活用術
キャッシュレス推進協議会とは?キャッシュレス化を進める理由と役割

2019年10月のスタート以来、「キャッシュレス・ポイント還元事業」は消費者にも認知され、キャッシュレス化の一助を担っています。このキャッシュレス・ポイント還元事業を実施する母体組織が、一般社団法人キャッシュレス推進協議会です。
一般の消費者には、ほとんどなじみがない組織ですが、近年加速しているキャッシュレス化への流れも、大きな反響を呼んだキャッシュレス・ポイント還元事業も、この組織が推進しています。どこかの業界だけが得をするような制度ではなく、日本全体がキャッシュレス化することで消費者も店舗も便利になり、経済全体を活性化させようというのがこの組織の狙いです。
日本のキャッシュレスの推進役であるキャッシュレス推進協議会について、その成り立ちと組織の内側に迫ります。
目次
キャッシュレスの普及を目指すキャッシュレス推進協議会
2019年10月の消費増税と同時にスタートしたキャッシュレス・ポイント還元事業。この事業を展開しているのがキャッシュレス推進協議会です。日本でのキャッシュレスの普及とその推進に従事するため、さまざまな取り組みにあたっていくことを役割として、2018年7月に設立されました。
現状の問題点や課題を明らかにして今後の方向性を議論し、キャッシュレスの普及に取り組んでいます。
キャッシュレス推進協議会の成り立ち
キャッシュレス推進協議会は元々、内閣府の日本経済再生本部によって取りまとめられた成長戦略「未来投資戦略2017」が発端でした。この中で、2027年までに、キャッシュレス決済比率を20%から40%へ引き上げる、と提言されました。そして、経済産業省が提唱する「キャッシュレス・ビジョン」によって、キャッシュレスの推進母体の設立が推奨されたのです。
さらに、経済産業省の働きかけに呼応した企業や組織が加わり、キャッシュレス推進協議会が設立されたのです。キャッシュレス推進協議会は一般社団法人として、政府や教育機関、研究機関、民間企業が連携して、業界横断的な組織として構成されています。
さまざまな会員構成
2020年2月末現在、キャッシュレス推進協議会には393の企業と団体が会員として加盟しています。会員区分は、決済サービス事業者や実店舗、ITベンダーなどが参加する法人会員、商工会議所などが参加する団体会員、大学教授や弁護士などが参加する個人会員、県や市町村が参加する自治体会員に分かれています。
法人会員には、金融機関、通信、IT業界、各種メーカーやシンクタンク、流通など、各業界で日本を代表する有名企業が加わっているほか、全国28の道府県、50市町村が自治体会員として、また各分野の業界団体や商工会議所など54組織が団体会員として参加しています。
まさに、政府主導のもと、民間企業や自治体などが連携して、日本のキャッシュレスを推進していくための力となっているのです。
キャッシュレス推進協議会の役割
キャッシュレス推進協議会の目的は、先にもふれたように「日本のキャッシュレスの推進」にあります。
そうした発想がどのような経緯で生まれたのか、どのような活動につながっていくのか解説します。
なぜキャッシュレスが注目されたのか?
近年、キャッシュレスが注目され、行政が積極的に後押ししている背景には、大きく2つの要素が関係しています。
少子高齢化と人手不足
キャッシュレスが注目される理由のひとつは、日本全体で懸念されている少子高齢化です。現状でも労働力としての人手不足の声が聞かれる中、今後、労働人口が減少すれば人手不足の状態がさらに加速します。
これでは作業効率は落ち、企業の生産性は下がるばかりです。そうした状況を避けるためには、あらゆる面で業務の効率化が必要で、キャッシュレスも業務の効率化の対策として注目されたのです。
インバウンドの増加
インバウンドの増加も、キャッシュレスが注目されている理由のひとつです。2011年の政権交代で為替が円安に転換すると、それまで割高だった日本への旅行が手軽なものになりました。そのため、海外からの旅行者が日本を訪れるようになったのですが、買物をする際、海外で普及しているクレジットカードが使えないと、彼らは不便を感じてしまいます。結果的に、日本が観光しづらい国として、インバウンドからの評判が落ちてしまうでしょう。
何より、インバウンドも含め一般の人たちにとって、クレジットカードをはじめとするキャッシュレスは、手持ちの現金がなくても買物ができ、紛失や盗難時の損害が軽いという大きなメリットがあります。
これらの理由から、キャッシュレスが注目され普及を推進する流れが作られていったのです。
活動のベースは経済産業省のキャッシュレス・ビジョン
キャッシュレス推進協議会は現在さまざまな活動を行っていますが、そのベースとなっているのは2018年4月に経済産業省が発表したキャッシュレス・ビジョンという報告書です。
