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インボイス制度で領収書はどう変わる?必要な情報をわかりやすく解説
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2024.03.07

インボイス制度で領収書はどう変わる?必要な情報をわかりやすく解説

インボイス制度で領収書はどう変わる?必要な情報をわかりやすく解説
監修: 内山智絵
監修:内山智絵

大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人の地方事務所で上場企業の法定監査などに10年ほど従事した後、出産・育児をきっかけに退職。現在は、個人で会計事務所を開業し、中小監査法人での監査業務を継続しつつ、起業女性の会計・税務サポートなどを中心に行っている。
【保有資格】公認会計士、税理士、AFP
内山会計事務所

2023年10月1日(日)から開始されたインボイス制度により、領収書の交付・受領にも変更が生じています。「いったい何が変わったのか」「今の領収書で問題ないのか」と不安を感じている企業もあるのではないでしょうか。

正しい領収書の取り扱いには、法律の規程や領収書に記載が必要な情報をよく理解しておくことが大切です。ここでは、インボイス制度による領収書の変更点や必要な記載事項を解説します。

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インボイス制度とは

正式名称を「適格請求書等保存方式」と言い、消費税の複数税率に対応するための新たな仕入税額控除の方式のことです。

現行の消費税は商品によって8%の「軽減税率」と10%の「標準税率」があり、1枚の領収書の中に複数の税率が混在することも少なくありません。インボイス制度は、この消費税を正しく把握するために「適格請求書(インボイス)」を発行することを取り決めたものです。

適格請求書は品目ごとの適用税率や、税率ごとの消費税額を記載するように定められており、売り手から買い手へ正しい消費税を伝えることを目的に発行されます。また、適格請求書を発行した際は、売り手・買い手側どちらも保存することが義務付けられています。

インボイス制度で領収書は何が変わったか

インボイス制度における適格請求書は「請求書のみが対象」と思われがちですが、売り手から買い手へと交付される書類、つまり納品書や領収書、レシートなども適格請求書として取り扱われ、それらは「正確な消費税率や消費税額を伝えること」を目的に発行されます。そのため、適格請求書には、登録番号や取引年月日などの一定の記載事項が定められています。

ただし、適格請求書を発行できるのは事前に税務署長による登録を受けた「適格請求書発行事業者」のみです。適格請求書発行事業者は、課税事業者の買い手側から適格請求書の発行を求められた場合、その求めに応じる義務が生じます。つまり、取引先や顧客に領収書を発行することがある企業では、インボイス制度に対応した領収書を発行できるように社内の体制を整えておく必要があるのです。

レシートは「適格簡易請求書」として利用できる

適格請求書には登録番号をはじめとした複数の記載事項が定められていますが、事業者によってはすべての内容を記載することが難しい場合もあります。適格請求書には「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」を記入する必要があるのですが、日々多くの人が利用するスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで会計する度に買い手の氏名を聞き取って適格請求書を発行するのは現実的な処理とは言えないでしょう。

そこで、一部の事業者に限ってはレシート、つまり記載内容を簡略化した「適格簡易請求書」の発行が認められています。適格簡易請求書の発行が認められているのは、下記の事業者です。

  • 小売業
  • 飲食店業
  • 写真業
  • 旅行業
  • タクシー業
  • 駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります)
  • その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡などを行う事業

(出典)国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の手引き     」を参考に作成

  • ※別ウィンドウで「国税庁」のPDFを開きます。
  • ※上記PDFは予告なく変更、または削除される可能性があります。その場合は国税庁ホームページからご確認ください。

消費税の端数処理

適格請求書と適格簡易請求書ではいずれも「税率ごとの消費税額」を記載しますが、金額によっては1円未満の端数が生じることがあります。その場合は、税率ごとに1回の端数処理を行うことが定められています。個々の商品ごとに消費税額を算出して端数処理を行うのではなく、税区分ごとの消費税額を算出して端数処理を行うしくみです。端数処理の方法は「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」が認められており、任意の方法で行って問題ありません。

手書きでもよいのか

適格請求書や適格簡易請求書の様式は特に定められておらず、記載要件を満たしていれば手書きのものでも認められます。

ただし、手書きの場合はレジなどで機械的に発行されるものに比べて記載漏れや誤記入、判読不能な字が混ざったり、改ざんが起こったりするリスクが高まります。手書きで発行する場合は、「インボイス制度に対応したひな形を用意しておく」「複写式伝票を使用する」など記載漏れが起こらないような対策を講じておくとよいでしょう。

