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フィードバックとは?将来に備えて知っておきたい効果的な手法も解説
社会人になってよく耳にするようになる言葉のひとつに、「フィードバック」があります。
「自分が関わった業務に対する評価が上司から伝えられる」というイメージだけ持っていると、上司から「フィードバックのための面談を設定しておいたから」と言われただけでびくびくしたり、緊張したりするかもしれません。
実は、フィードバックとは、単に評価を伝えるだけでなく、評価される人のパフォーマンスを最大化することを目的として行われるものなのです。決してネガティブに捉えるべきものではなく、目標に向かって仕事をするうえで、非常に重要な意味を持っているといえるでしょう。
ここでは、フィードバックの目的や意味とともに、新社会人が将来人の上に立つときのために、効果的なフィードバックの手法についても解説します。
- 記事の目次
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フィードバックとは評価を伝えて業務改善を図ること
元々、フィードバックというと制御工学の分野において、出力した信号などを入力側に返す操作を指します。このほか、音響機器を調整するとき、「キーン」という音が響くハウリングをフィードバックと呼ぶこともあります。こうした、さまざまな分野で意味が派生する形で、次第にビジネスの場でも「フィードバック」という言葉が使われるようになりました。
ビジネスシーンにおけるフィードバックは、「業務を行った人に対して、成果に対する評価を伝える」という意味で使われます。フィードバックの目的は、評価をきっかけとした軌道修正や業務改善、モチベーション向上であり、単に「伝える」ことだけではありません。
一般的に、ビジネスにおけるフィードバックというと上司が部下に対して行うものですが、それ以外の関係性で行われるフィードバックもあります。
それぞれの関係性でのフィードバックの意味や目的は、下記のとおりです。
上司が部下に対して行うフィードバック
上司が部下に対して行うフィードバックとしては、人事評価や定期的な1on1ミーティングのほか、プロジェクトの中間地点や終了後などのタイミングで行われるものがあります。
一方的な評価ではなく、軌道修正や改善を促して次につなげるために行われるもので、上司は部下が行った業務に対する評価を伝えて、業務全体を振り返ります。
振り返りの中でミスが多ければ、どんな状況で起きたミスなのか、原因は何かといった点を話し合い、業務の改善もしくは進め方を見直します。業務量が多いことがミスの原因であれば、分担のしかたを見直したり、担当範囲を変えたりすることもあるでしょう。
上司が部下に対して行うフィードバックの目的は、おもに次の3つです。
- 部下の目標達成
目標を達成するために、不足しているものを見つけ、ヒントを与えて達成への道筋をつけます。
- 対象者の育成
業務担当者がより高い目標と自信を持ってフィードバック後の業務に臨めるようにし、長期的な成長を促します。
- モチベーションやパフォーマンスの向上
業務が滞る原因やミスの理由を明確にし、パフォーマンスの向上を図ります。同時に、スムーズに仕事ができる環境を整えることによって、部下のモチベーションアップも期待できます。
部下から上司など多方面から受けるフィードバック
フィードバックは、上司からだけではありません。同僚からのフィードバックもありますし、上司が部下や同僚からフィードバックされる場合もあります。
これは、近年、浸透しつつある「360度評価(多面評価)」といい、自分を中心に、さまざまな立場の人物の、複数の視点からフィードバックを得る評価方法です。
多方面から評価が得られるので、個人の私的な感情を抜きに、公平な評価を受けることができます。また、直属の上司が見つけられなかった自身の特性を発見できる場合もあり、目指している目標に近づくための、意識向上にも役立てられます。
第三者が行うフィードバック
第三者が行うフィードバックとしては、企業が提供する製品やサービスに対して、顧客や取引先、関係企業が行うものがあてはまります。
これは、製品やサービスを客観的に評価してもらうことをフィードバックとして受け止め、不足しているものや課題を見つけて、より良い開発やサービス向上などをするために行われます。
フィードバックの種類
フィードバックには、「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」の2種類があります。
