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法人カードの業務活用術
2024.01.17
立替払いとは?従業員の経費精算の流れと領収書の宛名、仕訳まで解説
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学卒業。税理士としてのキャリアは20年以上。税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、会計・税務を軸に複数の会社取締役・監査役にも従事。
【保有資格】CFP® 、税理士
税理士法人みらいサクセスパートナーズ
交通費や出張費など、企業の経費を一時的に従業員が立替払いするケースは少なくありません。しかし、立替払いは従業員・経理部署双方に事務負担が増加したり、従業員に金銭的な負担をかけてしまったりするなど、いくつかの課題もあります。
ここでは、立替払いの精算手続きの流れや注意点、課題解決のポイントについて解説します。
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立替払いとは
立替払いとは、企業が負担すべき経費を一時的に従業員が肩代わりして支払い、後日その金額を精算する制度です。「立替経費」と呼ばれることもあり、この立替えたお金を後日精算することを「立替精算」や「実費精算」といいます。
立替払いは、勘定科目としては、「未払金」が使用されます。詳しくは以下で説明します。
仮払いと立替払いの違い
仮払いとは、企業があらかじめ経費にかかる概算のお金を従業員に支払い、後日その過不足金を精算する制度です。仮払いは従業員が経費を立替える必要がないため、費用面での負担をかける心配がありません。ただし、事前の支払いや過不足金の精算など複数のステップがあることから、事務負担が大きくなる傾向にあります。
一方、立替払いは従業員が立替えた金額を事後精算する制度です。精算が完了し精算金額が返金されるまでは従業員が支払っていることになるため、頻度が高かったり金額が高額になったりすると、従業員の経済的負担が増加することになります。
前払いと立替払いの違い
前払いとは、代金の一部または全額を前もって支払う制度です。例えば、月額で支払う契約になっているプリンターのリース代を1年間まとめて支払う場合や、来月出張で利用するホテル代を事前に支払う場合などが該当します。事前に金額を払う点は仮払いと似ていますが、概算である仮払いと異なり、前払いは払った時点で使途や金額が分かるため、一部を手付金・内金として支払った場合でも残額が明確です。
前払いは「前払金」として一時的に計上し、期間経過後に適切な科目に振り替えます。従業員が経費を立替えて支払う立替払いとは異なる勘定科目ですので、混同しないように注意しましょう。
立替払いになることが多い支出
立替払いはあらゆる経費で使うことができますが、主に交通費や出張費、交際費などで発生しやすいです。それぞれどのようなシーンで立替払いが発生するのか、具体的に紹介していきましょう。
交通費
交通費とは、バスや電車、タクシーなどの移動手段で発生する経費のことです。特に、取引先へ訪問する際の移動費や、出張先でのタクシー代などで立替払いを導入している企業が多くあります。
出張費
出張費とは、従業員の出張にかかる費用のことです。ホテルへの宿泊費や飛行機・新幹線代などを立替払いで対応する企業もあります。ただし、出張費は高額になることが多く、立替払いで対応する際は前述のとおり従業員の金銭的な負担について考慮しなければなりません。
交際費、会議費
取引先との間で発生した飲食費用を従業員が立替えるケースも珍しくありません。例えば、打ち合わせの際に利用した喫茶店代や、接待のための会食費用などが挙げられます。
なお、飲食費用の仕訳は「交際費」と「会議費」の2種類の勘定科目が該当しますが、1人あたりの飲食費用が5,000円以下の場合は、交際費ではなく会議費として認められるケースもあります。
その他業務の経費
これまで紹介してきたケースのほかに、事務用品などの消耗品の購入や、取引先への資料送付にかかる切手代など、少額での立替払いが発生するケースも多く見られます。少額の立替払いは、出張費などと違って従業員に金銭的な負担をかける心配はないものの、回数が重なれば精算手続きにかかる事務負担が重くなる懸念があります。
従業員の立替払いを精算する流れ
従業員が立替払いを行った場合、後日精算手続きを行うことで返金します。一般的な精算手続きの流れは以下のとおりです。
実費精算(立替え)のフロー
- 立替えの発生
- 領収書を受領
- 領収書を添付した経費精算申請書を作成、提出
- 回覧、承認者からの承認を得る
- 精算処理
- 経理から従業員へ返金
それぞれ詳しく手順を確認していきましょう。
立替えの発生
営業担当者が消耗品の購入代金1万円を現金で立替えた例です。
あらかじめ立替払いが発生することが分かっている場合、事前に上長など経費精算の承認者や経理部門、総務部門あてに申請手続きを行います。申請手続きの方法は企業によって異なりますが、所定の申請書への記入押印が必要となることが一般的です。
領収書を受領
実際に立替払いを行う際は、会計時に必ず領収書やレシートなどの証憑類を受領します。領収書を受け取ったら、記載されている金額や日付、あて名などに誤りがないかその場で確認しましょう。また、領収書を紛失してしまうと立替精算ができなくなってしまうことがあります。きちんと保管しておきましょう。
領収書を添付した経費精算申請書を作成、提出
立替払いを行った後は、経費精算申請書に領収書を添付して上長など承認者へ提出します。記載内容に誤りがあると、従業員と関連部署双方に確認の手間が増えてしまうため、提出前に再度誤りがないか確認するようにしましょう。
回覧、承認者からの承認を得る
申請書を提出した後は、上長など承認者によって「経費として認められるか」「事前の申請内容と金額に差がないか」「領収書の内容と一致しているか」などのチェックが行われます。もし事前に申請した金額と実際に立替えた金額が異なる場合、その理由を明記しておかなければなりません。
申請された内容に問題がなければ、経理部門の承認者が最終的な承認手続きを行い、記帳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
消耗品費 | 10,000円 | 未払金 | 10,000円 |
精算処理
立替払いをした従業員へ返金するための精算処理が行われます。立替えた1万円を従業員へ現金で返金する場合、以下のとおりに記帳されます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払金 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
なお、飲食費を立替えた場合は「交際費」もしくは「会議費」で仕訳処理を行いますが、備考欄に参加人数や参加者名などを記載しておくと便利です。後から振り返ったとき、何の経費を支払ったのかすぐ分かります。
経理から従業員へ返金
仕訳処理が完了したら、従業員に立替えたお金の返金が行われます。返金方法は企業によってさまざまですが、従業員の預金口座へ振り込む方法や現金で返金する方法が一般的です。
従業員は返金された金額と立替えた金額が一致しているか、必ず確認しましょう。
立替払いの際の領収書のあて名は?
