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経理

個人事業主は屋号付き口座の開設が必要?個人用と分けるメリットも解説

個人事業主は屋号付き口座の開設が必要?個人用と分けるメリットも解説
監修: 宮川真一
監修:宮川真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学卒業。税理士としてのキャリアは20年以上。税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、会計・税務を軸に複数の会社取締役・監査役にも従事。
【保有資格】CFP® 、税理士
税理士法人みらいサクセスパートナーズ

銀行口座は、個人事業主が事業を行ううえで、売上の入金などで必要になるものです。事業を始めるにあたり、事業用の口座を新しく作るべきか、それとも、今使っている個人用の口座をそのまま事業用としても使えばいいのか、迷う人もいるのではないでしょうか。

ここでは、屋号付き口座の特徴や開設の注意点、事業用と個人用の口座を分けるメリットについてもご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

目次
屋号付き銀行口座とは?
個人事業主が屋号付き銀行口座を開設する際の注意点
屋号付き口座の開設の流れ
プライベートの銀行口座を事業用にも使う注意点
事業用と個人用の口座を分けるメリット
事業用口座を上手に運用するポイント
個人事業主の経費管理におすすめ!三井住友カード ビジネスオーナーズ
事業用の口座と法人カードで、経理業務をスムーズに!
よくある質問

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屋号付き銀行口座とは?

まず屋号とは、個人事業主がビジネスで使用する通称です。個人事業主が事業を起こすにあたり提出する開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)には、屋号を記載する項目があります。

屋号を設定することは義務ではありませんが、持つことで得られるメリットもあります。そのひとつが、金融機関で屋号付き口座を開設できることと言えるでしょう。これは屋号を口座名義に取り入れたもので、「屋号+氏名」の形で口座を開設します。

通常口座と屋号付き口座の名義の違い

通常口座と屋号付き口座の大きな違いは、「口座名義に屋号が含まれるかどうか」です。

通常、個人が口座を開設するときは氏名を名義とします。一方、屋号付き口座は氏名の前に事業で使用する屋号が記載されます。

例えば、氏名が「国際 太郎」で「○○商店」を屋号にしている個人事業主が、口座を開設するとしましょう。通常口座の名義は「国際 太郎」となりますが、屋号付き口座の場合は「○○商店 国際 太郎」が名義となります。

法人口座と屋号付き口座の違い

法人口座と屋号付き口座では、口座の属性が大きく異なります。法人登記を行っている株式会社などは、法人として口座を開設することができます。そのため、口座の名義は「株式会社〇〇」など、登記している法人の名称となります。

一方、屋号付き口座は氏名の前に屋号が含まれるものの、あくまで個人口座の一種として開設を行います。

屋号付き口座は顧客からの信頼を得やすいメリットがある

屋号付き口座を開設することは、顧客からの信頼を得るための大切なポイントのひとつです。例えば、個人でネットショップを運営している方の場合、商品の購入者が「銀行振込決済」を選択して代金を直接振り込むこともあるでしょう。個人名義の口座では、振り込みをためらう原因にもなりかねません。その点、店舗名などが入った屋号付き口座であれば、顧客に安心感を持ってもらいやすいと言えます。

このように屋号付き口座は、顧客が安心して取引を進めるための判断材料のひとつとなるでしょう。

個人事業主が屋号付き銀行口座を開設する際の注意点

屋号付き口座の開設は顧客からの信頼も得やすい一方、いくつかの注意点も存在します。

個人事業主が屋号付き銀行口座を開設する際の注意点

口座開設に時間がかかる

屋号付き口座を開設する手続きには、時間がかかることが一般的です。口座開設には、必要書類をそろえ、銀行へ足を運ばなければならなかったり、審査が必要だったりする場合もあります。

審査にかかる時間は金融機関によって異なりますが、一般的に、実店舗を持つ銀行では2~3週間程度、ネット銀行は数日~2週間程度、ゆうちょ銀行は1ヵ月程度が目安とされています。