適格請求書が不要の取引

前述のとおり、適格請求書発行事業者は、売り手側(課税事業者)の求めに応じて適格請求書を発行しなければなりません。しかし、その発行が困難な場合は交付義務が免除されるケースがあります。

例えば、自動販売機でジュースやたばこを販売する場合は購入者に対してレシートの発行ができないため、適格請求書の交付義務免除の対象として認められています。それを含め、ほかにも交付義務が免除される対象は以下です。

  • 公共交通機関である船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送(3万円未満のものに限ります)
  • 出荷者などが卸売市場において行う生鮮食料品などの譲渡(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります)
  • 生産者が農業協同組合、漁業協同組合または森林組合などに委託して行う農林水産物の譲渡(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります)
  • 自動販売機・自動サービス機により行われる課税資産の譲渡など(3万円未満のものに限ります)
  • 郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)

(出典)国税庁「適格請求書等保存方式の概要     」を参考に作成

  • ※別ウィンドウで「国税庁」のPDFを開きます。
  • ※上記PDFは予告なく変更、または削除される可能性があります。その場合は国税庁ホームページからご確認ください。

領収書の発行者(売り手)側に必要な対応

領収書の発行者(売り手)には、適格請求書を発行するだけでなく、その写しを保存することも求められています。正しい領収書を発行するためには、インボイス制度における記載要件やその後の取り扱いをしっかりと理解しておくことが大切です。それぞれ詳しく確認していきましょう。

領収書の記載事項を追加する

適格請求書や適格簡易請求書では、取引年月日や登録番号など複数の記載事項が定められています。適格請求書や適格簡易請求書として認められる領収書を発行するためには、記載事項を確認したうえで必要な項目を領収書のひな形に追加しなければなりません。

適格請求書の例

1、4、5の項目が、区分記載請求書の記載事項に追加される事項です。
5の「税率ごとに区分した消費税額など」の端数処理は、1つの適格請求書につき、税率ごとに1回ずつとなります。

適格請求書の例

  • 登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目の明示)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額など
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要     」を参考に作成

  • ※別ウィンドウで「国税庁」のPDFを開きます。
  • ※上記PDFは予告なく変更、または削除される可能性があります。その場合は国税庁ホームページからご確認ください。

適格簡易請求書の例

1および5の項目が、区分記載請求書の記載事項に追加される事項です。
不特定多数の者に対して販売を行う小売業、飲食店業、タクシー業などにかかる取引については、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することができます。
5の「税率ごとに区分した消費税額など」の端数処理は、1つの適格請求書につき、税率ごとに1回ずつとなります。

適格簡易請求書の例

  • 登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目の明示)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)
  • 税率ごとに区分した消費税額など

出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要     」を参考に作成

  • ※別ウィンドウで「国税庁」のPDFを開きます。
  • ※上記PDFは予告なく変更、または削除される可能性があります。その場合は国税庁ホームページからご確認ください。

適格請求書は、相手方の了承が得られれば書面ではなく電子データで交付することも可能です。電子データで交付する場合も記載事項は変わりありません。

ただし、インボイス制度に対応した領収書を発行するためには、社内の領収書発行システムや会計システムの改修・アップデートが必要となることがあります。既存のシステムでは対応が難しい場合は、インボイス制度に対応している最新のシステムへ乗り換えることを検討しましょう。

買い手の求めに応じて領収書を発行する

適格請求書発行事業者は、課税事業者である買い手側の求めに応じて適格請求書を発行・交付する必要があります。適格請求書は、買い手側が消費税の仕入税額控除を受けるために必要な書類です。記載要件を満たしたものを滞りなく発行・交付できるように、社内の体制やルールを整えておきましょう。また、適格請求書は交付義務が免除される場合を除いて、取引価格や軽減税率対象商品の有無に関係なく発行・交付が必要です。

