活用術
インバウンド需要を取り込むための対策とは?
毎年のように過去最高を更新し続けるインバウンド。今、日本国内の各地で、インバウンド需要が拡大しています。
店舗がこの需要を取り込むには、どのような対策をとれば良いのでしょうか。業種にかかわらず実践できる方法を考えてみましょう。
目次
増え続けるインバウンド需要
インバウンドとは、海外から日本を訪れる旅行のことで、ここ10年ほど増え続けています。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、東日本大震災に見舞われた2011年こそ、621万人と前年を割り込みましたが、翌2012年には835万人と復調。その後は為替が円安に傾いたこともあって順調に伸び続け、毎年「過去最高」を更新しながら、2018年にはついに3,000万人の大台を突破。大阪や京都などの有名観光地では「周りから聞こえてくるのは外国語ばかり」という状況になっています。
特に2019年は、日本で開催されたラグビーワールドカップがインバウンドの増加につながったようです。前年同月比で見ると、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアなど、近隣のアジア諸国からの訪日客が軒並み20%から30%以上も増加。ラグビー発祥の国であるイギリスからは、9~10月にかけ、平均85%も増えています。世界的スポーツの祭典が開催される2020年の夏には、さらなる増加が見込まれるでしょう。
■訪日外国人旅行客数および訪日外国人旅行消費額の推移
出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」および日本政府観光局(JNTO)
インバウンド需要を取り込むには?
増え続ける訪日観光客が向かう先は、観光名所ばかりではありません。大都市近郊や地方都市にも、多くの観光客が訪れています。自分のお店の近所を歩いていて「近頃、海外からの観光客が増えたな」と感じるなら、インバウンド需要を取り込むチャンスだといえます。
クレジットカード決済は必須
海外の多くの国では、日本以上にキャッシュレス化が進んでいます。中でも、国境を越えて利用できるクレジットカード決済への対応は、最初に済ませておきたいインバウンド対策。
ことにVisa、Mastercardといった主要な国際ブランドは必須です。可能であれば、中国で広く使われている銀聯カード(ぎんれんカード)にも対応できるようにしておきましょう。
また、カード決済を導入したら、どのクレジットカードが使えるかを示すアクセプタンスマーク(カードブランドのロゴマーク)を店頭にしっかり掲示することが大切。「この店ではクレジットカードが使える」という安心感を与え、来店を促すことができます。
日本ならではの商品・サービスを用意しよう
外国人観光客は、「日本ならでは」の体験やアイテムを求めています。型どおりの「伝統的な日本文化」である必要はありません。
近年では大都市を避け、地方の田園風景の中を自転車で見て回る「田舎ツアー」や、盆踊りや縁日をイメージしたイベントなどが人気を集めているようです。日本人の目には何の変哲もない日常であっても、意外なものが「クール」に見えるのでしょう。
動画投稿サイトには、「来日経験の豊富な外国人が日本で見つけたクールなものを紹介する」という動画が多数アップロードされています。そういったところから、商品やサービスのヒントを得るのもいいかもしれません。
店舗内外の表示を多言語対応にする
店内はもちろんですが、店頭の立て看板やポスターなどの多言語対応も重要です。「◯◯語に対応しています」という表記は、旅行者にとって大きな安心と親近感につながります。
飲食店であれば、メニューも数ヵ国語分を用意したいところです。メニュー名に加えて簡単な調理法を併記しておけば、どんな料理なのかイメージしやすいはずです
ベジタリアンメニューやイスラム食であるハラルフードを提供することができればアピールポイントになりますが、これらのメニューには厳しいルールがあり、特にハラルミートは非常に厳格な条件が定められていますので、専門家の指導が必要でしょう。
言語の壁を乗り越えるのは難しくない
海外からのお客さまに細やかな接客をするには、「身振り手振りと単語の羅列」だけではなく、一歩進んだコミュニケーションをとる必要があります。外国人のお客さまが多い店舗ならば、固定費はかかりますが、外国語のできるスタッフを常時配置すると、双方のストレスが軽くなります。
