法務
契約書の書き方とは?経営者が知っておきたい契約書のルール
会社を経営して経済活動を行う上で、契約をする場面というものが必ず出てきます。この際に必要になるものが「契約書」です。ここでは、契約書の意味や書き方を解説していきます。
- 目次
- 契約書とは?
- 契約書を交わす理由
- おもな契約書の種類
- 契約書を作成するためのルール
- 契約書への署名・押印のルール
- 契約書を郵送する際のマナー
- 契約書に印紙を貼る場合のルール
- 電子契約を活用しよう
- 契約書の基本を把握しよう
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契約書とは?
契約書とは、仕事をする上で、取引条件などの合意の内容を書面として記載したものになります。
例えば、販売会社であるA社がメーカーであるB社に商品の製造を依頼したのであれば、契約書を交わすことで証拠を残します。契約書には、「商品名」「商品の仕様」「納品方法」「納期」「価格」「支払い方法」などを具体的に記載します。
契約書を交わした後は、双方が契約書の内容に沿って取引を進めていくことになります。そして、取引期間中に契約書の内容に反することがあれば、契約に合意した相手に対して、その義務を果たすように要求することができます。もし果たせないようであれば、訴訟などに発展する可能性があり、契約書が重要な証拠となります。
契約書を交わす理由
契約とは簡単にいうと、当事者双方の「約束事」です。
契約は、口約束でも成立したことになり、法的にも有効です。例えば、魚屋で「このお刺身、後で買うから取っておいて」と店主に伝えたとします。それに対して、魚屋が「わかりました」と答えれば、それだけで契約が成立したことになります。
しかし、口約束の場合、合意の内容が明確ではなく、契約成立の証拠が残らないといった欠点があります。特に利害関係が絡む内容だと、「言った言わない」の争いになることもあります。そして、ビジネスシーンでは、契約書を交わさずに仕事を進めてしまうと、個人間のもめ事ではすまずに会社間のトラブルになって、訴訟問題に発展することもあります。そこで、契約書が必要になってくるわけです。
おもな契約書の種類
契約書は、さまざまな場面で必要となります。ここでは、おもな契約書の種類について確認しましょう。
・売買契約書
売買契約書は、商品など物を売買するときに用いられます。
・貸借契約書
貸借契約書は、物を貸したり借りたりするときに用いられます。不動産の賃貸借契約をするケースなどが代表例です。
・業務委託契約書
業務委託契約書は、会社のさまざまな業務を外部に委託する際に用いられる書類です。業務を委託する側、委託される側、どちらにも必要です。
契約書を作成するためのルール
契約書を作成するためのルールを確認していきましょう。
契約自由の原則
民法の基本原則に、「契約自由の原則」があります。お互いが了承を得ることができれば、原則としてどのような内容であってもいいわけです。また、契約書には、「必ずこのように書かなければいけない」と決まった規則はございません。
ただし、「契約する会社の名前」「契約日付」「契約内容」は、最低限書かれていなければ、意味のない契約書になりかねません。そのほか、公序良俗に反する内容や法律に反する内容を契約書に記載したとしても、その契約書は無効となりますので注意しましょう。
契約書の雛形について
契約書に関しては、インターネット上などに無料でダウンロードできる雛形が数多く存在します。しかし、雛形はあくまで一般的な内容を記載しているだけですし、雛形自体の内容も玉石混淆です。契約書の雛形はそのまま使わずに、専門家に相談しながら、当事者間における事情や状況を考慮して作成していくことが重要です。
契約書への署名・押印のルール
契約書には、契約者が署名をして押印しなければいけません。署名や押印のルールを確認しておきましょう。
署名捺印と記名押印
契約書にサインする方法としては、署名捺印と記名押印があります。それぞれの違いについては、下記のとおりになります。
署名捺印:ご本人が自筆で氏名を手書きして、捺印する。
記名押印:氏名を記載し、押印をする(記名は、パソコンなどによる印刷でも構いません)。
押印に使うハンコは?
押印に使うハンコは、締結する契約の重要性によって異なってきます。重要な契約では実印が使用され、印鑑証明書の添付が求められますが、重要性に乏しいものであれば、認印でも構いません。
割印と契印とは?
