経理
個人事業主の経費や家事按分、節税対策について解説

個人事業主として確定申告をするにあたって、悩ましいのが経費の計上です。特に、自宅を仕事場にしている場合や、仕事とプライベートで銀行預金口座を分けていない場合、日常生活にかかった費用と事業を行うためにかかった経費の区別がつきにくく、判断に迷うことが少なくありません。
ここでは、個人事業主が経費として落とせるもの・落とせないものの具体例や、自宅の一部を事務所にしている場合の「家事按分」について解説します。
- 目次
- 経費とは事業を行ううえで必要な支出
- 経費になるかならないかの見極め方
- 経費として計上できるもの
- 費用の一部を経費にできる家事按分
- 経費として計上できないもの
- 経費精算の際に法人カードを使うメリット
- 三井住友カードおすすめの法人カード
- 領収書・レシートのもらい方と注意点
- 確定申告前に行っておきたい3つの節税対策
- 経費を活用して上手に節税を
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経費とは事業を行ううえで必要な支出
経費の線引きを考えるにあたって、まずは経費の定義を確認しておきましょう。
経費とは、事業を行うためにかかった費用のことですが、「何に使ったお金がどこまで経費になるか」という明確な決まりはありません。同じ場所で同じようにお金を使っても経費として認められるケースと認められないケースがあり、グレーゾーンも多いのが実情です。
ケース1 カフェで頼んだコーヒーの代金
仕事の打ち合わせや、1人で作業をするためにカフェに入ってコーヒーを頼んだ場合、コーヒーの代金は「仕事に必要な経費」として認められます。
ただし、仕事を終えて一息入れるためにカフェを利用した場合の代金や、仕事前に友達と立ち寄ったカフェでの飲食代はプライベートな支出であり、経費としては認められません。
ケース2 スーツや靴などの衣服代
仕事で着用するために購入したスーツや靴であっても、プライベートでも着用できるものは経費になりません。飲食店などのユニフォームや、建設現場で着用する作業着、ダンサーの衣装など、「仕事でしか使用しない」と判断できる物は経費にすることができます。
経費になるかならないかの見極め方
個人事業主として事業をしていると、「これは経費として計上していいのか」という判断に迷う場面が多々あります。経費になるかどうかを見極めるポイントは以下の3つです。
指摘を受けたときに正当性を主張できるか
先に挙げたカフェでの飲食代のように、グレーゾーンに位置する費用については、「事業との関連性を客観的に証明できるか」がポイントです。税務署から「本当に経費なのか明らかではない」と指摘を受けたとき、売上に関わる出費であることをきちんと証明できるなら、経費として計上してもいいでしょう。
収入とのバランスが常識の範囲内か
事業規模や収入に対して経費が多すぎると、指摘を受ける可能性があります。年間の収入が200万円しかない個人事業主が、接待交際費として1回5万円の経費を何度も計上していたり、打ち合わせを兼ねた小規模の会食に毎回10万円以上の経費を投入していたりすれば、どう見ても不自然です。「世間一般の常識の範囲内か」という視点も、見極めの重要なポイントです。
事業主自身のための支払いではないか
個人事業主は、自分のための支払いを経費として計上することはできません。また、福利厚生という概念もないため、以下に挙げるような支払いも経費にならないことを覚えておきましょう。
- 生命保険料(ただし、従業員分は経費として計上可能)
- 健康診断や人間ドックの費用(ただし、従業員分は経費として計上ができる)
- スポーツクラブの会費
経費として計上できるもの
一般的に、必要経費と認められる支出の勘定科目とおもな例は、以下のとおりです。
なお、すべて「仕事として使用している分」が対象となります。
■経費計上できるものの例
※横にスライドの上ご参照ください
勘定科目 | 内訳の一例 |
---|---|
租税公課 | 固定資産税、自動車税 |
水道光熱費 | 水道代、ガス代、電気代 |
通信費 | インターネット料金、電話代、切手代 |
荷造運賃 | 商品を梱包するための包装材料費(段ボールや緩衝材など)、配送費用 |
広告宣伝費 | チラシ作成代、新聞広告費、求人広告費、ポスティング費用 |
接待交際費 | 取引先との会食費用、手土産代、取引先へのお中元代 |
旅費交通費 | 電車賃、バス代、タクシー代、駐車場代、出張先での宿泊費 |
給料賃金 | 従業員に支払う給与・賞与・手当 |
損害保険料 | 事業用の自動車の自動車保険料、オフィスの火災保険料 |
新聞図書費 | 事業のために購入した書籍やDVD、新聞の費用 |
福利厚生費 | 従業員の通勤手当、忘年会費用 |
また、意外と見落としがちな経費として、仕事で関わりがある方や、従業員やその家族が亡くなった場合の香典があります。取引先の場合は接待交際費、従業員およびその家族の場合は福利厚生費で計上しましょう。
費用の一部を経費にできる家事按分
自宅を事務所として利用している個人事業主の場合、電気料金や通信費、水道光熱費、家賃など、生活で使用した分と事業で使用した分との区別があいまいになってしまうことがあります。
