう。
構造設備基準の規定を満たした物件を選ぶ
鍼灸院を開設する場合は、施術所を開設することになるので、構造設備基準を満たしていなければいけません。法令や自治体によって基準があるので、必ず施術所を開設する場所の自治体へ確認してください。
- ・6.6平方メートル以上の専用の施術室があること
- ・3.3平方メートル以上の待合室があること
- ・施術室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること。ただし、これに変わるべき適当な換気装置があるときはこの限りではない
- ・施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること
- ・常に清潔に保たれていること
- ・採光、照明および換気が十分なされていること
- ・施術所は、住居やほかの店舗等と構造上独立していること
- ・施術室と待合室の区画を固定壁などで適当に仕切ること
鍼灸院の名称に医療法や医師法に抵触していないか確認する
鍼灸院の開業をするとき、鍼灸院の名称が医療法や医師法に抵触していないか注意しましょう。医療法や医師法では、患者が誤解をするような施設の名称を禁止しているからです。「病院」、「診療所」、「科」「医」など、病院と間違えるような名称を使用してはいけません。ほかにも「〇〇クリニック」、「〇〇薬局」なども禁止されています。例えば「はり科」や「きゅう科」と名前をつけてはいけません。
鍼灸は、「医業類似行為」になり、「医業」とは異なります。鍼灸院では医療行為は行なえませんので、患者が誤解する名称は付けられません。
開設
保健所への相談をして、構造設備基準の規定を満たした物件を選び、基準に沿った内装や設備の工事が終了したら、開設ができます。鍼灸院を開設したら、10日以内に開業届を保健所へ提出しましょう。
保健所へは、開業届とともに必要な書類を提出します。保健所へ開業届などを提出すると、後日に保健所により立ち入り検査が行なわれます。届け出の書類どおりの内装や設備になっているか検査がされます。検査を通過すると副本の交付を受けることが可能になります。開業届と提出してから、問題が無ければ約1ヵ月で完了します。スムーズな開設を行なうためには、事前の準備を丁寧に行なうことが大切です。
鍼灸院の開業に必要な届け出・調査
鍼灸院の開業では、施術所を開設する時に複数の書類が必要になります。また、その書類を基に保健所の調査が行なわれます。調査でつまずいてしまうと、開業をスムーズに進められない事態になってしまいます。そんな失敗をしないように、事前に必要な書類、書類に書くために必要な情報を集めておくなど、計画的に行ないましょう。
開業届
鍼灸院の開業に必要な開業届は「施術所開設届」です。宛先は、施設を開設する土地を所管する保健所の所長宛となります。
- ・開設者の住所
- ・氏名
- ・電話番号
- ・施術所の名称
- ・開設の場所
- ・開設年月日
- ・業務の種類
- ・業務に従事する施術者
- ・構造設備の概要(施術室の面積、待合室の面積、換気面積、換気装置の有無、消毒設備)
- ・担当者所属・氏名等
- ・業務に従事する施術者の氏名、免許の種類、登録番号、登録年月日など
以上の内容を「施設所開設届」に記入します。提出時期は開設後10日以内で、提出部数は2部になります。
開業に必要な書類
開業に必要な書類をご紹介します。
- ・開業届2部(提出用と控え用)
- ・施術所の平面図(施術室・待合室・施術室の窓の寸法、施術第・施術器具・消毒設備・ドア・換気装置の位置がわかるもの)
- ・本人確認書類(運転免許証、パスポート、身体障害者手帳など)
- ・法人の場合は、登記事項証明書(発行から概ね3ヵ月以内のもの)
- ・はり師、きゅう師の免許証の原本
自治体によっては本人確認が、開設者が作成した「業務に従事する施術者本人である事を照明する書類」の添付でも可能です。開業に必要な書類は、開設する自治体によって異なるので事前に調べて、記入もれのないようにして提出しましょう。
現地確認調査
保健所へ開業届などを提出すると問題がなければ受理されます。受理されてから10日開庁日ほどで保健所の職員が、施術所へ現地確認調査をするために訪れます。提出された書類の内容と実際の施設の状態に相違がないかを確認するためです。事前に保健所に相談した時の基準を守っていれば、安心して調査を受けることができます。衛生や設備に関わることは、常に良い状態を維持できるようにしておくと、現地確認調査にも対応できるので意識しておきましょう。
調査で確認される項目
保健所による現地確認調査で確認される項目をご紹介します。
鍼灸院の開業に必要なもの
鍼灸院の開業に必要なものをご紹介します。
そのほかには、使い捨てで鍼を使用する場合は、鍼を安全に廃棄できる場所を作りましょう。鍼を繰り返して使用する場合は、滅菌処理をするオートクレーブや乾熱滅菌器などが必要になります。
6.6平方メートル以上の施術室と3.3平行メートル以上の待合室が作れない場合は、パーテンションを利用して壁を作り、基準を満たしましょう。
出張専門の鍼灸院として開業するための準備
鍼灸師の方が開業する方法は、鍼灸院を開業する以外にもあります。施術所を持たずに、患者の自宅へ訪問して施術をする出張専門の鍼灸師として開業する方法です。鍼灸師は、患者の自宅へ訪問した場合でも、施術が保険診療となります。開業費用の調達が難しい方、鍼灸院を開業するのは自信がない方は、リスクが少なく始められる出張専門がおすすめです。出張専門の鍼灸院を開業するために必要な準備についてご紹介しますので、参考にしてみてください。
