経理
配賦とは?中堅企業で役立つ費用配分について解説
複数の部門・製品を横断して発生する本社経費や共通経費を、各店舗や事業ごとに割り当てて処理することを「配賦」といいます。ある程度規模が大きくなった会社では、収益を直接的には生まない費用を配賦することによって、各部門の責任者に「会社全体の利益」を意識させることができます。
ここでは、配賦の考え方や目的、注意点について解説します。
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配賦とは共通経費を振り分けること
ある程度まで会社が大きくなると、各セクションだけで完結しない組織横断的な費用が増えてきます。また、多店舗展開やチェーン展開を進めている企業では、本社ビルの修繕費や各店舗を取りまとめる本社人事部のコスト、社長の人件費といった、使用した部署を明確に特定できない費用も発生するようになります。
こうした場合に、ある一定の基準に基づいて、各部署や各店舗に費用を振り分けることを配賦といいます。
例えば、3つの部門がそれぞれ受注してきた案件の進行管理を担う部署が1つあった場合、進行管理部の人件費などを3つの部門のコストとして配分するということです。
配賦基準を決める
配賦を行ううえで、最も重要なのが「配賦基準」です。配賦基準に決まりはなく、各企業で基準を定めることができます。ただし、ケースごとに配賦基準を設けたり、段階的に配賦基準を設定したりすると、後々混乱を招くおそれがあるため、注意が必要です。
例えば、売上高を基準に配賦した場合と、工数を基準に配賦した場合では、各部門への配賦の割合がまったく違うものになり、公平感を損なうおそれがあります。配賦する費用がどのように発生し、どれだけ利益に貢献しているかをしっかり見極めたうえで、自社に合った配賦基準を設定しましょう。
部門別配賦と製品別配賦
おもな配賦基準には、売上高、人員数、工数、材料費などの直接費用、稼働時間などがあります。ここでは、採用する企業が多い「部門別配賦」と「製品別配賦」について説明します。
部門別配賦は、費用を「直接部門」と「間接部門」に分けて、間接部門で生じた費用を基準に基づいて直接部門に配賦するやり方です。部門別配賦は、さらに「直接配賦法」「階梯式配賦法」「相互配賦法」に分かれます。
・直接配賦法 直接配賦法は、間接部門の費用を直接部門のみに配布します。ですから、配賦基準は直接部門だけに設定されます。
・階梯式配賦法 階梯式配賦法では、それぞれの部門に優先順位をつけ、順位が高いものから配賦していきます。
・相互配賦法 相互配賦法は、間接部門の費用を一時配賦した後、製造を担当する部署だけに二次配賦する方法です。
・製品別配賦 製品別配賦は、製品の製造工程で生じる費用のうち、直接製品に配分できない費用について、人員数や工数などを基準として各製品に配賦する方法です。
配賦の目的とは?
配賦の目的は、各部門や各事業の責任者に、自身が統括している部門の部分最適だけでなく、会社全体の利益を意識させることにあります。
配賦の対象となる費用は、直接的に利益を生むことはありませんが、会社を経営していくうえで欠かせない費用です。従って、「会社全体で平等に分け合い、配賦を踏まえて黒字を目指すのが正しい姿である」というのが配賦をする根拠です。
配賦前は黒字だった店舗が、本社経費や共通経費を配賦されたことで赤字に転じることは少なくありません。店舗は、会社全体の収益について考えざるをえなくなります。配賦を上手に活用すれば、会社が存続していくうえで最低限クリアすべきハードルを各部門に示し、より高い視点で利益を追求しようというマインドを育てることができます。
配賦しないという選択肢もある
配賦基準には、前述したようなメリットがありますが、基準がどうしても恣意的になりがちで、誰もが納得できる割り振りをするのが難しいというデメリットもあります。また、配賦基準の設定のしかたによっては、狙いとは反対に、現場の士気を下げかねないという懸念もあります。
例えば、売上を基準として配布した場合、売上が上がれば上がるほど配賦される経費も増えることになりますので、現場では不満が生まれる可能性があります。また、人数を基準に配賦した場合、配賦を減らすために人員削減に走ることも考えられ、結果的に作業効率が落ちたり、他部門へしわ寄せが行ったりすることもあるでしょう。
配賦は、必ずしも「しなくてはならない」というものではありません。公平な基準が見当たらない場合は、あえて配賦しないというのもひとつの手です。
配賦をうまく利用して会社全体のモチベーションを上げよう
配賦は、特定の部門や店舗だけでなく会社全体に発生する費用や、複数の商品・部門に共通して発生する費用を分配することをいいます。配賦をするかどうかは会社の判断で良く、必ずしもしなくてはならないわけではありません。
配賦をうまく活用することができれば、各部門の責任者や社員1人ひとりに、自部門だけでなく会社全体の利益を意識させ、モチベーションをアップさせることができます。
2019年8月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。
港区の会社設立支援、税理士法人。Big4出身の公認会計士、税理士、元上場企業経理部長、大手ベンチャーキャピタル出身者などで構成され、スタートアップ支援に力を入れる。
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