財務
国から交付される補助金の基礎知識と税務上の扱いについて解説します
補助金とは、企業に対して国や地方公共団体から交付される給付金のことです。起業支援や技術振興などの目的に対し、審査を受けて通過した場合に支給されます。その多くが返済不要ですので、起業の際や起業後間もない時期の資金調達にとても有効な手段のひとつといえます。
では、補助金を受け取った際の会計や税金は、どのようになるのでしょうか。補助金の種類や補助金を利用するメリット・デメリットとともに解説します。
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補助金を受けるメリット・デメリット
まずは、企業が補助金を受けるメリット・デメリットから解説します。
補助金を受けるメリット
・返済不要 補助金の最大のメリットは、銀行の融資などと違って返済が不要だということです。また、ベンチャーキャピタル(投資ファンド)やエンジェル投資家(創業間もないベンチャー企業に対し、その将来性を見込んで資金を提供する個人投資家)から投資を受ける場合とも違い、自社株式が買い取られるわけでもありません。純粋に手持ちの資金が増えるのは、数ある資金調達方法の中でも、補助金ならではのメリットです。
・人材採用や設備投資などによる事業拡大が見込める 手持ちの資金が増えた結果、人材採用や設備投資などに積極的に取り組めるようになり、事業拡大が見込めます。
補助金を受けた場合のデメリット
・支払いは後払いが多い 補助金は、申請後に受給要件に該当するかどうかの審査が行われ、要件の充足を確認した後にお金が支払われる後払い式です。そのため、まずは申請対象としている設備資金などを、自分で用意して先に支払う必要があります。
・補助金を受けるための審査のハードルが高く、手間や負担が大きい
補助金を受け取るためには、審査に通る必要があります。補助金の種類によって審査内容は異なりますが、「受給要件を満たし、さらに優秀な提案と判断された場合」に審査が通るなど、ハードルが高いといわれています。
また、受給要件を満たすための書類作成があり、事務手続を行う手間と合わせて時間がかかります。
補助金の種類
補助金には、経済産業省をはじめとする省庁が主導するもの、自治体が独自に設けるもの、そのほかの団体が設けるものなどいろいろな種類があり、金額も数万~数百万円以上までさまざまです。
ここでは、特に創業期や創業間もない企業に関連する補助金を、2件ご紹介します。
・地域創造的起業補助金
地域創造的起業補助金(旧名称:創業補助金)は、創業時に必要な経費の一部を、国や地方公共団体が補助してくれるものです。
毎年春に、約1ヵ月間の申請受付期間が設けられており、この募集期間の初日以降に新たに創業する人が申請できます。なお、申請するには、産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」で創業または創業予定であること、事業の実施完了日までに従業員を1名以上雇い入れることなどの要件も満たす必要があります。
補助金額は、外部資金調達がない場合は50万円以上100万円以内、ある場合は50万円以上200万円以内で、補助対象と認められる経費の2分の1以内となります。
・ホームページの作成支援補助金
中小企業や個人事業主が新たにウェブサイトを作成する際に、その費用の一部を負担してくれる補助金を、東京都のいくつかの区や大阪府吹田市、岡山県赤磐市などが実施しています。自治体ごとに異なりますが、「ホームページ作成費補助(江東区)」や「ホームページ開設費等補助(葛飾区)」といった名称が使われています。
補助金額は、経費の2分の1以内、上限50,000~10万円前後とする自治体が多くなっています。
補助金を受けた場合の会計処理
補助金は、申請の日から実際に受給するまでに日数がかかるので、会計処理に迷いがちです。
まず悩むのが、入金として計上するタイミングですが、これは受給する権利が確定した時点、すなわち支給決定通知書が届いた時点で行います。
仕訳には「雑収入」の勘定項目を使い、入金された時点で「普通預金/未収入金」として処理します。
例)
4月1日に補助金100万円の支給決定通知書を受け取り、7月15日に実際の入金があった場合
横にスライドしてください
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|---|
4/1 | 未収入金 | 100万円 | 雑収入 | 100万円 |
日付 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|---|
7/15 | 普通預金 | 100万円 | 未収入金 | 100万円 |
なお、支給決定通知書の受け取りから実際の入金が同一の決算期内に収まる場合は、直接「普通預金/雑収入」のみで処理することもできます。
補助金を受けた場合、税金はどうなる?
補助金は、会計上「収益」扱いになりますので、所得税・法人税の課税対象になります(売上などを足した「収益」から「損益(経費)」を引いた残りに対して課税されます)。
しかし、物やサービスの授受があったわけではないので、消費税の対象とはなりません。
少し特殊なのは、補助金を使って営業車など減価償却の対象となる固定資産を取得した場合です。
このケースの場合、補助金はその年の収入として全額計上しますが、購入費用は減価償却費として数年間にわけて計上することになります。そのため、補助金をもらった年の収益だけが増加し、その分の課税負担が大きくなるという事態になってしまいます。これを避けるために、会計上では「圧縮記帳」という仕訳を行います。
圧縮記帳とは?
圧縮記帳とは、1度に課税されることを避け、税金の支払いを繰り延べるための仕訳方法です。
「直接減額方式」と「積立金方式」という2つのやり方がありますが、企業にとってどちらが有利かはケースバイケースです。詳しくは、会計士などの専門家に相談することをおすすめします。
目的に沿った補助金活用をしよう
返済不要の補助金は、資金調達のために非常に有効な手段です。しかし、「補助金をもらうために、不必要な設備投資を行った」となっては本末転倒ですし、会計上は「収入」にあたるとはいえ、補助金をあてにするというのもおかしな話です。
また、申請から実際に金額を受け取るまでに、期間があくことも多いので、記帳の際は注意する必要があります。圧縮記帳など、特別な会計処理も必要となりますので、税理士や会計士に相談しながら計画的に利用しましょう。
2019年9月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。
港区の会社設立支援、税理士法人。Big4出身の公認会計士、税理士、元上場企業経理部長、大手ベンチャーキャピタル出身者などで構成され、スタートアップ支援に力を入れる。
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