ほめて伸ばすか、弱点を指摘して発奮させるか。下記で特徴をご説明しますので、適宜使い分けましょう。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは、フィードバックをする際、部下の業務における問題点や不足している部分よりも、評価できる点、良かった点を見つけてほめる方法です。
相手に自信をつけさせたい、問題の改善に自主的に取り組んで成長してほしいというときは、「こう言ってもらえたら満足感があるだろう」「ここを評価すれば自己肯定感が高まるだろう」というように、結果から逆算してフィードバックをすることもあります。
ポジティブフィードバックのポイントは、大きく下記の3つがあります。
- 部下が業務を遂行したという事実を認め、ねぎらう
- 以前に比べて良くなった、成長したと思う点を伝える
- 良い点を伝えてから、改善点を伝える
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックは、評価される部下が聞きたくないこと、耳が痛いことをあえて言い、発奮させる方法です。
「期待の半分にも満たない成果だった」「このままでは先が思いやられる」「降格してもらわなければならない」など、聞いた人のモチベーションを著しく低下させる可能性がある言葉が使われます。
背景に、強固な信頼関係があれば別ですが、評価者の私的感情や価値観が色濃く反映されやすい方法であり、パワーハラスメントにもつながりかねないので注意が必要です。
うまくいかないと、部下が上司に対しての信頼をなくしたり、ひいては会社そのものに疑問を持ったりする原因になります。
将来に備えて知っておきたい効果的なフィードバックの方法
新社会人のうちはフィードバックされる側ですが、やがて部下や後輩を持ち、フィードバックする側になることも十分にありえます。
自分がフィードバックする側になったときのことを考えて、単に結果を共有するだけの場にしないためのポイントをぜひ押さえておいてください。
1 目標と課題を共有する
漠然と結果だけを伝えても、部下は何をすれば良いのか分かりません。
事前に設定した目標に紐付けて話をすることで、達成度と課題の可視化を図りましょう。また、今回の結果を踏まえて次の目標を立て、その目標に対してどう行動すべきかを具体的に共有しましょう。
その際、実現可能で、すぐに実行できる目標にすることがモチベーションアップのコツです。
2 具体的に伝える
大型受注をした部下をほめるとき、「すばらしかったね」とだけ言うよりも、「今回の大型受注は、普段からまめに取引先へ足を運んで信頼関係を構築してきたからこそだね。先方からも、非常に行き届いた提案で感服したというお言葉をいただいたよ」というように、具体的に伝えたほうが心に響きます。何が認められたのか、何が良かったのかを客観的な視点でしっかり伝えてあげましょう。
非常に良い結果が出たときは、定期的な面談を待たず、すみやかに面談を設定してフィードバックを行うことも、部下のモチベーションアップには効果的です。
3 信頼関係を構築しておく
ポジティブフィードバックにおいても、部下にとって厳しい指摘をしなければならない場面は必ず訪れます。そんなとき、上司と部下のあいだに普段から信頼関係が構築されていれば、部下も「自分のために言ってくれているんだ」と真摯に受け止めることができるでしょう。
どんなに正しい指導であっても、普段の関係が良くないと、指導される側は「私的な感情をぶつけているのではないか」「自分だけに厳しくしているのではないか」と疑心暗鬼になり、上司に対しても組織に対しても信頼を失ってしまう可能性があります。
4 自発的に行動しようと思わせる
フィードバックを踏まえて次のアクションプランを定めるとき、上司が細部まで口を出すと、部下の意欲を削いでしまいます。
強制されるとやりたくなくなるという心理は、誰にでもあるものです。上司はあくまでも道筋をつける役目として、ヒントを出したり、方向を修正したりするにとどめましょう。
改善してほしい箇所に関しても、会話の中で気付きを促し、自主的に変えようと思わせるのがベストです。
フィードバックはステップアップのチャンス!
ビジネスシーンにおけるフィードバックは、成果に対する評価を伝えるだけでなく、目標達成に向けた軌道修正、業務改善、対象者の育成などを目的として行われます。
特に、ポジティブフィードバックには、対象者のモチベーションやパフォーマンスを向上させる効果があります。上司からのフィードバックには積極的かつ主体的な姿勢で臨んでください。もし、ネガティブフィードバックを受けた場合は、普段からの上司との関係を考え、まずは自分に本当に非がないか振り返ってみましょう。
フィードバックをステップアップのチャンスと受け止めることができれば、社会人として着実にキャリアアップしていくことができるはずです。
- 2020年2月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。