契約書が複数枚になることがあります。その際には、「割印」と「契印」といった方法で、契約書の内容を証明し、改ざんを防ぎます。
割印は、2通以上の独立した契約書を作成するとき、その文書が関連していることを証明するための方法です。原本と写し、あるいは自社と契約相手といったようなケースが想定されます。割印は、ずらして重ね合わせた契約書に、またがるように押印します。
契印は、契約書自体が2枚以上になるときに、契約書のつなぎ目や綴じ目に押印する方法です。末尾あるいは冒頭だけに押印すると、契約相手に押印したページ以外を差し替えられて、偽造される可能性もあります。そのため、契約書が複数枚になったときは、ページにまたがるように、見開きページに対して押印していきます。
ただし、見開きごとに押印するのは手間がかかりますので、契約書の片側をテープで止める袋とじ製本をする方法があります。袋とじ製本にして、製本テープと契約書にまたがった箇所に押印すれば、一箇所の契印で済むようになります。
契約書を郵送する際のマナー
契約書の作成後に、契約相手に郵送し、署名捺印を依頼する場合があります。その際には、郵便の種別を「簡易書留」などにして配達記録を残すようにしましょう。普通郵便で郵送した場合、確実に届いたかどうかの証拠が残りません。その点、簡易書留や配達記録郵便にしておけば、配達状況をインターネット上で確認できますし、配達した事実を証明することができます。
また、契約書は相手と自身の双方が保持するものですので、相手方が1名(1社)であれば、2通の契約書を郵送し、署名捺印してもらった1通の契約書を返送してもらう必要があります。その返送用の封筒も同封して郵送することもマナーとなっています。その封筒には、返信用切手を貼付することも忘れないようにしましょう。
そのほか、契約書について、送付状を同封することもビジネスマナーとなります。
契約書に印紙を貼る場合のルール
契約書には、収入印紙を貼付しなければいけないものがあります。収入印紙は、購入して契約書に貼付した時点で、国や行政に納税したことになります。収入印紙貼付が義務付けられている書類は、印紙税法という法律で定められており、どのようなものが課税文書とされているかについては、国税庁のウェブサイトが参考になります。課税文書には1号から20号までの20種類がありますが、日常、よく目にする代表的なものとしては、1号文書、2号文書、7号文書がありますので、それぞれ内容を確認していきましょう。
なお、契約書に貼付した収入印紙は、再使用できないようにするため、印紙と契約書の書面にかかるように押印をする「消印」を施す必要があります。これを「割印」ともいいます。切手に対して使用済みの証拠として消印がしてあるのと同じイメージです。
1号文書
以下の4種類の契約書が1号文書に該当します。
・不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書
不動産売買契約書や無体財産を譲渡した場合の契約書などが該当します。無体財産権とは、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号および著作権を指します。
・地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書
土地賃貸借変更契約書や土地賃貸借契約書などが該当します。
・消費貸借に関する契約書
金銭消費貸借契約書や金銭借用証書などが該当します。貸借するのは金銭に限らず、品物も対象になります。
・運送に関する契約書
運送引受書や運送契約書などが該当します。
2号文書
請負に関する契約書が2号文書になります。工事請負契約書や広告契約書、物品加工注文請書などが該当します。
<2号文書の収入印紙代>
7号文書
継続的な取引の基本となる契約書が7号文書になります。特約店契約書や売買取引基本契約書、業務委託契約書、代理店契約書、銀行取引約定書などが該当します。
<7号文書の収入印紙代>
7号文書の収入印紙代は、契約金額にかかわらず一律4,000円となります。
電子契約を活用しよう
契約書と聞くと紙の書面にしなければいけないと考えるかもしれませんが、契約を交わす当事者同士が納得していれば、電子的なデータでも構いません。事実、近年では契約書を電子化した「電子契約」を取り交わす企業も増えています。
電子契約とは?
電子契約は、契約の内容を記載したPDFなどの電子文書(電子ファイル)を作成した後、電子署名とタイムスタンプを押します。タイムスタンプとは、ある時刻に該当する電子データ(電子契約)が存在し、それ以降、改ざんされていないことを証明する技術のことです。契約に合意すれば、「契約書」は電子データのままサーバなどに保管します。
電子契約のメリット
「契約書」を電子化することで、さまざまなメリットが生まれます。
その最大のものはコスト削減です。紙の書面で契約を締結する場合、郵送代のほか、封筒代、印刷代、インク代がかかるほか、それらの作業にかかる人件費もかかります。また、印紙税のかかる課税文書は、書面に限定されています。そのため、電子契約では収入印紙も必要ではなくなります。
そのほか、紙の書面だと、契約するまでに作成・郵送・押印などの作業でかなりの時間を要します。特に、郵送での署名捺印を依頼した場合、契約締結までに1週間以上もかかることもあります。契約書を電子化することで大幅に時間短縮ができ、業務を効率化できるといったメリットもあります。
契約書の基本を把握しよう
ビジネスをする上では、契約書を交わす場面が多々発生します。
ビジネスマナーとして契約書の基本から押さえておく必要がありますので、しっかりと把握しておきましょう。
2018年9月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。
山口県出身。京都大学法学部、NYU School of Law(LL.M.)卒。スタートアップ企業の法務・知財戦略支援、ベンチャー投資、IPO・M&AによるExit支援など、多くのベンチャー関連業務に携わる。
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