旅行中の豆知識
飛行機に搭乗する際、チェックインカウンターで「席が用意できません」と言われてしまうことが、まれにあります。これは、「オーバーブッキングによる搭乗拒否」と呼ばれ、航空会社が実際の座席数を超えて予約を受け付けていることで発生するものです。本来、オーバーブッキングとは、過剰に予約を取っておくことのみを指しますが、これが原因で乗客が被害に遭うこともオーバーブッキングと表現する場合があります。もし、空港でオーバーブッキングによる搭乗拒否に遭ってしまったら、どのように対処すべきなのでしょうか?
ここでは、飛行機のオーバーブッキングについて、その原因や遭ってしまったときの対処法などについて解説します。
冒頭でも解説したように、オーバーブッキング(Over Booking)とは、航空会社が座席の過剰予約を受け付けることを指します。そして、予約がキャンセルされないまま、1つの席に2人がチェックインしようとすると、片方が搭乗拒否を受けることになります。これが「オーバーブッキングによる搭乗拒否」です。
出張や単身赴任先との行き来など、ビジネス利用の多い大型機や中型機がメインとなる路線の場合、予約の変更やキャンセルができる航空券が多く、予約があっても実際には搭乗されないというケースがあります。また、航空券の種類によっては、予約だけして購入はせず、そのままキャンセル扱いになるというケースも珍しくありません。
こうした理由から、航空会社側は一定数のキャンセルが発生することを見越して、座席数よりも予約を多めに受け付けており、これは航空会社の正当な権利として認められています。
ただ、航空会社側の予約キャンセル予測が外れてしまい、乗り遅れやキャンセルが少なかった場合に、オーバーブッキングによる搭乗拒否が起きてしまうのです。
乗客側がオーバーブッキングによる搭乗拒否を避ける方法は、実はありません。航空会社のオーバーブッキングは認められているため、乗客側から対処することは難しいのです。
しかし、搭乗拒否の対象者にならないようにするための対処法としては、次の3点が挙げられます。
・早めにチェックインする
早めにチェックインすることは、搭乗拒否を防ぐ重要なポイントです。チェックインを済ませて搭乗券を渡した乗客よりも、後からチェックインした乗客のほうが拒否されやすい傾向があります。少しでも早くチェックインカウンターへ行き、搭乗券を確保しましょう。オンラインチェックインが利用できる場合は、空港へ行く前に、事前チェックインを済ませることをおすすめします。
飛行機の利用者の中には、わざとオーバーブッキングによる座席クラスのアップグレードを期待して、意図的に遅めにチェックインする人もいるようです。しかし、トラブルを避けるためにも、チェックインは早めに済ませてしまいましょう。
・予約の再確認をする
飛行機の予約をしたら、リコンファーム(予約の再確認)をしておくことも、オーバーブッキング防止のために役立ちます。リコンファームは、搭乗の72時間前までに、滞在先の航空会社に連絡することが一般的で、連絡をしないと予約がキャンセルされるケースもあります。
最近は、リコンファームを不要とする航空会社も増えていますが、オーバーブッキングのリスクが高くなるハイシーズンなどは、念のため予約の確認をしておくことで、オーバーブッキングに遭う可能性も下げられるでしょう。
・オーバーブッキングを受け付けない方針の航空会社を利用する 航空会社によっては、過剰予約を受け付けない方針をとって、搭乗拒否を防いでいるところもあります。こうした航空会社を利用することでも、オーバーブッキングを防ぐことができるでしょう。
原因が航空会社側にあるため、万が一遭遇してしまったら…と不安になるオーバーブッキングですが、利用客の少ない路線の場合は、すぐに振替便を用意できないということもあり、過剰予約を受け付けることはほとんどないといわれています。
行き先や時期なども考慮して、オーバーブッキングのリスクを考慮する必要があるかどうか、判断してみることもポイントといえるでしょう。
過剰に予約を受け付けることは、航空会社の権利ではありますが、同時にオーバーブッキングの責任も航空会社側にあります。もし、オーバーブッキングに遭遇した場合は、きちんと対処してもらうようにしましょう。
ここでは、オーバーブッキングが発生したときの、航空会社の対処についてまとめました。
オーバーブッキングが発生した席がエコノミークラスだった場合、同じ便のビジネスクラスに空席があればアップグレードします。
乗客が搭乗予定だった便に空席がない場合、同日のまたは翌日の別便に変更します。
