法務
請求書の正しい書き方は?網羅しておくべき項目をチェック
請求書は企業にとって自社の売上に直結する重要な書類です。自社の商品やサービスの料金や代価について、支払いを求めるために発行します。
そのため、ビジネスの現場で頻繁に目にする機会が多い書類ですが、具体的にどのような情報を書いておくべきでしょうか。請求書の必要性と、正しい書き方や送付方法について解説します。
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請求内容を証明するために請求書を発行する
請求書は、取引相手に対して、請求金額を知らせるために発行するものです。取引相手は、請求書を見て自社の控えと照らし合わせ、支払いを行うことになります。
請求書を発行することによって、商品やサービスを提供した側は、「何に対する料金をいつ請求したのか」を証明することができます。
仮に、4月末日を納期限とした100万円の取引があったとしましょう。この取引に関する入金がなかった場合、請求書を発行していないと「請求されていないため支払う義務がない」などと言われかねません。また、企業間取引において、不正な取引や支払いが行われていないか、会計監査の観点からも必要な書類となります。
請求書に記載すべき8項目
法律上は、請求書として記載が必要な項目は特に決まりはありません。ですが、実務上の慣習やマナーとして請求書に記載すべき項目がありますので、一般的な請求書を例に、記載しておくべき8項目を紹介します。
(1)題目
その書類が何であるのかを知らせるために、題目が必要となります。用紙、またはフィールドの上部中央、あるいは左上の目立つ場所に大きめの文字で「請求書」と記します。
(2)発行者
誰からの請求であるかという発行者の情報も、分かりやすく記載する必要があります。題目の右下あたりに記載するのが一般的です。会社名、住所のほか、社判を捺印します。社判ではなく、担当者やその上長の名前を明記し、各人の印判を捺印する場合もあります。
(3)請求先(依頼主のあて名)
請求先の情報は、左上に記載します。会社名は必須ですが、住所などそのほかの情報を記載するかは、発行する会社の都合によって決めます。住所や会社名を記してあて名代わりとし、封筒の窓から見えるように送付するケースもありますし、会社名のみを記すケースもあります。
(4)取引内容
取引をした品名、単価、数量、金額などを明記します。
請求書は、取引の度に発行する「都度方式」と、一定期間(多くの場合はひと月分)の取引をまとめて発行する「掛売方式」があります。取引頻度が低い場合は都度方式でも問題ありませんが、頻度が高い場合、何度も請求書を発行するのは手間ですし、取引先でも処理の手間がかさんでしまいます。頻度が高い場合は、掛売方式にして取引内容をまとめて記載しましょう。その場合は、各取引の年月日も合わせて記載するとより正確です。
取引内容に単価がない場合は書かなくても問題はありません。また、数量については、「一式」などまとめた表現で記載することができます。
各内容の取引金額のほか、最下段に取引額を合わせた小計、小計額にかかる消費税、小計と消費税を合わせた合計金額を書きます。消費税が内税の場合は、「内税」と記載します。
(5)請求金額
請求金額として、取引額をすべて合わせた小計に、消費税を足した合計金額を大きく明記します。法人化されていない弁護士や司法書士、税理士への支払いなど、源泉徴収の対象になることもありますので注意が必要です。
(6)発行年月日
請求書を発行する日を記載します。都度方式で、都度払いをしてもらえるのであれば、書類発行日(納品日以降)で問題ありません。
しかし、発行年月日を、取引先の都合に合わせる場合があります。取引先の会計締め日との関係によって、経費の計上月が変わってしまうからです。取引先と初めてやりとりする場合は、先方に確認をとるようにしましょう。
(7)振込先
銀行名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義といった、振込先の情報を記載します。口座名義はカタカナで明記します。銀行コードと支店コードも併せて書いておくと、より丁寧です。
(8)支払期日
請求金額を支払ってもらう、支払期日を記載します。通常、契約書や発注書を交わした時点で決めておきます。支払期日を書いておくことは、請求した相手に対してのリマインドにもなりますし、自社で入金確認をする際にも役立ちます。
請求書の作り方
