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ステークホルダーとは?ビジネス用語の正しい意味と使い方
新社会人になると、学生時代とは異なるさまざまなビジネス用語にふれる機会が一気に増えます。とはいえ、実務作業など覚えることが膨大にある中、ビジネス用語の解釈は、つい後回しになってしまいがちです。
しかし、ビジネス用語を「なんとなく分かる」状態で放置していると、ビジネスシーンで急に話題を振られたときに困ってしまいます。できる限り、その言葉に出合った時点で正しい意味や使い方を理解しておくことが大切です。
ここでは、よく聞くビジネス用語の中から「ステークホルダー」の意味と使い方について解説します。
- 記事の目次
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ステークホルダーとは利害関係者のこと
ステークホルダーは、企業が経営をするうえで、直接的または間接的に影響を受ける利害関係者のことです。
英語の「stake(掛け金)」「holder(保有する)」が由来とされ、1984年に哲学者のR.エドワード・フリーマンが著書「Strategic Management: A Stakeholder Approach」の中で使用したのがビジネス用語として浸透するきっかけになったといわれています。
利害関係者というと、金銭的な関係があるクライアントや従業員、株主などが思い浮かびますが、ステークホルダーは企業活動によって影響を受けるすべての相手に対して使う言葉です。
具体的な例を挙げてみましょう。
<ステークホルダーの例>
- クライアント
- 従業員
- 株主
- 地域社会
- 行政機関
- 金融機関
- 各種団体
- 政府
- 債権者 など
似ているけれど違う!ストックホルダーとシェアホルダー
ステークホルダーと混同しやすい用語が、「ストックホルダー」と「シェアホルダー」です。
簡単にいえば、シェアホルダーもストックホルダーもステークホルダーの中の1つで、どちらも株主を指すときに使う言葉です。
- ストックホルダー:単に株を保有している株主のこと
- シェアホルダー:株主の中でも議決権を持つ株主のこと
このほか、似ているようで意味の違う用語として「ステークホルダー企業」と「ストックホルダー企業」があります。
- ステークホルダー企業:すべてのステークホルダーにとって利益になるよう、バランスをとって経営している企業のこと
- ストックホルダー企業:株主の利益を何よりも優先して経営する企業のこと
ステークホルダーの特徴
ステークホルダーを考えるうえで知っておきたいのは、利害関係者といってもお互いの利害が一致するとは限らないということです。
地域社会は企業が地元に貢献してくれることを望みますし、従業員は給与が上がることや待遇が改善されることを期待します。企業が利益を上げれば、競合他社の売上は落ちるかもしれません。このように、それぞれの利害が異なり、時に相反するものであっても、中心となる企業から何らかの影響を受けていればステークホルダーと呼びます。
なお、ステークホルダーは組織との関係性によって、「直接的ステークホルダー」と「間接的ステークホルダー」に分類されます。
<直接的ステークホルダー>
- 従業員
- 消費者
- クライアント
- 株主
- 金融機関 など
直接的ステークホルダーは、企業の活動範囲や規模、内容に直接的な影響を与えるとともに、企業活動によって直接的な影響を被るステークホルダーのことです。
<間接的ステークホルダー>
- 政府
- 地域社会
- 従業員の家族 など
間接的ステークホルダーは、企業の活動範囲や規模、内容に直接的な影響を及ぼさず、企業活動によって直接的な影響を受けることもありませんが、間接的、相互作用的に影響し合うステークホルダーのことです。
例文から読み解くステークホルダーの範囲
先に挙げた例のうち、どこまでをステークホルダーと呼ぶかは、企業の考え方によって異なります。
そのため、ステークホルダーが登場する文脈から意味を推し量ることが大切です。例文をもとに考えてみましょう。
- 次の株主総会では、ステークホルダーの理解を得られるよう、真摯に説明しなければならない
ステークホルダーに説明する場を「株主総会」としていることから、この場合のステークホルダーは株主を指していることが分かります。
- ステークホルダーを意識した経営を行っていく
この場合、前後の文脈や使われているシチュエーションによって、ステークホルダーの範囲は異なります。
例えば、社内の会議で経営陣が発言したのであれば、「経営を安定的に継続するために、広く関係者の意見を聞く」という意味で使われていると推察され、クライアントを指していると予想できます。
ただし、話題が融資に関するものだったなら、金融機関を指している可能性が高いでしょう。
- ステークホルダーとの関係改善に努めよう
この例文も、シチュエーションによってステークホルダーの意味が変わってきます。
経営者が従業員に対して伝えた内容であれば、地域社会やクライアントなどを指していると考えられます。経営陣だけの話し合いで使われている場合は、従業員とその家族を指す可能性もあります。
- コンプライアンスの重要性が高まり、ステークホルダーへの公開が求められることも増えた
企業がコンプライアンス、つまり法令を遵守することは当然ですが、最近ではその事実をステークホルダーに周知することも求められるようになった、という会話です。
このシチュエーションでは、経営に関係の深い従業員や株主、クライアントを指していると考えられます。
これからの企業経営にステークホルダーとの信頼関係は必須
昨今では、企業のコンプライアンスなど、社会的な責任が注視されるようになっています。
そのため、企業が円滑に経営をして利益を得るためには、あらゆるステークホルダーとの良好な関係を、全方位的に構築することが大切です。
ストックホルダー企業として株主の利益を優先する企業もありますが、企業は株主の力だけで存続しているわけではありません。
ステークホルダーと適切な関係を築くために、次のような点を意識することをおすすめします。
特定のステークホルダーだけを見ない
企業は、雇用形態にかかわらず、社内で働く従業員、商品やサービスを購入する消費者、融資してくれる金融機関、刺激を与え合うライバル会社、そうしたすべてのステークホルダーとの関係のうえに成り立っています。
ストックホルダー企業の場合は別として、特定のステークホルダーのほうだけを向いて経営し、そのほかのステークホルダーとの関係を疎かにすることは、企業の信頼度を損ないます。ひいては企業の存続に関わりかねません。取引先や従業員、株主だけでなく、イベントや地域のお祭りなどを通じて消費者や地域社会、地域の企業と関わる機会を増やしましょう。
自分もステークホルダーであることを意識する
新入社員として社会に出たら、自分自身が企業にとってのステークホルダーになります。
ステークホルダーであるという自覚を持って、主体的にほかのステークホルダーとのつながりについて考えていきましょう。また、自分の考え方、行動に一貫性を持って、会社に良い影響を及ぼすよう努めることも大切です。
企業のステークホルダーに対する理念を読み込む
最近では、ステークホルダーの重要性に気付き、ステークホルダーに対する企業としての姿勢を明文化したり、会社の理念としてステークホルダーとの関係強化を掲げたりする企業も増えてきました。
会社がどこまでをステークホルダーと認識しているのか、ステークホルダーとどう向き合っていこうとしているのかを知るために、しっかり理念を読み込みましょう。
企業の経営はステークホルダーとの関係のうえに成り立っている
ステークホルダーは、株主・経営者・従業員・顧客・取引先のほか、金融機関、行政機関、各種団体など、企業のあらゆる利害関係者を指す言葉です。
利益でも損失でも、何らかの影響を企業に及ぼす存在であればステークホルダーであり、必ずしもその利害は一致しないということを覚えておきましょう。
企業に対する世間の目が厳しくなる今、すべてのステークホルダーとの良好な関係の構築は欠かせません。「企業は単体では活動できない」ということを肝に銘じて、関わりを持つすべてのステークホルダーと良い関係を築く努力をすることが大切です。
- 2020年2月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。