また、少し手間はかかりますが、翻訳機や翻訳アプリを使う方法もあるでしょう。ハンディサイズの翻訳機の中には数十の言語と、方言までサポートしている物もあり、話しかけるだけで音声やテキストに翻訳することができます。店舗の規模に応じて必要な台数を用意しておけば、言葉の壁も乗り越えることができます。
日本流のおもてなし精神
相手への思いやりと細やかな気配りでお客さまに喜んでいただくことが、日本流のおもてなし。高級旅館のように完璧なサービスではなくとも、小さな工夫で歓迎の気持ちを伝えることができます。
例えば、ひな祭りや七夕など、季節感のある装飾は、日本的な情緒を感じさせるでしょう。スタッフが着物姿で接客するのも一案ですが、動きやすさにも配慮が必要です。飲食店ならば、小さな折り紙で箸置きを作っておくという演出も、お店を印象付ける良い方法です。そのままお持ち帰りいただければ、ささやかでも印象深いお土産になることでしょう。
ウェブサイトやSNSを活用する
観光庁の調査報告によると、訪日観光客は自国を出発する前にウェブで入念に下調べをしています。まず、個人のブログ、次に旅行ガイドや旅行会社の日本紹介ページ、そして政府観光局のページという順番です。
また、来日してからは、スマホで手早く情報収集をしていることが分かりました。この事実を踏まえると、外国語表示のできるグルメサイトや総合情報サイトへの広告出稿や店舗登録は、インバウンドを誘致する上で、ひとつの大きなきっかけとなるはずです。
コストのかかる広告出稿が難しい場合も、あきらめることはありません。SNSのアカウントを作り、SNSを見て来店してくれたお客さまにドリンクをサービスするなどの特典を用意すれば、個人レベルの口コミで評判が広がることも期待できます。印象的な写真を投稿するなど、工夫次第で費用をかけずに宣伝することもできます。
旅行者が求める「そこでしかできない経験」
2019年3月、観光庁によって「体験型観光コンテンツの充実」が、今後の市場拡大の課題として提言されました。確かにここ数年、「見る、買う、食べる」という従来の観光消費に加え、「体験する」旅、いわゆる「コト消費」を見聞きする機会が増えています。
例えば、うどんで名高い香川県・讃岐地域。ここでは、「うどん打ち体験」や「お遍路さん体験」をはじめ、農作業や織物、藍染め、陶芸といった、この地ならではの体験型メニューが強化されています。五右衛門風呂に浸かり、古民家をリノベーションしたゲストハウスに泊まる。こうした体験型コンテンツを、官民挙げて拡充した結果、香川県のインバウンド宿泊者数は2012年の約4万3,000人から5年間で10.52倍と全国1位の伸びを記録し、その後も増加を続けて、2018年には50万人を突破しました。
この地域、この場所でしか体験できない。そんなレアなコンテンツが、海外からの旅行者たちを惹き付けてやまないのです。
インバウンド対策に公的補助金・助成金も利用できる
インバウンド対策をとりたいけれど、コストを考えるとなかなか踏み切れない。そんな店舗は多いはずです。内容によっては、各種の公的補助金や助成金を活用することができます。
国交省や観光庁、全国の都道府県、市区町村など、多くの公的機関が、インバウンド対策のための補助金や助成金制度を設けています。宿泊施設でのWi-Fi環境の整備や、店舗での多言語表記、特定の地域内での街歩きを快適にするための施策への助成など、内容や条件もさまざま。
定期的に観光庁や自治体のオフィシャルサイトをチェックして、申請可能なものが見つかったら、積極的に活用するのがおすすめです。
インバウンドには日本ならではのサービスを
インバウンド需要を取り込むには、さまざまな工夫が必要です。日本でしか味わえない体験を求めてやってきた彼らには、日本ならではのサービスで応えましょう。特別なことだけではなく、日本人にとっての当たり前を体験することが、心に残る思い出になるかもしれません。
口コミはブログやSNSを通じて世界に広がり、「日本のあの店に行きたい」という新たなモチベーションにつながる可能性があります。
今回の記事のまとめ
インバウンドは増え続けている
- ・2019年はラグビーワールドカップで、訪日観光客が増加
さまざまな方法でインバウンド需要を取り込む
- ・クレジットカード決済対応は必須
- ・できる限りの多言語対応を
- ・広告はウェブ、SNSを活用
- ・体験型コンテンツが人気を集めている
- ・公的補助金・助成金の活用も視野に入れ、日本ならではのサービス提供を
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