開業届ではなく、出張業務開始届を提出する
出張専門の鍼灸院の開業は、通常の鍼灸院の開業で使用する開業届とは異なります。必要になるのは、「出張業務開始届」になります。施術者の住所の管轄の保健所へ提出します。提出時期は、出張業務を開始したときで、開始から概ね10日以内とされています。提出部数は2部になります。すでに施術所を開業していて、出張業務をする場合は届出の必要ありません。あくまで出張施術を専門として始める場合に必要になります。
出張業務開始届には以下のことを記入します。
- ・施術者住所
- ・氏名
- ・電話番号
- ・業務開始年月日
- ・業務の種類
- ・免許の種類
- ・消毒設備の概要
- ・担当者所属・氏名等
必要書類
出張専門の鍼灸院を開業する場合に必要な書類をご紹介します。
- ・出張業務開始届2部
- ・届出者の資格免許証の原本と写し
- ・本人確認のための書類(運転面書証、身体障害者手帳、住民基本台帳カード、マイナンバーカード(顔写真つき)、パスポート、外国人登録証明書)
上記の本人確認書類が用意できない場合は、保険証、年金手帳、診察券、社員証、学生証のうち、いずれか2点が必要)
自治体によって、本人確認に必要な書類は変わるので、住所のある自治体へ確認してください。
出張専門の鍼灸院を開業する場合は、施術所もなく構造設備基準もないので、必要な書類は少なくなります。
出張専門の鍼灸院を開業する際の注意点
出張専門の鍼灸院を開業する歳には、いくつかの注意点があります。まずは、屋号のない個人での届け出になるため、名称や通称を広告してはいけません。宣伝をしたい場合は、この点に注意して行ないましょう。
つぎに、出張する場所がどのような環境か分からないので、対応できるように準備をしておく必要があります。出張する場所までの距離にも気をつけて、出張先に持ち運べる荷物の量を決めましょう。不便な環境を想定して必需品を持っていくのがおすすめです。
そして、出張業務で往診をする場合、片道16km以内までとされています。片道16kmを超える場合は、絶対的な理由があるのみとなっています。絶対的な理由とは、患者の所在地から片道16km以内に保険医療機関や施術所がなく、患者の所在地に一番近い施術所から往診を受けざるを得ないなどです。
鍼灸院での支払いはキャッシュレス決済が便利
鍼灸院は、鍼やお灸を用いた施術を受けることができ、スポーツをする人、美容目的の女性、高齢者など、幅広い年代が利用しています。東洋医学的に見ると病気の予防にも役立つことで、ますます需要が高まっています。
消費者庁が2018年に公表している調査では、「現金払いしか利用できずに困った店舗、場面」について、「病院・診療所」で現金払いのみで困ったという方が28%もいることが分かりました。
このような中で、鍼灸院でキャッシュレス決済が導入してあれば、新規顧客の獲得や取りこぼしの防止につながるでしょう。
1台で多くの決済方法を導入するなら「stera pack」がおすすめ
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ですが、キャッシュレス決済の導入は申し込みが面倒なのでは?導入費用が高いのでは?と思い躊躇している方も多いのも事実。そんな悩みを払拭する「stera pack」をご紹介いたします。
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stera terminalだけで決済が完了するため、レジ周りもスッキリします。内装にこだわりたいという方にもおすすめです。
アプリインストールで業務の効率化および販促・集客もできる
stera terminalは、 Android OS を採用しています。そのため、さまざまなアプリを追加して業務効率化を図ることができます。アプリのダウンロードは簡単で、専用マーケットプレイス「stera market」からアプリをインストールするだけ。普段お使いのスマートフォンのように利用することが可能です。
stera packを利用すると、販促・集客アプリ「おみせポケット」が標準搭載されています。会員証の発行、クーポン配布など、集客に関する機能がついていますので、個別にツールを利用する必要がありません。決済端末としてはもちろん、販促・集客にも利用できるのはstera terminalならではです。
今回の記事のまとめ
鍼灸院の仕事
鍼灸院を開業するために必要な資格
- はり師、きゅう師の2つの資格
鍼灸院の資格を取るための基礎知識
- ・鍼灸師養成学校を卒業することで取得できる
- ・国家資格の合格率:どちらも70%ほど
鍼灸院の開業費用
- ・初期費用
- ・運用費用
鍼灸院の開業の流れ
- ・保健所に相談をする
- ・構造設備基準の規定を満たした物件を選ぶ
- ・鍼灸院の名称に医療法や医師法に抵触していないか確認する
- ・開設
鍼灸院の開業に必要な届け出・調査
- ・開業届
- ・開業届に必要な書類
- ・現地確認調査
- ・調査で確認される項目
鍼灸院の開業に必要なもの
出張専門の鍼灸師として開業するための準備
- ・開業届ではなく、出張業務開始届を提出する
- ・必要書類
- ・出張専門の鍼灸院を開業する際の注意点
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