便が遅れることになるため、そのための食事代や、翌日便となった場合の宿泊費などは航空会社側が負担します。
同日に同じ目的地へ向かう、ほかの航空会社のフライトに変更する場合もあります。格安航空券の場合、ほかの航空会社への振替えは原則できませんが、オーバーブッキングが発生したときは例外となります。
オーバーブッキングが発生した便の搭乗券を持つ人々から、席を譲ってくれる人を募る制度が「フレックストラベラー制度」です。航空会社側が、座席が不足すると判明した段階で、すでにその便を予約済みの別の人へ協力を仰ぎます。協力者はボランティアと呼ばれ、同じ航空会社の別便に変更する、同日の違う航空会社のフライトに変更するなどでフライトを変更してもらうことになります。このほか、便を変更することで本来の予定よりも遅延することになるわけですから、航空会社は協力金やマイレージ、このことが原因で発生する交通費や宿泊費などを支払います。
・フレックストラベラー制度の発生数について 国土交通省の「フレックストラベラー制度に関する情報(平成30年度国内輸送実績)」によると、日本航空(日本航空、ジェイエア、北海道エアシステム)および全日本空輸(全日本空輸、ANAウイングス)の2018年度10月から12月にかけてのフレックストラベラー制度の状況は、次のようになっています。
不足座席数がオーバーブッキングによって不足した座席数、自主協力旅客数がフレックストラベラー制度への協力者数です。
スターフライヤーやソラシドエアといったLCCでもオーバーブッキングは発生していますが、やはり大手のJALやANAではその発生率も高いようです。
ここからは、オーバーブッキングが発生したときに空港内では英語でどのような掲示がされるのか、またオーバーブッキングに遭ったときに、質問や交渉で使える英語フレーズについてご紹介します。
協力金などについては航空会社や航空路線によって異なりますが、オーバーブッキングの予想が出た場合、海外の空港内では次のような案内が掲示されます。
We regret to inform that flight BA032 to Hong Kong has actually more passengers booked than the seats we can actually accommodate.
BA032便の香港行は、本日ご搭乗予定のお客さまが座席定数を超過しているため、座席不足となることが予想されます。
For passengers who are willing to revise your flight itinerary, we would like to offer the following.
当便へご搭乗予定のお客さまで、下記条件にてご搭乗便の変更へご協力いただけるお客さまがいらっしゃいましたら、係員までお知らせください。
Alternative Flight ◯◯(Depart ◯◯,Arrive××)
振替便 ◯◯(◯◯時発、××時着)
Remuneration 10,000 Japanese Yen
協力金 10,000円
まず、オーバーブッキングで便が変更となったものの、提示されたフライトよりも早い便にしたい場合に使えるフレーズです。
I'm afraid I may miss a connecting flight at 12:00 in Singapore, Could you find a seat from earlier flights?
12時のシンガポールでの乗り継ぎに遅れてしまいそうなので、もう少し早く出発できる便に空席はありませんか?
Could you find any vacancy from another airline’s flight?
ほかの航空会社の便で、空席はありませんか?
また、搭乗便を変更して、事前に予約していたホテルのキャンセル料を航空会社に負担してもらう場合には、次のようなフレーズが使えます。
Could you give me remuneration for cancellation of the hotel in Hong Kong?
香港のホテルのキャンセル料を補償していただけますか?
日本の航空会社は、ハイシーズンとなるお盆や年末年始はきちんと需要計算を行ったうえで予約を受け付けており、実際にオーバーブッキングが発生するのは、そういった時期以外の週末などに多いようです。
旅行するシーズンや航空会社のオーバーブッキングの発生状況なども確認したうえで利用する便を決めることで、オーバーブッキングの不安もなく、快適に飛行機を利用することができるでしょう。