従業員が立替払いを行うときは、会計時に領収書を発行してもらいますが、「あて名は従業員の個人名と企業名どちらなのだろう?」と悩む人も少なくありません。
2023年10月から開始されたインボイス制度では、企業が仕入税額控除を受ける際に、「領収書などにインボイスを受け取る事業者の名称を記載すること」が要件となりました。もし個人名で領収書を発行してもらってしまうと、この要件を満たさず、企業が仕入税額控除を受けられない可能性があります。立替払いを行う際は、従業員の個人名ではなく企業名で領収書を発行してもらうようにしましょう。
ただし、従業員の個人のクレジットカードで立替払いを行う場合は、領収書のあて名が個人名となることも想定されます。その場合は、企業名を記載した立替金精算書を別途作成したうえで、従業員名が記載された領収書と保存することで仕入税額控除の対象とすることができます。
立替払いの注意点
立替払いを行う際は、精算期間の設定や金額が高額となる場合の対応などに注意する必要があります。それぞれ詳しく確認していきましょう。
精算期間の設定
立替払いの精算手続きは、「毎月●日まで」、「立替払いを行った日から●日以内」など、社内の事務規程で期限を設けていることが一般的です。精算期限を設定することは、経費が発生する時期を正確に把握することや、未精算となるリスクを防ぐ意味合いがあります。
経理処理のスケジュールに影響が出ないように、従業員には必ず期限内に精算手続きを行うよう周知するようにしましょう。また、長期出張などやむを得ない事情で精算手続きが間に合わない場合は、そのことを事前に報告させるようにしましょう。
金額が高額になる場合
立替える金額が高額となる場合、精算手続きが完了するまで従業員に金銭的な負担をかけてしまう懸念があります。一定の金額を超える場合や立替払いの回数が多い企業は、法人カードを導入したり、仮払いでの対応をしたりなど、従業員の金銭的負担を軽減することが大事です。
電子帳簿保存法への対応
2022年1月に施行され、2024年1月から本格的に開始した改正電子帳簿保存法では、国税関係書類を電子保存することが認められました。電子保存の対象は多岐に渡りますが、相手から受領する取引関係書類である領収書もその1つです。
これまでは紙の領収書をファイリングして保存していましたが、改正電子帳簿保存法では紙で受け取った領収書をスキャナでスキャンしたりカメラで撮影したりするなど、電子ファイル化して保存することができます。スキャナ保存については最近になって保存の要件が緩和されましたが、各企業では立替払いの精算手続きについて、紙で領収書を受け取った場合のフローを見直す必要があります。
また、紙の領収書だけでなく、領収書が電子データで交付される場合の取り扱いにも注意が必要です。例えば、eコマースで備品を購入したときなど、領収書が電子データで交付されることもあるでしょう。この場合、改正電子帳簿保存法では、電子データを紙に出力して保存するのではなく電子データのまま保存することを義務化しています。
そのため、従業員が立替払いの領収書を電子データで受け取った場合はその電子データをデータのまま経理部署へ転送するなど、申請時の業務フローを定めておく必要があります。
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不正計上やヒューマンエラーを誘発しやすい
立替払いでは、従業員が私的な支出に経費を流用しようとしたり、領収書の金額・内容を改ざんしたりなど、不正計上のリスクが懸念されます。また、従業員が領収書をもらい忘れたり、紛失してしまったりするなど、ヒューマンエラーが起こるリスクも避けられません。
こうした不正計上やヒューマンエラーのリスクを低減するためには、経費流用を防ぐ社内のしくみ作りをすることや、外出先でもすぐに精算申請が行える経費精算システムを導入することを検討してみましょう。
経理業務の負担が増える
前述したとおり、立替払いの精算には期限が設けられていることがほとんどです。そのため、「精算の締め日近くに多くの申請が重なる」「従業員が一度にまとめて大量の精算申請を行う」といったことが起き、経理業務の負担が著しく増加することがあります。もし申請内容に不備があれば、訂正や再申請を依頼するといった手間も発生します。
経理業務の業務負担を軽減するためには、立替払いが発生したら都度遅滞なく精算手続きを申請するように従業員に周知徹底することが大事です。
立替払いに関するお悩みを解決
立替払いには事務負担や不正計上などさまざまな悩みがありますが、これらの問題解決には経費精算システムの導入や、法人カードの活用が有効です。それぞれどのような効果があるのか具体的に見ていきましょう。
経費精算システムの導入