すぐに口座を開設できるわけではないため、「急いで口座を開設したい」、「取引先から売上を振り込んでもらう予定がある」という場合には不便を感じてしまうかもしれません。

口座開設できる銀行が限られる

屋号付き口座の開設は、すべての金融機関が対応しているわけではありません。なかには、屋号を使用した名義では口座を開設できない金融機関も存在します。また、「原則、普通預金口座は1人につき1口座まで」など規定を設けている金融機関もあります。

屋号付き口座の開設を行う場合は、利用する金融機関が屋号付き口座や複数口座の開設に対応しているかなど、事前に確認しておくとよいでしょう。

屋号付き口座の開設の流れ

ここからは、個人事業主が屋号付き口座を開設する流れを見ていきましょう。口座を作る前にもやっておかなければいけないことがありますので、口座開設まで、ひとつずつステップを見ていきましょう。

屋号付き口座の開設の流れ

屋号を決めて開業届を出す

屋号を決めたら、開業届に記載して届け出を行います。開業届は納税地の管轄の税務署に提出します。
金融機関によっては、屋号付き口座の開設手続きの際に、開業届の控えなどが必要となる場合があるので、大切に保管しておきましょう。

口座を作る金融機関を決める

個人事業主が屋号付き口座を作るにあたり、利用できる金融機関は主に以下の5つです。

個人事業主が屋号付き口座を作れる主な金融機関

  • メガバンク
  • 地方銀行・信用金庫
  • ネット銀行
  • 信託銀行
  • ゆうちょ銀行

それぞれ金融機関で特徴が異なるため、ご自身にとってメリットを得やすい金融機関を選ぶことが重要です。

メガバンク

メガバンクは、取引先となるクライアントに安心感を持ってもらうことができ、支店の数が多いことがメリットです。銀行の方針によっては、屋号付き口座開設についてのヒアリングが行われ、その後、書類提出となる場合があります。

地方銀行・信用金庫

一部の地方銀行や信用金庫でも、屋号付き口座が開設できます。これらの金融機関の顧客は、多くが中小企業や個人事業主です。また、地方銀行や信用金庫は各地域に拠点を構えており、地域密着型の営業を行っているのが特徴です。
ただし、地域の基盤から外れるとATMの設置数が少ないため、日本全国で事業を展開しにくいというデメリットもあります。

ネット銀行

ネット銀行は実店舗を持たないので、自宅や事務所にいながら口座開設することができ、煩わしい手続きを避けたい人におすすめです。また、ほかの金融機関と比べて他行へのATM利用・振込手数料が安い傾向があり、出費を抑えられるのはメリットと言えるでしょう。

ただし、実店舗がないため、担当者に対面で資金繰りを相談することが難しいというデメリットもあります。

信託銀行

信託銀行は現金や不動産などの財産運用と銀行業務を同時に行っている金融機関です。口座を開設することで、資産運用や相続などのプライベートな相談に乗ってもらえるメリットがあります。

ゆうちょ銀行

ゆうちょ銀行では、屋号名での活動が確認できる資料を提出することで、屋号付き口座を開設することができます。ただし、口座開設には審査があります。

なお、屋号付きで作れる口座は「振替口座」です。総合口座とは違い、通帳やキャッシュカードがなく、入出金の手続きは窓口のみでの扱いとなります。

■屋号付き口座を作れる金融機関とその違い

横にスライドしてください

金融機関 特徴
メガバンク
  • 支店の数が多い
  • 屋号付き口座開設にあたってヒアリングが必要な場合がある
地方銀行・信用金庫
  • 個人事業主や中小企業向け
  • 地域密着型
ネット銀行
  • 口座の開設が比較的簡単
  • ATM利用・振込手数料が安い
信託銀行
  • 資産運用や相続などプライベートな相談もできる
ゆうちょ銀行
  • キャッシュカードや通帳がない振替口座
  • 入出金は窓口のみ