これを、生活のための費用と事業のための費用とで分けることを、家事按分といいます。
家事按分できるもの
家事按分の対象となる費用は、電気料金、通信費、家賃、光熱費、駐車場代などです。按分のしかたは費用によって異なります。
・家賃自宅の家賃は、全体の床面積のうち、事業用に使っているスペースの床面積の割合を算出し、「地代家賃」として計上できます。
例)
床面積50平方メートル、家賃12万円のマンションの20平方メートルを事務所として使っている場合
20平方メートル÷50平方メートル=0.4
12万円×0.4=48,000円
経費として計上できる家賃は、12万円のうち48,000円となります。
なお、持ち家の場合でも、事業で使うスペースの割合にもとづいて建物の減価償却費、固定資産税、住宅ローンの金利、火災保険料を按分することができます。
・水道光熱費水道光熱費は、使用時間や使用日数を目安に按分します。正確な数字を出すことは難しいので、請求額に合理的な割合を掛けて計算しましょう。
例)
自宅兼オフィスを、1ヵ月のうち180時間程度、業務として使っており、その月の水道光熱費が1万円だった場合
180時間÷720時間(30日×24時間)=0.25
1万円×0.25=2,500円
経費として計上できる水道光熱費は、1万円のうち2,500円となります。
・通信費インターネットや電話料金などの通信費も、水道光熱費と同じく使用時間や使用日数を目安に按分します。いずれも、客観的に納得できる範囲内であれば、比較的自由に割合を決めて構いません。
例えば、携帯代を按分する場合、仕事に使う割合のほうが若干多ければ経費の割合を60%、ほぼ仕事に使うのであれば経費の割合を90%にして計算します。
例)
ある月の携帯代が15,000円、経費の割合が60%の場合
15,000円×0.6=9,000円
経費として計上できる通信費は、15,000円のうち9,000円となります。
自動車関連費用の家事按分について
仕事で使用している自動車がプライベートと共用の場合でも、業務に使用した分は経費として計上することができます。
自動車関連費用として経費の対象になるのは、おもに次のようなものになります。
- 車両本体の購入代金
- ガソリン代
- 駐車場費用
- 高速代
- 車両保険料
- 自動車税(種別割)
- 車検費用
業務中に使用した高速道路やコインパーキングなどの料金は、全額経費として計上できます。それ以外の費用に関しては、業務とプライベートそれぞれの走行距離や利用時間などを目安に割合を決めて按分します。
なお、車両本体の購入代金は、固定資産として計上してから減価償却費として計上するのが一般的です。
経費として計上できないもの
経費として計上できないものは、一言でいえば「事業に関係がない支払い」です。以下に、具体例を挙げますので、参考にしてください。
・事業主のための支払い 法人は、事業主の給与を「役員報酬」として経費にできますが、個人事業主は売上から経費を差し引いた分が所得となり、経費として計上することはできません。事業主自身の生命保険料、損害保険料、健康診断費用、国民年金・国民健康保険の保険料なども同様です。
・家庭用の支払い 前述したとおり、自宅をオフィスとして使用している場合は、事業に使われている分だけを家事按分して経費にできます。事業に無関係の買物のために消費したガソリン代など、家庭用の支払いは経費になりません。
・生計を一にする家族や親族への支払い 事業主と生計を同じくする家族や親族に対する給料や報酬、家賃の支払いは、事業主の支払いとみなされます。
・借入金や住宅ローンの元金 持ち家関連で経費の対象となるのは、借入金の支払い利息や、自宅兼オフィスの事業として使用している部分に相当する住宅ローンの利息部分です。元金は経費になりません。
・10万円以上の物 取得金額が10万円以上の建物、車両、機械といった事業用資産は、一度「固定資産」として計上してから、法定耐用年数に則って減価償却費として計上します。
経費精算の際に法人カードを使うメリット
経費の支払いでクレジットカードを利用している場合、企業や法人、個人事業主を対象とした法人カードを利用することで、さまざまなメリットが得られます。
・経費の管理がしやすくなる 法人カードでは、個人カードと同様に利用明細が発行されます。いつどこでいくら使用したかが一目で分かり、経費の管理がしやすくなります。また、経理ソフトなどを利用すれば、利用明細をそのまま取り込むことができるため、経費の精算が効率化できるうえ、入力ミスなどの心配も軽減します。
・経費の計上漏れが防げる 利用明細をもとに経費の確認を行えば、領収書の紛失や入力漏れなどにも気付くことができ、経費の計上漏れを防ぐことができます。
このほか、個人カードよりも高い利用限度額を設定できたり、ビジネスシーンで役立つサービスが受けられたりと、経費精算以外の面でも、さまざまなメリットを受けられます。
こちらもご参照ください。
個人事業主が法人用のクレジットカードを持つメリット
三井住友カードおすすめの法人カード
法人カードを活用することで、経費精算の手間を大幅に削減することができます。
続いては、個人事業主の方や経営者向けのカードと、中小企業向けのカードをご紹介します。
法人代表者・個人事業主の方向け
三井住友カード ビジネスオーナーズ