経費精算システムとは、立替払いの申請や承認手続きを電子化したシステムです。経費精算の手続きをシステム化することで、「申請書を作成する手間が減る」「申請の承認状況がすぐに把握できる」「外出先から申請手続きが行える」「素早く返金してもらえる」といったメリットがあります。
中には立替申請の内容をもとに自動で仕訳を行うと同時にデータを会計システムと連携できる経費精算システムもあり、経理業務を大幅に効率化することも可能です。
法人カードの活用
立替払いの事務負担を軽減する方法として、法人カードの活用も挙げられます。
法人カードは部署・従業員ごとに追加カードを発行することができるため、これまで立替払いで対応していた支払いも法人カードで決済できるようになります。法人カードの活用により支払いが一本化されれば経理業務の事務負担が軽減され、「月末近くに立替払いの精算手続きが立て込む」という心配もありません。
出張や接待が多く立替払いが頻繁に発生する企業は、法人カードを導入することを検討してみましょう。
立替払いの負担を軽減し、不正計上やミスを防ぐ三井住友カードの法人カード
立替払いは、処理ができずに溜まってくると従業員の経済的負担が大きくなるデメリットがあります。また、締め日が近くなると慌てて処理を依頼してくるなどして、経理部門の負担が急に増大する事態になることも多々あります。
そこで、法人カードを導入して立替払いの負担から解放されてはいかがでしょうか。法人カードを導入することにより、キャッシュレス化による小口現金の管理業務の削減、経費精算システムとの連携による入力業務の削減など、経理部門の業務を効率化、デジタル化の推進の第一歩となります。
三井住友カードの法人カードなら「マンスリークリア方式」を採用しており、締め日翌日には利用枠がクリアされるため、予実管理が簡単なメリットがあります。
三井住友コーポレートカードに加えて、三井住友パーチェシングカードを導入いただくことでカード決済を利用できる範囲が広がり、さらなる業務効率化に繋がるでしょう。三井住友パーチェシングカードは任意で名義設定ができ、利用内容をCSVデータ化し会計システムへの取り込みも可能ですので、仕訳作業も簡略化できます。以下では経費精算業務の効率化に役立つ三井住友コーポレートカード、三井住友パーチェシングカードをご紹介します。
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大企業におすすめ!三井住友コーポレートカード
カード使用者の多い大企業向けの法人カードです。出張費や交際費などを「会社全体」「部事業所別」「個人別」の3段階に分類し、経費予算管理を簡素化できます。また、ゴールドカードには、旅行傷害保険や買い物保険が付帯されており、全国の主要空港ラウンジをご利用いただけます。
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なお、三井住友パーチェシングカードは、プラスチックカードが発行されないため、紛失・盗難のリスクがありません。
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従業員の経済的負担が大きい立替払いは法人カードで解決
経費の立替払いは、従業員・経理部署双方の事務負担増加や、不正計上など複数の課題があります。これらの問題を解決するためには、立替払いの手続きを電子化する経費精算システムの導入や、支払いを一本化する法人カードの活用などが有効です。
特に法人カードは、従業員に金銭的な負担をかけないため、高額な経費の支払いにも便利です。ぜひこの機会に法人カードの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
よくある質問
Q1.立替払いとは何ですか?
立替払いとは、企業が負担すべき費用をいったん従業員が立替えて支払うことです。「立替経費」と呼ばれることもあり、この立替えたお金を後日精算することを「立替精算」や「実費精算」といいます。
詳しくは以下をご覧ください。
Q2.どのような経費が立替払いになることが多いですか?
立替払いは、取引先へ訪問する際の移動費や、出張先でのタクシー代などの交通費で発生しやすい傾向にあります。そのほかにも、出張費や交際費、会議費なども従業員の立替払いで対応するケースが多く見られます。
詳しくは以下をご覧ください。
Q3.立替払いの利用に注意点はありますか?
立替払いは、経理処理のスケジュールに影響が出ないよう必ず精算期限内に申請手続きを行うよう周知する必要があります。そのほかにも、金額が高額となる場合の取り扱いや、改正電子帳簿保存法への対応にも注意が必要です。
詳しくは以下をご覧ください。
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