公共料金などのカード払いによる、納付書の削減
~導入4課で年間約1,300枚の納付書を削減~
導入前の課題
導入効果
口座引き落しできない支払い納付書が毎月、膨大に発生。支出命令書の審査や支払いの手続きを行っていた
可能なものからカード払いに切替え、会計課ならびに関係各所の業務の効率化が図れた
カード払いへの変更で出納整理期間内に処理ができるのか懸念していた
締日・支払日の最適設定により、対応できるようになった
職員の異動に伴うカードの名義変更が手間になるのではと懸念していた
パーチェシングカードは部局名で発行できるため、職員の異動による名義の切替えが不要に
「とよなかデジタル・ガバメント戦略」に基づき、会計課でデジタル化の推進に取り組む

鳥成さん:豊中市では、コロナ禍の危機的な状況を変革の契機ととらえ、市長自らが「とよなかデジタル・ガバメント宣言」を発出し、市民の皆さんが来庁せずに済むよう、行政手続きを100%オンライン化することを目指してきました。
2023年4月からは、「とよなかデジタル・ガバメント戦略2.0」に基づき、これまで市が推進してきた様々な取組みをベースに、市のデジタル・ガバメントの取組みをさらに発展・強化し、地域や暮らしのすみずみまでデジタルを活用するとともに、市民の皆さんお一人おひとりがデジタルの恩恵を享受できるようさまざまな取り組みを続いています。
私たち会計課では、適正で効率的な会計事務の実現を通じて市民の皆さんの信頼に応えるため、現金や有価証券、物品の出納・保管、現金及び財産の記録管理、決算の調製などの事務の確実な執行に取り組んでいます。デジタル化を通じた会計事務の効率化・迅速化を実現することで、業務の質向上やコストの削減につなげると同時に、市民・事業者・金融機関の負担低減を目指しています。また、利便性と業務効率の向上を図るべく、公金収納のデジタル化や、支出命令書のペーパーレス化、手続き書類への押印の省略化などにも着手しました。
口座引き落しできない電話回線の支払いの集約に悩んでいた

竹内さん:地方自治体では、支払いを行う際に「支出負担行為」という手順を踏む必要があります。民間企業の場合、経理部門が一括して経費の支払い処理を行うことが多いと思いますが、市の場合は各課に予算が割り当てられています。そのため、光熱費の支払いや物品購入、業務の外部発注などを行う際には、まず各課の担当者が起案を行い、所属単位での決裁を経る必要があります。その後、納付書や請求書が届いたら、各課で「支出命令書」を作成し、会計課に提出します。会計課では、審査係が支出命令書の内容を確認し、履行の妥当性や書類の不備がないかをチェックします。その後、私たち出納係が必要な支払い手続きを行い、納付や口座振込を行います。
鳥成さん:会計課では、各部局から提出される膨大な支出命令書を個別に審査し、支払い手続きを行っています。適正な会計処理を行うためには、内容を確認するための時間をしっかりと確保する必要があります。そのため可能な限り事務の効率化を図ることが求められます。以前は口座引き落しによる支払いが認められていませんでしたが、近年、事務の効率化のために公共料金などの支払いで一部認められるようになりました。こうした背景のもと、豊中市では、2011年頃からNTTへの固定電話・インターネット回線の支払いを口座引き落しに切り替えてきました。
竹内さん:豊中市では、固定電話・インターネット回線の支払いを行う課が約90あり、一つの課で複数の電話回線を使っていることも少なくありません。当時の担当者によれば、これらの支払い手続きを個別の納付書で行っていたため、非効率が発生していたそうです。そこで、口座引き落しに切り替え集約し、業務負担を削減することになりました。しかし、契約の都合上、古くから利用している回線は口座引き落しに切り替えできないことが判明しました。そのため、口座引き落しへの対応を進めつつ、切り替えができず、残ってしまった通信料に関する年間約2,800件の納付書での支払業務を効率化する方法を探すことになったのです。
検討の過程で、法人カードの導入が選択肢の一つに挙がりましたが、当時は行政機関における法人カードの導入事例がなく、「導入が法令上可能か不明」という懸念がありました。また、前例がないため、「具体的な運用方法が見えない」という点も課題となっていました。