三井住友カード ビジネスオーナーズであれば、お申し込みの際に登記簿謄本や決算書は不要。個人の与信をベースに審査しますので、創業1年未満でも発行できます。
中小企業向け
領収書・レシートのもらい方と注意点
計上した経費の証明ともなる領収書は、税務調査が入った際に確認されるもののひとつです。税務調査では、経費について数年前にさかのぼって説明を求められることもあるので、「品代」などの簡単な但し書きでは詳細を思い出すことができず、納得してもらえない可能性があります。
そのため、領収書をもらう際は、次の内容を必ず記載してもらいましょう。
- 企業や代表者名
- 領収書の発行年月日
- 金額
- 商品やサービスの詳細
- 領収書発行店舗の名前、住所、電話番号
- 押印
- 5万円以上の金額の領収書は収入印紙の貼付
このほか、同行者や人数、関係する相手企業の名前などを領収書の裏面に自身でメモしておくと安心です。
なお、支出を証明できる書類は、領収書のほかにも、レシートやクレジットカードの利用明細書、WEB取引の様子が分かる画面記録やプリントアウトした電子メール、振込明細書などがあります。
これらは領収書よりも詳細が分かりやすいため、領収書と併せて保管しておきましょう。領収書をもらい忘れた場合でも、レシートがあれば支出を証明する書類として認められるので心配ありません。
こちらもご参照ください。
クレジットカード決済は領収書が不要?利用明細での経費処理について
領収書の書き方と収入印紙のルールとは?
確定申告前に行っておきたい3つの節税対策
経費精算を行うことで、1月1日~12月31日までの1年間の事業の所得が分かります。
所得税などの税金は所得をもとに算出されるため、 経費精算時には節税対策を行うことも大切です。具体的にどのようなことができるのか見ていきましょう。
経費の見直しと確認を行う
所得税は、所得の合計から必要経費と各種控除を差し引いた金額に、一定の税率を掛けて算出されます。そのため、所得の合計から引ける必要経費や各種控除の額が大きいほど、所得税を節税できることになります。
まずは経費を見直し、計上漏れがないかを確認しましょう。その際、按分をしているものの割合が正しく設定されているか、入力ミスなどで金額の間違いが起きていないかも併せて確認することが大切です。同様に、控除として使用できるものについても確認しておきましょう。
青色申告を行う
確定申告では、年間所得が2,400万円以下の場合、基礎控除として48万円が所得から差し引かれます。
確定申告の方法には白色申告と青色申告があり、青色申告の場合は青色申告特別控除として、10万円、もしくは55万円(一定の条件を満たした場合は最高65万円)が基礎控除と別に差し引かれます。このため、青色申告をすることでかなりの節税を行うことができるようになります。
青色申告で55万円の控除を受けるためには、開業届を出して事業として所得を得ていることや、複式簿記で帳簿をつけていること、記帳にもとづいた貸借対照表と損益計算書を添付すること、確定申告の期限内に申告することなどの条件を満たす必要があります。しかし、会計ソフトなどを利用すればそれほど難しい作業は必要ないため、ぜひとも行いたい節税対策といえるでしょう。
減価償却の特例を利用する
事業で使用するパソコンや車など、減価償却資産として定められた物を購入した場合は、固定資産として計上し、減価償却費で計上します。10万円以上20万円未満の固定資産について中小企業以外の法人では、法人税法の特例によって3年で均等に割って計上することが可能になります。それにより1年あたりの償却額を高くすることができ、通常の計上よりも節税できるようになります。
一方、中小企業や個人事業主の場合は、次の2つの条件をすべて満たす場合に、青色申告決算書に必要事項を記入して確定申告の際に提出すると、少額減価償却資産の特例で、10万円以上30万円未満の固定資産を一括で経費計上できるようになります。
<少額減価償却資産の特例の条件>
- 青色申告をしている
- 購入した固定資産の金額が30万円未満で、年度内の合計額が300万円未満
経費を活用して上手に節税を
事業を行うためにかかった費用を必要経費として計上すると、利益を小さくして節税につなげることができます。特に、自宅で仕事をしている個人事業主は、家事按分を活用することで、より経費の範囲が広がります。
経費にできるかどうか迷ったら、「事業に使うもの」を「常識の範囲内で」経費計上できるという基本に立ち返って考えましょう。客観的に経費であることを証明できるよう、支払いをしたら領収書をもらうことも忘れないようにしてください。
法人カードの種類によって商品性は異なりますので、あらかじめご了承ください。また、詳細につきましては、各商品ページをご確認ください。
2020年12月時点の情報なので、最新の情報ではない可能性があります。

港区の会社設立支援、税理士法人。Big4出身の公認会計士、税理士、元上場企業経理部長、大手ベンチャーキャピタル出身者などで構成され、スタートアップ支援に力を入れる。
法人代表者・個人事業主の方向け
登記簿謄本・決算書不要!
中小企業向け
経費精算もラクラク♪
- プラチナカードを希望される方は「詳細を見る」よりご確認ください。
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