服部大税理士事務所/合同会社ゆとりびと 代表社員。2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。平均年齢が60歳を超える税理士業界の若手税理士として、税務顧問だけでなく、スポット税務相談やクラウド会計導入支援など、経営者を幅広く支援できるように奮闘中。執筆や監修業務も力を入れており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。
【保有資格】税理士、中小企業診断士
服部大税理士事務所/合同会社ゆとりびと
会社の経営効率を見る指標のひとつに、ROE(自己資本利益率)があります。ROEは、投資家から重要視される大事な財務指標です。ROEが高いと株価もあがりやすいため、経営にも大事な指標となっています。ここでは、ROEとは何か、ROEの算出方法、ROEとROAの違いなどを、やさしく解説します。
ROE(自己資本利益率)とは
ROEは、英語の「Return On Equity」の略で、会社が資本を効率よく活かし、利益をあげているかを測る数値です。自己資本利益率や株主資本利益率ともいわれます。
ROEは、株主から見ると「その株に投資して、どれだけ利益を効率よく得られるのか」という、収益性や効率性の指標になります。そのため、投資家に最も重要視される財務指標といえるでしょう。
自己資本とは?
ROEを、よりスムーズに理解するために、「自己資本」についておさえておきましょう。
まず、会社の資本には、「自己資本」と「他人資本」があります。自己資本は、株主から出資してもらったお金など、返済が不要な資産のことです。一方、他人資本は、銀行をはじめとした金融機関などから借り入れた、返済しなければならないお金(負債)をさします。
ROEは、この自己資本を効率的に活用し、利益をあげているかどうかを測ります。
ROEの算出方法
ROEは、以下の計算式で算出します。
ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
「当期純利益」とは、1会計期間のすべての収益から費用などを差し引いた、会社の最終的な利益をさします。
例えば、当期純利益が10億円、自己資本が100億円の企業のROEを算出すると、計算式は「10億円÷100億円×100」となり、ROEは10%です。
ROEとROAの違い
ROEに似た指標として、「ROA」があります。ROAは英語の「Return On Assets」の略で、日本語では「総資産利益率」といわれます。ROAは、総資産に対する利益を測る指標です。総資産とは、自己資本と他人資本を合わせたすべての資産です。
ROAの計算式は以下のようになります。
ROA(%)=当期純利益÷総資産×100
ROEは分母が自己資本なのに対し、ROAは総資産です。ROAは、金融機関から借り入れた他人資本など、負債も含めた総資産に対する経営効率を見ます。このため、ROEとROAの2つの数値を活用して会社の経営分析をすることができます。
ROEが高くROAが低い場合 | 大きな負債を抱えており倒産リスクを持っている可能性がある |
---|---|
ROEが低くROAが高い場合 | 財務レバレッジを活用できていない可能性がある |
なお、一般的な目安としては、ROEは10%以上、ROAは5%以上であると、投資価値がある優良な会社だと判断される傾向にあります。ただし、業種によっても平均値が多少異なるため、ROEやROAが一見低く見えても、一概に投資価値のない会社だとはいえません。
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ROEによって分かること
一般的に、ROEの数値が高いほど、自己資本をうまく活用し、効率的な経営ができていると見ることができます。
例えば、以下のA社とB社で比較してみましょう。A社は「自己資本:20億円、当期純利益:4億円」、B社は「自己資本:50億円、当期純利益:2億円」です。この場合、算出されるROEは以下となります。
A社のROE | 当期純利益4億円÷自己資本20億円×100=20% |
---|---|
B社のROE | 当期純利益2億円÷自己資本50億円×100=4% |
ROEで見ると、4%のB社よりも20%のA社のほうが、経営効率がよいことがわかります。
ROEの注意点
一般的にROEが高いほうが投資価値のある会社だと判断されますが、企業を評価する要素のひとつに過ぎず、場合によっては経営リスクを見落とす可能性もあるため、ROAなどのほかの指標も考慮する必要があります。以下の例を見てみましょう。
A社とB社は同様に、総資産が100億円、当期純利益が10億円です。ただし、総資産の内訳がそれぞれ異なり、A社が「他人資本:80億円、自己資本:20億円」、B社が「他人資本:20億円、自己資本:80億円」です。この場合のROEは以下のように算出されます。
A社のROE | 当期純利益10億円÷自己資本20億円×100=50% |
---|---|
B社のROE | 当期純利益10億円÷自己資本80億円×100=12.5% |