鳥成さん:地方自治体の決算は、4月1日から翌年3月31日までの実績を示す必要があります。しかし、3月分の利用料などの支払いは、4月以降にならないと請求書が届きません。また、市の施設利用料などの収入も4月以降にしか入ってきません。このような決算年度に関わる現金の未収・未払いを整理するために出納整理期間が5月末まで設けられています。
法人カードを利用した支払いの場合、カード会社に支払いを委託する形になるため、3月中に利用した金額が相手先に支払われ、その後当市への請求が行われます。カード会社によっては、請求書が届くまでにも時間がかかってしまいます。出先機関を含め約90の課がそれぞれ内容を確認して処理を行うため、3月分の請求書が5月下旬に届いた場合、支払手続きが間に合わない可能性があります。
また、従来の納付書払いなら、誤った請求があっても確認し、支払いを停止できますが、法人カードでは、カード会社に支払いを委任するため、一度支払いが実行されます。この場合、支払い先とカード会社のどちらとやりとりをすればいいのか、法律上での債権・債務の関係はどうなるのかという点も不明でした。加えて、カード会社への支払いを口座引き落しではなく請求書による振込にできないかということが課題でした。
税収を財源とする地方公共団体では、予算を正しく使うことが求められます。そのため不安要素をクリアできるかどうかが大きな課題でした。
導入時の課題
- 会計課では、毎月膨大な支出命令書の審査や支払い手続きを行っていた
- 地方自治体でも一部口座引き落しが可能となり、できる範囲で切り替えを進めたかった
- 通信料に係る納付書は年間2,800枚を超え、個別の納付書での支払いが非効率だった
- 口座引き落しできない電話回線の支払いを集約したかった
- カード払いの場合、出納整理期間内での支払い処理が間に合わない可能性があった
効果が出そうな部局から導入し、納付書による公共料金などの支払いを3割削減

竹内さん:導入検討を進める中で、地方自治体が法人カードで支払いを行う場合の法令上の懸念点を調べ、大阪府を通じて総務省に確認した結果、クリアできることがわかりました。三井住友カードの担当者が必要な情報を調べて提供してくれたことが大きく、とても助かったそうです。
鳥成さん:三井住友パーチェシングカードを導入した理由は、課題解決の提案と信頼感です。導入当時の会計課長から「導入におけるさまざまな課題や懸念点について相談に乗っていただき、積極的に解決・解消の提案をしてもらえたことが決め手になった」と聞いています。また、三井住友銀行が豊中市の指定金融機関でもあり、信頼感がありました。三井住友パーチェシングカードの機能が当市の求める要件を満たし、法人カードの利用に費用が発生しなかったことからカード支払いを導入してその適否を検証することを最優先に考えてスタートさせました。
三井住友パーチェシングカードの導入では、まず会計課が発意し、通信料の支払いが必要な部局との調整を進めました。支払い方法の変更、年度末の支払いや支出命令書の提出期間がタイトになることを伝え、対応可能かどうかを丁寧に話し合いました。また、回線によってはカード払いができない契約もあるため、その洗い出しも並行して行いました。
竹内さん:地方自治体では、各課が予算を持ち、支出命令の作成を行うことになるため、各課に説明し、切り替えへの理解をしてもらわないと進められません。法人カードは費用が発生せず、業務も圧縮できるため反発はありませんでしたが、「その支払い方法で、うちの課は対応できるのか?」という懸念もあり、じっくり丁寧に説明を行いました。
鳥成さん:導入する部局の順番も検討し、通信料の納付書が多く、業務効率化の効果が出やすいところからスタートしました。成果を可視化することで導入先を拡大しやすくなると考え、2024年度には、組織目標に削減率を設定しました。
竹内さん:導入のルールについては、利用目的を特定し、会計課がカードの管理・運用を一括で行う形としました。現状、会計課を親とし、各課名義の子カードを作って運用しています。まだ4枚と少ないため、カード関連の契約や事務処理は会計課が担当し、請求書を各課に回す形式を取っています。