請求書の作成方法はさまざまです。会社の都合に合わせた方法を選びましょう。いずれの方法を選んだ場合でも、先にご説明した必要項目を網羅していれば問題はありません。
市販のソフトで自動作成
見積書、納品書、請求書は、一連の取引の中で交わされる書類ですから、作成する金額や内容はほぼ同一です。そのため、これらの書類をまとめて作成できるソフトが販売されています。
ExcelやWordで作成する
請求書に法的な書式はありませんから、ExcelやWordを使って自作しても構いません。自社のロゴマークや社判を入れたオリジナルの請求書を作成できます。
インターネット上には、ExcelやWordで作られた無料の請求書の雛形が多数存在しています。これらをダウンロードして自社の情報などを入力することで、請求書として利用できるようになります。なお、作成したファイルをメールで送付する場合は、保存形式をPDFや画像ファイルにして、第三者から改ざんされないようにしましょう。
市販の請求書用紙を利用する
ブランクの請求書用紙は、文房具店や100円均一ショップなどで購入することができます。この場合、1枚ずつ手書きとなるため、やや手間ですが、ゴム印などを活用して作成するといいでしょう。
請求書を作るときのポイント
請求書を作るときに意識しておきたい6つのポイントをまとめました。
1 サイズはA4が一般的
請求書に決まったサイズはありません。しかし、パソコンで作成するのであれば、A4サイズが一般的です。市販の請求書にはこれ以外のサイズもありますが、相手先企業の書類整理の手間を省くという意味では、A4のタイプを選ぶのがおすすめです。
2 作った請求書には捺印する
パソコンで作成する場合も、印刷した請求書に捺印をしましょう。会社名の上に角印の社判を押すのが一般的なスタイルです。メール送付などができるよう、請求書を電子化する場合は、印章を画像ファイルに変換し、作成ソフトを使って書類上で捺印しても構いません。
3 通し番号をつけておくと便利
請求書に通し番号をつけておくと、書類の整理がしやすくなるのでおすすめです。経理で管理しやすい通し番号のつけ方を決めましょう。
4 取引が完了したらすみやかに発行する
取引完了後、いつまでも請求書を発行しないと、支払いができずに先方に迷惑をかけてしまうことがあります。1ヵ月ごとであれば、その月の最後の取引完了後、都度であれば取引完了後に遅滞なく発行しましょう。
5 振込手数料について
備考として、振込手数料の負担について記載します。契約の段階でどちらが負担するのか決めておくと良いでしょう。
6 端数が出た場合
消費税の都合などで金額に端数が出てしまった場合は、自社の規定に従って処理を行います。どのように処理をするのかに法的な決まりはありませんが、毎回同じように処理するようにしてください。
請求書送付時の注意点
作成した請求書を送るときの注意点についてまとめました。
1 ほとんどの企業がまだ「郵送で請求書」のやりとりをしている
ほとんどの企業が、紙による請求書で処理しているのが現状です。そのため、請求書は郵送で送付することが一般的といえます。ペーパーレス化や郵送コストの観点から、電子化された請求書をメールで受け取りたい企業も増えてきてはいますが、取引先に確認をとって、請求書を送付しましょう。
2 郵送の場合は折ってしまってOK
A4サイズの請求書をそのまま郵送すると、封筒が大きくなり、その分郵送コストがかかります。三つ折りにして、長3サイズの封筒に入れて送りましょう。
3 カバーレターをつける
請求書だけを封筒に入れて送るのは失礼にあたります。中に何が入っているのかを知らせるためにも、カバーレターをつけましょう。
4 メール便は使わない
請求書は信書にあたるため、メール便で送ることはできません。普通郵便で送りましょう。
取引先とのスムーズなやりとりに役立つ請求書
請求書は、取引先に請求情報を伝え、入金してもらうために必要な書類です。
記載項目に厳密な決まりはありませんが、後々のトラブルを避けるためにも、契約時の取り決めと過不足のない内容の記載を心掛けましょう。
2019年9月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。
山口県出身。京都大学法学部、NYU School of Law(LL.M.)卒。スタートアップ企業の法務・知財戦略支援、ベンチャー投資、IPO・M&AによるExit支援など、多くのベンチャー関連業務に携わる。
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