経理
固定比率とは?財務体質を把握するために知っておきたい基礎知識
会社の固定資産における自己資本の割合を示す「固定比率」は、財務体質の安全性を評価する財務指標のひとつです。固定比率が100%を超えていれば、自己資本を上回る借金で固定資産を調達しているということになり、100%を切っていれば固定資産をすべて自己資本でまかなっているということになります。
ここでは、会社経営の財務体質を測るうえで欠かせない、固定比率の基礎知識について解説します。
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会社の安全性分析の指標となる固定比率
会社の財務状況は、「安全性」「収益性」「効率性」「成長性」という、4つの視点から分析を進めていきます。その際、安全性分析の指標のひとつとして用いられるのが「固定比率」です。
固定比率は、会社が保有する資産のうち、長期にわたって保有する固定資産がどのような性質の資金で購入されているかを確認するために使われます。固定資産とは、現金、受取手形、預かり金、売掛金といった短期的に現金化できる資産に対して、営業活動によって流通せず、決算日から1年以内に現金化されない資産のことです。固定資産には、土地、建物、機械といった「有形固定資産」、特許権や商標権などの「無形固定資産」、そして「投資その他資産」の3つがあります。
固定比率の計算方法
固定比率は、以下の計算式で算出されます。
固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100
自己資本とは、貸借対照表の「純資産の部」に記載されている「株主資本」と「評価・換算差額など(その他の包括利益累計額)」を合計した金額のことです。
自社の資金ですので、借入金や社債などの負債と違って、返済の義務はありません。
固定比率から分かること
固定比率を算出すると何が分かり、どのように財務の安全性を把握することができるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
自己資本の割合が分かる
例えば、自己資本が2,000万円しかない企業が4,000万円の設備投資をした場合、固定資産となる設備の半分は自己資本以外の借金2,000万円によってカバーしていることになります。返済できる基盤や施策が確立されていれば別ですが、これが短期的な借金の場合、一般的には危うい状況だといえるでしょう。
固定比率を計算することで、固定資産に投資した金額のうち、安定的な資金源である自己資本が占める割合を確認することができます。
経営の安全性が分かる
固定資産は長期的に使用するため、短期間で返済を求められる資金ではなく、できるだけ返済の必要のない自社の資金(自己資本)で調達することが経営の安全性につながります。
固定比率が100%を切っていれば、すべての固定資産を自己資本でまかなっているということなので、財務状況は比較的健全で、長期的な安定が見込めるといえます。100%を超えると自己資本以上の固定資産を購入しているということになりますが、概ね120%くらいまでは安全と判断されることが多いでしょう。企業経営において、ある程度の借金があるのは当然であり、借金があるからといってすぐに安全性に疑問符がつくわけではないからです。
さらにいえば、固定比率が200%を超えていたとしても、それだけで安易に「危険」と判断することはできません。より正確に判断するなら、固定比率に加えて、「固定長期適合率」という指標を用いる必要があります。
返済可能か否かの判断指標となる固定長期適合率
固定長期適合率は、次の計算式で求められます。
固定長期適合率(%)=固定資産÷(自己資本+固定負債)×100
あくまで自己資本と固定資産のバランスだけを見る固定比率に対して、固定長期適合率は自己資本に固定負債を加えた金額と、固定資産とのバランスを分析するための指標です。
固定負債は、支払期限が1年以内にない負債のことで、企業が成長のために先行投資や設備投資をするにあたって利用した長期借入金などがこれにあたります。
必要な投資資金をすべて自己資本でまかなう無借金経営は、多くの企業にとってそう簡単にできるものではありません。同じ借金でも、短期的に返済の義務がなく、長期的に返済していく予定の固定負債であれば、それほど経営の安全性を脅かすものではないと考えて良いでしょう。従って、固定比率が100%を大きく超えていたとしても、固定長期適合率が100%を下回っていれば、財務状況は安全と判断することができます。
図を例にすると、固定比率では133.3%であるのに対し、固定長期適合率は80%となっています。固定長期適合率により、この会社の財務状況は安全であると判断できるわけです。
固定比率と固定長期適合率の2つを合わせて分析しよう
会社の財務状況の安全性を分析する場合、固定比率は重要なポイントです。固定比率を見て、100%を大幅に超えるようであれば、固定長期適合率を計算してみましょう。固定比率が100%を超えていても、固定長期適合率が100%を切っていればほぼ問題はありません。
この2つを合わせて確認・分析することで、その会社が長期にわたって健全な経営を維持していくことができるかどうか、客観的に正しい判断をすることができます。
2019年8月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。
港区の会社設立支援、税理士法人。Big4出身の公認会計士、税理士、元上場企業経理部長、大手ベンチャーキャピタル出身者などで構成され、スタートアップ支援に力を入れる。
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