鳥成さん:三井住友パーチェシングカードは、部局名で登録できるため、職員の異動による名義の切り替えが不要で便利です。また、物理カードと違い、現物管理の手間がかからない点もメリットです。
導入後の効果として、2024年度までに3割の削減を実現し、年間で約1,300枚の納付書の取扱いを減らすことができています。結果、会計課では支出命令書の審査や支払い処理が削減できました。また、複数回線を持つ部局では、回線ごとに支出命令書を作成する手間がありましたが、支払いを集約することでその負担も抑えることができました。
竹内さん:各課の担当者と会計課のメンバーは、毎月1〜2時間の作業時間を削減でき、トータルで見ると、かなりの業務効率化が実現できています。その結果、他の業務のチェックに時間をかけられるようになり、非常に良かったと感じます。業務負荷が高かった頃は、数字が合わずに計算をし直す無駄な業務が発生していましたが、現在は正確性が高まり、業務効率が向上しています。
鳥成さん:私自身、電卓をたたいて数字のチェックを行いますが、100枚、200枚の納付書を見ながら数字をたたき続けると、どうしてもミスが発生してしまい、何度かたたき直しをすることになります。その点、クレジットカード決済の場合は、明細が1本にまとまるため、その数字をチェックすればいいので、かなり効率化できます。チェックに余裕ができた分その時間を研修の受講や資料の作成などに充てることができます。
竹内さん:導入当初、各課からは出納整理期間に向けて不安の声が上がっていました。しかし、先日の出納整理期間では、そうした声は全く聞かれず、困りごとの相談もありませんでした。各課の担当者にとっては、1枚の支出命令書を切るだけなので、提出期限がタイトでも結果的に楽になっているのだと思います。
鳥成さん:法人カードを導入し、審査や支払い手続きを簡略化できました。今後は、三井住友パーチェシングカードの導入先をさらに広げる予定です。2025年度は、固定電話の回線数が多い部局から順次導入の調整を行いますが、すでに良い反応が得られています。先行事例による効率化の実績が説得力を持ち、理解を深めやすくなっています。

鳥成さん:業務の効率化とクオリティの維持・向上を両立させることが課題です。引き続き、パーチェシングカードの効率的・効果的な利用を検討していきます。また、個人で利用できる法人カードのリサーチも進めていきたいと考えています。
行政機関には法令上の制約があり、新しいツールの導入が難しいこともありますが、単純作業に時間を取られるのはもったいないと感じます。行政のルールを守りつつ、新しい技術や手法を取り入れることができれば、より良い仕組みができるはずです。また、このような取り組みは、他部局と連携・協力するという相互に学びを得る良い機会にもなります。今後も他部局の協力を得ながら業務改善・効率化を進めていきたいと考えています。
竹内さん:現場の担当者として感じるのは、行政機関で働く皆さんが「事例がないから」「どうなるかわからないから」と、挑戦できないもどかしさがあるのではないかということです。豊中市には、新しいことに前向きにチャレンジする職員が多数在籍しています。各職員が意欲的にチャレンジすることで行政サービスの質が高まり、市民へのサービス向上につながります。その結果“住んでみたいまち住み続けたいまち”として豊中市がより良いまちになると思います。
導入のポイント
- 三井住友カードの担当者が法律・法令上の課題や懸念点の相談に乗り、積極的な情報共有や解決策の提案があった
- 三井住友パーチェシングカードの機能が求める要件を満たしていた
- 法人カードの利用には費用が発生しないため、他社とのコスト面の比較検討が不要だった
効果
- 導入した4課の納付書を削減し、3年間で累計3割削減を実現
- 各課の担当者の支出命令書を集約化
- 会計課の審査・確認・支払い手続きの手間も削減
- 支出命令書に関わる現場と会計課の業務負担を毎月1〜2時間削減
- 会計課では、単純作業の効率化でミスが発生しにくくなった
- 会計課では、業務効率化により他の業務にさける時間を確保できるようになった
- 先行事例で実績を作ったことで、ほかの課も導入に意欲を示すようになった
掲載日:2025年6月16日
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