ROEの数値だけ見ればA社のほうが高く、優良企業に見えますが、安全性や健全性という観点から見ると負債の少ないB社のほうが安定した経営基盤といえるでしょう。従って、ROEだけで投資判断するのではなく、他人資本も加味したROAをバランスよく併用することで、ROEの弱点を補うことが重要です。
また、負債などの他人資本が大きいことが必ずしもマイナスとは限りません。他人資本を活用することによって「財務レバレッジ」が働き、総資産の拡大につながるケースも多いです。
財務レバレッジとは、「総資本÷自己資本」で求められ、他人資本を活用して自己資本の何倍にあたる総資本を事業に投下しているのかを示す指標です。財務レバレッジが高いということは、総資本に占める負債の割合が大きく、経営リスクも高まりますが、一方で低すぎる場合には積極的な経営ができていない可能性も考えられます。
ROEやROA、財務レバレッジなどの財務指標については、業界や企業規模によって平均値も異なるため、同業他社の数値と比較しながら多角的な視点で検証しましょう。
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ROEを高めるための方法
ROEを高めるキーポイントは、簡単にいえば、分子である「当期純利益」を増やす、または分母の「自己資本」を減らすことです。ここでは、ROEを高めるための方法を見ていきましょう。
収益性を高める
ROEを高めるのに重要なのは、収益性を高めることです。分子である「当期純利益」があがれば、ROEもあがるといえます。
総資産回転率を高める
ROEを高めるには、「総資産回転率」を高めることも大切です。総資産回転率とは、企業が総資産を有効活用して売上をあげているかを見る指標です。総資産回転率の計算式は以下です。
総資産回転率(回)=売上高÷総資産
例えば、「資金調達で総資産を増やしたけれど、売上が伸び悩んだ」などの場合、この総資産回転率が低くなります。少ない資本で効率よく収益をあげるために、遊休資産などの不要な資産を減らすなど、総資産をおさえつつ売上高をあげることが重要です。
財務レバレッジを高める
ROEを高めるのに、財務レバレッジを高める方法もあります。前述したとおり、財務レバレッジとは、他人資本を活用して自己資本の何倍にあたる総資本を事業に投下しているのかを示す指標です。借入などによる他人資本を活用すれば、相対的に自己資本の割合が低下し、ROEを高めることもできるでしょう。
ただし、財務レバレッジを高めすぎて、負債への依存度があがると、経営状態が悪化する可能性もあります。借入などの負債と投資のバランスには注意が必要です。
効率的な事業運営には、法人カードが便利
起業家は、法人用クレジットカード(法人カード)を持っていると便利です。クレジットカードの支払いは、決済後1ヵ月~2ヵ月の猶予があるため、計画的な事業運営にも役立つでしょう。また、経費の支払いを法人カードにまとめることで、経理業務が効率化するだけでなく、ポイントも貯まってお得です。
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事業運営におすすめ!三井住友カードの法人カード
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個別決済方式の場合、1社あたり33,000円(税込)、61名以上追加会員ごとに550円(税込)がかかります。
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ROEだけを見るのではなく総合的な判断が重要
ROEは、企業が自己資本をどれだけ効率的に活かして、収益をあげているかを見る財務指標です。ただし、ROEの数値が高ければ高いほど優良な会社になるのかといえば、必ずしもそうではありません。
ROEというひとつの数値だけで判断するのではなく、ROAや財務レバレッジなどを含めて、総合的に判断していく必要があります。
よくある質問
Q1.ROEとは何ですか?
ROEは、会社が資本を効率よく活かし、利益をあげているかを測る数値です。自己資本利益率や株主資本利益率ともいわれます。ROEは、株主から見ると「その株に投資して、どれだけの利益を効率よく得られるのか」という、収益性や効率性の指標になります。
詳しくは以下をご覧ください。
Q2.ROAとは何ですか?
ROAは、総資産に対する利益を測る指標で、総資産利益率ともいわれます。ROAは、負債などの他人資本も含めて収益性や効率性を評価する指標です。
詳しくは以下をご覧ください。
Q3.ROEの注意すべき点はありますか?
一般的にROEが高いほうが投資価値のある会社だと判断されますが、ROAや財務レバレッジも考慮しましょう。財務レバレッジとは、他人資本を活用して自己資本の何倍にあたる総資本を事業に投下しているのかを示す指標です。財務レバレッジが高いと経営リスクも高まりますが、一方で低すぎる場合には積極的な経営ができていない可能性も考えられます。
詳しくは以下をご覧ください。
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