領収書の控えを保存する

領収書の発行者(売り手)側は、領収書を発行するだけでなく、その写しを保存する義務もあります。保存期間は7年で、電子データで交付したときも同様です。

領収書の「写し」とは、交付した書類をそのままコピーしたものでなくても、領収書に記載した事項が確認できるものであれば問題ありません。売上記録や複数の領収書の記載事項をまとめた一覧表、明細表の保存なども写しとして認められます。

ただし、電子データで交付した領収書については、電子帳簿保存法によって電子データのまま保存することが義務付けられています。電子データで領収書を交付する際は、電子データの保存方法、バックアップ方法なども社内で取り決めを作っておきましょう。

領収書の受領者(買い手)側に必要な対応

受領者にとって、領収書は仕入税額控除を受けるための大切な書類です。インボイス制度では、領収書の発行者だけでなく受領者にもいくつか留意したいポイントがあります。それぞれ詳しく確認しましょう。

領収書の内容を確認する

買い手側が消費税の仕入税額控除の適用を受ける場合、記載要件を満たした領収書を受け取る必要があります。領収書を受け取ったら、「記載されている金額や内容に誤りがないか」だけでなく、「インボイス制度の記載要件を満たしているか」を必ず確認するようにしましょう。

もし領収書の内容に誤りや記載漏れがある場合は、速やかに発行者に連絡し再交付を依頼しましょう。

受け取った領収書を分別する

売り手から受け取った領収書は、すべてが仕入税額控除の対象となるわけではありません。仕入税額控除の対象となるのは「適格請求書発行事業者が発行した領収書」のみで、「免税事業者などが発行した領収書」は仕入税額控除の対象となりません。仕入税額控除の申請手続きの際に混同してしまわないように、「適格請求書」とそれ以外のものを分別して保存しておくとよいでしょう。

ただし、インボイス制度では免税事業者からの課税仕入れについて一定の経過措置が設けられています。制度開始から6年間の取引については、免税事業者からの課税仕入れも一部仕入税額控除の適用を受けることが可能です。

受け取った領収書を保存する

領収書など国税関係書類は、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存することが義務付けられています(事業年度に欠損金がある場合などは10年間)。電子帳簿保存法の改正により、2024年1月1日(月)以降、電子データで受け取った領収書については原則電子データで保存することが義務付けられました。

一方、紙で受け取った領収書は、従来どおり紙で保存できるほか、スキャンやスマホなどによる撮影によって電子データ化して保存することもできます。そして、要件に従って電子化した領収書については原本を破棄しても構わないとされています。保管コストの削減や、検索性の向上に有益です。

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インボイス制度は売り手と買い手双方の対応が必要

インボイス制度は正式名称を「適格請求書等保存方式」と呼ぶため、請求書だけの制度かと思われがちですが、領収書やレシートなど支払いに関する書類にも関係のある制度です。発行者と受領者いずれにもこれまでとは異なる対応が必要となるため、よく制度を理解することが大切です。

インボイス(適格請求書または適格簡易請求書)の発行には、適格請求書発行事業者であることが求められます。取引先とのやり取りに必要なのにまだ手続きを済ませていないのであれば、早急に申請を出しましょう。

よくある質問

Q1.インボイス制度による領収書の変更点は?

インボイス制度では、領収書は「適格請求書」として取り扱われるようになりました。適格請求書には、登録番号や取引年月日、税率ごとの消費税額など複数の事項を記載する必要があります。

詳しくは以下をご覧ください。

Q2.領収書の発行者にはどのような対応が必要?

領収書の発行者(売り手)は、定められた事項を領収書に記載したうえで買い手側へ発行・交付する必要があります。また、発行・交付するだけでなく、領収書の写しを保存しなければなりません。インボイス制度への対応には、領収書発行システムの改修や乗り換えが必要になることがあります。なお、事業者によっては一部の記載事項を省略した「適格簡易請求書」の発行が認められています。

詳しくは以下をご覧ください。

Q3.領収書の受領者がすべきこととは?

領収書の受領者(買い手)は、領収書を受け取ったときに適格請求書または適格簡易請求書の記載要件を満たしているか確認することが大切です。要件を満たしていないと仕入税額控除が受けられないため、必ず記載内容を確認するようにしましょう。また、受け取った領収書は7年間保存する必要があります。

詳しくは以下をご覧ください。


  • 2024年3月時点の情報のため、最新の情報ではない可能性があります。

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