この報告書は、「日本におけるキャッシュレスへの対応の方向性と、具体的な方策案」を取りまとめたものとなっています。報告書にはキャッシュレスを推進するべき理由として、前項で挙げた項目のほか、消費者の利便性向上による消費の活性化を挙げ、国力の強化につなげられると述べています。
また、キャッシュレス化が大きく推進していく要因として、クレジットカードやデビットカードといった従来型のキャッシュレス決済に加え、スマホ決済の登場にもふれています。多様化していくサービスや新たなビジネスモデルを踏まえ、政府や研究機関、そして民間が連携して、キャッシュレスの具体的な活動が進められていくことに大きな期待が寄せられているのです。
各機関をつなぎ、キャッシュレス化をスムーズ進める調整役
キャッシュレス推進協議会は、あくまで一般社団法人としての独立性を保っています。その独立性は中立的な立場として、行政機関と業界団体、さらには個々の企業といった違う立場の組織をつなぎ、その隙間を埋めることに役立ちます。
例えば、キャッシュレス普及のための施策を行政機関が策定しても、それが各業界のしくみにマッチしなければ、うまく動いていきません。さらに、個々の企業や消費者にとって何らかのメリットがないと、やはり普及は望めません。そこで、各機関・団体・組織のあいだをキャッシュレス推進協議会が橋渡しをし、調整役を果たせば、より実効性の高い方策を生むことができます。
つまり、キャッシュレス推進協議会は、各組織間をつなぐチェーンであり、潤滑油としての働きも持っているのです。
キャッシュレス推進協議会が行う取り組み
キャッシュレス推進協議会内には3つのワークグループがあります。そのグループ別に2020年度に手掛けられるプロジェクトの概略をご紹介します。
- 消費者WG
消費者WGでは、おもに消費者の利便性の向上を目的とした施策検討を行います。使う側にとっての簡単・便利を目指すためのワークグループで、2020年度には「ユニバーサルデザイン」を予定しています。
キャッシュレス・ビジョンでは、世界最高水準のキャッシュレス社会を目指すとしていますが、それには子供や高齢者、障害者、使いすぎを心配する人など、キャッシュレスにハードルを感じている人も存在します。そうした人々が安心して使える決済手段のデザインを検討します。 - 事業者WG
事業者WGは、組織や企業など、社会の生産性向上を目的とした施策検討を行うワークグループです。2020年度は「自動サービス機における普及促進」などを、プロジェクトテーマとして予定しています。
自動サービス機とは、いわゆる自動販売機のことです。飲料の自動販売機や券売機、コインパーキングの精算機などのキャッシュレス対応状況などを調査し、普及促進を検討します。 - 制度・基盤WG
制度・基盤WGは、サービスのしくみや規格の標準化、技術基盤について検討するワークグループです。2020年度のプロジェクトテーマは、「個人情報の取扱・e-KYCの在り方」などを予定しています。e-KYCとは、スマートフォンなどを利用してオンラインで簡単に本人確認を行うシステムです。
キャッシュレスについては、決済を通じて自分のデータが流出したり、望まない形で利用されたりといった不安を感じる人もいます。また、サービスごとに登録・認証が必要になるなど手間が多く、キャッシュレス普及を阻害する要素となっています。
こうした課題を解決し、分かりやすく使いやすいしくみの標準化・共通化を検討します。
キャッシュレス推進協議会が実現したキャッシュレス施策
キャッシュレス推進協議会で練り上げられたプランのうちのいくつかはすでに実施され、成果を上げています。
例えば、「キャッシュレス・ポイント還元事業」は、当初の想定以上の反響を呼び、そのために政府が追加予算を組むまでになりました。また、QRコード決済は、取り扱う各社で規格がバラバラのため利便性に欠けていますが、統一規格である「JPQR」を策定し、現在は実証試験を行っています。
このように、幅広い分野でキャッシュレスの推進を図り、そのための施策を検討し、実行に移していくキャッシュレス推進協議会は、まさに日本のキャッシュレスの司令塔ともいえる存在なのです。
キャッシュレス推進協議会が各方面でのキャッシュレスを推進する
各行政省庁とも連携しつつ、民間企業や自治体が協働するキャッシュレス推進協議会。表舞台で活躍するわけではないため、一般にはほとんどなじみのない組織ですが、これまでの実績を見ても、その存在は日本のキャッシュレス化に欠かせない存在です。
今後はさらに参加企業を増やしながら、日本のキャッシュレス施策を牽引していく役割を担っていきます。日本のキャッシュレスへの流れは、ますます強まっていくことでしょう。
- QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
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