必要な物を用意する

金融機関を決めたら、次に書類など必要な物を用意します。屋号付き口座の開設には、必要書類の提出が求められ、書類の内容や点数は金融機関によって異なります。口座を作りたい金融機関のホームページなどで事前に確認し、用意しておくようにしましょう。また、書類のほかに印鑑が必要な場合がほとんどです。手続きの際には忘れないようご注意ください。

屋号付き口座開設に必要な物の例

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など)
  • 開業届
  • 屋号を確認できる書類(賃貸契約書や納税証明書、領収書など)
  • 印鑑

口座開設(申し込み)

必要書類をそろえて口座開設の手続きをします。申し込みの際は窓口で対面での手続きが必要な場合がほとんどです。また、法人口座を取り扱っている支店でないと屋号付き口座に対応していないケースもありますので、出かける前に、その支店が屋号付き口座に対応しているのか確認しておきましょう。ネット銀行は、ウェブ上での申し込み手続きとなります。

申し込み手続き後には審査が必要な場合もあります。問題なく審査に通ることができれば、口座開設が完了し、事業利用が開始できます。

プライベートの銀行口座を事業用にも使う注意点

個人事業主の場合、プライベートで使用している銀行口座を事業用にも併用することが可能です。
しかし、1つの口座の中でプライベートの支出と事業での取引などが混同してしまうと、正確なお金の流れが把握しにくくなります。場合によっては、正確な所得計算や税金計算ができなくなってしまうこともあるかもしれません。

安定した事業を営むためには、正確な資金の流れを把握することが必要不可欠です。「どれくらいの売上が入って、どれくらいの支出があるのか」ということを分かりやすくするためにも、事業用の口座はきちんと分けておく方がよいでしょう。

続いては、事業用と個人用の口座を分けることによるメリットを詳しくご紹介します。

事業用と個人用の口座を分けるメリット

事業用と個人用の口座を分けることには、「お金の管理がしやすい」「会計ソフトと連携しやすい」など、多くのメリットがあります。

事業用と個人用の口座を分けるメリット

お金の管理がしやすい

事業を開始すると、取引の入出金、オフィスの家賃、交通費や消耗品の経費など、さまざまなお金が出入りします。これらを個人用口座で扱っていると、どれがプライベートの支出で、どれが事業での支出なのか分からなくなってしまいます。明確に区別するためには、最初から口座を分けておくのが一番です。

また、預貯金口座を事業用と個人用で分けない場合、銀行の残高が事業で稼いだお金かといった点がはっきりしません。口座を分けておくと、通帳を見るだけで、事業で稼いだお金の動きを容易に把握することができます。

確定申告に備えられる

確定申告の手間が軽減されることも個人事業主にとって大きなメリットです。

青色申告で55万円、65万円(※)の特別控除を受けるには、確定申告の際に事業の財政状態を表す「貸借対照表」を提出する必要があります。

貸借対照表を作成するには、口座の1年間の取引を複式簿記で帳簿付けしなくてはなりません。口座が分かれていないと、事業とは無関係の収入と支出もすべて「事業主借」「事業主貸」などの勘定科目で記帳することになり、毎回、区分して記帳する手間が生じます。

65万円の特別控除を受けるには、55万円の控除要件に加えて電子帳簿保存かe-Tax(国税電子申告・納税システム)のどちらかの利用が必要です。

税理士などへの相談が容易になる

口座を分けていないと、税理士などに相談を行う際に、通帳上でプライベートのお金の出入りまで見られてしまいます。事業用口座であれば、プライベートな支出を見られる心配はありません。

会計ソフトと連携がしやすい

近年急速に普及しているクラウド型の確定申告ソフトや会計サービスの多くは、金融機関の口座やクレジットカードとの連携ができます。クラウド型の会計ソフトの多くは金融機関と連携しており、口座情報をソフトに取り込んで利用することができます。
事業用の口座情報をソフトに取り込めば、記帳に利用できるのがメリットです。仕訳の手間を大幅に削減できるうえ、プライベートの支出と混同するミスもなくなります。

併せて事業用のクレジットカードも同じ会計ソフトで連携すれば、カード決済した経費も自動で計上できるので便利です。

事業用口座を上手に運用するポイント

事業用口座と個人用口座を分けて管理する場合、お金の動きをできるだけ簡略化することも大切です。シンプルなお金の流れにすることで帳簿付けの手間を減らし、効率的な事業運営が可能になります。

ここでは事業用口座を上手に運用するポイントを解説します。

事業用口座を運用するポイント

個人用口座への資金移動は決めた額とタイミングでする

事業用の口座からプライベートで使用している個人用口座に個人の生活費などを資金移動したい場合、 回数は月1回とし、決めた金額を一定のタイミングで振り込むようにしましょう。資金を移動する金額とタイミングを決めておくと、その日に移動した額はプライベート用であると一目で把握できます。お金の流れをシンプルにするルールを作ることで、事業資金と区別しやすくなり、帳簿付けも楽になります。

経費とプライベートの支払いは分ける

似たような支払いでも、「経費になるもの」「経費にならないもの」に分かれます。国民健康保険料や年金保険料、生命保険料の支払いは経費にならず、所得控除になりますので、事業用からの引き落としにせず、プライベートの個人用口座からの引き落としにしましょう。

入金、支出、税務で複数口座を使い分ける

事業用の口座を個人用と分けて管理する場合、事業用口座は「入金用」「支出用」「税務用」の3つに分けることでさらに帳簿付けが楽になります。

入金用口座は「売上」「報酬」が振り込まれる専用の口座とし、支出用の口座は経費として出ていくお金を管理します。支出用の口座にお金がないと支払いができないため、月に1回または2回など定期的に入金用口座から支払い用のお金を移動させるようにしましょう。

加えて3つ目の「税務用」で税金支払い用として口座を分けておくことで、所得税や消費税など将来の納税専用の積立を行うことが可能です。

事業用のクレジットカードを用意する

事業用の口座を作った場合、事業用のクレジットカードも1枚作っておくと便利です。現金での支払いに比べ、経費として計上するための管理が容易になります。クレジットカードと事業用口座に加え、会計ツールも連携しておくと、逐一、入金・出金の手入力が必要なくなりますので、さらに管理が楽になるでしょう。

また、クレジットカードは、使用した日から実際に引き落としが行われるまでに日数がありますので、支払いサイトにゆとりが生まれ、資金繰りを楽にすることにもなります。

なお、事業用のクレジットカードも、個人名義のカードと同様に、利用額に応じたポイントが受け取れるものもあります。貯まったポイントは事業に利用する消耗品の購入などにも使えてお得です。

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個人事業主は、個人用と事業用の口座を分けておくと、お金の管理がしやすくなります。金融機関によっては、屋号付き口座を開設することもできます。屋号付き口座は、顧客からの信用を得やすくなるメリットがあります。

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よくある質問

Q1.屋号付きの銀行口座とは?

屋号とは、個人事業主がビジネスで使用する通称です。屋号付き口座は、屋号を口座名義に取り入れたもので、「屋号+氏名」の形で口座開設します。個人が口座を開設するときは氏名を名義としますが、屋号付き口座は氏名の前に事業で使用する屋号が記載されます。

Q2.屋号付き口座を開設する際の注意点は?

屋号付き口座の開設には、必要書類をそろえて銀行へ足を運ばなければならなかったり、審査が必要だったりと、時間がかかる場合があります。また、すべての金融機関が屋号付き口座の開設に対応しているわけではないので、注意しましょう。

Q3.プライベートの銀行口座を事業用にも使うときの注意点は?

個人事業主の場合、プライベートで使用している銀行口座を事業用にも使うことができますが、プライベートの支出と事業での取引などが1つの口座の中で混同してしまうと、正確なお金の流れが把握しにくくなります。
事業用の口座はきちんと分けておく方がよいでしょう。

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